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シリコンバレー銀行に始まる経営上特殊性持った米国の中堅銀行の経営破綻問題の行方を探る

 筆者は3月12日付けブログでカルフォルニア州の商業銀行シリコンバレー銀行の経営が行き詰まり、監督機関であるカリフォルニア州の銀行規制当局である「金融保護・イノベーション局(California Department of Financial Protection and Innovation (DFPI)」は、世界的な金融危機以来最大の米国の銀行破綻で、問題を抱えたハイテク貸し手のシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank:以下、SVBという)、閉鎖し、法的権限にもとづき、引き継ぎ、担保としての資産と業務の一時所有にかかるDFPI commissioner(最高責任者)命令を発出した旨解説した。

  この情報は内外メデイアでも大きく取り上げられているが、同ブログで取り上げた「シルバー・ゲート銀行(Silvergate Bank)」の持ち株会社の「シルバーゲート・キャピタル(Silvergate Capital)」は3月8日、銀行業務を終了し、任意清算に入った問題、さらにはニューヨーク州の商業銀行である「シグナチャー・ バンク(Signature Bank)」の破綻に関し、州の金融サービス局が銀行法にもとづき同行を所有し、連邦預金保険公社FDICが承継銀行を決定したとの情報が、3月13日朝FDICから直接入ってきた。

 今回のブログは、米国の連鎖的金融リスク問題とも強くかかわるため、連邦財務省やFDIC, ニューヨーク州の金融サービス局のリリースの概要を紹介するが、2008年のリーマン・ショックが起きないことを祈るのみである。

 なお、カリフォルニア州だけでなく、ニューヨーク州の銀行監督法の内容が極めて類似している。我が国の問題とも関連する面があり、別途取りあげたい。

1.連邦財務長官、連邦準備制度理事会議長、および FDICの議長の共同声明内容

 3月12日、連邦財務省リリースを以下、仮訳する。

 次の共同声明は、ジャネット L. イエレン(Janet L. Yellen)財務長官、連邦準備制度理事会のジェローム H. パウエル(Jerome H. Powell)議長、および FDIC のマーティン J. グルエンバーグ(Martin J. Gruenberg)議長によって発表された。

 3月12日、我々は、銀行システムに対する国民の信頼を強化することにより、米国経済を保護するための断固たる行動を取っている。このステップにより、米国の銀行システムは、強力で持続可能な経済成長を促進する方法で、預金を保護し、家計や企業に信用へのアクセスを提供するという重要な役割を果たし続けることが保証される。

 FDIC および連邦準備制度理事会からの勧告を受け、バイデン大統領と協議した後、イエレン財務長官は、すべての預金者を完全に保護する方法で、FDIC がカリフォルニア州サンタクララのシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)の解散決議(resolution)を完了できるようにする措置を承認した。預金者は、3 月 13 日(月)からすべての資金にアクセスできるようになる。Silicon Valley Bank の解散決議に関連する損失を納税者が負担することはない。

 また、ニューヨーク州のシグネチャー・ バンク(Signature Bank)についても同様のシステミック・リスクの例外を発表している。この金融機関のすべての預金者は完全に保護され、シリコンバレー銀行の解散決議と同様に、納税者が損失を負担することはない。

 なお、同行の株主および特定の無担保債権者は保護されない。また上級管理職も解任された。無保険の預金者を支援するための預金保険基金(Deposit Insurance Fund)の損失は、法律で義務付けられているとおり、銀行に対する特別査定によって回収される。

 最後に、連邦準備制度理事会は3月12日に、銀行がすべての預金者のニーズを満たす能力を持つことを保証するために、適格な資格のある預金機関に追加の資金を提供すると発表した。

 米国の銀行システムは依然として回復力があり、堅固な基盤の上にある。これは主に、2008年の金融危機後に行われた改革により、銀行業界の安全策が強化されたことによるものである。これらの改革と今日の行動は、預金者の貯蓄を安全に保つために必要な措置を講じるという我々の取組みを示している。

 2.FDICはニューヨーク州のシグナチャー・バンクの後継銀行としてシグナチャー・ブリッジ・バンクN.A.を設立

  3月12日FDICリリースを以下、仮訳する。

 ニューヨーク州のシグナチャー・バンク(以下、Signature Bankという)は3月13日(月)、連邦預金保険公社 (FDIC) を管財人として指定したニューヨーク州金融サービス局(New York Department of Financial Services: DFS)によって閉鎖された。 預金者を保護するために、FDIC は、Signature Bank のすべての預金と実質的にすべての資産を 承継銀行Signature Bridge Bank, N.A. に譲渡した。

 Signature Bank は、ニューヨーク、カリフォルニア、コネチカット、ノースカロライナ、ネバダの全国に 40 の支店を持っていた。 オンライン・バンキングを含む銀行業務は、2023 年 3 月 13 日月曜日に再開される。 預金者と借り手は自動的に Signature Bridge Bank, N.A. の顧客になり、以前と同じ方法で、中断のない顧客サービスと ATM、デビットカード、および小切手の書き込みによる資金へのアクセスを引き続き利用できる。Signature Bank の公式小切手は引き続き決済される。またローンの顧客は、通常どおりローンの支払いを継続する必要がある。

