スキップしてメイン コンテンツに移動

米国IC3やFBIが最近時に見るモバイル携帯OSの「不正プログラム(malware)」および安全対策につき再警告

 


 10月12日、米国のインターネット不正ソフトや詐欺等の犯罪阻止窓口であるIC3(Internet Crime Complaint Center)およびFBIは、「モバイルフォン・ユーザーはモバイル端末機器を標的とする最近時に検出された2種を例にあげ『不正プログラム(malware)』およびそのセキュリティ侵害(compromise)を阻止すべく具体的な安全対策の理解を深めるべきである」と題するリリースを行った。

 この問題は従来から問題視されているインターネット詐欺の応用形であることには間違いなく、手口自体につき目新しさはない。
(筆者注1) しかし、携帯インターネット端末であるモバイル端末の利用時に得られる個人情報を、いとも簡単に入手する手口はさらに今後のリスク拡大から見て無視しえない問題と考える。

 その意味で、今回紹介するIC3の警告内容の正確な理解は、わが国のモバイル・ユーザーの急増に対応して、改めて警告を鳴らす意義があると考え、簡単まとめた。特に、IC3やFBIのリリース文は極めて簡単な内容で、リスクのありかが良く読み取れない部分が多い。このため、筆者なり調べ、米国「VDCリサーチグループ社」の解説「The Attack Surface Problem on Mobile Platforms」等で補足した。

 なお、筆者は10月26日付けの“WIRED”で、セキュリティ研究者であるマーカス・ジェイコブスン(Markus Jakobsson)のFBI等の警告の不十分性を指摘するレポート「Cybercrime: Mobile Changes Everything - And No One's Safe」を読んだ。詳しい解説は省略するが、要するに従来のPCと携帯端末のハッカーによるセキュリティ・リスクの差異の現実を踏まえ、FBIの警告の無効性を指摘する一方で、具体的防御策を提供するものである。詳しい解析は改めて行うつもりであるが、取り急ぎ紹介する。


1.不正プログラム“Loozfon”や“FinFisher”とは
(1)“Loozfon”の手口
 自宅でEメールを送信するだけで、いとも簡単に稼げる儲け話である。これらの広告アルバイト話は“Loozfon”に繋がるように設計されたウェブサイトにリンクされる。この不正アプリケーション・サイトは被害者たるユーザーの携帯端末からアドレス帳の通信の詳細や感染した電話番号を盗み取るのである。

(2)“FinFisher”の手口
 モバイル端末のコンポーネント機能を利用した乗っ取りを可能とするスパイウェアである。異端モバイル端末にインストールされると、目標の位置の如何を問わず遠隔制御やモニタリングを可能とする。被害者たるユーザーが特定のウェブサイトを訪問したり、システムのアップデートを仮装したテキスト・メッセージを開くとスマートフォン情報をいとも簡単に第三者に送信させてしまう。

 以上の2つは、犯人が違法な釣り言葉を用いて、ユーザーのモバイル端末を極めて危険な状態に陥れる不正プログラムの例である。

2.ユーザーのモバイル端末をこれら犯罪者から保護するためのヒント(IC3サイトから引用)
①スマートフォンの購入時、デフォルト・セッティング(初期値設定)を含む当該端末の特性を正確に理解する。違法プログラムによる端末の点や面への攻撃(attack surface)を最小化するため不要な端末機能は「オフ」に設定する。
 このモバイル端末(プラットホーム)の点や面への攻撃問題(Attack Surface Problem on Mobile Platforms)とはいかなることをさすのであろうか。わが国における個人だけでなく企業活動の脆弱性問題に関する詳しい解説は皆無と思われる。 (筆者注2)

 したがって、ここで米国「VDCリサーチグループ社」のサイトブログ「The Attack Surface Problem on Mobile Platforms 」を一部抜粋し仮訳する。

○デスクトップとの比較では、現時点でモバイル・プラットホームの脅威に関する問題提起数は少ないが、このモバイル端末の増殖のペースはネットワークの終点に関する伝統的な定義を変更し、スマートフォンやタブレット端末に対する危害攻撃の魅力的目標に変えた。これら端末製造メーカーは各デバイス販売の連続的なリリースの中で、ハードウェア上に埋め込んだ安全性を高め続けているが、一方でサイバー犯罪者は従来の戦術の矛先を変え、モバイル・プラットホームやアプリケーションにおける欠陥を利用するのに夢中になっている。

