スキップしてメイン コンテンツに移動

ドイツ連邦国家における「電子政府」の取組み例

 


 Last Updated: March 31,2021

 筆者は2006年のキーワードは「電子政府」であると昨年から述べ、本ブログでもたびたび取り上げてきた。予想通り、欧米主要国は2005年末から2006年初めにかけて「電子政府」の進捗状況の総括やこれから数年後の目標を具体的に設定、公表している。また、電子政府のポータルの体系化・充実度もこの1年で大きく変わってきている。

 数回に分けて、ドイツにおける「電子政府」の現状と、2010年を最終目標とする同国の連邦統合型「電子政府」の内容を紹介する予定であり、今回はその第1回目である。

 なお、以下に紹介する2003年夏に開発に着手し、2005年6月に稼動した「ドイツ連邦電子政府共同プロジェクト(Deutschland-Online:DO)」の広報用のオンラインマガジン「Deutschland Online」はその情報の一覧性に優れていることはもちろんのこと、欧米主要国でも唯一といえる点がある。使用言語として「日本語」が含まれていることである。さらに、日本の特集記事や地域別特集とは別にわが国を紹介している点である(当然、日本語である)。

 なお、BundOnline 2005 – Wikipediaを合わせ読まれたい。

 一方、2003年2.月28日の ドイツ「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(注1)は、連邦政府の電子政府のイニシアチブ「BundOnline2005」に関し、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)(Startseite | Bitkom e.V.(注2)やドイツ連邦産業連盟(BDI)(Bundesverband der Deutschen Industrie )(注3])などの業界団体は、組織のギャップ、連邦政府、州政府、地方政府間の調整の問題、マスタープランの欠如について不満を持っていると述べ、他方で内務省は、ほぼ予定通りに進んでいるとする記事を書いている。

  第2回以降では、ドイツ政府のオンラインポータル・サイト”deutchland.de”でドイツのE-Governmentの現状を見ておく。

1.ドイツDOの取組みの現状
 地方分権の考え方すなわち「全体の中のある一部」原則であり、国家連合EUの中におけるドイツの位置づけも意識している。すでに第一的に成果が得られた項目は以下のとおりである。
①連邦政府、連邦州政府、地方自治体における「給与税控除(wage tax)」分野の電子処理化
②連邦州政府の支援のもとで連邦政府は公的機関のデータベースの構築ならびに検索機能を持つ行政ポータル”www.bund.deを立ち上げた。一部の州ではすでに自州のポータルならびに連邦政府サービスサイトとのネットワーク化を実現している。
③連邦政府や連邦州政府における統計事務の集中化センターである”www.statistik-portal.deの運用を開始した。 (注4)
④連邦政府等の相互コミュニケーションプラットフォームとして「TESTA Deutschland」の共同使用を始めた。
⑤連邦政府等は初めて”XML standards”につき合意した。例えば、”XMeld”により連邦機関間のデータ登録事務は完全に行える。
⑥「OSCI:Online Services Computer Interface」が公的機関の安全かつ署名を要する取引における全国的な規格として採用された。(ブレーメン州のOSCI参照)
⑦連邦政府等は「共同電子政府構築モデル」の草案策定とその使用を開始し、連邦政府の規格である「SAGA」もこれに統合した。
⑧連邦政府等はヘッセン州にデータ処理センターを設置した。

2.目下進行中の計画内容
 政府の戦略目標の適用のため、連邦政府等の政府機関の責任者からなる作業部会は以下の計画を進めることで合意し、取組みが始まっている。

(1)大項目1:具体化する個別サービスの品揃え
連邦政府や州は各分担して次のサービスの実用化実験に取り組む。
①司法登録(judicial register)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年12月開始)
②商業登記(Commercial register)先導機関:バイエルン州ババリアおよびバーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
③住民登録(Citizens’register)先導機関:バイエルン州ババリア(2003年11月開始)
④戸籍登録(Civil Status register)先導機関:ドルムント市(2003年11月開始)
⑤公的な統計(Official statistics)先導機関:連邦政府(2004年1月開始)
⑥車両登録(Vehicle registers)先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
⑦連邦教育支援法 先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年12月開始)
⑧Geo-data(各機関共通に利用する地理データ情報システム)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年9月開始)(筆者注:Geo-dataは各国の電子政府は必ず準備している。)
⑨ビル建築 先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年11月開始)

