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米国商務省は、FCCに対しオンラインプラットフォーム企業の責任範囲を明確にし、検閲から保護するための規則制定の請願書を提出」(米国大統領選挙の重要課題その2)

  7月27日、米商務省・国家電気通信情報局(NTIA)は、ウィルバー・ロス米国商務長官に代わって、通信品位法(Communications Decency Act)第230条に関する規制を明確にするよう規則作成の請願書(petition for rulemaking)を連邦通信委員会(Federal Communications Commission :FCC)に提出した旨、リリースした。

 この請願書は、オンラインプラットフォーム企業によるオンライン検閲の防止に関する2020年5月28日の大統領行政命令に応じて提出された。これは、オンラインプラットフォームが法律(Communications Decency Act)の下で特に概説されていない方法でコンテンツへのアクセスを制限する場合、通信品位法第230条の保護を主張できる時期を明確にするようFCCに求めている。

 この問題の動きの背景は、明らかにトランプ大統領に選挙対策である。自身は日頃思いつき、場当たり的な言動訴繰り返すドナルド・トランプ米大統領が5月28日、Facebook、Google、Twitterなどのオンラインプラットフォームによる「検閲(censorship)」を取り締まるための大統領行政命令に署名した点にある。この動きは、大統領が「郵送投票は実質的に不正な行為だ」(郵送投票は自身の陣営に不利であると信じ切っている) (筆者注1)と主張した2件のツイートに対しTwitterが"要事実確認"のラベル付けをしたことをきっかけとしたものである。ツイートをばらまきながら、一方では、オンライン・プラントフォームのやり方が検閲であるとする、きわめて身勝手な行動である。

 今回の連邦行政規則第1.401条に従い、合衆国憲法修正第一との関係で聖域とされてきたがこの問題につき大統領選挙の争点もあるこの問題に取り組み始めたことは言うまでもないが、一方、FCCは極めて透明で公正なFCCの規則制定手続を行う機関であることも間違いない。(筆者注2)

 今後の大統領選挙の今後を見極め上で見極める重要な問題である、引き続きウォッチする。

1.商務省のリリースの概要

 ウィルバー・ロス商務長官は、「多くのアメリカ人は、オンライン・プラットフォームを利用して情報や接続を維持し、重要な問題についての考えやアイデアを共有している。これにより、公共政策や今後の選挙に関する自由で開かれた議論につながることがよくある」 「インターネット上のアイデアの強力な市場と世界中の情報の自由な流れを促進することは、長い間米国の政策であった。トランプ大統領は、すべてのアメリカ人が自らの見解を表明する権利を保護することを約束しており、同時に不当な制限あるいは少数の強力な企業からの選択的な検閲に直面してはならない」と述べた。

 また請願書は、FCCにさらなる明確性を求めている。

  ① Communications Decency Act第230条は、ソーシャルメディアの節度あるコンテンツ管理の決定を提供するかどうか、およびその程度

  ②ソーシャルメディア企業による節度あるコンテンツの管理と編集上の決定において、第230条がコンテンツをもはや保護しない程度にコンテンツを形成する条件の内容

  ③ ソーシャルメディアの節度あるコンテンツ管理や慣行に関する開示義務の内容

 請願原本へのリンクはここから可である。       

2.7月27日NTIAのリリース文「NTIA Petition for Rulemaking to Clarify Provisions of Section 230 of the Communications Act」

 2020.5.28の大統領行政命令13925(E.O.13925)に基づき、連邦行政規則第1.401条(47 CFR § 1.401 - Petitions for rulemaking.)に従い、国家電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration :NTIA)を通じて、商務長官(以下、「長官」という)は、連邦通信委員会(FCCまたは委員会という)が1934年の通信法第230条の規定を明確にするためのルール作成を開始することを謹んで(respectfully)要求する。

3.通信品位法第230条及びトランプ陣営の選挙戦略上のソーシャルメデイアの課題に関する代表的解説記事

(1) 2020.5.29「トランプ大統領、SNS標的の大統領命令に署名。通信品位法第230条の見直しを指示」 (Engadget 日本版から引用)。事実関係の説明が中心である。(筆者注3)

(2) 2020.5.30 Business Insider日本訳「トランプの大統領令の影響は?…アメリカの通信品位法第230条について知っておくべきこと」

(3) 平野晋「免責否認の法理(『通信品位法』230条):イースターブルック(主席)裁判官担当の「GTE Corp.」「Craigslist」事件から、コジンスキー主席裁判官担当の「Roommates.com」事件まで」(平野氏とは、NTTコミュニケーションズ株式会社法務担当法務担当課長時代からの学会などでお付き合いがある)

4.その他FCC規則制定の手続き

アメリカ大学ワシントン法学部非常勤教授James Miller氏の解説文を引用する。

(FCCエンジニアリングおよぶテクノロジー局の上級法律顧問でもある)。

Proceedingの開始

・FCCの職権による場合

 -Notice of Inquiry(行政命令ルート)

 -Notice of Proposed Rulemaking(法規命令ルート)

・外部から依頼する場合

-Petition for Rulemaking(法規政策・規則制定の依頼)

 -Petition for Declaratory Ruling(宣言的・確認審決の依頼―裁定依頼)

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(筆者注1) 5月27日付け筆者のブログ「米国の2020年大統領選挙の予備選や本選における全面的な不在者投票や郵送投票の導入の是非問題点を問う(米国大統領選挙の重要課題―その1)」

