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6月, 2009の投稿を表示しています

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.10)

  Last Updated : March 5 , 2021  WHO等の統計では米国が1週間で6,268人(うち死者40人)の増加が確認されるなど米国大陸、オセアニア、英国等の確認累計感染者や死者数は引続き拡大傾向にある。今回は、WHOの6月29日公表の累計感染者数や死者数を中心に解説する。  6月26日比(No.9)で比較すると、これまで累計感染者数の多い国における死者の増加が依然高い水準にある一方で、オーストラリア、中華人民共和国、フィリピン、シンガポール等南半球や東南アジアの国々等の感染拡大が続いている。 1.わが国の最新情報  2009年6月29日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、1,211人(6月26日比+163人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。  なお、過去の増減比を見ようとすると、厚生労働省サイト確認感染者数は都度上書きされてしまうため、過去の感染者数の推移の確認は出来ない。国立感染症研究所「感染症情報センター」サイトで確認するしかない。 2.WHOの最新発表情報   WHOの公表確認感染者数(2009年6月29日世界標準時9時現在)(update55) データに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(34か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)  全体の数字は109か国(6月26日比+4か国)、累計感染者数は70,893人(6月26日比+11,079人)(うち死者は311人(6月26日比+48人)) (筆者注1)  「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月26日比増加数(死者数)」の順に記載した。 ①米国:27,717人(うち死者127人(+40人))(+6,268人)、②メキシコ:8,279人(うち死者116人(+0人))(+0人)、③カナダ:7,775人(うち死者21人 (+2人) )(+1,043人)  (筆者注2)  、④チリ:5,186人(うち死者7人(+0人))(+0人) 、⑤英国:4,250人(うち死者1人(+0人)) (+653人)  (筆者注3) 、⑥オーストラリア:4,038人(うち死者7人(+4人)) (+758人)  (筆者注4) 、⑦アルゼンチン:1,488人(...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.9)

    Last Updated: March 5,2021  WHO等の統計では米国大陸、オセアニア、英国等の確認累計感染者や死者数は引続き拡大傾向にある。今回は、WHOの6月26日公表の累計感染者数や死者数を中心に解説する。  6月22日比(No.8)で比較すると、これまで累計感染者数の多い国における死者の増加が依然高い水準にある一方で、オーストラリア、アルゼンチンやブラジル等南半球の国々の感染拡大が続いている。  また、厚生労働省は季節性インフルエンザの流行時期に合わせ全国的かつ大規模な感染拡大が想定されることから、その回避策の一環として従来行ってきた「全数調査」に代えて医療機関、学校等施設等における同一集団での「集団発生(クラスター発生)報告」を実施する方針を打ち出し、併せて監視体制の実施について6月25日付けで各都道府県等の衛生主管部あて事務連絡を発出している。 (筆者注1) 1.わが国の最新情報  2009年6月26日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、1,048人(6月22日比+156人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。  なお、過去の増減比を見ようとすると、厚生労働省サイト確認感染者数は都度上書きされてしまうため、過去の感染者数の推移の確認は出来ない。国立感染症研究所の「感染症情報センター」で確認するしかない。 2.WHOの最新発表情報   WHOの公表確認感染者数(2009年6月26日世界標準時7時現在)(update54) のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(31か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)  全体の数字は105か国(6月22日比+11か国)、累計感染者数は59,814人(6月22日比+7,654人)(うち死者は263人(6月22日比+32人))  「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月22日比増加数(死者数)」の順に記載した。 ①米国:21,449人(うち死者87人(+0人))(+0人) (筆者注2) 、②メキシコ:8,279人(うち死者116人(+3人))(+655人)、③カナダ:6,732人(うち死者19人 (+6人) )(+1,022人)  (筆者注3)  、④チリ:5,18...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.8)

