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米国元銀行頭取が銀行を故意に破産させかつFDICに約430万ドルの損失を生じさせた訴訟で有罪答弁

  Last Updated:February 21,2021  2010年10月26日、FBIは2001年から2007年の間「ヒューム・バンク(Hume Bank)」頭取であった被告ジェフリー・W・トンプソン(Jeffrey W.Thompson)が銀行に対する詐欺を事由とする裁判で「有罪答弁(Pleads Guilty)」を行った旨 リリース で発表した。  FBIの解説は主に母親や親戚に対する不正融資等極めて悪質な犯罪行為の内容が中心であり、司法関係者が読むには情報不足である。筆者は独自にFDICの資料や起訴時の報道等を調べて、あらためて事件の全貌の解明を試みた。  時間の関係ですべての情報を網羅しているとは思えないが、経営破たんが続く米国金融界の闇の部分が多少でも垣間見ることが出来れば幸いである。  なお、本起訴につき米国民の反応は弱いようである。この種の金融機関経営者は米国では珍しくないということなのか。  なお、 ミズーリ州西部地区連邦検事のベス・フィリップス( Beth Phillips )は2011年3月10日、ミズーリ州ベイツ郡のヒューム銀行の前頭取が、銀行が破産に追い込まれたほどの重大な損失に関し銀行詐欺計画の一環としてFDICに虚偽の陳述を行ったとして連邦裁判所から有罪判決を受けたと 発表 した。 Beth Phillips氏   ヒューム銀行の元頭取のジェフリーW.トンプソン(40歳)は、2011年3月9日に、仮釈放なしの連邦刑務所で6年6か月の刑を宣告された。  又同 裁判所は、トンプソン被告に、詐欺計画または彼の居住用財産からの収入を表す30万ドル(約3270万円)を連邦政府に没収するよう命じた。   1.元ヒューム銀行頭取の起訴  2009年12月2日、ジェフリー・W・トンプソンはミズーリー州のヒューム銀行の頭取であった時期の2004年1月から退任した2007年8月の間に銀行に対する詐欺行為(1訴因)、資金の不正使用(3訴因)、不正な銀行取引・報告(6訴因)、さらにはFDICへの虚偽の報告(3訴因)の計13訴因につき連邦大陪審(grand jury)により起訴相当と判断された。  トンプソンが持ち出し管理していた融資につき被告は融資管理記録を改ざん・隠蔽したため返済期限経過の融資等による損失をもたら...

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第8回)

  〔米国全米海洋大気局と食品医薬品局がメキシコ湾石油分散剤の魚介類への化学的影響検査結果を公表〕                                                 10月29日、米国商務省全米海洋大気局(NOAA)と米国連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)が「メキシコ湾石油分散剤の魚介類への化学的影響検査結果:安全閾値にかかる全サンプル調査結果」を 公表 した。  メキシコ湾の原油流出事故の魚介類への影響については 本ブログ でも報告してきたが、流出が完全に停止したとされた後である9月28日にもオバマ大統領は長期的な取組が必要と 宣言 (筆者注1)している。  オバマ大統領の声明の根拠となったのは海軍省の レイ・バマス長官 の報告書 「America’s Gulf Coast:A Long Term Recovery Plan after the Deepwater Horizon Oil Spill」 (全130頁)である。  今回発表されたNOAAとFDAの報告内容はEPAとの関係は明確でないが、今まで本ブログで解説してきたこれら機関の取組み内容から見て当然の活動であると思う。  環境保護団体や研究機関のこの報告に対する反応についてはこれからであるといえるが、「安全閾値(safety threshold)」(筆者注2)に関する全サンプル調査と断り書きがある今回の報告を、とりあえず現時点での最新情報として紹介する。 **************************************************************************************  すでに行われてきた連邦、州や地方の官吏による膨大な量の試験や手順を足がかりとしてNOAAとFDAは魚、牡蠣、カニおよびエビについてデープウォーター・ホライズン海域で使用された石油分散剤を調査するため化学試験の開発のならびに使用して検査を行ってきた。  厳格な官能分析手順(rigorous sensory analysis process)につき教育を受けた専門家がメキシコ湾の魚について汚染物質の存在および魚介類の各サンプル原油や分散剤が付着した検査をパスして再開した海域の水について検査を行った。  それにもかかわらず、なおメキシコ湾で収穫...

