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英国政府のEUのGDPR等の国内法化に向けた新情報保護法案の公表およびICOの契約ガイダンス(案)の意見公募等保護法制強化の動向(その4)

 

(G) 英国の情報機関の情報処理とGDPRとの関係

 43 英国の情報局保安部(Security service:MI5)情報局秘密情報部(Secret Intelligence Service:SIS :MI6)、および政府通信本部(Government Communications Headquarters)からなる情報サービスによる個人データの国内処理は、現在、1998年法によって規制されている。 国家安全保障は各加盟国の唯一の責任であると述べる欧州連合条約第4条(2)(筆者注10)により、国家安全保障はEU法の範囲外である。したがって、国家安全保障活動に関連する個人データの処理および国家安全保障問題に対処する機関または機関による処理は、”GDPR”の範囲内ではない。その結果、”GDPR”の規定は加盟国の情報機関の特別な性質がゆえに適用されない。したがって、法案の第4編は、欧州評議会に基づく情報サービスによる個人データの処理のためのデータ保護体制規定を置く。  

 44 1998年法は現在のEU条約108(Convention for the Protection of Individuals with regard to Automatic Processing of Personal Data (“Convention 108”))と合致している。この法案の第4編は、現代化された「条約第108号」を採用し、情報サービスによって実施される個人情報の処理が将来の予測される国際基準と整合することを目指して、既存の体制を構築するものである。英国の諜報機関が既存の新興国家の安全保障上の脅威に対処できるようにする一方で、国家安全保障の背景において個人情報を処理するための規則を規定している。 

45 現在、1998年法に基づいており、かつ同法と整合的をとって、法案第4編の体系は、国家安全保障を確保するために必要なときにのみ適用できる、適切かつ比例した手続の適用除外規定を置く。また、1998年法と合致して、国家安全保障を目的とした特定の要件の適用除外がその事実の決定的証拠となることを証明する、国王が任命する大臣の署名した証明書を必要とする規定がある。  

46 英国の情報機関は従来から情報処理義務を遵守している。これらは2016年11月26日に施行された「調査権限法(Investigatory Powers Act 2016 )」 (筆者注10-2)に基づき、「法執行および情報機関監督コミッショナー(Investigatory Powers Commissioner )」 (筆者注11)により監督され、また内閣府改革政府安全保障審査に合わせた物理的、技術的および手続的統制によって支えられる。これには、人事面の吟味、データの分類に基づく制限の処理、内部ITのファイアウォールとエアギャップ(筆者注12)、アクセス制限などが含まれる。  

 47 英国の情報機関に適用される規制の構造は、他の立法にも見られるようになっており、データ処理の実践に関わるものを含め、すでにその活動に制限を課している。これには、 「1989年国家安全保障法(Security Service Act )」、「1994年諜報機関法(Intelligence Services Act 1994)」 「2000年調査権限規制法(Regulatory of Investigatory Powers Act 2000)」 (筆者注13)、および「2016年調査権限法」(以下、「2016年法」という)が含まれる。たとえば、2016年法の第7編では、情報機関がバルク個人情報のかたまり(datasets)をどのように保持、使用するかに関係する機関固有の令状を用意している。また、法律の権限を使用して取得したデータを誤って使用または公開した場合は、2016年法は多数の犯罪を作り出すと定める。 

【筆者の追加解説】

 議会上院事務局の法案注釈と一部重複するが、わが国ではほとんど正確に触れたものが少ない点でもあるので、筆者が当局のサイトをもとに行った追加的仮訳で補足する。 

 英国議会「国家情報・安全保障委員会(Intelligence and Security Committee of Parliament (以下、ISCという))」、「1994年情報サービス法(Intelligence Services Act 1994 )」にもとづき、情報保安部(MI5)、情報局秘密情報部(SIS)、および政府通信本部(GCHQ)の政策、管理、支出を調査するために初めて設立された。

 「2013年司法および安全保障法((Justice and Security Act 2013)」は、ISCを次の点で改革した。①議会の委員会にする。②より大きな権限を持たせる、③業務活動の監督、政府のより広範な情報およびセキュリティ活動を含む)委員会への付託権限を含む。

 ISCは、これら3つの情報機関と治安当局以外に、④内閣の合同情報委員会(Joint Intelligence Committee :JIC) (筆者注15) の「評価スタッフ(Assessments Staff)」や「国家安全保障事務局(National Security Secretariat)」といった内閣府の情報関連業務を検証している。さらにJICは、国防省の国防情報参謀部(Defence Intelligence Staff)9/17(107) (筆者注16) (筆者注17)や内務省の安全保障及び対テロリズム局(Security and Counter-Terrorism in the Home Office:OSCT) (筆者注18) の情報活動も監視している。 