   Last Updated : March 5, 2021 WHOの統計を始め各国の確認感染者や死者数は引続き拡大傾向にある。今回はWHOの6月22日公表の累計感染者数や死者数のみ記載する。  6月19日比で比較すると、これまで累計感染者数の多い国における新規感染者数の増加が依然高い水準にある。  なお、WHOでみる米国の感染者数の増加が3,594人、死者の増加が43人となっているが、これは6月19日に米国疾病対策センター(CDC)が公表した数字で6月12日比であり、最新の実態を反映したものでない。従って、世界全体の死者数の増加51人のほとんどは米国によるもので、他の国の死者数の増加は1~2人である。  さらに疑問をあげれば、6月17日以降のWHOの公表するわが国の確認感染者数(厚生労働省公表値)が「1人多く」表示されている。世界的な統計であり確認を求めたい。 1.わが国の最新情報  2009年6月23日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、892人(6月22日比+43人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。  なお、過去の増減比を見ようとすると、厚生労働省サイト確認感染者数は都度上書きされてしまうため、過去の感染者数の推移の確認は出来ない。国立感染症研究所の「感染症情報センター」で確認するしかない。ちなみに米国CDCのサイトでは “Past Situation Updates” 、またカナダ公衆衛生庁(PHA)サイトの“Surveillance”の “Archive” で過去の特定日の統計値の確認が容易に出来る。 2.WHOの最新発表情報   WHOの公表確認感染者数(2009年6月22日世界標準時7時現在)(update52) のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(26か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)  全体の数字は94か国(6月19日比+6か国)、累計感染者数は52,160人(6月19日比+7,873人)(うち死者は231人(6月19日比+51人))  「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月19日比増加数(死者数)」の順に記載した。 ①米国:21,449人(うち死者87人(+43人))(+3,594人)  (筆者注...

EUにおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向

   Last Updated:March 5,2021  メキシコや北米を中心とするH1N1の世界的感染拡大のニュースが毎日報道される中、5月15日にEUにおける国際感染予防機関である「欧州疾病予防管理センター( The European Centre of Disease Prevention and Control:ECDC)」 (筆者注1) が発刊するオンライン・ジャーナル“EUROSURVEILLANCE”  (筆者注2) が手許に届き、その中に特集論文「なぜ、メキシコのデータが重要なのか」があった。  筆者は感染症(数理)問題の専門家ではないが、一般メディアや米国CDCやWHOといった専門機関から日々伝わるH1N1に関する情報は、いつ世界的なパンデミックになるのか、第二波はいつ来るのか、日常の予防策はどうすればよいのか等で、本来の専門疫学的な視点に立ったものが少ないように思う。 (筆者注3)(筆者注4)  そこで、今回のブログでは“EUROSURVEILLANCE”の第14巻19号の論文の中から小論文“Why are Mexican Data Important?”の概要を紹介する。 (筆者注5)  なお、6月4日発刊の“EUROSURVEILLANCE”第14巻22号においてオランダ・ヨトレヒト大学研究員の西浦博氏等の理論疫学研究グループが 「日本にみる新型インフルエンザA(H1N1)の潜在的感染拡大とその年齢特性(Transmission Potential of the New Influenza A(H1N1)Virus and Its Age-Specificity in Japan)」 を発表し、わが国における感染拡大と基本再生率について分析している。  一方、本原稿を執筆中に厚生労働省が都道府県等の新型インフルエンザ担当部長等宛5月1日付事務連絡で 「新型インフルエンザ((Swine-origin influenza A/H1N1)に係る積極的疫学調査の実施等について」 を発出している情報を得た。 (筆者注6)  本来、このような専門的な報告書の紹介はわが国の「国立感染症研究所」および「国際疾病センター(DCC)」や関係医療研究機関が行うべきものであり、本論文の意義も含め正確な解説を期待するものである。 (筆者注7) 1....