○法人のIT化における別の意味の複雑化は、今日のモバイルOS景観の断片化で見て取れる。リサーチ・イン・モーション(Research In Motion:以下、RIM)のBlackBerry OSはがんばっているが、我々のデータ解析結果では企業は平均して2つのOSをサポートしている。これは、安全性端末の管理の観点からみて問題であり、事実、マルチプラットホーム・モバイル端末環境を効率的に管理することとともに複雑性を増している。

○犯罪者の気持ちから見ると、個人のEmail、コンタクト情報、パスワード、その他保有する個人や法人の情報、高価値の潜在的な金融情報の宝の山等のすべてが攻撃対象となる。(1)フィッシング詐欺(パスワードやその他の個人情報を盗める)、(2)位置GPS情報の追跡、(3)金融不正プログラム等は違法かつ潜在的な犯罪活動を可能にする。

○常に新しい技術プラットホームは新たな脆弱性を導く。モバイルによる解決策の投資から得られる戦略的優位性を認識する挑戦的な組織は、ビジネスの改革を阻害することなしに資産を守り運用効率を維持する。
 モバイルを利用した労働環境が広がり続けるとき、これらは不可欠の広がりを続けるであろう。

○モバイル端末の共通的特性は、複数の接続の選択肢であり、このことは法人のネットワークにただ1つの最終評価として現れる従来のPCと異なる。強靭なネットワーク接続に関する選択肢は、モバイル端末を極めて強固なものとし、データの検索と情報の共有は痛みを伴わない。しかしながら、法人内で配備されるとその点はモバイル端末に一連の脅威を与える。

○結論
 モバイル・プラットホームへの点や面への攻撃問題の正しい理解は企業にとってモバイル労働環境を拡大するうえで極めて重要な点である。前進的かつ多層防御アーキテクチャー(defense–in-depth architecture) (筆者注3)に基づく脅威に関する向きと大きさのベクトルの開発が必要である。
 「将来の証拠(future proof)」となるモバイル技術プラットホームの最大の保護策は、個人的なIT教育だけでなく今日のモバイル・エコシステムに必要とされる継続的に成熟度を持ちかつ保護するための強力なソフトウェア解決に向けた武装化である。

②モバイル端末はそのタイプに従い、OSは可能な暗号化手法を持つ。このことは紛失や盗難時にユーザーの個人情報を保護すべく利用できる。

③モバイル端末の市場の拡大に伴い、ユーザーはアプリケーションを公表した開発者や企業の評価・説明内容を注意深く見なければならない。すなわち、ユーザーはアプリケーションをダウンロードするとき、あなたが与える許可内容を見直し理解する必要がある。

④パスコードは、あなたのモバイル端末を保護する。これは端末の内容を保護する物理的な第一レイヤーにあたる。パスコードとともに2,3分後スクリーンロック機能を可能にする。

⑤あなたのモバイル端末につき破壊工作の保護手段を得ること。

⑥位置情報(Geo-location)を入手させるアプリケーションに十分注意すること。このようなアプリケーションはいかなるところでもユーザーの位置を追跡する。このアプリケーションはマーケティングにも使えるが、他方でストーカーや強盗を引き起こす犯罪者も利用が可能である。

⑦あなたの端末を知らないワイアレス・ネットワークへ接続することは不可である。これらのネットワークは、あなたの所有する端末と合法的なサーバーの間で授受される情報を捕捉する危険なアクセスポイントでありうる。

⑧スマートフォンは、最新版のアプリケーションとファームウェアを求める。ユーザーがこれを怠るとデバイスをハッキングしたり、セキュリティ侵害を引き起こす。

  *******************************************************
(筆者注1)筆者ブログ: 2009年4月17日「米国IC3やFinCEN等によるインターネット犯罪や不動産担保ローン詐欺の最新動向報告」、2012年9月29日 「米国FBI、IC3が「レヴェトン」名を名乗るランサムウェアの強制インストール被害拡大の再警告 」等を参照。

