スキップしてメイン コンテンツに移動

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.5)

  世界保健機関(WHO)は6月11日、日本時間午後7時に開催された緊急委員会で「国際保健規則」の改定を議論し「フェーズ6」の引上げを決定した。

 6月12日の本ブログでも簡単に紹介したとおり、米国の米国疾病対策センター(CDC)は11日東部標準時間午後12時45分に緊急電話記者会見を行っている。
 その中で気になったのは、①米国の感染者は予想より増加していることと、もう1点は②「インフルエンザH3ウイルス」の感染リスクについて具体的に言及していることである。その箇所について抜粋すると「インフルエンザH3ウイルスは、高齢者に影響する傾向があって、そこでしばしばかなりの重症を引き起こす。 同ウィルスに関しては、ワクチンという私たちのとって当然一般的予防策がないがゆえに、このウイルスの性格は季節性インフルエンザH1N1に似ていない。 それは「非常に新しいウイルス(very new virus)」である。 我々が報告を受けている事例の57%は5歳から24歳の人々に感染が起きている。そして、その同じ年齢層(年長の子供とヤングアダルト)では41%が入院している。また、人口10万あたりでみた入院率は実際に5歳未満の子供が最も高く、次に高い入院率は5歳から24歳の層である。」
 一方、6月11日の朝日新聞はその特集記事で、今世界中に感染拡大しているウイルスは「伝統的ブタ由来インフルエンザH1N1」ではなく、1998年に検出された「3種混合H3N2」に「北米ブタ型H1N2」や「ユーラシアブタ型H1N1」が混合したウィルス(2009年H1N1)の可能性を米国や欧州の研究者等が指摘して点をあらためて紹介している。(筆者注1)
 専門外の筆者としてはこれ以上言及しないが、CDCやECDC等のインフルエンザA(H1N1)の起源(possible origins)に関する研究結果等からみて、2009年春から急激に拡大した「新型インフルエンザAH1N1」の実体は「 H1N1 Influenza 2009 (Human Swine Flu) 」であり、そのルーツに「H3ウイルス」があるとすると、今後の展開は急速に入院を要する重症化事例の拡大や高齢者感染や死者数の増加が懸念される。また、すでに英国やわが国など主要国が製薬メーカーに依頼した新ワクチンの開発への影響等も気になる。(筆者注2)

1.わが国の最新情報
 2009年6月12日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、549人(6月5日比+147人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。

2.WHOの最新発表情報
 WHOの公表感染者数(2009年6月12日世界標準時7時現在)(update48)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(12か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)

 全体の数字は74か国(6月11日比+0か国)、累計感染者数は29,669人(6月11日比+895人)(うち死者は145人(6月11日比+1人))

 「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月11日比増加数(死者数)」の順に記載した。(WHOの集計が今回は前日比のため必ずしも各国の最新情報を反映していない)
①米国:13,217人(内死者27人(+10人))(+0人)(6月12日のCDCの公表数は後記のとおりである)、②メキシコ:6,241人(内死者108人(+2人))(+0人)、③カナダ:2,978人(内死者4人)(+532人) 、④チリ:1,694人(内死者2(+0人))(+0人)、⑤オーストラリア:1,307人(+83人)、⑥英国:822人(+0人)、⑦日本:549人(+31人)、⑧スペイン:488人(+131人)、⑨アルゼンチン:343人(+87人)、⑩パナマ:221(+0人)、⑪中華人民共和国:188人(+14人)、⑫コスタリカ:104人(+0人)

3.米国の最新発表情報
 米国CDCは毎週金曜日に各州からの集計結果を公表している。
6月12日東部標準時間11時現在の数字は次のとおりである。
52州(6月5日比+0人)、確認感染者数17,855人(6月5日比+4,638人)、内死者45人(6月5日比+18人)である。
1,000人以上の感染者数の6州は次のとおり。
 ・ウィスコン州:3,008人(死者1人)
 ・テキサス州:2,049人(3人)
 ・イリノイ州:1,983人(5人)
 ・ニューヨーク州:1,160人(13人)
 ・カリフォルニア州:1,094人(6人)
 ・マサチューセッツ州:1,078人(0人)

