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世界保健機関(WHO)第3回「国際保健規則」緊急委員会の開催結果等の動向

 6月5日に世界保健機関(WHO)は、世界的にみた新型インフルエンザの感染状況を踏まえ、WHOとして今後パンデミックフェーズ(フェーズ6)変更という重大性調査の導入提言について助言を求めることを目的として、第3回「国際保健規則(International Health Regulations:IHR)」(筆者注1)緊急委員会 (筆者注2)を開催した。今回のブログでは、その要旨を紹介するとともにWHOが新型インフルエンザのフェーズ変更に当り感染者の重症度評価を重視する点が明らかなったことから、今後の各国の検査・報告体制等に影響するであろう点を付言しておく。
 また、同日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は6月3日、4日にスェーデンのストックホルムで「インフルエンザ疫学とウィルス学面の監視に関する専門家会議」を開催しており、併せて紹介する。

1.WHOの第3回「国際保健規則」緊急委員会のリリース内容
 今後の同規則改正(フェーズ変更)の発表において、状況の判断に感染者の重症度に関する情報を含むことの重要性について幅広い合意が得られた。同委員会は多くの判断要素に関し多くの助言が出され、そのモニタリングが疫病の重症性の評価に関する情報提供することになるであろう。
 同委員会の議論においてWHOマーガレット・チャン事務局長は、今世界は「フェーズ5」にあると断言するとともに、WHOは引続き新型インフルエンザA(H1N1)に関するすべての国とともに緊密に状況を監視することを再確認した。
 委員会の助言に基づき、事務局長は現行の暫定奨励(Temporary Recommendations)につき、とりわけ次の点に留意の上、継続することが適切である旨決定した。
①すべての国はインフルエンザに似た疾患(influenza–like illness)および重症肺炎(severe pneumonia)の監視を強化する。
②各国は国境を閉鎖せずまた海外旅行を制限しない。このことは海外旅行の遅延で困っている人々や海外旅行後に医療面の配慮が必要な人々への良識ある行動であると考えるからである。
③季節性インフルエンザのワクチン製造は現時点では感染の展開をにらみつつ再評価のうえ継続すべきである。

2.欧州疾病予防管理センター(ECDC)の「インフルエンザ疫学とウィルス学面の監視に関する専門家会議」の要旨 
 ECDCは、季節性インフルエンザ(seasonal influenza )および新型インフルエンザA(H1N1)の疫学的(epidemiological)およびウィルス学的(virological)監視のあり方について討議するためEUおよびEEA(欧州経済地域)の全加盟国の疫学およびウィルス学のインフルエンザ専門家による会合を行った。
 ECDCによる調整の下で行われた初めてのインフルエンザ監視の実践経験を踏まえた討議および欧州感染症監視システム機関(TESSy)(筆者注3)によるITインフラを活用した感染報告へ差し迫った移行問題について有意義な公開討議が行われた。
 「米国CDCアトランタ」および「WHO欧州」の専門家から主にインフルエンザA(H1N1)の感染状況の報告が行われた一方で、「ヒトインフルエンザ共同委託研究所地域ネットワーク(the Community Network of Reference Laboratories for Human influenza :CNRL) (筆者注4)では季節性インフルエンザとの比較において新型インフルエンザにおけるウィルス試験に関する研究室の準備、課題および解決すべき解決策等について討議が行われた。また、通常の監視に加え使用できるいくつかの革新的な検査情報源も提示され、議論された。
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(筆者注1)「国際保健規則(IHR)」は、感染症等の国際的な健康危機に対応するためのWHOの規則。「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と認定されると、事務局長はWHO加盟国に対し、国際保健規則の規定に基づく保健上の措置や国際交通等についての必要な勧告を行うことができる。

