被告 Hal H. Brown Jr. |
その内容は「ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性(Hal H. Brown Jr., 70歳)は、2,200万ドル(約23億5,400万円)のポンジ・スキーム(Ponzi
scheme :いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル(約18億1,900万円)以上の賠償金の判決を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む60人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。
筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、1)この裁判は本年1月21日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、2)Ponzi schemeや取引マネー・ローンダリング(Transactional
Money Laundering)の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。
特に不正資金の洗浄運び屋犯罪(Money
Mules)の種類(注1)の相違点につき詳細などを検証した。
さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。
これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。
他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。(注2)
取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は9年前の2011.8.16に 「⽶国スタンフォード⼤学と⾦融取引業規制機構 (FINRA)が「⾦融詐欺」阻⽌の共同専門調査セン ターを設⽴」を取り上げている。今回のブログ執筆にあたりその内容も見直し更新した。併せて、御覧いただきたい。
1.2020年1月21日判決にかかるノースカロライナ西部地区連邦検事局のリリースの仮訳
(1)犯罪手口にかかる筆者の補足説明と判決要旨
「証券詐欺罪(securities fraud)」(注3)には最高20年の拘禁刑と500万ドル(約6億3,500万円)の罰金が科せられる。また、「トランザクション・マネーロンダリング罪(transactional money laundering
charge)」(注3-1)には、最高10年の刑期と取引における犯罪的に派生した財産の2倍以上の罰金または25万ドル(約2,675万円)が選ばれる。なお、ブラウン被告の判決言い渡し日が設定されていない。
A.証券詐欺の手口の例示(筆者の補足解説)
① High Yield Investment Fraud(Program)
インターネットは、いわゆる「高利回り投資プログラム」または「HYIP」であふれている。これらは、通常、無認可の個人によって実行される未登録の投資であり、しばしば詐欺である。HYIP詐欺の特徴は、投資家にほとんどまたは100%リスクを負わせる一方で信じられないほどの運用益(return)を約束する。HYIPのウェブサイトは、年間(または毎月、毎週、または毎日)のリターンを30%または40%以上と約束するかもしれない。これらの詐欺のいくつかは、「プライム・バンク(prime bank)」プログラム(注4)という用語を使用する可能性がある。あなたがこれらの1つに投資するためにオンラインでアプローチされた場合は、細心の注意を払う必要があり、それは詐欺である可能性が高い。
② Ponzi Schemes;Pyramid Schemes
ポンジ・スキームには以下のような特徴がある場合が多い。
投資機会の詐欺の仕掛け人たるプロモーターが投資家から1,000ドルを受取る。同時に、そのプロモーターは事前に設定された期間(例えば、90日後)に10%の利子をつけて、払い戻すことを約束する。 このプロモーターは90日が来る前に追加で2人の投資家を見つけることができた。そうしたら、2番目、そして3番目の投資家から集めた2,000ドルから、約束どおり元利で1,100ドルを最初の投資家に支払う。そして、プロモーターは最初の投資家にもう一度1,000ドルを投資することを勧める。
