スキップしてメイン コンテンツに移動

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.3)

  6月6日の本ブログでWHOの「フェーズ6」への引上げの決定は見送られた旨報告したが、世界の新型インフルエンザA(H1N1)の感染国や感染者数は確実に増加している。

 わが国での感染者数は、新聞等で報道されている学校での感染事例や海外渡航者に感染事例が再度見られるなど予防策の強化はなお必須といえる。
 今回のブログでは、①わが国の関係機関による感染者数の差の原因、②WHOの最新統計情報、③感染拡大情報の傾向を正確に読み取るためのグラフ化等の例を見ながら最新分析動向を検証してみる。
 なお、筆者がWHOの世界統計から見て従来から疑問視していたことでWHOアフリカ事務所の公表データではアフリカ46か国の感染者数がゼロという点である。WHOの世界感染地図で確認したが6月9日時点でもエジプト1国のみである。

1.わが国の最新情報と公表値の疑問・改善希望
 2009年6月8日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、432人(6月5日比+30人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。
 わが国の感染者数統計の疑問や改善事項について言及しておく。
(1)国立感染症研究所感染症情報センターの集計(6月8日)を見ると患者数(確定例:累計)238人(感染症法上の届出(国内発生例))および検疫対象者での発生例8人となっている。同センターの区分では「疑似症患者」は別集計(103人)されている。これらを合計(238+8+103=349)しても厚生労働省の上記公表数(WHOの公表値のベース)432人にはるかに及ばない。この不一致の原因は何なのか。基準が曖昧なのか統計方法がいいかげんなのか。同一画面で閲覧できるため疑問が残るし、基準の明確化が課題であろう。(筆者注)

(2)厚生労働省は定期的新型インフルエンザ患者数(国内発生分・居住地別・男女別・年齢階層別を公表している。また、6月5日公表分からは発生日別感染動向グラフもあわせ公表している。後者のグラフ化についてはカナダの例で6月3日の本ブログで紹介したところであるが、前者についてもグラフ化が必要になっているのではないか。

 なお、厚生労働省は6月8日付けで「新型インフルエンザ対策本部基本的対処方針(平成21年5月22日)等における「患者や濃厚接触者が活動した地域等」について【更新 第2報】」公表している。当該地域とは、(1)感染拡大防止地域(主に感染拡大防止に取り組んでいる地域):福岡県福岡市(板付中学校区に限る。)、(2) 重症化防止重点地域(主に重症化の防止に重点を置いて取り組んでいる地域):大阪府(大阪府、大阪市、高槻市、東大阪市の各保健所所管地域)といった内容である。

2.WHOの最新発表情報
 WHOの公表感染者数(2009年6月8日世界標準時6時現在)(update45)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(11か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)
 全体の数字は69か国(6月5日比+4か国)、累計感染者数は25,228人(6月5日比+3,288人)(うち死者は139人(6月5日比+14人))

「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月5日比増加数(死者数)」の順に記載した。(北米、オーストラリアの拡大が止まらない。オーストラリアの専門サイトでは6月9日、15時現在で1,211人である。クイーンズランド州の保育園があらたに1週間閉鎖を決定している)
①米国:13,217人(内死者27人(+10人))(+2,163人)、②メキシコ:5,717人(内死者106人(+3人))(+154人)、③カナダ:2,115人(+320人)、④オーストラリア:1,051人(+175人)、⑤英国:557人(+129人)、⑥チリ:411人(+42人)、⑦日本:410人(+0人)、⑧スペイン:291人(+73人)、⑨アルゼンチン:202人(+55人)、⑩パナマ:179(+6人)、⑪中華人民共和国:108人(+19人)

(筆者注)感染症情報センターの公表サイトを過去さかのぼって調べてみた。5月19日の公表から2種類の統計値を併記する方式に変えている。改めて見ていかにもおかしいし、データの信頼性に疑問がわく。

〔参照URL〕
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou.html
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/case-j-2009/090608case.html
http://www.who.int/csr/don/2009_06_08/en/index.html

*******************************************************************************************
Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 


コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...