 ISCのメンバーは議会によって任命され、委員会は議会に直接報告する。また、委員会は、国家安全保障上の問題について、英国首相に報告することができる。  

 ISCのメンバーは1989年公務情報機密法(Official Secrets Act 1989) 第1条(1)(b)の対象となり、職務を遂行する際に高度に分類された資料にアクセスすることができる。ISCは、内閣閣僚および高官からの証拠を入手し、そのすべてが報告書を作成するために使用される。 

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(筆者注10) EU条約(TEU:マーストリヒト条約(THE MAASTRICHT AND AMSTERDAM TREATIES)第4条2項(いわゆる加盟国の主権にかかる条項である)の原文を引用する。

  1. The Union shall respect the equality of Member States before the Treaties as well as their national identities, inherent in their fundamental structures, political and constitutional, inclusive of regional and local self-government. It shall respect their essential State functions, including ensuring the territorial integrity of the State, maintaining law and order and safeguarding national security. In particular, national security remains the sole responsibility of each Member State.

 (筆者注10-2) 国会図書館「外国の立法214(2002.11)」横山潔「イギリス『調査権限規制法』の成立―情報機関等による通信傍受・通信データの取得等の規制―」参照。 

(筆者注11) 

1.2017年3月3日テレサ・メイ首相は、調査権限法第227条にもとづきエイドリアン・フルフォード高等法院判事に任期3年の初代「法執行および調査機関監督コミッショナー(Investigatory Power Commissioner)」(以下「コミッショナー」という)に任命した。同判事の任命は直ちに発効する予定である。 

 テレサ・メイ首相は、次のとおり述べた

「フルフォード判事の指名を最初の調査監督官として発表することを嬉しく思う。 彼は、世界的な監督体制の一環として、捜査権限の使用を精査する重要な役割を担う重要な法律問題につき司法と専門知識について豊富な経験を持っている。」 

【エイドリアン・フルフォード判事の略歴 】

エイドリアン・フルフォード判事( Rt Hon Sir Adrian Fulford)は、1978年に弁護士として資格を得て、1994年に勅選弁護人に就任、1995年に刑事裁判所(Crown Court)のレコーダーに任命された。2002年11月21日に高等法院女王座部Queen's Bench Divisionの裁判官に任命された。 2003年3月11日に国際刑事裁判所の18人の裁判官のうち1人として就任、9年間の任期を務め、審理部に任命された。彼は2013年5月10日に高等法院判事に任命された。 

 2015年1月1日から、エイドリアン卿はイングランドとウェールズの高等法院の副上級裁判長を務め、2016年1月1日に上級裁判長に就任した。 現在はIT担当裁判官であり、また「王立裁判所・審判所サービス(Her Majesty ’s Courts and Tribunals Service) 」改革についての司法当局の指導者である。 

 なお、コミッショナーの任命を維持する一方で、フルフォード卿は控訴院判事のポストにもとどまる。 

2.英国内務省と初代ICPO(Investigatory Powers Commissioner ‘s Office)コミッショナ―に任命されたフルフォード判事は共同で次のリリースを行った。

「2017年9月1日から、エイドリアン・フルフォード(Sir Adrian Bruce Fulford) 控訴院裁判官は、捜査権の使用を監督する新しい役割を開始した。

 フォルフォード・コミッショナーは、警察、法執行機関、諜報機関の捜査権限の使用を監督する上で新たな役割を開始した。

これは、2016年に国王の裁可(Royal Assent)により与えられた「調査権限法(Investigatory Powers Act)」に定め強力な監督体制を確立する際の大きな道しるべとなった。その役割は、単一の独立した機関で検査と監督の両機能を確立することによって、以前は「チーフ・サーベイランス・通信傍受および情報サービス監視委員(Chief Surveillance, Interception of Communications, and Intelligence Services Commissioners) 」によって行われた法執行や情報機関への監視の役割を置き換えたことになる。

・フォルフォード・コミッショナーは、「調査権限法は、犯罪を調査し、国民を守るために警備諜報機関や法執行機関が責任を持って比例的に使用する権限を確実にするための世界的な監督体制を提供している。

