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EUにおける産業災害回避のための危険物情報のリアルタイム情報プラットフォームの概要

 

Last Updated :November 11,2010

 産業災害は全世界で毎年数千人の生命に影響を与えるが、危険物の使用状況についての企業からの情報がより広くかつ容易にアクセスできることで、多くの危険を回避できる。この点に着目して「eTEN」(2006年2月25日付け(2010年11月6日更新)のブログ参照)プログラムの下でEUの研究者が開発した最新の危険物情報についてインターネットを介してリアルタイムで情報の統合・配分を行うプラットフォームが「e-Seveso」である。これに関する欧州委員会指令は企業規模にかかわらず産業・化学事故の防止の観点から取り組んだものである。

 欧州委員会がこの問題に取り組んだきっかけは、1976年のイタリアの化学プラント工場の火災事故(約2千人以上に影響を与えた強い有毒雲が発生)であった。このような事故は世界中どこでも起こりうる問題であり、第一次の「Seveso」の改善版として1996年には企業が使用・格納している危険物について①情報の保有、②リスクアセスメントや最終的な事故の予防のため監督機関や行政機関における情報の共有を目指すEU指令「Seveso Ⅱ(Directive 96/82/EC )」が公布された。(注) 

 しかし、このような情報の更新により実戦的な予防が100%保証されるわけではない。すなわち、中小零細企業においてそれを実際に適用、維持、モニタリングする人的・財政的な方法、セキュリティ・システムが欠けている場合が問題となる。

 特に消防士など緊急サービス機関は火災時に工場内に侵入する際、どのような化学物質がどの程度あるのかを知らないままに行動せざるを得ないのである。

 イタリアのバレンシア地方では、おもちゃの製造工場や化学物質を使用・保存するプラスチック加工、靴やセラミック加工業者が多く、さらにそれらのほとんどは小企業なのである。またそれらの工場は街の中心から数百メーターに位置している。

 「e-Seveso」プラットフォームは、異なるビジネス分野の情報を統合する倉庫を作ることで潜在的な生命保護へのアクセスを可能とするのである。すべての企業が最低限行うべき責務は、毎週、手入力で自社の工場などが格納している科学物質の質量等を入力することであり、その結果、公共機関や消防署などが相互に利用可能となるのである。

 さらに、より高度な情報システムとしては、企業は①倉庫内の温度や湿度、②ガスやけむりの量について測定値に基づくリアルタイム・データベースの作成とこれらの情報を自動的に更新する一定のセンサーシステムを採用がある。

 仮にこれらのセンサーシステムがない場合でも、事故発生時に公共機関や消防署の担当者は無線を通じリアルタイムで化学物質の内容や今どのような対策を採るべきかについて継続的に知りうるのである。

 さらに、このプラットフォームは国家、地方、地域などにおける異なる公的機関や民間機関の利害関係者の損害調査や警報機能のシステムの相互運用性を確たるもの(公開基準:open standards)にする。このオープンで拡張性をもった構造は、①地図システム、②地理・位置情報、③新たな無線情報システムを含むもので、情報の共有、統合、配分といった未来技術(emerging technology)を採用している(完全な安全を実現するもの)。

 このシステムの試作品は2005年9月の完成目前に公的機関や消防署などの利害関係者により検査され、きわめて高い関心を引き出している。EUの約150万社の産業・化学分野の企業で利用され、「sevesoⅡ」指令により影響される中小企業等にとっても、また「e-Seveso」プラットフォームの潜在的な利用はEU全体のセキュリティにとって好ましいことといえよう。

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(注) 欧州委員会は加盟国における本指令の遵守を目的としてガイダンス「EU指令96/82/ECの要求に合致するための安全性報告の準備にかかるガイダンス(Guidance on the Preparation of a Safety Report to meet the requirements of Council Directive 96/82/EC (Seveso II))」を公布している。

〔参照URL〕

http://cordis.europa.eu/ictresults/index.cfm?section=news&tpl=article&ID=80707

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(今回のブログは2006年2月27日登録分の改訂版である)

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