(筆者注2) 情報通信総合研究所 木村寛治「きわめて透明で公正なFCCの規則制定手続」参照

その制定手続の概要は通常、おおむね次のようである。

(1)まず早い段階から規則制定の予定を予告(Notice of Proposed Rulemaking)

必要に応じて、FCCの「仮の結論」(Tentative Conclusion)をも提示する

(2)利害関係者や各方面から広くコメントを求める(Comments)

コメント提出期限は通常1か月程度とされ、場合によっては「再コメント」(Reply Comments)の手続がとられる。これは、集まったコメントを公示し、さらに「コメントに対するコメント」を求めるものである。

(3)最終的に制定される「規則」(OrderまたはRule)

(筆者注3) 2020.5.29「トランプ大統領、SNS標的の大統領命令に署名。通信品位法第230条の見直しを指示」Engadget 日本版から引用。事実関係から説明が中心

 ドナルド・トランプ米大統領がFacebook、Google、Twitterなどのオンラインプラットフォームによる「検閲」を取り締まるための大統領命令に署名しました。この動きは、大統領が「郵送投票は実質的に不正な行為だ」と主張した2件のツイートに対しTwitterが"要事実確認"のラベル付けをしたことをきっかけとしたものです。大統領は命令への署名に際し「率直に言って、われわれは今日米国の歴史で直面した最大の危機のひとつから言論の自由を守るためにここへ来た」と述べました。

 トランプ大統領が、Twitterに投稿した2件のツイートに"要事実確認"のラベル付けをされ激怒した話は昨日お伝えしたとおりですが、この件に対しホワイトハウスは、インターネットサービスがユーザーから投稿されたコンテンツに対する最終的な責任を問われない根拠とされる、米通信品位法第230条にメスを入れようとしています。米通信品位法第230条が制定された背景には、1990年代半ばに当時のパソコン通信企業を相手取って起こされた2件の訴訟問題があります。

 まず一方は、Conpuserveが、フォーラム(会議室システム)にニュース会社が配信した情報に名誉毀損的内容が含まれていたことに対し起こされた訴訟において、自らは単なるコンテンツ"ディストリビューター"で、配信内容の責任はニュース会社にあるとしたことで責任を問われなかった事例。

 もう一方は、同じくパソコン通信企業のProdigyが、掲示板(BBS)に書き込まれたやはり名誉毀損的情報について訴訟起こされたものの、同社は「家族が安心して楽しめるサービスを提供する」とのポリシーのもと普段はユーザーが不快な思いをする可能性がある書き込み内容を削除する対応をしていために、掲示内容の編集権があるとされ、コンテンツ"パブリッシャー"であると判断され責任を問われた事例です。

 2つの問題を並べて見比べると、Prodigyのほうが普段から良心的かつ顧客に有益なサービスを提供していたにもかかわらず、法的にはCompuserveのほうが正しいという、矛盾した結果が生まれます。この状況を整理するために導入されたのが、ユーザー参加型の"双方向コンピュータ サービス"企業は第三者によって提供されたコンテンツに対して、一部の例外を除き法的責任はないと定める通信品位法第230条です。

 ただし、そのままだと挑発的、過度に暴力的、誹謗中傷、または卑猥や不潔といった、いわゆる公序良俗に反する内容の情報が溢れかえっても、誰も手を付けない状況になりかねません。230条ではプラットフォーム事業者、またはプラットフォーム利用者がこれら条件に反すると判断したコンテンツを削除しても、プラットフォーム側は責任を負わないとしており、その結果プラットフォーム側が提供したくない情報については、提供しなくても良いとも解釈できる状況を生み出しています。

 インターネット企業の多くはシリコンバレーを本拠としており、そこはリベラル色が特に強い地域であるため、Twitterが公正だと思っていてもその判断が自然と反保守的になっている可能性はあるかもしれません。しかし現状では230条によってそれが許されている状況であり、大統領命令はこの保護を取り去ろうとしていると、Wall Street Journalなどは伝えています。ただ、230条については民主党のジョー・バイデン氏やバーニー・サンダース氏らもインターネット企業に過度の免債を与えるものだとして改正もしくは廃止を求めており、またソーシャルメディアに反保守的なバイアスがあることを示す決定的な証拠もありません。

 今回大統領が出した命令は、2019年8月にホワイトハウスが用意していた案をベースとしたものと指摘されます。The Guardianによれば、この大統領命令(草稿)はソーシャルメディアプラットフォームが投稿されたコンテンツの編集を禁止することで、今回のように大統領のツイートへのラベル付けをできなくするとともに「不正なポリシー」を取り除くことで政治的な中立性を導入させようとするものだと解釈されるとのこと。

 大統領は長年Twitterを活用して自らの主張を述べてきましたが、その一方で、ソーシャルメディア企業が保守派に偏っていることにも長く批判をしてきています。今回の命令への署名に際してもTwitterを名指しし、「いずれ閉鎖させることになるだろうが法的手続きが必要だろう」「合法的に閉鎖できるようになればそうする」とまで述べています。

 ちなみに、大統領にとっていまは11月の大統領選挙で再選を果たすための重要な時期。最近はアメリカ国内の死者が10万人を超えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を批判する声も高まっています。一部では今回の大統領命令は、そうした国民の不満から注意をそらし、保守派の支持を固めたいのではとの見方もあり、民主党のナンシー・ペロシ議員は「残念なことに大統領令は、COVID-19に打ち勝つための国家的戦略提供に失敗したことを覆い隠すための必死の試みだ」と述べました。

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