オーストラリアの連邦ブロードバンド・通信・デジタル経済省(DBCDE)サイトに見る詐欺電話被害の急増

      Last Updated: Feburary 20,2021   筆者は本ブログで 「スケアウェア詐欺」 や 「トロイの木馬:ゼウス型」 を取上げる一方で、10月6日には北米における 「高齢者を対象とする振込め詐欺」 について紹介した。  筆者の手元にオーストラリアの連邦通信監督機関である「ブロードバンド・通信・デジタル経済省(Department of Broadband,Communications and Digital Economy:DBCDE)」大臣スティーブン・コンロィ(Stephen Conroy)からの リリース・メール が届いた。 (筆者注0)  最近数ヶ月だけ見てもDBCDEや同国の競争規制機関である「競争・消費者委員会(Australian Competition and Commission:ACCC)」に対する消費者からの1ヶ月あたりの「電話詐欺」苦情件数が200件から2000件に急増しているという。  また、今回のブログでは主要国の“Don’t Call Registry”の実施状況について簡単にまとめておく。この種の基本的なデータが審議会等ごく限られた場でしか公開されていないわが国の実態を踏まえて、このような作業を行う趣旨を理解して欲しい。  筆者の自宅にも、ひっきりなしにワンギリ電話や時間を問わないセールス電話が絶えない。  わが国でも“Don’t Call Registry”による規制強化論議が喫緊の課題となりつつある状況なのではないか。 1.詐欺電話の内容  ACCCや「連邦通信メディア庁(Australian Communications and Media Authority:ACMA)」が公表した詐欺師からの通話内容は次のような内容である。 (1)「あなたのPCはコンピュータ・ウィルスが感染しています。直ちに問題を解決するため、検索用ソフトウェアをダウンロードするので、あなたのクレジットカード情報を送ってください」といって金融取引情報を入手する。 (2)政府からの給付(grant)と称して偽の製品、サービスや現金の給付を受け取るための手続に必要であるとして、資金の提供を求めたり金融取引情報の提出を求める。 (3)銀行手数料や税金の還付が受けられることになったので、その手続のためにあなたの金融取引情報を提...

英国弁護士等に対する顧客からの苦情に対するリーガル・オンブズマン制度改正の背景と今後の 課題

      2023.12.24 Last Updated   10月7日、英国法務政務次官ジョナサン・ジュノグリィ(Jonathan Djanogly )は弁護士に対する顧客からの苦情を専門に受付ける国家機関たるオンブズマン制度を10月6日にスタートした旨 発表 (筆者注1) した。 Jonathan Djanogly 氏  この問題につき筆者はBBCやガーディアンといったメディアや大手ローファームのニュースで知っていたが、今一その意義や目的が良く理解できなかった。  そこで筆者なりに英国の従来の複雑な諸制度を改革すべく、司法改革の一環となる今回の制度改正の法的背景(  「2007年リーガル:サービス法(Legal Services Act 2007)」 )や意義につき、改めて英国法務省や従来からある「リーガル・オンブズマン」サイト、弁護士会関係等の情報をもとに整理してみた。  わが国では、企業や市民が依頼先の弁護士の納得できない法手続き実務や弁護活動について不満や苦情があれば「弁護士法」 (筆者注2) に基づき一般的に懲戒権を持つ当該弁護士の所属弁護士会 (筆者注3) への相談から入る。英国に比して制度的に複雑ではないが、実際多くの苦情・トラブル等があることも事実である。  わが国も今後ますます民事・刑事裁判やADRなど紛争解決の新たな制度の見直しを考える上で、筆者はその代理人である弁護士が適法・適正に法律の番人として機能すべく基盤整備問題として考えた。その意味で英国の例を参考とすべく今回の調査結果を公表するものである。  特に「弁護士自治」か「国家独立機関」による監視・規制かという問題は、英国でも喫緊の問題となっている。「検察制度」改革問題と同様、わが国の司法制度上極めて基本的かつ重要な問題と思う。  なお、時間の関係で調査不足な点が多いと思うが、筆者の問題意識だけは理解していただきたい。   1.わが国における「英国の弁護士の懲戒権規定の概要」資料  日本弁護士連合会がまとめている資料 「世界弁護士会便覧欧州」 が、英国(UK:グレートブリテンおよび北アイルランドからなる連合王国)各構成国における弁護士会等の懲戒規程等につきまとめている。  同資料はイングランド、ウェールズ、スコットランドなど個々に事務弁護士(Solicitors )からな...