(2)ポータル・ネットワーク
 連邦政府等は、国民それぞれが同一的な行政サービスにアクセスできるようポータルを作成した。インターネット・ポータルの相互運用性を確保するために規格化と調和性が必要であった。そのためのプロジェクト事務局「KoopA ADV」が中心となっている。(2003年1月~2004年1月にかけ開始)

(3)インフラストラクチャー
 連邦政府等は、次の共同インフラの設置と使用をはじめた。
①電子署名連盟(electronic signature alliance)の取扱範囲で統一的な規格の基礎となる電子署名の使用ならびに普及の準備。先導機関:連邦政府(2003年4月開始)
②連邦政府等の間において交換する国民に関する情報についての「交換機関(clearing houses)」の概念を開発する。先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年10月開始 )
③電子政府計画において適用ならびに合格するビジネスモデルについて今後の協調に向けた開発。先導機関:連邦政府(2003年10月開始)

*****************************************************************************************

(注1)「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(https://www.computerwoche.de/)、CIOとITマネージャーのためのドイツの週刊新聞である。それは1974年以来市場に出されており、主に予約購読によって配布されている。この新聞は、ドイツの子会社とComputerwocheの編集スタッフがミュンヘンに拠点を置くITスペシャリストの出版社「インターナショナル・データ・グループ(IDG)」の一部である。

(注2) ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)は1999年に設立され現在、1,000社以上の中規模企業、500社以上のスタートアップ企業、ほぼすべてのグローバルプレーヤーを含む、デジタルエコノミーの2,700社以上の企業を代表している。そのメンバーは、ソフトウェアおよびITサービス、通信またはインターネットサービス、製造デバイスおよびコンポーネントを提供し、デジタルメディアやネットワーク経済、またはデジタル経済の一部の分野で活躍しており、現在、成長するビジネスモデルをデジタル的に開発したい企業が、あらゆる分野でBitkomに加わっている。また、Bitkomはドイツの経済、社会、行政のデジタル化に強く取り組んでいる。(Bitkomサイトを仮訳)

(注3) BDIは、ドイツの産業および産業関連サービスの包括的な組織である。これは、40の業界団体と約800万人の従業員を抱える10万を超える企業を対象としている。 メンバーシップは任意であり、 地域の州の15の組織・団体は、地域レベルで業界の利益を代表している。(BDIサイトを仮訳)。 

(注4) 同ポータルを見て読者は気がつくと思うが、全項目につきドイツ語と英語が完全にパラレルに併記されている。英語が自由に使いこなせるドイツ人が多いと聞くが、このような点でも明らかである。

***************************************************************************************

(今回のブログは2006年1月23日登録分の改訂版である)

Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

コメント

このブログの人気の投稿

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

     米国の 商品先物取引委員会(CFTC) は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住の ラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri) と彼が所有するオハイオ州に本拠を置く NBD Eidetic Capital, LLC および SR Private Equity, LLC に対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に 民事法執行訴訟 を起こしたと 発表 した。   同訴状 は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。  さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している 救済被告 (注1) として起訴している。  今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。 1. 起訴の内容  CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および 「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」 および 「CFTC規則(CFTC regulations)」 のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。 2.本事件の背景  訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声...

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家...

DONATE(ご寄付)のお願い

  本ブログの継続維持のため読者各位のご協力をお願いいたします。特に寄付いただいた方で希望される方があれば、下記の筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中でございます。   ◆みずほ銀行 船橋支店(店番号 282) ◆普通預金 1631308 ◆アシダ マサル ◆E-メールアドレス:slutian165@gmail.com   【本ブログのブログとしての特性】 1.100%源データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない 正確な訳語づくり 。 2.本ブログで取り下げてきたテーマ、内容はすべて電子書籍も含め公表時から即内容の陳腐化が始まるものである。筆者は本ブログの閲覧されるテーマを毎日フォローしているが、10年以上前のブログの閲覧も毎日発生している。 このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。 3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。 このような経験を踏まえ、データの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。 本ブログは、上記のように公的機関等から 直接受信による取材 → 解析・補足作業 → リンク・翻訳作業 → ブログの公開(著作権問題もクリアー) が行える「 わが国の唯一の海外情報専門ブログ」 を目指す。 4.内外の閲覧者数の統計数(google blogger and WordPress) (1)2005.9~2017.8 全期間の国別閲覧数 (2) 2016.8~2020.8 WordPress 世界的な閲覧者数 4. 他にない本ブログの特性: すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を...