 これらの措置は、預金者を保護し、Signature Bank の資産と業務の価値を維持し、債権者と DIF の回収を改善する可能性がある。

 Signature Bank は、2022 年 12 月 31 日の時点で、総資産が 1,104 億ドル(約15兆144億円))、総預金が 826 億ドル(約11兆2300億円)であった。FDIC は、受取人として、Signature Bridge Bank, N.A. を運営し、将来の売却に備えて金融機関の価値を最大化し、以前 Signature Bank がサービスを提供していたコミュニティ銀行サービスを維持する。

 承継銀行Signature Bridge Bank, N.A.は、FDIC によって任命された理事会の下で運営される公認の国立銀行である。 預金やその他の負債を引き受け、破綻した銀行の資産を購入する。ブリッジバンクの構造は、銀行の破綻とFDIC が金融機関を安定させ、秩序だった解決策を実行できるようになるまでのギャップを「橋渡し」するように設計されている。

 FDIC は、Greg D. Carmichael 氏を Signature Bridge Bank, N.A. の CEO に任命した。Carmichael 氏は最近までFifth Third Bancorp の社長兼 CEO  を務めていた。

Greg D. Carmichael 氏

3.ニューヨーク金融サービス局(New York Department of Financial Services:DFS)が州法にもとづきSignature Bankを所有すると発表

  2023年3月12日のDFSリリースを仮訳する。

 ニューヨーク州金融サービス局のエイドリアン・A・ハリス監督官(Superintendent Adrienne A. Harris)は、ニューヨーク金融サービス局(New York Department of Financial Services:DFS)が州法にもとづきSignature Bankを所有すると発表した。

Adrienne A. Harris 氏

 エイドリアン A. ハリス監督官は3月12日、預金者を保護するために、ニューヨーク州銀行法(Bankig Law)第 606 条(注)に従って、ニューヨーク金融サービス局 (DFS) がSignature Bankを所有したことを発表した。 DFS は、同銀行の管財人として連邦預金保険公社 (FDIC) を指定した。

 Signature Bank はニューヨーク州公認の商業銀行であり、FDIC の保険に加入しており、2022 年 12 月 31 日現在の総資産は約 1,103 億 6000 万ドル(15兆9兆90万円)、預金残高は約 885 億 9000 万ドル(約約12兆480万円)である。

 DFS は、市場の出来事に照らしてすべての規制対象機関との連絡を取り、市場動向を監視し、他の州および規制連邦整理と調整に協力して、消費者を保護し、規制対象機関の健全性を安定させ、世界の金融システムの安定性を維持している。

 FDICの適用範囲の制限と要件については、  www.fdic.govにアクセスするか、フリーダイヤル 1-877-ASK-FDIC に電話されたい。

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(注) ューヨーク州銀行法第606条を抜粋、仮訳する。(New York Consolidated Laws, Banking Law - BNK § 606. When superintendent may take possession of banking organization;  when possession may be surrendered)

1.DFS監督官は、その裁量により、銀行組織が次の状態とみるときはいつでも、その銀行組織の事業および財産を直ちに所有することができる。

(a) 法律に違反したとき。

(b) 無許可または危険な方法で事業を行っているとき。

(c) 事業を行うには不健全または危険な状態にあるとき。

(d) 安全かつ迅速に事業を継続できないとき。

(e) 資本が減損しているとき。または、相互貯蓄貸付協会または信用組合の場合は、その負債および株式に対するメンバーへの支払額を支払うには不十分な資産を持っていること。

(f) 債務の支払いを停止したとき。または、貯蓄貸付相互組合の場合は、株主から撤回申請が提出されてから 60 日間、その撤回申請の全額を支払うことができなかったこと。

(g) 監督官の正式に発行された命令の条件を無視または遵守することを拒否したとき。

(h) 適切な要求に応じて、その記録と業務を検査のために省の審査官に提出することを拒否したとき。

(i) 自らの業務に関して、宣誓の上、審査を拒否したとき。

(j) 本章のいずれかの条項に従って任意清算の手続きを怠る、拒否する、または取らない、または継続しないとき。

2.監督官は、監督官の裁量により、監督官が承認した条件に基づいて、所有権を放棄し、当該銀行組織が事業を再開することを許可することができる。

3.監督官がそのような銀行組織の財産および事業を正当に所有した場合、監督官は、その業務が彼によって最終的に清算されるまで、その所有を保持することができる。本節の第607 項に規定されているように継続的な所有を禁止されている場合、またはそのような銀行組織が監督者の書面による承認を得て、本節の第 605 項に規定されているように自発的に業務を終了する場合を除く。

(以下は略す)

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