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海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.6)

 6月15日に、わが国のメディアが東京大学医科学研究所の河岡 義裕教授グループが英国科学専門雑誌「ネイチャー」(電子版)にインフルエンザ・ウイルスの表面に人間の細胞にとりつく役割をもつ「赤血球凝集素:へマグルチニン(hemagglutinin:HA)」というタンパク質があり、研究の結果、一部のウィルスのHAに異変が発生している旨の報告したと報じている。

河岡義裕氏

 筆者は疫学の専門家ではないので、「ネイチャー」(電子版)の原データにあたり、何が本質的な問題なのか疑問に思い調べてみたが、有料購読会員でないため、これは不可。
 これにめげずに、少なくとも最近時の(1)新型インフルエンザA(H1N1)の起源と(2)ゲノム(ある生物をその生物たらしめるのに必須な遺伝情報。ゲノムのなかで生命活動を維持するための機能的な部品を規定しているところが遺伝子である)進化等、疫学面等に関する話題を整理したので簡単に紹介する。

1.わが国の最新情報
 2009年6月16日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、638人(6月12日比+99人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。

2.WHOの最新発表情報
 WHOの公表感染者数(2009年6月15日世界標準時17時現在)(update49)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(15か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた) (筆者注1)

 全体の数字は76か国(6月12日比+2か国)、累計感染者数は35,928人(6月12日比+5,834人)(うち死者は163人(6月12日比+18人))

 「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月12日比増加数(死者数)」の順に記載した。
①米国:17,855人(内死者45人(+18人))(+4,638人)、②メキシコ:6,241人(内死者108人(+0人))(+0人) (筆者注2)、③カナダ:2,978人(内死者4人 (+0人) )(+0人) (筆者注2) 、④オーストラリア:1,823人(+221人)、⑤チリ:1,694人(内死者2(+0))(+0人)  (筆者注2)、⑥英国:1,226人(+404人) (筆者注3)、⑦日本:605人(+56人)、⑧スペイン:488人(+0人)、⑨アルゼンチン:343人(+0人)、⑩中華人民共和国:318人(+100人)、⑪パナマ:272人(+0人)、⑫ドイツ:170人(+75人)、⑬ガテマラ:119人(内死者1人)(+45人)、⑭イスラエル:117人(+49人)、⑮コスタリカ:104人(+0人)

3.新型インフルエンザをめぐる最新の研究・開発動向
 筆者は、あくまで専門外の人間なので割り引いて読んで欲しい。専門家による平易な解説が時間の経過に即して出てくることを期待していたが、未だに出てこないのでやむを得ず書いた次第である (筆者注4)。

(1)河岡教授の論文を読む前に必要な知識とは
 “HA”の定義はまずウィキペデイア(英文)で確認してイメージをつかもう。なお、河岡教授の論文が多数引用されている。
 なお、執筆時期は古くなるが、同教授が2001年に発表された「インフルエンザウイルス感染過程の解明とその応用」は素人でも分かりやすい内容と思える。

(2)新型インフルエンザA(H1N1)の起源に関する論文を読もう。
 数多くの論文あるが、具体的に筆者が推薦するのは次の3つである。
①「新型インフルエンザの起源:今行動を起こす時期である(Origins of the New Influenza A(H1N1)Virus:Time to take Action)」Eurosurveillance第14巻22号(2009年月4日号)(なお、同論文の要旨は本ブログのシリーズN0.5 (筆者注1)で紹介している。)
 筆者は、メキシコ国立自治大学医療ウィルス研究室、米国イリノイ大学ゲノム生物学研究所である。この論文中で「2009年A(H1N1)ヒト・インフルエンザ」に至るウィルスの変異履歴が図解されている。ウイルスがブタ、鳥、ヒトを媒介し世界中を回りながら時間を経て変異していることが一目である。
② 「新型インフルエンザA(H1N1)ウィルスの起源のクラスター分析(Cluster Analysis of the origins of New Influenza A(H1N1)virus)」Eurosurveillance第14巻21号(2009年5月28日号) 
 筆者は米国プリンストン大学物理学部、コロンビア大学感染・免疫センター、コロンビア大学生物医学情報学部・生命情報学および生命情報工学センター。
  新しいウィルス種の遺伝子を研究し、クラスター分析を用いて最も近い種を特定し論文である。新種のウィルスが異なるブタ・インフルエンザ・ウィルスの異なる遺伝子を結合することを明らかにした。
③「2009年ブタインフルエンザA(H1N1)の起源とゲノム進化(Origins and evolutionary genomics of the 2009 swine-origin H1N1 influenza A epidemic)」
 筆者は、香港大学リ・カ・シン医学研究室、エジンバラ大学進化生物学研究所、アリゾナ大学生態学・進化生物学部、オックスフォード大学動物学部。
なお、本論文の原文は日本語版「Nature」購読者しか閲覧できない(筆者は下書原稿を読んだ)。なお、要旨は「Nature 」アジア太平洋版サイトで読める。
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(筆者注1) 最近、海外の感染者数を毎日更新したり、上位10か国を公表しているサイトを発見した。しかしそのデータとWHOのデータや各国の政府機関が公表している数値と比較するとデータが古い。また、なぜ上位10か国なのかが疫学的に見て曖昧である(興味本位であってはならない)。

(筆者注2) カナダ公衆衛生庁(Public Health Agency of Canada)の公表では、6月15日現在の確認感染者数は4,049人(うち死者7人)(6月12日比+534人(うち死者+3人:ケベック州))である。また、同庁の公表データの最後にある毎日の新規感染者発生数グラフを見て欲しい。完全に右肩上がりである。なお、汎米保健機関(PAHO)は、確認感染者数を毎日更新している。6月12日のデータを見てもメキシコ、カナダ、チリの3か国はいずれもWHOの数字と同じで前日比+0であるが、カナダは上記のとおり増加している。その後のデータをみると、6月17日現在のデータは各国の最新情報と同期が取れてきている。メキシコ等WHOの公表値より新しい。

(筆者注3) 英国も感染者数が急増しており、毎日、健康保護局サイト(HPA)で更新している。6月12日921人(前日比+73人)、6月13日1,121人(+200人)、6月14日1,226人(+105人)、6月15日1,320人(+59人)といった推移を経ている。

(筆者注4 ) 筆者はスペイン語はほとんど読めないのであるが、メキシコの公衆衛生・疫学機関の関係サイトを横断した結果を見ての参考情報のみ記載しておく。
① 連邦衛生試験所(SALUD)の疾患衛生局(CENAVECE)サイト等が専門家向けの内容で、公衆衛生・感染問題全般を取り上げ、その中でInfluenza A(H1N1)を特集している。
②“SALUD” が取り上げるインフルエンザでは「鳥インフルエンザ(Influenza Aviar)」、「季節性インフルエンザ(Influenza Estacional)」、「インフルエンザ・パンデミック(Influenza Pandémica)」に大別しているが、やはりリスクの大きさから鳥インフルエンザにウエイトを置いている。
③“SALUD”は、また一般大衆向けに広報専用サイトを設けており、感染予防策などについてアニメ風の解説を行っている。
④政府の取組みとしては、大統領府に「infuluenza A(H1N1)」専用サイトを設けている。

〔参照URL〕
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/19.html
http://www.who.int/csr/don/2009_06_15/en/index.html

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