(筆者注2) 「Attack Surface Analyzer」は、あるシステムの導入前と導入後のシステム設定を比較して、攻撃を受ける恐れのあるコンポーネント、モジュール、サービスなど(Attack Surface:攻撃面)を洗い出すツールをいう。
 MicrosoftやSANS Internet Storm Centerなどのブログによると、同ツールではソフトウェアをインストールする前とインストールした後のシステムの状態を比較し、そのソフトウェアがシステムにどんな影響を与えるか、どんなリソースを利用するか、どんな変更を加えるのかをチェックできる。これにより、そのソフトウェアをインストールすることによる「Attack Surface」(攻撃可能な面や点)の変化を検証できるという(ITmediaの解説、 「窓の杜」の解説例

(筆者注3)多層防御( Defense in depth)は、情報技術を利用して、多層(多重)の防御を行う手法と、人員、技術、操作を含めたリソースの配分までを決定する戦略までを含んだものである。これは、情報保証(Information Assurance、IA)戦略の一種である(Wikipedia から抜粋)。なお、“defense–in-depth architecture”に関する専門的解説例としては、例えば情報セキュリティの調査・研究および教育に関する大手専門組織であるThe SANS Instituteの「多層防御―不法侵入の阻止(Intrusion Prevention - Part of Your Defense in Depth Architecture?)」、米国連邦エネルギー省「Control Systems Cyber Security:Defense in Depth Strategies」等があげられる。


********************************************************
Copyright © 2006-2012 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

コメント

このブログの人気の投稿

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

     米国の 商品先物取引委員会(CFTC) は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住の ラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri) と彼が所有するオハイオ州に本拠を置く NBD Eidetic Capital, LLC および SR Private Equity, LLC に対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に 民事法執行訴訟 を起こしたと 発表 した。   同訴状 は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。  さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している 救済被告 (注1) として起訴している。  今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。 1. 起訴の内容  CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および 「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」 および 「CFTC規則(CFTC regulations)」 のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。 2.本事件の背景  訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声...

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家...

米国とインドは民間原子力協定の締結に向けた対話の再開:両国は20年以上の遠い昔の夏の約束を果たすべき(その2完)

  4.米国ではインドの核兵器問題が依然として協力推進を邪魔をしている  インドが民間原子力協定の商業的約束を実現する方法を模索しているとしても、バイデン政権が自ら目標を定めたことは賞賛されるべき目標であるが、同政権にはこの協定から生じるもう一つのより大きく、より重要な課題がまだ残されている。それは、米国の大戦略におけるインドの核兵器計画問題に対処することである。  民間原子力協定の根本的な前提は、インドの核兵器は米国の地政学的利益を脅かすものではなく、そのためバランスを維持するためにインドとの民間核貿易を復活させたり、アジアの自由を支持する権力に関し、ニューデリーとの協力を深めることを妨げるものとして扱われるべきではないというものだった。 この確信は、中国が世界舞台で米国の最も重要な競争相手であると認識されるずっと前に、ブッシュ大統領の対インド政策の劇的な転換を促した。  強硬な中国の力がインド太平洋地域における最も差し迫った戦略的脅威であることが十分に明らかな今日、アジアにおける有利な地政学的均衡を維持することが米国にとってますます重要になっている。理想的な世界では、急成長する米印関係により、ニューデリーは米国と協力して最も危険な不測の事態に対処できるようになるだろう。その中には、アジアにおける米国の条約同盟国に対する中国の脅威や、台湾との戦争の可能性から生じるこれまで以上に困難な問題も含まれるだろう。  米国の同盟国であるオーストラリアと日本はすでにこれらの基準を満たしているが、インドは満たしていない。したがって、現在進行中の米中対立の文脈において、米国にとってのインドの価値は主に、独立して中国に立ち向かうニューデリーの能力に由来している。もしインドがそのような能力を持っているなら、ニューデリーが効果的に中国とのバランスをとるためにワシントンの支援に執拗に依存する必要がなければ、中国がアジアで力を発揮する能力を制限することになるだろう。  ブッシュ政権が「インドが21世紀の世界大国になるのを助ける」という野望を宣言して以来、ワシントンでの相次ぐ政策は、ニューデリーがしばしば米国の国益にもたらすジレンマにも関わらず、まさにその目的によって動機付けられ、インドの能力構築に倍増した。インドが必要に応じて独自に中国をチェックメイトできるよう十分な力を蓄積できる...