(筆者注2)参考までに言うとWHOのフェーズ改正(国際保健規則の改正)は2009年4月27日に「3」から「4」、4月29日に「4」から「5」に引上げている。

(筆者注3) ECDC は、2007年に感染症に関する欧州レベルでのインジケータベースのサーベイランスのための情報システムである“The European Surveillance System (TESSy)”を創設した。“TESSy”はサーベイランスデータの収集、評価、保管および提供の向上に役立ち、加盟国は感染症患者の通常のサーベイランスのための共通のデータセットの収集に、すでにこれを使用している。“TESSy” により次のことが可能となる。
・感染症サーベイランスに関するデータ収集の標準化
・加盟国のデータ報告および提供の一本化
・サーベイランスデータにもとづく基本的報告内容の標準化
・EU の現状について、一貫性のある容易に把握できる概要の提供
(国立医薬品食品衛生研究所「食品安全情報 No. 17 / 2008 (2008. 08.13)」より引用)

(筆者注4)“CNRL”の機能の概要につき説明しておく。
 欧州インフルエンザ監視計画(European Influenza Surveillance Scheme:EISS は、インフルエンザの能動的臨床およびウイルス学的検査によってヨーロッパ域でのインフルエンザが原因となった患者や死者の発生を減少させるのに寄与することを目的とした、プライマリーケア臨床医、疫学者およびウイルス研究者の協力ネットワークであり、7か国で始めた1996年以来活動を続けている。EISSは現在「欧州疾病予防センター(ECDC)」、欧州委員会および各国政府や産業界によって資金提供され、EU加盟28国ほか3か国が参加している。WHOにより承認されている合計で38の研究所(24か国)である各国インフルエンザセンター(NIC)および現在NICのない3か国(ノルウェー、ルーマニア、スイス)のインフルエンザ委託検査機関3か所がある。これらの検査機関はEISS内では2003年以来ヨーロッパでのヒトインフルエンザ委託検査機関の域内ネットワーク(CNRL)として機能している。各国のインフルエンザ委託検査機関(the National Influenza Reference Laboratories :NIRL)は定点観察臨床医や非定点情報源(例、病院や非NIRL検査機関)によって収集された呼吸器献体からのウイルス検出や同定データをEISSに報告し、ウイルス学的監視改善活動を行っている。後者には抗ウイルス薬耐性監視が含まれる。
(厚生労働省検疫所「公式情報トピックス(2007年)」より抜粋、一部EISS資料に基づき修正加筆。)
 ちなみにWHOが認めている日本の“NIC” は、「国立感染症研究所・村山分室」である。

なお、CNRLは2008年9月1日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)に移管されるとともに、このネットワークは、European Influenza Surveillance Network(EISN)に改称され、さらに2013年6月、CNRLはヒトインフルエンザの欧州参照研究所ネットワーク(ERLI-Net)に改名された。

ERLI-Netの主な目的は、ヒトインフルエンザのウイルス学的監視を実施し、データが欧州インフルエンザ監視ネットワーク(EISN)の報告メカニズムを通じてタイムリーに共有されるようにすることである。 ERLI-Netは、すべてのEU加盟国と2つのEEA諸国(ノルウェーとアイスランド)の研究所から指名された専門家代表で構成されている。。 ERLI-Netは、欧州インフルエンザ監視スキーム(EISS)に参加している全国的なインフルエンザ参照研究所のネットワークを形式化するために2003年に設立されたヨーロッパのヒトインフルエンザ参照研究所のコミュニティネットワーク(CNRL)にルーツがあります。 2008年9月1日から、インフルエンザ監視活動の調整は欧州疾病予防管理センター(ECDC)に移管された。 ECDCは、ERLI-Netに関連するすべての活動を調整する。これには、インフルエンザウイルスの中央特性評価、外部品質評価(EQA)、ネットワークメンバー向けのウェットラボとオンライントレーニング、ヨーロッパでのインフルエンザ関連の死亡率の監視など、外部の請負業者によって提供される活動が含まれる。(ECDCサイト解説仮訳)

〔参照URL〕
http://www.who.int/csr/disease/swineflu/3rd_meeting_ihr/en/index.html
http://ecdc.europa.eu/en/health_content/Articles/article_20090605.aspx

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