新しい投資家から資金を集めることで、詐欺師は早期投資家に約束したリターンを支払うことができ、その投資家に再投資をして、さらに多くの人を集めるように促す。
このシステムが成長するにつれて、プロモーターはより多くのスキームに参加する新しい投資家を探す必要がある。探すことができなければ、プロモーターは約束したリターンを支払うことができなくなり、最終的には、ポンジ・スキームは不安定になっていき、プロモーターは破綻し、逮捕されるか、もしくは手に入れた資金と一緒に逃げ去り、消えてしまう。
また、ピラミッド・スキーム(ねずみ講)はそのスキームに参加するメンバーに対して報酬や支払いを約束するだけでなく、そのメンバーが新しいメンバーを誘うことに対しても報酬や支払いを約束するビジネス形態でもある。
例えば、不正なプロモーターがAliceとBobにそれぞれ1,000ドルである企業の販売権を購入できる機会を提供する。これによって、AliceとBobには保有している販売権を売却する権利と勧誘した全ての追加メンバーからの配当を受ける権利を持つことになる。彼らが販売した販売権からの売り上げの1,000ドルはプロモーターと1:1で配分する。
上記のシナリオでは、AliceとBobは販売権を販売する毎に500ドルを手に入れることができるので、元を取るためには販売権を2人に販売する必要がある。初期投資分を確保するために販売権を2人に販売しないといけないという負担は彼らが販売した顧客に渡される。
このプロセスを継続するには、どんどん新しいメンバーが必要になるため、このピラミッド・スキームは最終的には崩壊する。このスキームが長期に持続不可能であることが、ピラミッド・スキームが違法となっている理由である。
ポンジ・スキームはたいていの場合、投資管理サービスと名乗っていて、利回りは合法な投資の結果によるものと信じさせる。詐欺師は基本的に新しい投資家からの資金を使って、昔からの投資家に支払いを行う。
一方、ピラミッド・スキームはネットワーク・マーケティングに基づいており、参加者はお金を稼ぐためには新しいメンバーを勧誘する必要がある。それゆえ、それぞれの参加者はピラミッドの頂点に資金を渡す前に自分の分け前として手数料を取る。
あえて、説明は略す。
④ Foreign Currency Fraud(架空外国為替証拠金取引:FX取引)詐欺
FX取引とは、証拠金(保証金)を業者に差し入れ、差し入れた証拠金の何倍もの額(日本では証拠金の25倍が上限)の外国通貨の取引を行うものです。取引終了の際は、取引開始時と反対の取引(例えば、円をドルに換えた場合にはドルを円に換える)を行い、その差額を損益として清算します(差金決済)。 例えば100万円の証拠金を差し入れ、10倍の倍率を設定した場合、1,000万円分の外国通貨を買うことができます。このとき1ドル100円なら、10万ドルを購入でき、1ドル105円の時に取引を終了すると50万円の利益になりますが、1ドル95円の時に取引を終了すると50万円の損失が発生します。 このようにFX取引では、元手となる証拠金よりも大きな金額の取引ができますが、為替相場の変動等によっては預けた証拠金以上の多額の損失が短期間のうちに出てしまう可能性があります。
FX取引を取り扱う業者は金融商品取引法に基づいて金融商品取引業の登録をする必要があります。海外の業者が日本の居住者と取引をする場合も登録が必要です。また登録業者には、顧客から依頼がない限り勧誘を行ってはならないなどの厳しい規制が設けられています。(金融広報中央委員会:知るぽると「架空FX取引詐欺」から一部抜粋)
⑤ Broker Embezzlement(ブローカーの横領詐欺)
証券会社などの従業員による盗難とも呼ばれる横領(embezzlement)は、誰かが自分のケアに委ねられたが、他の誰かが所有している資金を不当に割り当てる行為である。最も一般的な横領は従業員ですが、受託者の責任を持つ他の人も横領罪で起訴することができる。
横領は、特定の種類の詐欺であり、「真実の虚偽表示または重大事実の隠蔽を知って、他人に自分の損害に対して行動するよう誘導すること」と定義されている。
横領は、刑事詐欺や民事詐欺として起訴することができる。民事詐欺の場合、雇用者は従/業員に対して訴訟を起こすことができる。(より詳しくはFind Lawの解説 参照)
⑥ Hedge Fund Related Fraud
⑦Late Day Trading (レイト・デイ・トレーディング)
