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11月, 2010の投稿を表示しています

米国刑務所独房服役中の元ロシア・スパイ被告が息子を使いスパイ活動見返り金要求裁判で有罪答弁(その2完)

  (4)ニコルソンのCIAでの任務と刑事告訴の具体的な内容 ①ニコルソンは16年間CIAに勤務し、機密取扱資格(セキュリティ・クリアランス)における「最高機密(Top Secret)」および「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果(Sensitive Compartmentalized Information:SCI)」資格を有していた。 (筆者注6)  被告は、仮に無権限アクアセスして開示したときは米国の国家安全に対する修復不可能な損失を生じさせたり、外国国家に有利な情報を与えるという高いレベルの情報を保持していた。被告はこの点に関し無権限開示は犯罪行為であり、不適切に秘密指定情報の開示を絶対に行わない旨誓約・同意していた。 ②告訴状では次の違法行為を具体化した。 ・1995年10月1日前後、被告は定期的なセキュリティ検査としてCIAが管理する嘘発見器による一連の検査(polygraph examinations)を受けた。これの検査の分析では、外国謀報機関との無権限の接触についての未解決の問題が起きた。 ・CIAの記録分析により、被告の個人旅行の解析と預金の入手金を見る限り、説明がつかない金融取引後に外国への旅行するパターンが見られた。 ・マレーシアのクアラルンプール勤務時、被告はロシアの謀報機関(Rissian intelligence service:SVRR)との接触が認められていた。1994年6月30日、被告が最後の接触時の1日後、金融残高記録をみると被告は米国の取引銀行の貯蓄口座に12,000ドル(約984,000円)を送金しているが、その根拠となる合法的な資金源は見出しえなかった。 ・1994年12月、被告は個人旅行でロンドン、ニューデリー、バンコクおよびクラルンプールにアメリカから出かけている。クアラルンプールにいた時、貯蓄口座に9,000ドル(約74万円)を振り込み、またクレジットカード口座に6,000ドル(約49万円)を入金した。帰国後被告は100ドル札130枚を使って債務を返済したが、これらの資金の合法的な資金源は見出し得なかった。 ・1995年6月、7月、被告は年次休暇を使って再度クアラルンプールに旅行したが、その時および直後に合計23815.21ドル(約195万3千円)の金融取引を行った。しかし、これらの資金の合法的な資金源...

米国刑務所独房服役中の元ロシア・スパイ被告が息子を使いスパイ活動見返り金要求裁判で有罪答弁(その1)

    11月8日、米国連邦司法省(DOJ)とFBIはスパイ映画でもありえないようなプレス・リリースを行った。  内容は、標題のとおりであるが、この裁判の被告ハロルド・ジェームズ・ニコルソン(Harold James Nicholson,1950年生れ)は元ベテランCIA上級職員でDOJいわく米国内でスパイ活動で有罪判決を受けた最も高いランクの1人である。 Harold James Nicolson被告  これが事実であるならば、米国の刑務所内での収監者の情報・行動管理とりわけ国家反逆罪( 米国連邦現行法律集U.S.C.第18編パートⅠ章第794条  (筆者注1) の有罪受刑者の管理はいったいどうなっているのであろうか疑いたくなってくる。(794条(c)項が「共謀罪」規定である)  しかし、事実関係はもっと泥臭いもののようである。  簡単に言うと、離婚後自分を育ててくれた父を最も尊敬する息子がアルバイト先であるピザ・ハットのパートとしてピザを届けるため父親のいる刑務所に出入りし、面会所で渡された父親のテッシュやキャンディー包み紙に走り書きしたメモを届けるためにキプロス、ペルー等を廻りロシア連邦の謀報員に会い札束を受け取っていたというものである。  新たなスパイ活動は行っていた事実はなく、過去においてロシアに提供した美防諜情報の対価を「年金」としたロシアに要求したこと等を検察も起訴にあたりその点は配慮したようである。  オレゴン連邦裁判所のアンナ・ブラウン判事は、本件における検察とニコルソンとが取り決めた「司法取引」に応じたとすれば既存の刑罰(拘禁刑)に8年追加するのみということになろう。すなわちニコルソンは外国政府のためのスパイ行為およびマーネー・ローンダリングの既遂に関する訴因各1つを認め、一方その交換条件として連邦検事は2009年の告訴時の5つの重罪(felony charges)にかかる訴因を破棄することに同意した。  同リリースに関するコメント数等を見る限り、この問題に関する米国民の反応は今一弱いようであるが、事実関係を1996年の起訴や裁判までさかのぼって本スパイ裁判の経緯と今回の有罪答弁から得られた事実関係のみとりあえず紹介する。  なお、過去・現在において米国のCIAやFBI等の職員が外国謀報機関から金銭等を対価に国防の機密情報を提供...