*******************************************************************************************************:

(筆者注1) 朝日新聞の記事は元なる研究者の資料名はなく「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メデイア(NEJM)などから作成」としか記述がない。筆者が独自に米国NEJMのサイトを調べてみたが、NEJMはセキュリティ上問題があるサイトのようである。
 また、EUの感染症監視機関である「欧州疾病予防管理センター( The European Centre of Disease Prevention and Control:ECDC)」が発表した6月4日号“Eurosurveillance”の論文は、(1)400以上の系統のタンパク質相同性解析(protein homology analyses:複数のタンパク質の間に存在する類似性を検出をする解析の一種)結果に基づき、新型インフルエンザが最近時のブタ・インフルエンザから進化していること、(2)5,214のタンパク質の系統発生解析(phylogenetic analyses)結果として、1989年から2009年までの20年間に北米で変異を繰り返してきた際、新型インフルエンザの進化的特徴として、ブタが変異の介在役つまり「鳥、ブタ、人の3種混合ウィルスの混合容器」として機能してきた点を改めて論じている。

(筆者注2) 6月12日、米国ヴォイス・オブ・アメリカは30か国以上の政府がスイスの製薬メーカーNovartisにブタ・インフルエンザ・ワクチンを発注した旨報じている。2009.6.15のCDC Weekly Updates がVOA記事を引用しているが、記事の元は削除されている。


〔参照URL〕
http://www.who.int/csr/don/2009_06_12/en/index.html
http://www.cdc.gov/h1n1flu/update.htm
http://www.eurosurveillance.org/public/public_pdf/Origins_influenza_A(H1N1)virus_04062009_Supplementary_material.pdf

*************************************************************************************************

Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 






コメント

このブログの人気の投稿

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

     米国の 商品先物取引委員会(CFTC) は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住の ラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri) と彼が所有するオハイオ州に本拠を置く NBD Eidetic Capital, LLC および SR Private Equity, LLC に対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に 民事法執行訴訟 を起こしたと 発表 した。   同訴状 は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。  さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している 救済被告 (注1) として起訴している。  今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。 1. 起訴の内容  CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および 「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」 および 「CFTC規則(CFTC regulations)」 のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。 2.本事件の背景  訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...

「ドイツ連邦議会のスパイェアによる通信傍受合法化法の可決と連邦憲法裁判所の動き」(その3完)

  2.連邦議会は、刑事訴訟法上で予告なしに容疑者間の電子通信内容のスパイウェアによる傍受やデバイスのメモリーの捜査を可能とする法案を可決 (1) 連邦議会の公式文書 ”Bundestag gibt Strafermittlern neue Instrumente in die Hand” を以下、 仮訳 する。なお、この議会サイトでは動画での質疑応答が閲覧可である。自信がある読者はチャレンジされたい。  (注6)   ○ 連邦議会が可決した犯罪捜査の新しいツールは、容疑者間の暗号化した電子通信内容を傍受するとともに予告通知なしに容疑者のコンピュータのメモリー内の情報を捜査できるとするものである。2017年6月22日、法案委員会は議会の「左翼派(Linke)」と「同盟90緑の党(Bündnis 90/Die Grünen)」の反対にもかかわらず、これらの法案を採択した。連立与党は、スパイ・ソフトウェア使用法案の承認を決定するために、2つの法案可決につき連邦政府の助言を使用した。   この2つの法案とは、  「捜査実務面の効率化と刑事訴訟手続の効率化の実現に関する法案(18/11277) 、  「刑法、少年裁判所法、刑事訴訟法およびその他の関連法律の改正に関する法案 (18/11272) である。  法律委員会(議会総会の決議案が採択した決議に続き18/ 12785 ) は、前者で第二のような法案の条項を挿入し、いわゆる「合法的傍聴による通信監視(Quellen-TKÜ)」と「オンライン捜査 (Online-Durchsuchung)」の法的根拠としてこの法則を拡張した。  ○暗号化の克服  アカウントへのスパイウェアのための使用許可と犯罪者が増え暗号化されたメッセンジャーサービスを介して通信していることを確認するために手段が取られるべきである。 データが暗号化する前にソースでTKU対象メッセージは、すでに送信者のコンピュータにとりこまれている。オンライン捜査(Online -Durchsuchung)は、犯罪の手がかりのために容疑者...