・フォルフォード・コミッショナーは、監督責任を開始する際に、私たちが法律で定めた

本日から、IPCOは、以前のコミッショナー事務局が実施した監督機能を引き継ぎ、1997年警察法の下で許可された特定の警察活動の事前承認の責任を負う。

さらに、法務委員たるコミッショナー (筆者注13)の承認を得るために国務長官が発行する令状を必要とする司法の「ダブルロック」を含むコミッショナーのさらなる権限が、正式に導入される予定である。 

詳細な情報は、 「法執行および情報機関監督コミッショナー事務局(Investigatory Powers Commissioner’s office)」のウェブサイトで入手できる。  

3.英国メディアDaily Mail Onlineは、2014.3.8の記事で「高等法院の裁判官であり女王の法律顧問フォルフォード判事が、かつて犯罪者を刑務所から守るための「児童性愛情報交換センター(Paedophile Information Exchange)」の創設・支援者であった」と報じている。

 筆者としては、事実関係は確認できないし、本ブログとは直接関係ないので簡単に記事内容のみ引用する。(わが国でも、最近、児童ポルノ問題が社会問題化してきていることは事実であるが、この問題は別途取り上げたい)

   •  フォルフォード大統領は昨年、女王の顧問に任命された 

 •  彼は、悪名高い児童性愛情報交換センター(Paedophile Information Exchange)」Pedophile Information Exchange の創設メンバーであった。

•  警察は、「産業規模」で子供の虐待グループを注視している。 

•  彼はPIEを擁護するキャンペーンの創設メンバーとして表明している。 

•  当時、「同意」年齢はわずか4歳に引き下げることを要求した。 

英国で最も上級の裁判官の 1人 は子供たちとセックスを合法化しようとする卑劣な小児性愛者グループを積極的に支援するキャンペーンを行っていた。 

2013年、女王の法律顧問として指名されたフォルフォード判事は、警察が子供を「産業規模」で虐待していると推測している悪名高い児童性愛情報交換センター(PIE)の重要な支持者であった。

 ”Mail on Sunday”の調査によると、フォルフォード判事はPIEを擁護するキャンペーンの創設メンバーであり、公然と幼児の同意の年齢がわずか4歳に引き下げる必要があると主張していたことが判明している。  

 なお、1977年に英国で「児童性愛情報交換センター」Paedophile Information Exchange が設立されたが、1984年に解体された。詳しくはブログ「2017.7.25 cathy fox blog on child abuse 英国の児童虐待人権擁護NPOサイト「Judge Adrian Fulford-Can we trust him?」やWikipedeia 参照。なお、世界的人権擁護団体である”Human Rights Watch”は、9月22日付けで「国連:子どもの性的虐待を止めるよう北朝鮮に圧力を:政府は子どものレイプや性的虐待を否定」を報じている。この問題は世界的かつ重大な人権問題となることは間違いない。

 (筆者注12) エアー・ギャップ環境とは、パブリック・インターネットや非セキュア・ローカル・エリア・ネットワークなどのセキュアではないネットワークからセキュアなネットワークが物理的に分離され、エアー・ギャップの反対側にあるコンピューター同士は通信できない環境をいう。( IBM Knowledge Centerの解説から一部抜粋) 

 (筆者注13) 調査権限法案の中身で重要な任務規定がある。「令状の発行時の承認権限の二重化」である。議会サイトの説明に基づき、その内容を以下、仮訳する。 

4.この法案(調査権限法案)の規定では、「司法コミッショナー(Judicial Commissioner)」(「法執行および情報機関監督コミッショナー(Investigatory commissioner)」およびその他の(通常の)「司法コミッショナー」を総称する)は、首相によって任命され、司法コミッショナーは、法案の下で2つの主要な機能を有するであろう。第1に、令状(warrant)は「二重ロック」プロセスの下で発行され、国務長官と司法コミッショナーの両者の承認が必要となることを意味する。第2に、法執行および情報機関監督コミッショナーは、他の司法コミッショナーとともに、捜査権制度の監督に関して広範な任務を負うことになる。 

5.司法コミッショナーの役割は、「司法」とみなすことができる。なぜなら、それを説明するにあたって「司法」という用語を使用するだけでなく、司法コミッショナーの役割は(とりわけ)司法審査手続に適用される原則を参照して、国務長官の決定を支持する点にある。 「司法コミッショナー」として扱われ、司法審査の原則を参照して法執行上の決定を審査することを義務づけられた裁判官または裁判官は、司法機能の排除以外のものを必要とすると主張することは、したがって、憲法上の問題は、法律家がその役割の司法性に合致する形で司法コミッショナーを扱うかどうかである。 