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.7)

  Last Updated : March 5 ,2021  WHOの統計を始め各国の確認感染者や死者数は引続き拡大傾向にある。今回は感染者の最新情報とともに、主題の1つである「ワクチンや試薬開発の最新動向」について 英国の国立生物学的製剤研究所(A Center of the Health Protection Agency:NIBSC)のサイト から最新動向を紹介する。  言うまでもなく、“NIBSC”はWHOや米国連邦保健省疾病対策センター(CDC)等との連携作業を行っており、今まで本ブログで紹介してきたワクチン開発の動向が具体的に確認できる。 (筆者注1)  それにしても国民に冷静な対応を呼びかける前提として、わが国の入手しているワクチン開発の世界の最新情報は公的関係サイトで流すべきではないか。 (筆者注2)(筆者注3)  なお、たびたび紹介している”Eurosurveillance”の最新号(6月18日号)が手元に届いた。今回の 特集論文 は、「南半球のインフルエンザA(H1N1)―ヨーロッパにおいて学ぶべき点は?」と題し、チリとオーストラリアに見る南半球のインフルエンザA(H1N1)vの本年秋以降の北半球への影響を予測している。機会を改めて解説したい。 1.わが国の最新情報  2009年6月19日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、740人(6月18日比+51人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。 2.WHOの最新発表情報  WHOの 公表感染者数(2009年6月19日世界標準時07時現在)(update51) のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(23か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)(update50は筆者の都合で間に合わず省くが、前回比は前々回update49(6月15日)比を用いた)  全体の数字は84か国(6月15日比+8か国)、累計感染者数は44,287人(6月15日比+8,359人)(うち死者は180人(6月15日比+17人))  「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月15日比増加数(死者数)」の順に記載した。 ①米国:17,855人(うち死者44人(―1人))(+0人)  (筆者注4) 、②メ...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.6)

  6月15日に、わが国のメディアが東京大学医科学研 究所の河岡  義裕 教授グループが 英国科学専門雑誌「ネイチャー」(電子版)にインフルエンザ・ウイルスの表面に人間の細胞にとりつく役割をもつ「赤血球凝集素:へマグルチニン(hemagglutinin:HA)」というタンパク質があり、研究の結果、一部のウィルスのHAに異変が発生している旨の報告したと報じている。 河岡義裕氏  筆者は疫学の専門家ではないので、「ネイチャー」(電子版)の原データにあたり、何が本質的な問題なのか疑問に思い調べてみたが、有料購読会員でないため、これは不可。  これにめげずに、少なくとも最近時の(1)新型インフルエンザA(H1N1)の起源と(2)ゲノム(ある生物をその生物たらしめるのに必須な遺伝情報。ゲノムのなかで生命活動を維持するための機能的な部品を規定しているところが遺伝子である)進化等、疫学面等に関する話題を整理したので簡単に紹介する。 1.わが国の最新情報  2009年6月16日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、638人(6月12日比+99人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。 2.WHOの最新発表情報  WHOの 公表感染者数(2009年6月15日世界標準時17時現在)(update49) のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(15か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)  (筆者注1)  全体の数字は76か国(6月12日比+2か国)、累計感染者数は35,928人(6月12日比+5,834人)(うち死者は163人(6月12日比+18人))  「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月12日比増加数(死者数)」の順に記載した。 ①米国:17,855人(内死者45人(+18人))(+4,638人)、②メキシコ:6,241人(内死者108人(+0人))(+0人)  (筆者注2) 、③カナダ:2,978人(内死者4人 (+0人) )(+0人)  (筆者注2)  、④オーストラリア:1,823人(+221人)、⑤チリ:1,694人(内死者2(+0))(+0人)   (筆者注2) 、⑥英国:1,22...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.5)