米国SECやFDICが「ドッド・フランク法」等を背景としたよる役員報酬の規制強化解釈ガイダンス(案)等を提示

    本ブログでは、 2009年9月12日付け で政府からの不良資産救済プログラム(TARP)に基づく資本注入を受けている金融機関の役員報酬規制強化に関する連邦財務省の暫定規則やガイドランの内容を詳しく紹介した。   また、本年7月21日に成立した「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:H.R.4173)(以下、「ドッド・フランク法」)」の主要な改革のポイント事項について 解説 してきた。  ドッド・フランク法は本ブログでも解説してきたとおり、米国の銀行、証券、保険、金融先物等の金融監督面での影響が極めて大きくまた条文数も多い法律であるが、連邦監督規制機関 ( 筆者注1) はこれを受けた規則案や金融機関における具体的対応に資するためのガイダンスの策定が進んでいる。  筆者は、この膨大な条文にわたる法律の内容についてまとまった解説を行うべく準備は進めているが、何にせ関係する金融監督機関が個々に対応をとっており、また同法は上院・下院の多くの関係法案との調整結果を踏まえて1本化されたものであり、内容的な批判を含めた包括的な資料は極めて少ないことから、さらに時間がかかると思われる。  (筆者注2) (筆者注3)  そのような状況下で最近時、アメリカ銀行協会(American Bankers Association:ABA)が 「ドッド・フランク法の本格実施に向けた銀行員のための重要テーマに関する施策」 と題するウェブサイトを立ち上げた。  その中では、「預金保険」、「消費者金融保護局(BCFP)」、「OCCとOTSの併合」、「FRBの金融監督機能」、「新たな貯蓄組合規則」、「不動産抵当ローン市場」、「デビットカード処理における適切な手数料への置き換え等に関する規則の策定」、「証券、スワップデータならびにその金融派生商品の適正化ルール」、「役員や従業員の報酬の公開性」、金融システム全体とした監督制度改革問題である「金融安定化監督委員会(FSOC)」、「システミックな監督体制」、「金融調査局創設」等があげられている。  ABAは金融実務面からこれらの個々のテーマにつき金融界への最新の情報提供や連邦議会対策サミット (...

米国国防総省が緊急対応した“Don’t Ask,Don’t Tell Act”差止命令と連邦憲法上の諸問題(その1)