(筆者注14) 横山潔「イギリス『調査権限規制法』の成立―情報機関等による通信傍受・通信データの取得等の規制―」 国会図書館「外国の立法214(2002.11)」参照。 

(筆者注15) JICは内閣府や各情報機関、また関連省庁の幹部で構成される委員会であるが、イギリスの「国家情報機関」(National Intelligence Machinery)と位置づけられている。JICは各省庁からインテリジェンスを集めて分析し、政府としての短期、長期の情報評価報告書を提供することで政治家を補佐する。またJICはイギリスの各情報機関を指示、監督する総元締めとしての役割を持っている。 

 JICは、情報機関の活動(情報収集、分析、評価)を指示、監督するほか、情報活動の計画を立案し、優先順位を決定して情報要求を行う。活動計画は、形式的にはJICで検討されたのちに関連省庁の長からなる「情報機関に関する事務次官委員会」のチェックを経て首相が議長を務める「情報機関に関する内閣委員会」で最終的に承認されるしくみとなっている。また、JICは情報機関の運営計画や予算の検討も行っている。 

 JICは内閣府の「情報・保安・回復担当内閣府事務次官」の元に管理されている。この情報・保安・回復担当内閣府事務次官はJICの議長も兼ねており、JICの意見は内閣に直接届く仕組みになっている。 

 JICのメンバーは外務・英連邦省、国防省、内務省、通産省、大蔵省、国際開発省、内閣府の幹部、各情報機関の長、評価スタッフ(Assessment Staf),事務局長(National Security Secretariat.)で構成され、場合によっては他の省庁からも召集される。 

JICには評価スタッフという20名から40名ほどの専属スタッフが存在する。評価スタッフは各機関から派遣された精鋭の分析官からなり、各機関から情報を集めて分析して情報評価報告書の下書きを作る。そのため、評価スタッフには法的に各情報機関から情報にアクセスする権限が与えられている。下書きは専門家からなる「現況情報グループ」とJIC上層部のチェックを経た後で情報評価報告書として政治家に提供される。(Wikipedia から一部抜粋) 

(筆者注16) 国防情報参謀部(Defence Intelligence Staff)は、国防省(MOD)および省と軍隊に対する戦略防衛情報の主要提供者として不可欠な部門であり、約4千人からなる大組織である。それは、①政策決定や軍隊のコ取組みと雇用を導く、②各種防衛情報にかかる研究および情報機器にかかるプログラム、③軍事作戦等の支援にかかる情報を提供する等、タイムリーな情報収集製品、評価や助言を行う。 

 「国防情報局長(Chief of Defence Intelligence :CDI)を筆頭に、Defence Intelligence Staffは次の責任を負っている。

  ① 諜報目的の機器(Intelligence products) (筆者注22)の提供、政策の展開、研究の決定やアドバイスを提供する。

  ② 英国の中央情報システム、その他の政府機関および関係機関に寄与する。

 ③ 他の政府部門、同盟国、EUおよびNATOを支援する。

(筆者注17) CDI等につき補足する。

3-star中将クラスが務める「国防情報局長(Chief of Defence Intelligence :CDI)」は、各軍隊全体の防衛情報と統合司令部の全体的な調整を担当する。CDIは国防参謀総長(Chief of the Defence Staff)と国防省事務次官(Permanent Secretary of the MOD)に報告し、民間人1名と軍人1人の計2人の代理人によってその任務が支援される。

また、副局長(Deputy Chief of Defence Intelligence :DCDI)は2-star事務次官クラスが務め、国防情報の分析と報告作成に責任を負い、また2-starクラスの軍人からなる諜報能力を有する国防情報補佐官(Assistant Chief of the Defence Staff (Intelligence Capabilities):ACDS(IC))は、情報の収集と解析および情報訓練につき責任を負う。 

(筆者18) 2007年3月、首相は国内外のテロの脅威に対する安全保障の責任を、すべて内相に委ねることとし、これを支援するために内務省内に安全保障及び対テロリズム局(Office for Security and Counter-Terrorism、以下「OSCT」という。)を設置した。OSCTはCONTESTの管轄、情報部に対する監督等の業務を担い、内相に対して説明責任を負う。つまりCONTESTについては、内相が責任大臣であり、OSCT局長が上級管理責任者となる。

国立国会図書館調査及び立法考査局(外国の立法241(2009.9)岡久 慶英国の対国際テロリズム戦略:CONTEST」から一部抜粋。

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