スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

11月, 2010の投稿を表示しています

米国刑務所独房服役中の元ロシア・スパイ被告が息子を使いスパイ活動見返り金要求裁判で有罪答弁(その2完)

  (4)ニコルソンのCIAでの任務と刑事告訴の具体的な内容 ①ニコルソンは16年間CIAに勤務し、機密取扱資格(セキュリティ・クリアランス)における「最高機密(Top Secret)」および「取扱注意で断片的にのみ開示されうる諜報成果(Sensitive Compartmentalized Information:SCI)」資格を有していた。 (筆者注6)  被告は、仮に無権限アクアセスして開示したときは米国の国家安全に対する修復不可能な損失を生じさせたり、外国国家に有利な情報を与えるという高いレベルの情報を保持していた。被告はこの点に関し無権限開示は犯罪行為であり、不適切に秘密指定情報の開示を絶対に行わない旨誓約・同意していた。 ②告訴状では次の違法行為を具体化した。 ・1995年10月1日前後、被告は定期的なセキュリティ検査としてCIAが管理する嘘発見器による一連の検査(polygraph examinations)を受けた。これの検査の分析では、外国謀報機関との無権限の接触についての未解決の問題が起きた。 ・CIAの記録分析により、被告の個人旅行の解析と預金の入手金を見る限り、説明がつかない金融取引後に外国への旅行するパターンが見られた。 ・マレーシアのクアラルンプール勤務時、被告はロシアの謀報機関(Rissian intelligence service:SVRR)との接触が認められていた。1994年6月30日、被告が最後の接触時の1日後、金融残高記録をみると被告は米国の取引銀行の貯蓄口座に12,000ドル(約984,000円)を送金しているが、その根拠となる合法的な資金源は見出しえなかった。 ・1994年12月、被告は個人旅行でロンドン、ニューデリー、バンコクおよびクラルンプールにアメリカから出かけている。クアラルンプールにいた時、貯蓄口座に9,000ドル(約74万円)を振り込み、またクレジットカード口座に6,000ドル(約49万円)を入金した。帰国後被告は100ドル札130枚を使って債務を返済したが、これらの資金の合法的な資金源は見出し得なかった。 ・1995年6月、7月、被告は年次休暇を使って再度クアラルンプールに旅行したが、その時および直後に合計23815.21ドル(約195万3千円)の金融取引を行った。しかし、これらの資金の合法的な資金源...

米国刑務所独房服役中の元ロシア・スパイ被告が息子を使いスパイ活動見返り金要求裁判で有罪答弁(その1)

    11月8日、米国連邦司法省(DOJ)とFBIはスパイ映画でもありえないようなプレス・リリースを行った。  内容は、標題のとおりであるが、この裁判の被告ハロルド・ジェームズ・ニコルソン(Harold James Nicholson,1950年生れ)は元ベテランCIA上級職員でDOJいわく米国内でスパイ活動で有罪判決を受けた最も高いランクの1人である。 Harold James Nicolson被告  これが事実であるならば、米国の刑務所内での収監者の情報・行動管理とりわけ国家反逆罪( 米国連邦現行法律集U.S.C.第18編パートⅠ章第794条  (筆者注1) の有罪受刑者の管理はいったいどうなっているのであろうか疑いたくなってくる。(794条(c)項が「共謀罪」規定である)  しかし、事実関係はもっと泥臭いもののようである。  簡単に言うと、離婚後自分を育ててくれた父を最も尊敬する息子がアルバイト先であるピザ・ハットのパートとしてピザを届けるため父親のいる刑務所に出入りし、面会所で渡された父親のテッシュやキャンディー包み紙に走り書きしたメモを届けるためにキプロス、ペルー等を廻りロシア連邦の謀報員に会い札束を受け取っていたというものである。  新たなスパイ活動は行っていた事実はなく、過去においてロシアに提供した美防諜情報の対価を「年金」としたロシアに要求したこと等を検察も起訴にあたりその点は配慮したようである。  オレゴン連邦裁判所のアンナ・ブラウン判事は、本件における検察とニコルソンとが取り決めた「司法取引」に応じたとすれば既存の刑罰(拘禁刑)に8年追加するのみということになろう。すなわちニコルソンは外国政府のためのスパイ行為およびマーネー・ローンダリングの既遂に関する訴因各1つを認め、一方その交換条件として連邦検事は2009年の告訴時の5つの重罪(felony charges)にかかる訴因を破棄することに同意した。  同リリースに関するコメント数等を見る限り、この問題に関する米国民の反応は今一弱いようであるが、事実関係を1996年の起訴や裁判までさかのぼって本スパイ裁判の経緯と今回の有罪答弁から得られた事実関係のみとりあえず紹介する。  なお、過去・現在において米国のCIAやFBI等の職員が外国謀報機関から金銭等を対価に国防の機密情報を提供...

