スキップしてメイン コンテンツに移動

英国、豪州等の詐欺対策組織が取組むロンドン・オリンピックやパラリンピック対策の最新動向

 


 筆者の手元に届いたオーストラリアの「連邦競争・消費者委員会(Australian Competition & Consumer Commission:ACCC)」が運営する詐欺阻止専門サイト(SCAM watch)からのニュースを改めて読み直した。
 その言わんとする内容は、ロンドン・オリンピックやパラリンピックの宿泊予約詐欺に遭わないよう具体的な詐欺手口の説明を含む警告である。
 わが国でも円高等を背景に多くのオリンピック観光客が英国に向かうことは言うまでもなく、この機会に英国の詐欺阻止強化体制と英国の関係機関等が発したオリンピック関連の警告内容を概観すべくまとめてみた。


1.ACCCの詐欺阻止の具体策

(1)詐欺の手口
・詐欺師は詐欺ゲームの間、偽の予約用のウェブサイトを用意し、そこで偽の宿泊ルームや本物のウェブサイトの貸し部屋広告を掲げたり、あるいは偽の宿泊施設や予約チケットのパッケージ・サービスを提供する。
 そこに掲げられた宿泊施設は、実際に存在しないものやあるいは利用不可のものである。
 以前に見られた貸し部屋や宿泊施設予約詐欺では、詐欺師は施設の所有者、予約業者、旅行代理店あるいは施設の経営者等を装い、また宿泊施設や旅行用のウェブサイトに区分された本物の貸し部屋広告を載せた。
・あなたが偽の広告に応じ申し込むと、詐欺師は前もっての「貸し部屋の敷金(bond)」「賃貸料や預け金(deposits)」の支払を要求してくる。
・詐欺師の中には、なりすまし詐欺に使うため申込者の個人識別(ID)証やその他の証明文書のコピーを求める者もいた。
・被害者は正当な宿泊施設の鍵を受け取ることはなく、詐欺師はお金と共に失せるのである。
・また、詐欺師が競技観覧チケットの販売をも売り込むことに注意すべきである。唯一安全な競技観覧チケットの購入は、「2012年ロンドンオリンピック・チケット販売ウェブサイト(London 2012 ticketing website)」そのものや、あるいは同サイトで確認できる自国のオリンピック委員会やパラリンピック委員会で行うべきである。

(2)詐欺被害に遭わない方法
・公式な照会手続を有する知名度の高いホテルや評判が高い旅行会社に直接予約する。
・インターネットの検索機能や地図検索を使い、あなたが泊まろうとするホテルや宿泊施設が実際にそこに実在するか調査する。
・旅行代理店等に対し、多くの宿泊施設の写真を要求すべきである。もし相手が拒否する時は相手は本物の広告サイト等から写真を盗んでいる場合で、その他の多くの写真は持たないのである。
・あなたが旅行代理店やウェブサイトを通じて予約を行おうと考えたときは、まず初めにオンラインで詐欺業者でないか調査すべきである。このことで知られている詐欺を特定すべくレビューやブログを調べる。
・評判の良いウェブサイトに載っているからといって、宿泊施設の正当性(本物)を信じてはならない。詐欺師はこれらのサイトにも偽の広告を掲げている。
・可能であれば、知らない相手に対し為替(money order)、電信送金(wire transfer)や国際資金送金(international funds transfer)による前払いの契約は避けるべきである。このルートで支払われた資金を取り戻せるのは極めてまれである。(筆者注)
・宿泊施設の広告について正確な施設名を入力して、インターネット上でチェックすべきである。詐欺サイトでは多くの類似名の施設がある。
・宿泊施設の賃貸については当、該物件について調査すると主張すべきである。車で近くを走るだけでは調査としては不十分である。事実その施設は存在するかも知れないが、別の者が所有している可能性があるからである。

(3) 英国ロンドン警視庁のオリンピック詐欺警告リリース「Olympic and Paralympic Games Policing Accommodation Fraud 」の宿泊施設詐欺に関するアドバイスも参考になる内容である。

2.英国内務省の詐欺取締庁(National Fraud Authority:NFA)と詐欺報告センターの報告・支援センター(UK’s National Fraud Reporting Centre )」の役割

(1) 詐欺取締庁(NFA)の説明サイトにもとづく概要
次のとおり説明している。政府による「2006年11月詐欺調査(2006 Fraud Review)」の直接の成果としてNFAが生まれた。同調査において政府はイングランドとウェールズの市民に対し直接、経済的損失にかかる莫大なコスト・損害および詐欺の原因を調査した。その解決策として2008年10月1日、正式な着手作業をもとに“National Fraud Strategic Authority”を創設した。さらに2009年には“National Fraud Authority”と改称した。
 2010年/2011年の主な業績は「年次報告(Annual Report)」および「年次会計報告書(Annual Accounts)」で詳しく記している。

(2)“Action Fraud” サイトの概要
 NFAが監督・運営する「詐欺報告・支援センター(UK’s National Fraud Reporting Centre )」は1日24時間電話受付(0300 123 2040)する窓口“Online Fraud Report Service”を開設し、具体的な詐欺問題の阻止に対処している。なお、“Action Fraud”では一般的な詐欺予防のためのアドバイスや手口別詐欺の解説等を行っている。
***********************************************************************************
(筆者注) では、どのような決済方法が安全といえるかについては同サイトでは説明がない。筆者なりに補足すると、安全性が高く信頼度が得られるクレジット・カードによる決済ということになろう。なお、筆者のブログではかつて詐欺警告として次のような解説を述べている。
 「詐欺師は通常“Western Union”や“MoneyGram”を通じた電信送金を要求するが、それは「赤旗(red flag)」が立ったものとみなすべきである。これら電信送金で送られた資金は詐欺師によりいったん受け取られるとその追跡は極めて困難で法執行機関や銀行でも取り戻しは不可である。」

********************************************************
Copyright © 2006-2011 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...