1)「レイトデイ・トレーディング」とは、時間外に取引を実行し、その日の市場取引の終了前に実行されたかのように記録する方法をいう。レイトデイ・トレーディングでは、他の市場参加者がトレーディング時間中に利用できなかった可能性のある市場情報をトレーダーが使用できる。
深夜の取引に従事することは重罪であり、そうすることは証券詐欺の民事上および刑事上の告発につながる可能性がある。
この取引慣行は違法であるが、投資信託のマネージャーがこれらの取引をあたかも記録するように許可しているため、一部のヘッジファンド・マネージャーおよび特定の有利な投資家は、注文が数時間後に受け取られたとしても、通常の取引時間中に発生したものとして、前の取引日の価格を取得することが許可されている。
連邦法執行機関はこれらの個人を標的としており、深夜の取引に従事している人はだれでも厳しく取り締まっている。
レイト・トレーディングとは、通常午後4時に取引が終了した時点で、ミューチュアル・ファンドがその純資産価値(NAV)を計算した時点以降に、ミューチュアル・ファンドの株式を購入または償還する注文を出すことを指す。基準は東部標準時であるが、その日の時点ですでに決定されている以前のNAVに基づく価格を受け取ることができる。
レイト・トレーディングは、ミューチュアル・ファンドの株式を購入または償還しなければならない価格に関する連邦証券法に違反するとともに、他の投資家には利用できない利点をレイト・トレーダーに与えることにより、これらのミューチュアル・ファンドの無実の投資家を詐欺したことになる。特に、この場合トレーダーは、市場の動きに関する情報を知り、市場の動きに関する情報が公開される前に設定された価格で投資信託の株式を購入または償還できることから、ミューチュアル・ファンドの無実の他の株主を犠牲にしてアドバンテージを獲得できる点で違法性が高い。
レイト・トレーディングを含む最近のSECの法執行活動を検索するには、SECサイトをクリックされたい。
B. 証券詐欺に関する罰則法規定の詳細の仮訳
a) 証券詐欺の罰則規定
証券詐欺の罰則は、18 USC § 1348(Securities and
commodities fraud)(法律名:Sarbanes-Oxley Act of 2002 (注5))の下で犯罪を構成する行為または不作為の性質に応じて異なる制裁により異なる。
・証券詐欺の各事例につき最長5年の拘禁刑
・有価証券の価値に応じた罰金の支払い
・詐欺金額の返還(賠償)
・虚偽であると知る必要がある報告書を証明する者は、500万ドル以下の罰金または20年以下の拘禁刑またはこれらを併科した責任を負う。
b) 連邦現行法律集第18編§ 1348 の連邦証券詐欺の有罪判決に基づく罰則規定
18 U.S.C.§1348の下での連邦証券詐欺の有罪判決は、最長25年連邦刑務所での拘禁刑と罰金の刑罰を受け、これらの併科もある。
証券詐欺などすべての連邦金融詐欺犯罪では、総損失額を計算することは大多数のケースで科された実際の刑に大きな影響を与える。
また、量刑ガイドラインは、実際の損失ではなく、意図したとおりに損失を定義することに留意すべきであるが、このアプローチを使用することの公平性について懸念を表明している連邦裁判所の裁判官もることに留意すべきである。
c) 連邦証券詐欺罪の具体例
①Insider Trading:インサイダー取引は、公開されている情報へのアクセス権を持つ人による上場企業の株式または有価証券の取引を含むもの。この情報にアクセスできない投資家にとっては不公平という事実があるため、違法である。
②Churning:過剰売買(チャーニング)は、クライアントの利益を犠牲にしてブローカーに手数料を発生させるために、過剰な株式を売買するスキームをいう。ブローカーは、顧客のアカウントの投資決定を制御する必要があります。
③虚偽(不実)表示(Misrepresentation)
不実表示は、誰かがセキュリティに関する価値観を操作することを意図して、セキュリティに関する誤った説明や表現を他の人に意図的に行い、その不実表示の効果から利益を得る場合に発生する。
④ポンプ・アンド・ダンプ(Pump and Dump)
これは通常、コールド・コール(一般的に電話、電子メール、またはソーシャルネットワーク上の接続を介して、そのような相互作用を期待していない、将来の顧客またはクライアントに接近するセールスプロセス。通話を受信している人が通話を期待していないか、販売担当者が連絡を取るよう特に要求していないため、「コールド」という言葉が使用される。コールドコールは通常、一般にテレマーケティングとして知られている販売プロセスの始まりである)のテレマーケティング担当者が高圧の販売手法で疑わしい株を購入するように人々を説得できるときに発生する。このタイプの活動は、株価を「押し上げる」のに十分な需要を生み出す可能性があるが、株式が望ましい価格に達した後、相当の利益を確保するために売却または「ダンプ」され、投資家には損失だけが残る。