米国SECやFDICが「ドッド・フランク法」等を背景としたよる役員報酬の規制強化解釈ガイダンス(案)等を提示

    本ブログでは、 2009年9月12日付け で政府からの不良資産救済プログラム(TARP)に基づく資本注入を受けている金融機関の役員報酬規制強化に関する連邦財務省の暫定規則やガイドランの内容を詳しく紹介した。   また、本年7月21日に成立した「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:H.R.4173)(以下、「ドッド・フランク法」)」の主要な改革のポイント事項について 解説 してきた。  ドッド・フランク法は本ブログでも解説してきたとおり、米国の銀行、証券、保険、金融先物等の金融監督面での影響が極めて大きくまた条文数も多い法律であるが、連邦監督規制機関 ( 筆者注1) はこれを受けた規則案や金融機関における具体的対応に資するためのガイダンスの策定が進んでいる。  筆者は、この膨大な条文にわたる法律の内容についてまとまった解説を行うべく準備は進めているが、何にせ関係する金融監督機関が個々に対応をとっており、また同法は上院・下院の多くの関係法案との調整結果を踏まえて1本化されたものであり、内容的な批判を含めた包括的な資料は極めて少ないことから、さらに時間がかかると思われる。  (筆者注2) (筆者注3)  そのような状況下で最近時、アメリカ銀行協会(American Bankers Association:ABA)が 「ドッド・フランク法の本格実施に向けた銀行員のための重要テーマに関する施策」 と題するウェブサイトを立ち上げた。  その中では、「預金保険」、「消費者金融保護局(BCFP)」、「OCCとOTSの併合」、「FRBの金融監督機能」、「新たな貯蓄組合規則」、「不動産抵当ローン市場」、「デビットカード処理における適切な手数料への置き換え等に関する規則の策定」、「証券、スワップデータならびにその金融派生商品の適正化ルール」、「役員や従業員の報酬の公開性」、金融システム全体とした監督制度改革問題である「金融安定化監督委員会(FSOC)」、「システミックな監督体制」、「金融調査局創設」等があげられている。  ABAは金融実務面からこれらの個々のテーマにつき金融界への最新の情報提供や連邦議会対策サミット (...

米国国防総省が緊急対応した“Don’t Ask,Don’t Tell Act”差止命令と連邦憲法上の諸問題(その1)

  Last Updated:February 20,202   筆者の手元に2010年10月12日にDODから初めは意味不明の プレス・リース が届いた。 「1993年 同性愛公言禁止法(Don’t Ask,Don’t Tell ACT)(DADT)」 (筆者注1) に対するカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所判決(判事:バージニア・A・フィリップ(Virginia A.Phillips))による連邦憲法違反判決および国防総省による同法執行の恒久的差止命令(injunction order)への対応に関するリリースである。米国など外交・軍事等海外通の読者であればある程度その意味が分かろう。 Virginia A. Phillips判事  その後、DODは連邦司法省等との協議を進め、10月15日には先の地裁判決に対し控訴の検討を行う一方で、12日の判決は遵守する旨を 発表 した。  今回のブログは、米国オバマ政権の公約の1つである同性愛者やレスビアンと軍隊の問題であり、連邦議会をも巻き込んだ大きな社会問題となっているこの問題を取り上げる。  筆者は両分野につき専門家ではないし、コメントできる立場にはない。  しかし、国家機能とりわけ国防機能に関する問題となると話は別である。とりわけ“Don’t Ask,Don’t Tell ACT”そのものについて正確な理解と経緯、米国社会が現実にかかえる影の部分に正確に焦点を当てて検討すべき問題点を整理したいと考えた。  米国の大学を含め関係機関の情報を独自に調べて見た。とりわけ同法の人権上や憲法上の問題については制定当初から米国の人権擁護団体だけでなくロー・スクールや大学におけるDODの大学内でのリクルート活動とスカラーシップに関する「人を金でつる問題(Solomon Amendment)」   (筆者注2) に対する大学・研究機関の自治に関するフォーラム(Forum for Academic and Institutional Rights:FAIR)  (筆者注3) 等も問題視している点も明らかとなった。  特に、筆者が関心を持ったのはジョージ・タウン大学ロー・スクールの抗議グループ “SolomonResponse .Org” のサイトである。 (筆者注4)  大学の自治問題はわが国で...

日本とベトナムの「アジアの平和と繁栄に関する戦略的包括的開発に関する共同声明」の全内容

  Last Updated: February 21,2021  2010年11月1日の各社の朝刊は、10月31日に日本がベトナムの原子力発電施設の建設につき「協力パートナー」(2基の建設受注の内定)とするほか1兆円規模のプロジェクトの受注、レアアース(希土類)の共同開発に関する共同声明を採択したと報じた。  これはわが国の経済協力活動の話である。一方で、わが国の原子力発電支援の前提として今年の6月以降交渉を進めてきているベトナムとの「原子力平和利用に関する協定交渉」の結末はどうなったのか。わが国のメディアは「実質合意」があり早期署名を目指すことを確認したと解説している(どのような協定案が策定されているのか国民は「蚊帳の外」である)。 (筆者注1)  当然ながらわが国の外務省のサイトで確認したが、そこにある説明は、10月7日の第2回交渉までである。実は10月19日にハノイで第3回交渉が行われている。 (筆者注2)  ベトナム政府の外務省(MOF)サイトで確認したが、その内容は公開されていない。しかし、「アジアの平和と繁栄に関する戦略的包括的開発に関する日越共同声明(Japan-Vet Nam Joint Statement on the Comprehensive Development of Strategic Partnership for Peace and Prosperity in Asia)」については確認できた。  今回のブログは、同共同声明につきベトナム政府外務省の 「プレスリリース全文」 (筆者注3) を仮訳で紹介するとともに、ODA支援を含めベトナムが日本をどのように見ているか、日本のベトナムへの経済やその他の支援の実態等についての正確かつ包括的な情報提供を目的でまとめた。(ベトナム政府の 公式サイトの記事・写真 参照)  筆者独自に注釈つき仮訳作業した後、 「外務省の仮訳」結果 を同省のサイトで確認した。外務省のサイトの発表日付は10月31日となっているが筆者が同日確認したときには存在しなかった。(今まで気にしなかったが、日越共同声明文ということは事務方段階で声明文の内容は発表前に完全に詰めているはずであり、合意後に後から和訳(それも仮訳)を発表するとはいかにも準備不足の謗りを免れないと言えよう。外務省のサイトでは声明文原文(英文)が...