   世界保健機関(WHO)は6月11日、日本時間午後7時に開催された緊急委員会で「国際保健規則」の改定を議論し「フェーズ6」の引上げを決定した。   6月12日の本ブログ でも簡単に紹介したとおり、米国の米国疾病対策センター(CDC)は11日東部標準時間午後12時45分に緊急電話記者会見を行っている。  その中で気になったのは、①米国の感染者は予想より増加していることと、もう1点は②「インフルエンザH3ウイルス」の感染リスクについて具体的に言及していることである。その箇所について抜粋すると「インフルエンザH3ウイルスは、高齢者に影響する傾向があって、そこでしばしばかなりの重症を引き起こす。 同ウィルスに関しては、ワクチンという私たちのとって当然一般的予防策がないがゆえに、このウイルスの性格は季節性インフルエンザH1N1に似ていない。 それは「非常に新しいウイルス(very new virus)」である。 我々が報告を受けている事例の57%は5歳から24歳の人々に感染が起きている。そして、その同じ年齢層(年長の子供とヤングアダルト)では41%が入院している。また、人口10万あたりでみた入院率は実際に5歳未満の子供が最も高く、次に高い入院率は5歳から24歳の層である。」  一方、6月11日の朝日新聞はその特集記事で、今世界中に感染拡大しているウイルスは「伝統的ブタ由来インフルエンザH1N1」ではなく、1998年に検出された「3種混合H3N2」に「北米ブタ型H1N2」や「ユーラシアブタ型H1N1」が混合したウィルス(2009年H1N1)の可能性を米国や欧州の研究者等が指摘して点をあらためて紹介している。(筆者注1)  専門外の筆者としてはこれ以上言及しないが、CDCやECDC等のインフルエンザA(H1N1)の起源(possible origins)に関する研究結果等からみて、2009年春から急激に拡大した「新型インフルエンザAH1N1」の実体は「 H1N1 Influenza 2009 (Human Swine Flu) 」であり、そのルーツに「H3ウイルス」があるとすると、今後の展開は急速に入院を要する重症化事例の拡大や高齢者感染や死者数の増加が懸念される。また、すでに英国やわが国など主要国が製薬メーカーに依頼した新ワクチンの開発への影響等も気になる。(筆者注...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.4)

   6月9日の国立感染症研究所サイトでは「 新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況-更新10」 として「各国におけるサーベイランスの状況、軽症例における受診行動やサーベイランスにおける把握状況、あるいは対策の方針は国によって異なるため、その国内地域ごとの状況を正確に評価するのは容易ではない。・・・・・・発生が確認されている都府県は、16に上り、それぞれの地域によって感染伝播の状況は異なる。また、現在の日本の交通状況を考えれば、早晩他の地域に伝播していく可能性は高い。現在、国内では、一例の確定例もでていない地域、渡航者からの散発例の出ている地域、地域内での感染で散発例、あるいは集団発生の出ている地域、より広範な感染伝播が疑われる地域が存在する。・・・・6月9日午前9時現在まで、国内においては死亡例および気管内挿管による人工呼吸器管理などを要する重症例は報告されていない。しかしながら、今後患者数が増加していく場合、すなわち米国並の死亡率(0.2%)であれば500人ほど、カナダ並の死亡率(0.1%)であれば1000人ほどの患者発生がある場合、死亡例を含む重症例が発生する可能性があることに留意する必要がある。特に基礎疾患を有する者、妊婦、小児などが重症化しやすいとされており、これらに該当する新型インフルエンザ患者に対する注意が必要である。」と言う情報が流れた。  それを裏付けるように6月11日に発表された感染者数は、518人(検疫対象者(米国から帰国)2人を含む)、感染者が発生した都道府県数も19都府県となった。  一方、世界保健機関(WHO)では6月11日、日本時間午後7時に開催された緊急委員会で「国際保健規則」の改定が議論され「フェーズ6」 (筆者注1) への引上げが決定された。筆者は、この情報は12日(金)午前2時31分に米国連邦保健福祉省(HHS)経由で受信した。①WHOマーガレット・チャン事務局長の声明文の内容(動画やMP3フォーマットでも確認できる)、同時期に発表された②米国連邦保健福祉省(Health and Human Services:HHS)の疾病対策センター(CDC)科学・公衆衛生プログラム担当臨時副センター長(Interim Deputy Director for Science and Public Health Program)のア...