米国やカナダの高齢者を対象とする振込め詐欺「おばあちゃん・・助けて」の警告と防止対策

   Last Updated:February 21.2021    本ブログでは、しばしばハイテク・詐欺の手口やその対策・起訴等の最新情報を紹介してきた。  今回紹介するテーマは、日本でなお被害が減らない「振り込め詐欺」が北米で被害が広がっていることから、詐欺専門サイトを開設、各種詐欺手口を列挙し、その被害予防防止につとめている「米国商事改善協会(BBB)」および 「カナダ銀行協会の詐欺予防サイト(Fraud prevention Tip))の最新情報 や「 詐欺予防コール・センター(Canadian Anti-Fraud Call Centre:CAFC)」 等の具体的な取組みを紹介する  読者は読んですぐに気がつくと思うが、孫の懇請に弱い祖父母の感覚は古今東西を問わないことがよく理解できる。「ちょっと待て」、「冷静に考えて」と言葉だけでなく国際犯人グループの早期逮捕が急務であるが、組織全体を壊滅するため国際協力がますます欠かせなくなってきている。  また、カナダのCAFCの“SeniorBusters program”で見るとおり、相談相手も相者も高齢者といういい意味での高齢社会の相互コミュニケーションの場として有効に機能している点は、筆者が従来からかかわっている 東京大学「高齢社会総合研究機構(IOG)」 の研究テーマと関係してこよう。  なお、筆者は皮肉にも銀行協会や捜査当局による振込阻止の取組みは、わが国の方がすすんでいると思う。 1. 米国商事改善協会(Better Business Bureau:BBB) の取組み  2009年11月2日、BBBは次のようなカナダ人からの振り込め電話詐欺に関し、消費者向けの 警告文 を発表した。 (1)手口の概要 ・ある祖父母に孫からと信じさせる「今、大変困っているんだ」との電話がかかってくる。 ・思わせぶりの孫は、通常「カナダを旅行中であるが逮捕されたとか自動車事故に巻き込まれたと窮状をうったえる。損害賠償金や保釈金をすぐ払わねばならないので、すぐにおばあちゃんは数千ドル(1万5千ドルといったケースもある)を電信為替で送金して欲しい」といった内容の電話をかけてくる。  多くの高齢者は、この手の詐欺にはかからずに詐欺の報告を警察等関係機関に報告している間に別の犠牲者が発生している。話の内容はそれぞれ異なるも...

米国連邦司法省やロンドン警視庁が“Zeus Trojan”の大規模国際銀行口座サイバー詐欺犯を起訴

    Last Updated:February 21.2021    2010年8月28日付けの本ブログで、筆者は 「 米国『スケアウェア詐欺』に見る国際詐欺グループ起訴と国際犯罪の起訴・裁判の難しさ」 を取り上げた。  9月30日、連邦司法省ニューヨーク南部地区連邦検事局、ニューヨーク郡地方検事局(District Attorney for New York County)、FBIニューヨーク事務所(field office of FBI)等はオンライン・バンキングにおける銀行の機密取引情報を盗み、ACH (筆者注1) と電子通信詐欺(Wire Fraud)を介し、世界中に数百万ドルの被害を引き起こした詐欺グループ37人を逮捕し旨 リリース した。  犯人グループはキー・ロガーを利用したマルウェア“Zeus Trojan” (筆者注2) を利用していた。  一方、英国では9月29日にロンドン警視庁(MPS)のサイバー犯罪特別捜査チーム(PCeU)  (筆者注3) が、数千人の銀行顧客口座から最高600万ポンド(約7億6,200万円)以上を盗取した罪で東欧出身者19人を逮捕した旨 発表 した。  犯罪者グループはマルウェア“Zeus Trojan”を利用し、オンラインバンキングにかかるログオン情報を盗取したうえ、無権限アクセスを行い犯罪組織が管理する海外の口座に送金した。その手先になったのが違法な海外への資金の送金請負人“Money Mules”であった。  特に海外メディアはコメントしていないが、これら犯罪者たちの年令に注目して欲しい。米国の場合ほとんどが20歳前後である。また英国の場合、20歳代後半から30歳代前半である。彼らが何ゆえこれらの犯罪に引き込まれたのか、どのような国際犯罪組織が暗躍しているのか。英国の起訴犯人グループは年令が米国より上(20歳代後半)であるが、その多くは失業者である。  本文を読まれると理解できると思うが、経済的に恵まれない東欧諸国の若者を巻き込んだ詐欺犯罪として従来のサイバー犯罪の類型とは異なる手口である。  仮に彼らが有罪と判断させたときの最高刑はあまりにも重い気がするが、これが世界の現実である。さらにいえば、わが国の若者がこの手の犯罪グループに安易に巻き込まれない保証はない。  経済の低迷が続くわ...