  Last Updated:February 20,202   筆者の手元に2010年10月12日にDODから初めは意味不明の プレス・リース が届いた。 「1993年 同性愛公言禁止法(Don’t Ask,Don’t Tell ACT)(DADT)」 (筆者注1) に対するカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所判決(判事:バージニア・A・フィリップ(Virginia A.Phillips))による連邦憲法違反判決および国防総省による同法執行の恒久的差止命令(injunction order)への対応に関するリリースである。米国など外交・軍事等海外通の読者であればある程度その意味が分かろう。 Virginia A. Phillips判事  その後、DODは連邦司法省等との協議を進め、10月15日には先の地裁判決に対し控訴の検討を行う一方で、12日の判決は遵守する旨を 発表 した。  今回のブログは、米国オバマ政権の公約の1つである同性愛者やレスビアンと軍隊の問題であり、連邦議会をも巻き込んだ大きな社会問題となっているこの問題を取り上げる。  筆者は両分野につき専門家ではないし、コメントできる立場にはない。  しかし、国家機能とりわけ国防機能に関する問題となると話は別である。とりわけ“Don’t Ask,Don’t Tell ACT”そのものについて正確な理解と経緯、米国社会が現実にかかえる影の部分に正確に焦点を当てて検討すべき問題点を整理したいと考えた。  米国の大学を含め関係機関の情報を独自に調べて見た。とりわけ同法の人権上や憲法上の問題については制定当初から米国の人権擁護団体だけでなくロー・スクールや大学におけるDODの大学内でのリクルート活動とスカラーシップに関する「人を金でつる問題(Solomon Amendment)」   (筆者注2) に対する大学・研究機関の自治に関するフォーラム(Forum for Academic and Institutional Rights:FAIR)  (筆者注3) 等も問題視している点も明らかとなった。  特に、筆者が関心を持ったのはジョージ・タウン大学ロー・スクールの抗議グループ “SolomonResponse .Org” のサイトである。 (筆者注4)  大学の自治問題はわが国で...

米国財務省が中心となる大統領金融市場作業部会が「テロリスク保険の拡大」等についてコメントを求める

   2006年2月28日に、大統領金融市場作業部会(President’s Working Group on financial Markets ) (注)  座長である財務省は標記コメントについて9月30日までに取りまとめ、連邦議会に報告する旨「連邦官報」に公表したとの リリース を行った。その内容は、①グループ保険、②化学、核、生物学や放射線などを使用したテロへの補償保険として、長期間の有用性および企業の購入可能性等について45日間の関係者からのコメントに付すものである。  米国は2005年12月22日に 「テロリスク保険拡大法(President’s Working Group on financial Markets 以下、TRIA)」  (注) を制定し、同法に基づき全米保険監督官協会(National Association of. Insurance Commissioners: NAIC )は、12月28日に各保険会社に対し、TRIAについての最近の拡大に関する法的要件の理解を支援するためのガイダンスとして2種類の「モデル公告」と提供した。  また、財務省は12月29日に 「TRIAに関する暫定解釈ガイダンス(Interim Guidance Concerning the Terrorism Risk Insurance Extension Act of 2005)」 通知を行っている。  同公告は、州の保険監督機関がテロ活動から米国企業を守るために有効と認めるための保険料率の届出内容(rate filing)および契約文言(policy language)について説明するとともにTRIAの内容について解説している。  また、TRIAは2006年1月1日付けで施行されたが、1月26日にテロ保険適用作業部会(Terrorism Insurance Implementation Working Group)は保険会社が作成する2種類の「モデル開示様式」を採択・公表した。各保険会社は契約交渉においてこの様式を採用もしくは修正を行うことになる。  その後財務省は同年8月25日付で「 テロリスク保険プログラム; TRIA拡張法の実施」最終規則を公表、2006年9月25日施行された。(注2) **********...