米国CDCが新型インフルエンザ流行時の23価肺炎菌多糖類ワクチン等の使用に関する暫定ガイダンスを公表

  Last Updated : March 5,2021  6月8日に厚生労働省は、新型インフルエンザA(H1N1)のワクチン製造に向け、国内のワクチンメーカー4社にウイルス株を送付したと発表した。ワクチン接種開始時期は本年秋以降である。  一方、北米やオーストラリアさらには欧州等でも感染拡大のペースは収まる傾向を見せていない。  その対処として米国における新ワクチン開発の取組み状況については本ブログでも取り上げたが、6月9日に米国疾病対策センター(CDC)は、死亡者の増加等への対応として、①65歳以上の高齢者全員、②2歳から64歳の慢性疾患患者、③喫煙中毒者、喘息の患者への投与により重病化や死亡を回避すべく緊急措置策として「23価肺炎球菌多糖類ワクチン(23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine:PPSV23)  (筆者注1) および「7価結合型ワクチン(7-valent pneumococcal conjugate vaccine :PCV7)」接種にかかる暫定ガイダンス 」を 公表 した。  わが国の国立感染症研究所等がいずれ本ガイダンスの訳文を公表するであろう。世界への影響力の高いCDCのガイダンスだけに関心が寄せられている段階で、出来るだけ早い情報提供を目的として専門外の筆者があえて仮訳した意図を理解いただきたい。当然であるが、わが国の疫学関係者などの正確なコメント等を期待したい。  なお、推奨本文を読まれて気がつくと思うが、米国の「国民免疫強化プログラム」の内容や国民に対する啓蒙情報の充実の内容はわが国の医療関係者だけでなく、広く国民も知るべきではないか。 1.策定の目的  各グループにわたる潜在的感染予備者に対し、新型インフルエンザA(H1N1)の流行の期間において、肺炎感染による重症化や死亡の予防のため予防接種に係る暫定ガイダンスを提供する。 2.策定の背景  インフルエンザは細菌性地域感染型肺炎(bacterial community-acquired pneumonia)にかかりやすくさせる。20世紀のインフルエンザの世界的流行時、続発性細菌性肺炎(secondary bacterial pneumonia)は疾病や死亡の重要な原因であるとともに、 連鎖球菌性肺炎(Strepto...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.3)

    6月6日の本ブログ でWHOの「フェーズ6」への引上げの決定は見送られた旨報告したが、世界の新型インフルエンザA(H1N1)の感染国や感染者数は確実に増加している。  わが国での感染者数は、新聞等で報道されている学校での感染事例や海外渡航者に感染事例が再度見られるなど予防策の強化はなお必須といえる。  今回のブログでは、①わが国の関係機関による感染者数の差の原因、②WHOの最新統計情報、③感染拡大情報の傾向を正確に読み取るためのグラフ化等の例を見ながら最新分析動向を検証してみる。  なお、筆者がWHOの世界統計から見て従来から疑問視していたことで WHOアフリカ事務所の公表データ ではアフリカ46か国の感染者数がゼロという点である。WHOの世界感染地図で確認したが6月9日時点でもエジプト1国のみである。 1.わが国の最新情報と公表値の疑問・改善希望  2009年6月8日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、432人(6月5日比+30人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。  わが国の感染者数統計の疑問や改善事項について言及しておく。 (1) 国立感染症研究所感染症情報センターの集計(6月8日) を見ると患者数(確定例:累計)238人(感染症法上の届出(国内発生例))および検疫対象者での発生例8人となっている。同センターの区分では「疑似症患者」は別集計(103人)されている。これらを合計(238+8+103=349)しても厚生労働省の上記公表数(WHOの公表値のベース)432人にはるかに及ばない。この不一致の原因は何なのか。基準が曖昧なのか統計方法がいいかげんなのか。同一画面で閲覧できるため疑問が残るし、基準の明確化が課題であろう。(筆者注) (2)厚生労働省は定期的新型インフルエンザ患者数(国内発生分・居住地別・男女別・年齢階層別を公表している。また、6月5日公表分からは発生日別感染動向グラフもあわせ公表している。後者のグラフ化についてはカナダの例で 6月3日の本ブログ で紹介したところであるが、前者についてもグラフ化が必要になっているのではないか。  なお、厚生労働省は6月8日付けで「新型インフルエンザ対策本部基本的対処方針(平成21年5月22日)等にお...

