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海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.4)

  6月9日の国立感染症研究所サイトでは「新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況-更新10」として「各国におけるサーベイランスの状況、軽症例における受診行動やサーベイランスにおける把握状況、あるいは対策の方針は国によって異なるため、その国内地域ごとの状況を正確に評価するのは容易ではない。・・・・・・発生が確認されている都府県は、16に上り、それぞれの地域によって感染伝播の状況は異なる。また、現在の日本の交通状況を考えれば、早晩他の地域に伝播していく可能性は高い。現在、国内では、一例の確定例もでていない地域、渡航者からの散発例の出ている地域、地域内での感染で散発例、あるいは集団発生の出ている地域、より広範な感染伝播が疑われる地域が存在する。・・・・6月9日午前9時現在まで、国内においては死亡例および気管内挿管による人工呼吸器管理などを要する重症例は報告されていない。しかしながら、今後患者数が増加していく場合、すなわち米国並の死亡率(0.2%)であれば500人ほど、カナダ並の死亡率(0.1%)であれば1000人ほどの患者発生がある場合、死亡例を含む重症例が発生する可能性があることに留意する必要がある。特に基礎疾患を有する者、妊婦、小児などが重症化しやすいとされており、これらに該当する新型インフルエンザ患者に対する注意が必要である。」と言う情報が流れた。

 それを裏付けるように6月11日に発表された感染者数は、518人(検疫対象者(米国から帰国)2人を含む)、感染者が発生した都道府県数も19都府県となった。
 一方、世界保健機関(WHO)では6月11日、日本時間午後7時に開催された緊急委員会で「国際保健規則」の改定が議論され「フェーズ6」(筆者注1)への引上げが決定された。筆者は、この情報は12日(金)午前2時31分に米国連邦保健福祉省(HHS)経由で受信した。①WHOマーガレット・チャン事務局長の声明文の内容(動画やMP3フォーマットでも確認できる)、同時期に発表された②米国連邦保健福祉省(Health and Human Services:HHS)の疾病対策センター(CDC)科学・公衆衛生プログラム担当臨時副センター長(Interim Deputy Director for Science and Public Health Program)のアン・シュカット博士(Dr.Anne Schuchat)等やHHSおよび国土安全保障省(DHS)の両長官による共同声明等の内容については、本ブログで順次報告する予定である。
 いずれにしても世界的大流行である「フェーズ6」下での監視強化と、同時に疫学的 (筆者注2)、ワクチン学的側面からの更なる研究・開発が喫緊の課題となったことは間違いない。

1.わが国の最新情報
2009年6月11日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、518人(6月5日比+116人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。

2.WHOの最新発表情報
 WHOの公表感染者数(2009年6月11日世界標準時14時現在)(update47)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(12か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)
 全体の数字は74か国(6月10日比+0か国)、累計感染者数は28,774人(6月10日比+1,037人)(うち死者は144人(6月10日比+3人))

 「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月10日比増加数(死者数)」の順に記載した。(北米3か国、オーストラリアの拡大が止まらない。特に世界中が関心を寄せているオーストラリアのビクトリア州1州の感染者数が1,011人の原因について疫病関係者が注目している)

①米国:13,217人(内死者27人(+10人))(+0人) (筆者注3)、②メキシコ:6,241人(内死者108人(+2人))(+524人)、③カナダ:2,446人(+0人) (筆者注4)、④チリ:1,694人(内死者2(+0))(+0人)、⑤オーストラリア:1,307人(+83人)、⑥英国:822人(+156人)、⑦日本:518人(+33人)、⑧スペイン:357人(+26人)、⑨アルゼンチン:256人(+21人)、⑩ パナマ:221(+0人)、⑪中華人民共和国:174人(+32人)、⑫コスタリカ:104人(+11人)
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(筆者注1) WHOは「フェーズ6」への引上げにあわせ、 「フェーズ6に関するQ&A」を改訂している。

(筆者注2) WHOの声明やオーストラリアのビクトリア州のサイト等を参考とすると、わが国の関係機関で使用されている「ブタ由来インフルエンザ」と言う曖昧な表現でなく、「 H1N1 Influenza 2009 (Human Swine Flu) 」と言う表現が現時点では適切ではないか。

(筆者注3) 米国疾病対策センター(CDC)は、6月5日から各州からの報告に基づく毎週金曜日1回のみの公表に切り替えた関係でWHOの数字も更新されていない。なお、個別州の保健機関のデータを調べてみたが、例えばマサチューセッツ州で見ると6月10日現在で1,076人(6月9日比+66人)であり、米国の感染拡大は続いている。正確な数字は日本時間6月13日未明に公表される。

(筆者注4) カナダの公衆衛生庁(PHAC)サイトで見ると、6月10日現在の感染者数は2,978人(6月8日比+533人)である。

〔参照URL〕
http://www.who.int/csr/don/2009_06_11/en/index.html
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/case-j-2009/090611case.html
http://www.mass.gov/Eeohhs2/docs/dph/cdc/flu/swine_flu_confirmed_case_count.rtf

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