英国の銀行等のこの10年間の店舗数の減少推移と新たな支店戦略

   わが国と同様に、顧客の大部分が支店利用を希望しているにもかかわらず、英国の銀行や住宅金融会社 (注1) はこの10年間で店舗数が5分の1に減少している。特に減少が目立つ(約24%減)のはあまり裕福でない都心部と工業地区で、逆に高所得者層を顧客に持つ多くのハイ・ストリート・バンクでは新たな支店サービス(direct banking services)概念の構築に向け新たな投資を行っている。  以前に英国のフォレスター調査会社が行った調査結果では、英国の顧客の半分以上が1人あたり1カ月に1回支店を利用し、利用顧客2千人の55%は小切手の預入れや現金の引出しという通常のサービスであった。このようなためか、イギリスの支店の混雑程度はスペインの5倍以上とされている。  このようなカウンターサービスを減少させるため、たとえば英国の大手金融グループであるAlliance & Leicesterは、煩雑な入金窓口処理のATM化に取り組んでいる。  (注2)  その結果、1回のATM処理で60枚の紙幣の預金口への入金が可能となった。今後の課題は、イメージ処理による小切手の入金処理が計画されているとのことである。  なお、英国のATMによる出金サービスに関しては、その有料化問題が消費者保護・教育団体を統括している全国消費者協議会(National Consumer Council)等から持ち上がっている。英国は現在、引出時に無料のATMと有料のATMがあるが、後者が急増している。これまで、現金引出し手数料が無料のATMが主流だったが、すでに台数の約4割が有料になったため、銀行側の見込みでは、2006年中の手数料総収入は2億5千万ポンド(約497億5,000万円)となっている。反面、無料のATMの台数は2004年9月の20,685台に比べ2005年9月末には23,931台となっている。 消費者団体などからは、「家計を圧迫する」と批判の声が上がっており、政府自体も改善へ動き出している。 ************************************************************************************ (注1) 英国の協同組織金融機関としては、信用組合(credit union)と相互会社形態の住...

顧客情報漏洩事件で米国FTCの「CardSystem 」に対する行政処分和解(案)が公表

   2006年2月23日、2005年6月に発生した顧客情報の漏洩事件において米国連邦取引委員会(FTC)は、CardSystem Solution Inc.(2005年12月にPay by Touch Solutions.に買収されている)に対し、適切な顧客金融情報の保護を怠ったこと(結果として数百万ドルの詐欺的なカード決済が行われたこと)を理由に、安全対策の実施、今後20年間に亘る隔年の第三者機関による独立監査の実施等を含む 「行政処分和解(案)」 を公表した。  この記事は、わが国でも2月27日付け「IT Pro」などにすでに紹介されているが、FTCが和解条件とした本来のコンピュータ処理会社としての責任内容・漏洩の原因などについて説明がない。  そこで、監督機関であるFTCのリリースを中心に解説を加える。コンピュータ処理会社としての基本中の基本が守られていなかったといえよう。  FTCが公表した「行政処分(案)」の内容は以下のとおりである。なお、委員会では4-1で承認されたが、米国行政の一般ルールのとおり、同案はまもなく刊行される「連邦官報(Federal Register)」においてパブコメに付され(3月27日がコメント期限) 、その後に最終決定を行う。 1.CardSystemは、顧客から数百万ドルの民事訴訟を起こされる潜在的な責任を追う可能性がある。その背景には、正当な理由なしに顧客の金融取引機微情報を保有し、その結果、顧客を各種リスクにさらしたことである。 2.CardSystemは、2005年中に約2億1000万件のカード業務処理を請け負い、約11万9000先の中小小売企業に関して約150億ドルの決済取引にかかわった。その取引処理中で、同社は磁気ストライプの①カード番号、②有効期限、③その他の情報を収集し、それらを同社のネットワーク中に保管した。 3.CardSystemは、以下に指摘するとおり、顧客の機密情報保護のための適切な対策をとっていなかった責任がある。 (1)機微情報を保管することによる本来不要なリスクを発生させたこと。 (2) インジェクション攻撃(injection attack)に対する「Structured Query Language」 (注)  を含む、コンピュータネットワークへの一般的かつ合理的に予見すべき脆...