会計帳簿詐欺は、会計士が上場企業の財務記録を操作または改ざんして、資産と負債を偽って表現することを目的としている。
⑥ 部外者の違法侵入詐欺(Outsider trading)
金融システムデータベースをハッキング後のデータ侵害により、部外者取引詐欺はSECによって起訴される。言い換えれば、主な標的は、企業に不法にハッキングして、一般に公開されていない情報を入手する人々が犯人である。
【裁判実務上の米国弁護士のアドバイス】
上記のとおり、証券詐欺は厳しい罰則を伴い、連邦法の下でクラスC重罪(Class C felony)として知られている。これは、個人が多額の罰金と実刑判決を受けるという意味である。これら2つのペナルティは、組み合わせることができるか、または別々に科すことができる。最長20年の実刑判決が出される可能性があるが、通常、これは証券詐欺の各犯罪ごとに5年の実刑判決が下される。
*罰金と賠償
最大500万ドルまでの相当な罰金を命ぜられる。場合によっては、保護観察を受ける可能性がある。もちろん、これは事案の個々の事実に依存し、金銭的損失がないときに下される。
また、証券詐欺の被害者の損失の応じた額を補償する賠償も可能である。
(2)犯罪手口の解析
この部分に関し、7月16日の連邦検事局のリリース文の事実関係は1月21日のリリース文とほぼ同一であり、以下では異なる部分のみ引用し、仮訳する。
起訴に関し提出された裁判所文書および7月10日の裁判官が量刑に関する当事者の主張を聴取する量刑聴聞(Sentencing Hearing)によると、少なくとも2007年から2019年9月までの間、被告ブラウンは自身の会社である「Oodles Inc.」およびそのさまざまな関連会社(これらを総称して「OODLES」という)を通じて巧妙なポンジー計画に従事することにより、少なくとも60名の犠牲者から、2,250万ドルを不正に入手した。
裁判所の記録によると、ブラウンは建築家であり、唯一ではないにしても、詐欺の主な運営者であり、彼の宗教的評判と地元コミュニティでの尊敬される地位を利用して、投資家の犠牲者に金銭で彼を信頼させるよう仕向けた。
法廷文書によると、ブラウンはOODLESに数千ドルから数百万ドルを投資した家族、友人、隣人および仲間の教会員を騙した。ブラウンは被害者に自分のお金を投資させるために、OODLESが数億ドルの知的財産、つまり家族向けのエンターテインメントショーや宗教をテーマにした映画を所有していると意図的に誤って表明した。ポンジ・スキームの一環として、ブラウンは被害者に対し、これらの知的財産をさまざまな有名メディア企業への差し迫った売却について繰り返し嘘をついた。不正行為を永続させるために、ブラウンはOODLESへの投資または融資を勧誘するマーケティング資料を開発した。
ブラウンが以前の法廷で認めたように、被害者を説得するためのスキームは合法的であり、支払いの遅延についての説明を求めた投資家をなだめるために、ブラウンは偽の銀行取引明細(bank statements)や偽造された会社の合意を含む、詐欺的で誤解を招く声明や架空の情報を被害者に提供した。とりわけ、ブラウンはまた、有名なメディア企業の従業員と少なくとも1つの法律事務所になりすまして、彼のポンジ計画に正当性を持った外観を追加させた。
2.1月21日判決後のブラウン被告の罪状の見直し内容と7月10日判決への反映
法廷文書と7月9日の裁判所の量刑聴聞によると、ブラウンは裕福なライフスタイルを送り、OODLES取引とは無関係の個人経費に被害者のお金のかなりの部分を使った。また、ブラウンは一般に「ポンジ支払」(Ponzi payments)と呼ばれる、既存の投資家への支払いを行うために、新しい投資家から提供された資金を回して使用した。
量刑聴聞で、裁判所はブラウンの詐欺的な計画によって引き起こされた甚大な被害について、ブラウンの犠牲者の一部からの声明を含む証拠を聞いた。これには、被害者の巣の卵の一部を教育および退職のために取っておいたなけなしの資金を用用いた投資を強いたこと、および被害者の一部を退職から職場復帰すことを含む被害者の一部に深刻な経済的および心理的被害を与えたことであった。