英国血友病患者800人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)感染問題

    世界中のメディアや国際機関が「新型インフルエンザA(H1N1)」で大騒ぎしている一方で、英国では本年2月以降 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD) (筆者注1) やHIV、C型肝炎(hepatitis C)のリスクを抱えた血漿製品(blood plasma)の注入放置の事実が大きな政治・社会問題となっている。  わが国の厚生労働省サイトの “vCJD”の説明 によると「プリオン病の中でも感染性プリオン病のひとつで、牛の海綿状脳症(BSE)との関係が指摘されているものです。1996年に英国において初めて“vCJD”の患者が報告されて以降、BSE感染牛が多く発生したヨーロッパ諸国を中心に169例(平成17年2月8日現在)が報告されています。その内イギリスが154例、フランスが9例となっており、ヨーロッパ以外のアメリカ、カナダで発生した症例については、英国の滞在歴があることがわかっています」とある。 (筆者注2)  英国の各メディアが5月20日に報道した内容は、汚染された血液製剤を受けた血友病(Haemophilia)  (筆者注3) 患者に関する 保健省政務次官(Lord Darzi) の議会での答弁が極めて消極的な内容であったり、犠牲者への不十分な対応を繰り返していたことを理由として国民健康保健サービス(NHS)委託専門家グループや血友病患者グループ等から強い反発を受けていたものである。  わが国の狂牛病問題(BSEは、TSE(伝達性海綿状脳症:Transmissible Spongiform Encephalopathy)という、未だ十分に解明されていない「異常プリオンタンパク」という伝達因子(病気を伝えるもの)と関係する病気のひとつで、牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病)については、厚生労働省や農林水産省の取組み (筆者注4) や関係国との協力に基づく努力が続けられているが、世界的に見れば狂牛病問題のリスクは依然十分に解決されていない重要な課題であることを忘れてはならない。 1.英国における最近のvCJDによる血友病患者の死者事例と凝固因子対策 (1)英国の国立クロイツフェルト・ヤコブ病監視機構(National CDJ Surveillance Unit)の調査結果では...

世界保健機関(WHO)第3回「国際保健規則」緊急委員会の開催結果等の動向

 6月5日に世界保健機関(WHO)は、世界的にみた新型インフルエンザの感染状況を踏まえ、WHOとして今後パンデミックフェーズ(フェーズ6)変更という重大性調査の導入提言について助言を求めることを目的として、第3回「国際保健規則(International Health Regulations:IHR)」 (筆者注1) 緊急委員会  (筆者注2) を開催した。今回のブログでは、その要旨を紹介するとともにWHOが新型インフルエンザのフェーズ変更に当り感染者の重症度評価を重視する点が明らかなったことから、今後の各国の検査・報告体制等に影響するであろう点を付言しておく。  また、同日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は6月3日、4日にスェーデンのストックホルムで「インフルエンザ疫学とウィルス学面の監視に関する専門家会議」を開催しており、併せて紹介する。 1.WHOの第3回「国際保健規則」緊急委員会の リリース内容  今後の同規則改正(フェーズ変更)の発表において、状況の判断に感染者の重症度に関する情報を含むことの重要性について幅広い合意が得られた。同委員会は多くの判断要素に関し多くの助言が出され、そのモニタリングが疫病の重症性の評価に関する情報提供することになるであろう。  同委員会の議論においてWHOマーガレット・チャン事務局長は、今世界は「フェーズ5」にあると断言するとともに、WHOは引続き新型インフルエンザA(H1N1)に関するすべての国とともに緊密に状況を監視することを再確認した。  委員会の助言に基づき、事務局長は現行の暫定奨励(Temporary Recommendations)につき、とりわけ次の点に留意の上、継続することが適切である旨決定した。 ①すべての国はインフルエンザに似た疾患(influenza–like illness)および重症肺炎(severe pneumonia)の監視を強化する。 ②各国は国境を閉鎖せずまた海外旅行を制限しない。このことは海外旅行の遅延で困っている人々や海外旅行後に医療面の配慮が必要な人々への良識ある行動であると考えるからである。 ③季節性インフルエンザのワクチン製造は現時点では感染の展開をにらみつつ再評価のうえ継続すべきである。 2.欧州疾病予防管理センター(ECDC)の「インフルエンザ疫学とウィルス学面の監視...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.2)