EUにおける産業災害回避のための危険物情報のリアルタイム情報プラットフォームの概要

  Last Updated :November 11,2010  産業災害は全世界で毎年数千人の生命に影響を与えるが、危険物の使用状況についての企業からの情報がより広くかつ容易にアクセスできることで、多くの危険を回避できる。この点に着目して「eTEN」( 2006年2月25日付け(2010年11月6日更新)のブログ 参照)プログラムの下でEUの研究者が開発した最新の危険物情報についてインターネットを介してリアルタイムで情報の統合・配分を行うプラットフォームが「 e-Seveso 」である。これに関する欧州委員会指令は企業規模にかかわらず産業・化学事故の防止の観点から取り組んだものである。  欧州委員会がこの問題に取り組んだきっかけは、1976年のイタリアの化学プラント工場の火災事故(約2千人以上に影響を与えた強い有毒雲が発生)であった。このような事故は世界中どこでも起こりうる問題であり、第一次の「Seveso」の改善版として1996年には企業が使用・格納している危険物について①情報の保有、②リスクアセスメントや最終的な事故の予防のため監督機関や行政機関における情報の共有を目指す EU指令「Seveso Ⅱ(Directive 96/82/EC )」 が公布された。 (注)   しかし、このような情報の更新により実戦的な予防が100%保証されるわけではない。すなわち、中小零細企業においてそれを実際に適用、維持、モニタリングする人的・財政的な方法、セキュリティ・システムが欠けている場合が問題となる。  特に消防士など緊急サービス機関は火災時に工場内に侵入する際、どのような化学物質がどの程度あるのかを知らないままに行動せざるを得ないのである。  イタリアのバレンシア地方では、おもちゃの製造工場や化学物質を使用・保存するプラスチック加工、靴やセラミック加工業者が多く、さらにそれらのほとんどは小企業なのである。またそれらの工場は街の中心から数百メーターに位置している。  「e-Seveso」プラットフォームは、異なるビジネス分野の情報を統合する倉庫を作ることで潜在的な生命保護へのアクセスを可能とするのである。すべての企業が最低限行うべき責務は、毎週、手入力で自社の工場などが格納している科学物質の質量等を入力することであり、その結果、公共機関や消防署などが相...

EUにおけるISPや固定通信事業者などに対する通信内容の記録保存義務に関する「指令」が承認される

    Last Updated:April 1,2021  2005年秋以来EUにおいて論議を呼んでいた「通信事業者に通信記録の保存を義務づけるData Retention Directive(案)」(pdf 全20頁)が2月21日の「欧州連合理事会(閣僚理事会)」司法内務委員会で採択された(アイルランド、スロバキアは反対票)。  本指令を立案した理由は、戦争テロおよび組織犯罪の撲滅にあるのであるが、保存義務を負う通信事業者は、①ISP、②固定電話通信事業者、③モバイル電話会社である。本指令の施行後通信内容の2年間の保存が義務付けられるのである。すなわち、加盟国は国内法に基づき定める重大犯罪につながる特定の事例において管轄国家機関のみが、捜査、探知、訴追を目的とした利用が認められ、また、保存データへの意図的なアクセスの排除にかかる法整備(行政罰や刑事罰の制定)が義務付けられるのである。 1.この保存にかかる費用はプロバイダーなどの負担とする。 2.保存データの対象は法人・自然人の通信・位置データであり、ネットワーク参加者や登録者に関するデータも対象となる。ただし、通信データの内容の保存は求められていない。 3.保存項目は、①発信者、②通信年月日・時刻、③通信手段、④接続時間であり、法執行機関は6カ月から24カ月の間、前記国内法に基づきその利用が可能となる。 4.本指令の施行(EUのOfficial Journal発刊の日から20日目)後、18カ月以内(2007年8月まで)に加盟国は指令の実施内容を監視・セキュリティ対策の責任部門を任命しなければならない。 〔参照URL〕 1.今までのEUでの指令論議を含めたローファームPinsent Masons LLPの概要解説「Data RetentionDirective endorsed by Ministers」(2006.2.23)のURL。 http://www.out-law.com/page-6666 2.欧州連合理事会(閣僚理事会)司法・内務委員会のプレス・リリース(2006年2月21日付) https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/PRES_06_38 ******************************************...