2020年1月21日、ブラウンは「証券詐欺」と「取引マネーロンダリング」に対する有罪を認めた。ブラウンに対する増刑判決(enhanced sentence)(注6)について7月10日に伝えたとき、裁判所はブラウンの反省や説明責任の欠如、およびブラウンによるさらなる犯罪から国民を保護する必要性を検討した。
すなわち、被告が何十年も前にボランティア組織で彼の良い性格のためのサポートの手紙を求めるために働いていた多くの個人に送った被告の無実を訴えるビデオの存在、ブラウンがそのビデオで提示した誤った情報に基づいて、電子メールの受信者の一部はブラウンを支援する手紙を書き、裁判所に提出したなどの事実が明らかとなった。
また判所所は、ブラウンに代わって送信された最近の電子メールの証拠も受け取り、ブラウンの無実とブラウンが費用を支払うのを助けるためにローンを勧誘することについてのブラウンが嘘を繰り返し、ブラウンは近い将来に利益を持って返済すると繰り返している事実をも確認した。
長期の刑期判決を科す際に、ベル裁判官(Judge Bell)はほとんどのポンジー計画は恐ろしいものであり、ブラウンの行為は最悪の方法で犯され、最も脆弱な犠牲者の一部に害を及ぼす最悪の詐欺の一部であると指摘した。ブラウン被告は判決の聴聞会の終わりに拘留され、直ちに刑の執行が開始された。
3.高齢者詐欺を阻止するためのノースカロライナ州西部地区の連邦検事局のイニシアティブの概要と連邦司法省の取り組み
(1) 7月10日リリースの最後に、連邦司法省やノースカロライナ州西部地区の連邦検事局の取り組みの概要を引用している。わが国でも国民生活センター等での警告(注2)にもかかわらず被害が減らない原因や具体的対処策を考える上で参考となると主あるのでやや詳しく引用、仮訳する。
2019年3月、ノースカロライナ州西部地区の連邦検事Andrew Murrayは、同州において高齢者を狙った金融詐欺の調査と訴追の取り組みを拡大することにより、高齢者の金融搾取と闘うことを目的とした「高齢者司法支援イニシティブ部(Office’s Elder JusticeInitiative)」(注7)を立ち上げる旨発表した。その目的は、詐欺を特定し、金融詐欺の被害者にならないようにする方法について高齢者を教育するとともに法執行パートナーとの連携を強化するものである。
(2) ノースカロライナ州「高齢者司法支援イニシアティブ(NCW Elder Justice Initiative)」等の概要
米国ノースカロライナ州西部地区検事局は、高齢者ヘの保護者の放棄(neglect)、虐待、金銭的搾取と闘うことに力を注いでいる。このイニシアティブの一環として、事務局は以下の活動に積極的に取り組んでいる。
つまり、高齢者を標的とする、または不釣り合いに影響を与える金融詐欺犯罪を調査して起訴する。
【NCWエルダー・ジャスティス・イニシアティブの詳細】
①高齢者への虐待を特定して対応するために、法執行機関にトレーニングとリソースを提供する。
②高齢者の搾取と金融詐欺を特定して対応する方法について、米国の高齢者とヘルパ―等のための実践的なトレーニングセミナーを開催する。
③高齢者に著しく低水準のケアを提供する老人ホームやその他の施設を責任などを追求する。
④高齢者への虐待と戦うために、州や地方のパートナーとの調整を促進する。
我々の地区の公共サービスのお知らせは、https://youtu.be/qBGGAA7Mxboにある。
連邦司法省の高齢者司法支援構想の詳細については、elderjustice.govを参照されたい。そこには、検察官向けトレーニング・リソース(PROSECUTOR TRAINING &RESOURCES)、学際的チーム・ツールキット(MDT Guide and Toolkit)、およびアウトリーチ・リソースも確認できる。
【添付資料】
パンフレット:https://www.justice.gov/usao-edky/page/file/1038056/download (各2頁)
4.わが国におけるネズミ講とマルチ商法の相違点と行政処分および処罰規定
弁護士サイトで寺垣俊介氏が比較的わかりやすく解説している。抜粋して引用する。なお、リンク、補足は筆者の責任で行った。
(1) ネズミ講の特徴
第二条 この法律において「無限連鎖講」とは、金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。
ねずみ講では、「儲かるビジネスがありますよ」と勧誘して高額の会員費を請求します。他人を勧誘すると、会員費の半分が自分に、もう半分が上のメンバーに分配されていきます。(取り分は組織によって異なります)