  米国疾病対策センター(CDC)は、新型インフルエンザA(H1N1)に関する各州からの新規感染確認件数報告を従来の毎日から 週1回に変更 したことに伴い、6月6日以降の公表については毎日から毎週金曜日東部時間午前11時に変更した。  なお、欧州疾病対策センター(European Center for Disease Prevention and Control:ECDC)は6月5日時点では、24時間前比の集計発表方法は変更していない。 1.わが国の最新情報  2009年6月5日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、410人(6月3日比+25人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト 「新型インフルエンザに関する報道発表資料」 で確認できる。 2.WHOの最新発表情報 WHOの公表感染者数(2009年6月5日世界標準時6時現在)(update44)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国のみ紹介する。(多い順に並べ替えた) 全体の数字は69か国(6月3日比+3か国)、累計感染者数は21,940人(6月3日比+2,667人)(うち死者は125人(6月3日比+8人)) 「国名」、「累計感染者数」、「6月3日比増加数」の順に記載した。(オーストラリアの拡大が止まらない。同国の 専門サイト では6月5日、17時現在で1,006人である。) ①米国:11,054人(内死者17人)(+1,001人)、②メキシコ:5,563人(内死者103人)(+536)、③カナダ:1,795人(+263人)、④オーストラリア:876人(+375人)、⑤英国:428人(+89人)、⑥日本:410人(+25人)、⑦チリ:369人(+56人)、⑧スペイン:218人(+38人)、⑨パナマ:173(+18人)、⑩アルゼンチン:147人(+16人) 〔参照URL〕 http://www.who.int/csr/don/2009_06_05/en/index.html http://www.ecdc.europa.eu/en/files/pdf/Health_topics/Situation_Report_090605_1700hrs.pdf *********************************************************...

米国の新型インフルエンザA(H1N1)の第二波への準備状況とワクチン開発の最新動向

  Last Updated :March 5,2021   5月30日の本ブログ で予告したが、5月27日の朝日新聞夕刊で紹介された米国連邦保健福祉省(Health and Human Services:HHS)の 疾病対策センター(CDC)科学・公衆衛生プログラム担当臨時副センター長(Interim Deputy Director for Science and Public Health Program) の アン・シュカット医学博士(Dr.Anne Schuchat) が5月26日に行った記者会見は電話記者会見(Press Telebriefing)であった。 (筆者注1)(筆者注2) Dr.Anne Schuchat  新聞記事に書かれている会見での博士の冒頭のコメントや各メディアとの質疑応答を原資料(transcript)に基づいて敷衍してみる。メキシコから世界46か国への急速な感染拡大が始まって約1か月がたち、米国は新型ウイルスの疫学面や坑ウイルス薬の検証・研究が進み2009年秋以降への準備のために、この8週間から10週間が第一トラックを走ることになる、また、これから南半球が本格的なインフルエンザ流行の季節になり、変異しつつある新型ウイルスへのヒトの抵抗力が試される時期に入る。2009年秋に向け季節性インフルエンザのピーク対策に加え、今までの感染の監視結果や研究室での試験結果等に基づく、新ワクチンの準備が政府・関係機関の当面の最大の焦点ということになる。 (筆者注3)  これらの取組むべき課題について、米国の動向を紹介するのが今回のブログの狙いである。  なお、米国では新ワクチンの研究・開発に関してはHHSが5月23日付けで、「新型インフルエンザA(H1N1)のワクチン開発」に関し “The Biomedical Advanced Research and Development Authority;生物医学先端研究開発局;BARDA” が取組んでおり、新ワクチンに関する大量生産準備の重要な段階に入る旨ならびに同計画に関する“Q&A”を公表している。  その内容および欧州疾病対策センター(ECDC)の新ワクチン研究・開発の動向きについても紹介する予定であるが、時間がないので機会を改める。  これに関し、わが国では国立感染症研究所等のサイ...