EUの最新動向に関する統一的新ポータル「Europa」の登場

   Last Updaed: April 1 ,2021  本ブログでたびたび紹介しているEUの最新動向について、最近、情報の一元的提供を意識してEUに新ポータル 「Europa」 が登場した。  EUの 欧州議会(European Parliament) 、 欧州理事会(European Council)  、 欧州委員会( European Commission ) 、欧州連合理事会( Council of the European Union :閣僚理事会(Council of Ministers)とも呼ばれる)などの政治機能の最新動向でさえフォローするのは大変なのであるが、そのほかに欧州司法裁判所( Court of Justice of the European Communities:CJEU )や欧州会計検査院( European Court of Auditors )など多くの公的機関をそれぞれフォローすること自体至難の業といえよう(公的機関について日本語で体系的な理解するには、現状は外務省、国立国会図書館、駐日欧州委員会代表部のサイト等で勉強するしかないが、いかにも企業や研究者向けではない)。  特に、EUの最近の取組み課題をテーマ別にフォローするには、たとえば①電子政府の各国の取組み状況やEU全体としての戦略的課題に関しては 「IDABC(Interoperable Delivery of European eGovernment Services to public Administrations)」  (注) 、②科学技術・農業、移民問題、セキュリティ問題等約1200項目についての最新の調査研究内容ならびにEU全体の行動計画と個別テーマに関する資料の検索には ”Research”  、③ネットワークや情報セキュリティ研究機関である ”ENISA(European Network and Information Security Agency)” の動向、④EU内の企業の協力のものでの全体的な長期的調査研究開発計画(フレームワーク・プログラム(FP):現在は2002年―2006年計画のFP6である。2007年―2013年のFP7の草案が欧州議会に図られる予定である。)をフローする「IST(情報社...

米国の金融機関におけるPC内に保有する個人情報の暗号化義務に関する連邦地裁判決が出る

    Last Updated:March 31,2021 2006年2月7日、ミネソタ州連邦地方裁判所で、金融取引における個人情報保護に関する基本法である 「1999年グラム・リーチ・ブライリー法(Gramm-Leach-Bliley Act of 1999)」  (いわゆる金融制度改革法:GLB法)」が定める「顧客の非公開(non-public)の個人情報のセキュリティと機密性を保護する」という規定の解釈に関し、取扱い業者(自宅に持ち帰っていて)が盗難にあったPC内の顧客データについて、このようなデータ保管時に暗号化義務まで含むものではないとの 司法判断  (注1 )が下された(今まで実際の金銭的な被害は発生していない)。  被告が定めた顧客情報の保護に関する「セキュリティ・ポリシー」ならびに「適切な安全策」がなされていれば、暗号化されていなくても金融機関としての合理的な注意を払っているという判断である。原告は、前記「GLB法」の規定を根拠に暗号化義務および自宅(ファイナンシャル・プランナー)に持ち帰ったことを許容した企業の責任を追及したのであるが、裁判所は同法および同法施行規則、金融監督機関のセキュリティ・ガイドラインにおいて、そのような規定はないとの判断を下したのである。  米国の弁護士の中には、このような解釈に組しない者もいる。すなわち、次のような行政監督機関としての検討課題などを指摘している。 ① GLB法501b条 および連邦財務省通貨監督庁(OCC)などが共同で発布したセキュリティ・ガイドラインを受けて2005年3月29日に連名で発布された 「顧客情報への無権限のアクセス被害および顧客への被害可能予告通知への対応プログラムに関する官庁共通ガイダンス(Interagency Guidance on Response Programs for Unauthorized Access to Customer Information and Customer Notice)」 (注2) の考えを注視すべきである。暗号化について、同法やガイドラインには絶対的な義務あるいは要求条件とはされていないが、ガイドラインでは銀行が自らより具体的な「適切な安全基準」を作ることも想定しているとも考えられよう。 ②金融監督機関の規則やガイドライン...