マルチ商法と違って特定の商品を扱っておらず、勧誘による会員の登録料でまわしているので、勧誘ができなくなると収入が途絶えビジネス自体が破綻する。勧誘するだけで金品が得られ手軽なため蔓延しやすいが、投資家人口は有限で最終的に必ず崩壊するシステムのため、ねずみ講の上にいる人は得をし、下にいる人は会員費を回収できず損をする。
(2) マルチ商法の特徴
(1) 特定商取引法の規制対象となる「連鎖販売取引」 (法第33条)
特定商取引法は、「連鎖販売業」を次のように規定しています。
1.物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
2.再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
3.特定利益が得られると誘引し
4.特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの
連鎖販売取引に対する規制としては以下述べるとおり 、(1)行政規制、(2)民亊ルールに大別される。
(1) 行政規。
1.氏名などの明示(法第33条の2)
2.禁止行為(法第34条)
3.広告の表示(法第35条)
4.誇大広告などの禁止(法第36条)
5.未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第36条の3)
6.書面の交付(法第37条)
7.行政処分・罰則(業務改善指示(法第38条)や業務停止命令(法第39条)、業務禁止命令(法第39条の2)などの行政処分のほか、罰則(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する; 六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)の対象となる)
(2)民亊ルール
8.契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第40条)
9.中途解約・返品ルール(法第40条の2)
10.契約の申込みまたはその承諾の意思表示の取消し(法第40条の3)
11.事業者の行為の差止請求(法第58条の21)
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マネー・ミュールとして行動する個人は、個人情報の盗難・なりすまし、個人での責任債務、信用スコアへの悪影響、将来的に銀行口座を開くことができないというリスクにさらされる。また、彼らとその家族は、暴力で犯罪者に脅かされたり、マネー・ミュールとして活動し続けなければ、身体的に攻撃される可能性がある。さらに、これらの個人は拘禁刑、罰金または罰となる社会奉仕サービスを負うことなどに直面する。
特に米国では、連邦法に基づく潜在的な責任を負うものとしては、1)郵便(Mail Fraud :18USC §1341 )、2)通信詐欺(Wire
Fraud:18USC 1343 )、3) 銀行等金融機関向け詐欺(Bank Fraud:18USC1344 ):筆者ブログ (筆者注5-3)参照、マネー・ロンダリング(Money Laundering:18 USC1956 )、トランザクション・マネー・ロンダリング(Transactional Money Laundering:18 USC1957 )、無許可の金銭送信ビジネスの禁止(Prohibition of Unlicensed Money Transmitting:18USC 1960 )、および悪質なID盗用(Aggravated Identity Teft:18 USC 1028A )が含まれる。 これらの犯罪の有罪者には、最大100万ドルの罰金、最長30年の拘禁刑が科せられる(両者の併科もある)。
(筆者注2) 最近時の国民生活センターからの警告ニュースでも、以下のように違法投資詐欺手口等の関連する警告が引用されている。
(筆者注3) 証券詐欺罪(securities fraud)」といってもその構成要件の内容は複雑である。
株式や商品取引市場に関わる詐欺的または詐欺的な活動は、一般に証券詐欺として知られている。「証券」という用語には、投資家の収入に対する権利、議決権、その他の利益を表す幅広い金融商品が含まれる。株式、自己株式、債券、および債務証券(notes)は、膨大な数の有価証券のごく一部である。現金や有形資産とは異なり、証券には本質的な価値はない。それらの価値は、市況、発行者による表明、およびその他の外的要因に基づいている。
他の詐欺行為と同様に、証券詐欺は通常、1つまたは複数のスキームを介して実行され、他の人に金銭などの価値のあるものを喜んで拠出する。ただし、一部の種類の証券詐欺には横領が含まれる場合があり、これは盗難犯罪である。連邦および州レベルの法令は、証券詐欺を禁止しているが、証券取引委員会(SEC)などの連邦政府機関は、申し立てられた犯罪の調査および起訴において重要な役割を果たしている。オンライン取引などの比較的新しい開発により、サイバー犯罪スキームが増加し、犯人容疑者を起訴するための振り込め詐欺法の使用が増加した。
【証券詐欺に係る連邦および州法】
アメリカ合衆国法典には、証券業界を規制する一連の複雑な法律がある。連邦法で定義されている証券詐欺行為には、以下の法令違反が含まれる。
連邦政府による証券および商品詐欺の犯罪は、商品、商品オプション、または証券に関連して、「スキームまたは策略(artifice)」を用いて個人を詐欺したり、不正にお金を取得したりすることを禁じている。
①法人証券詐欺(Corporate Securities Fraud): 場合によっては、企業全体が証券詐欺に従事している。例としては、2000年代初頭のエンロンスキャンダルや2007-08年のサブプライム住宅ローン危機などがある。上級幹部役員は、企業の構造を使用して詐欺的な計画を実行したり、株価を操作するために公的書類に企業に関する情報を偽ったり、差し控えたりする場合がある。また、企業はポンジ・スキームのような行動を通じて投資家を欺くこともある。
②個人証券詐欺:証券ブローカー、投資銀行家、アナリスト、トレーダーは、証券業界のいくつかの専門職を挙げれば、彼らの仕事を通じて得たアクセスとリソースで証券詐欺を犯す可能性がある。株価に影響を与えるためにインターネット上で虚偽または誤解を招く情報を広めることは、証券詐欺の一般的な形式である。証券詐欺のもう1つのよく知られた形式は、「インサイダー取引」である。これは、一般には入手できない情報を利用して株式市場で取引することを含む。
プライム・バンク・プログラムは、投資家が共有する莫大な利益を生み出すために、投資家の資金が秘密の海外市場で「プライムバンク(prime bank)」の金融商品を購入および取引するために使用されると説明されることがよくある。ただし、実際はこれらの商品も、それら金融商品が取引されているとされる市場も存在しない。スキームに正当性を与えるために、詐欺師たるプロモーターは複雑で専門化した公的な文書を配布する。売り手は頻繁に潜在的な投資家に、そうでなければウォールストリート、またはロンドン、ジュネーブ、または他の世界の金融センターでトップレベルの投資家のために予約されるプログラムへの特別なアクセス権があることを伝える。また、投資家はリスクがほとんどなくても100%以上の利益が可能であると説明される。
この見込み投資家たる被害者は、市町村、慈善団体、その他の非営利組織を含む個人および団体が対象となる。これらのスキームの推進者は、“USA Today”や“Wall Street
Journal”などの全国紙に広告を掲載して、驚くべき大胆さを示した。これらのスキームの一部のプロモーターは、「プライム・バンクノート」という用語の使用を避け、彼らのプログラムが不正ではないことを実証するためにプライム・バンク商品を含まないことを見込み投資家に伝える。用語に関係なく、基本的な提案–プログラムには国際金融商品の取引が含まれる–点は同じであり、投資家はこのような詐欺に引き続き警戒する必要がある。
国際的な詐欺師たちは、比較的短期間で非常に高い利回りをもたらすと思われる投資計画を発明する。このスキームでは、割引で購入し、プレミアムで販売できる「銀行保証」を利用できると主張する。「銀行保証」を数回再販することにより、彼らは投資に対して卓越した利益を生み出すことができると主張する。たとえば、1000万ドル相当の「銀行保証」を2回の利益で10回に分けて販売する場合、または「トランチ(tranches)」(注8)の場合、売り手は20%の利益を受け取れる。このようなスキームは、しばしば「ロール・プログラム(roll program)」と呼ばれる。