バーゼル銀行監督委員会が銀行組織における「コーポレート・ガバナンス・ガイダンス(仮訳)」最終版を公表

  Last Updated:arch 31,2021  2006年2月13日、 バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision) (注1) は銀行組織の健全なコーポレート・ガバナンスの実践の推進のための改定ガイダンス 「Enhancing corporate governance for banking organisations」 の最終版を公表した。  本ガイダンスは2005年11月に同委員会が提示した提案文書からスタートしたものとされているが、同提案書に対し、各国の銀行、業界団体、関係監督省庁、その他の機関から多くの有益なコメントを受けて取り込んだものである。なお、以下の点を読むと理解できると思うが、このガイダンスは銀行そのものだけでなく監督機関の責任を明確化している点は見逃せない。  なお、今回のガイダンスの元となる同委員会の改訂案そのものは2005年7月29日に 公表 されており、わが国の金融庁は同委員会に対する金融機関の意見は直接行うかたちを取っている( 仮訳が金融庁サイトに掲載 されたのは同年9月14日であった)。 (注2)  本ガイダンスの元となる書面は、 2004年にOECDが発刊した「コーポレート・ガバナンスについての原則」 と同様、1999年に同委員会が公表したものに基づき改訂のうえ、策定されたものである。本ガイダンスは、世界中の銀行の健全なコーポレート・ガバナンスの実践の採用と適用を意図したものであるが、既存の国家による法律、規則、綱領など階層構造による新たな規制構造の構築を意図するものではないとリリースは説明している。 Ⅰ.ガイダンスの重要項目は次の内容である。 (1)取締役会の役割(特に独立した権限を持つ取締役の役割に焦点を当てる)と銀行の経営幹部の役割 (2)利害が対立する場合の効果的経営管理 (3)銀行内部のコントロール機能と同様に内部・外部監査人の役割 (4)透明性に基づく方法とりわけ司法制度とのかかわりの中での運用内容、もしくは透明性を阻害するような体制問題意識の構築 (5)健全なコーポレート・ガバナンスの実践の推進と調査における監督機関の役割 Ⅱ.BISのリリースは、以上の5つの項目が列挙されているだけである。そこで筆者としてはガイダンスの目次に基づき以下のとおり補...

日本とベトナムの「アジアの平和と繁栄に関する戦略的包括的開発に関する共同声明」の全内容

  Last Updated: February 21,2021  2010年11月1日の各社の朝刊は、10月31日に日本がベトナムの原子力発電施設の建設につき「協力パートナー」(2基の建設受注の内定)とするほか1兆円規模のプロジェクトの受注、レアアース(希土類)の共同開発に関する共同声明を採択したと報じた。  これはわが国の経済協力活動の話である。一方で、わが国の原子力発電支援の前提として今年の6月以降交渉を進めてきているベトナムとの「原子力平和利用に関する協定交渉」の結末はどうなったのか。わが国のメディアは「実質合意」があり早期署名を目指すことを確認したと解説している(どのような協定案が策定されているのか国民は「蚊帳の外」である)。 (筆者注1)  当然ながらわが国の外務省のサイトで確認したが、そこにある説明は、10月7日の第2回交渉までである。実は10月19日にハノイで第3回交渉が行われている。 (筆者注2)  ベトナム政府の外務省(MOF)サイトで確認したが、その内容は公開されていない。しかし、「アジアの平和と繁栄に関する戦略的包括的開発に関する日越共同声明(Japan-Vet Nam Joint Statement on the Comprehensive Development of Strategic Partnership for Peace and Prosperity in Asia)」については確認できた。  今回のブログは、同共同声明につきベトナム政府外務省の 「プレスリリース全文」 (筆者注3) を仮訳で紹介するとともに、ODA支援を含めベトナムが日本をどのように見ているか、日本のベトナムへの経済やその他の支援の実態等についての正確かつ包括的な情報提供を目的でまとめた。(ベトナム政府の 公式サイトの記事・写真 参照)  筆者独自に注釈つき仮訳作業した後、 「外務省の仮訳」結果 を同省のサイトで確認した。外務省のサイトの発表日付は10月31日となっているが筆者が同日確認したときには存在しなかった。(今まで気にしなかったが、日越共同声明文ということは事務方段階で声明文の内容は発表前に完全に詰めているはずであり、合意後に後から和訳(それも仮訳)を発表するとはいかにも準備不足の謗りを免れないと言えよう。外務省のサイトでは声明文原文(英文)が...