スキームをより魅力的にするために、詐欺師はしばしば「保証」を世界の「プライム・バンク」によって発行されたものと呼び、したがって「プライム・バンク保証」という用語を使用する。 「プライム・バンク・ノート」や「プライム・バンク・ベンチャー」など、他の公的な用語も使用される。そのようなスキームに関連する法的文書では、被害者が機密保持および迂回回避契約を締結し、「1年1日」で投資収益を提供し、国際商工会議所(ICC)が必要とするフォームを使用することを要求することがよくある。実際、ICCはすべての潜在的な投資家に対して、そのような投資が存在しないという警告を発している。
「2002年サーバンズ・オクスリー法」は、企業による不正な財務報告から投資家を保護するために、その年の7月30日に米国議会が可決した法律である。また、「2002年SOX法」または「2002年企業責任法」とも呼ばれ、既存の証券規制に対する厳格な改革を義務付け、法律違反者に厳しい新たな罰則を科した。(同法の名称は法案上程者である上院Sen. Paul S. Sarbanes (D-Md.) と下院Rep. Michael G. Oxley (R-Ohio)をとったもの)
2002年サーバンズ・オクスリー法は、エンロン・コーポレーション、タイコ・インターナショナルplc、WorldComなどの上場企業が関与した2000年代初頭の金融スキャンダルに対応して行われた。知名度の高いこれら詐欺は、企業の財務諸表の信頼性に対する投資家の信頼を揺るがし、多くの人が数十年前の規制基準の見直しを要求した。
2002年のサーバンズ・オクスリー法に概説されている規則および執行方針は、1934年の証券取引法および証券取引委員会(SEC)によって施行されたその他の法律を含む、セキュリティ規制を扱う既存の法律を改正または補足した。この新しい法律は、4つの主要な分野で改革と追加を設定した。
① 企業責任の明確化
② 刑事処罰の強化
③ 会計規制の明確化
④ 新しい保護規定
同法の規定で重要なものは、Section 302, Section 404, and Section 802である。(以下は略す)。
増強された量刑判決(enhanced
sentence)は、通常、前の有罪判決または犯罪のある分類から別のより高いレベルの犯罪の分類に関わる状況の重大な性質によって増加した判決文を意味する。増強された量刑は州により異なる連邦法および州法に準拠する。
この場合の"増強事実(enhanced facts)"とは、犯罪の有罪判決に科される可能性のある判決文を強化するために陪審員によって明らかとなる憲法上必要となる事実である。量刑ガイドラインは、特定の有罪判決に対するガイドラインに規定されている推定文を超える判決を裁判所が科すために頼る可能性のある事実を記述するために、「加重要因(aggravating factors)」という言葉を使用することができる。
米国ノースカロライナ州西部地区検事局は、高齢者ヘの保護者の放棄(neglect)、虐待、金銭的搾取と闘うことに力を注いでいる。このイニシアティブの一環として、事務局は以下の活動に積極的に取り組んでいる。
つまり、高齢者を標的とする、または不釣り合いに影響を与える金融詐欺犯罪を調査して起訴する。
【NCWエルダー・ジャスティス・イニシアチブ(ノースカロライナ州 Elder Justice Initiative)の詳細】
①高齢者の虐待を特定して対応するために、法執行機関にトレーニングとリソースを提供する。
②高齢者の搾取と金融詐欺を特定して対応する方法について、米国の高齢者とヘルパー(caretakers)のための実践的なトレーニングセミナーを開催する。
③高齢者に著しく低水準のケアを提供する老人ホームやその他の施設を責任などを追求する。
④高齢者への虐待と戦うために、州や地方のパートナーとの調整を促進する。
我々の地区の公共サービスのお知らせは、https://youtu.be/qBGGAA7Mxboにある。
連邦司法省の高齢者司法支援構想の詳細については、elderjustice.govを参照されたい。そこには、検察官向けトレーニング・リソース(PROSECUTOR TRAINING &RESOURCES)、学際的チーム・ツールキット(MDT Guide and Toolkit)、およびアウトリーチ・リソースの解説がある。
(注8) traunches:証券化商品を、リスクレベルや利回りなどの条件で区分したもの。特定の条件により区分することをトランチング(tranching)といい、区分された各部分をトランシェ(tranches)という。社債の場合であれば、優先出資証券、劣後債あるいは中間のメザニン債といったものに分割され、それぞれ投資家に販売される。
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