スキップしてメイン コンテンツに移動

米国FRBがクレジットカード利用者保護強化に係る改正レギュレーションZの最終段階案を公募(その2完)

 2.「レギュレーションZ」の改正段階別策定状況

 各段階別に改正内容と施行時期についてまとめておく。(筆者注5)
 なお、FRBは2010年2月22日から施行する新レギュレーションにつきクレジットカードの消費者向けに基づき具体例で解説するサイトWhat you need to know :New Credit Card Rules」を開設した。中央銀行が消費者向けにここまで具体的かつ平易な解説を行うことは欧米でも珍しいような気がする一方で消費者保護の難しさを感じた。少なくとも参考になるサイトといえよう。

(1)第一段階
 2009年7月15日に暫定最終規則(interim final rule)を公布、2009年8月20日施行した。FRBのリリースによると三段階でレギュレーションZの改正を行うことも明記している。今回の改正主目的は、カード発行者に対しカード保有者に対しクレジットカード口座の金利引き上げや口座の利用条件について重要な変更通知の早期化を求め、あわせて実際条件更実施前の消費者の拒否権を明記したものである。具体的な規定内容は次のとおりである。

①発行者は、クレジットカード口座の金利(APR)の引上げおよび利用条件の重要な変更を行うときは、書面によりその実施の45日前に消費者に通知しなければならない。

②発行者は、①の通知においてクレジットカード口座の金利(APR)の引上げおよび利用条件の重要な変更に基づく消費者のカード口座の取消権について通知しなければならない。
 消費者が取消を行うときは、一般的に発行者は金利引上げや条件変更を行うことが禁止される。

③発行者は、一般的に支払期限の21日前までにクレジットカードや一定額限度内での返済型クレジット(open-end consumer credit accounts) (筆者注6)について周期的な通知を郵送または交付しなければならない。

(2)第二段階
 2010年1月最終規則が公布、2010年2月22日施行した。具体的な規定内容は次のとおりである。

①一般的にカード利用口座開設の初年度の予期せぬカード金利の引上げや既存カード残高に応じた予期せぬ金利の引上げから消費者を保護する。

②21歳以下の若者に対するカード口座開設は、本人に必要な支払能力があるとき、または支払につき親や連帯保証人(cosigner)の署名があるとき以外は禁止する。

③発行者に対しクレジット限度額を超えた取引に対する手数料を課す場合は、消費者の同意を得ることを義務化する。

サブプライム・クレジットカード(subprime credit cards)に関連する高額手数料の適用を制限する。

⑤発行者が金利を課すにあたり、”two-cycle billing method” (筆者注7)の使用を禁止する。

⑥発行者に対し最高金利の配分適用による支払いを禁止する。

(3)第三段階
 2010年3月3日、修正規則案が公開され、2010年8月22日施行予定。具体的な規定内容は次のとおりである。
①カード発行者は消費者に対し返済遅延手数料や限度額超過手数料を含むペナルティ手数料を課す場合、消費者の口座利用条件違反の場合に課すべき金額を越えた金額を課すことを禁じる。例えばカード発行者は今後、支払遅延の場合の最低ペナルティ金額が20ドルの時に39ドルのペナルティを請求することは出来なくなる。

②消費者が口座により新しい買物を不履行の場合いわゆる睡眠口座に対する手数料の課金を禁ずる。

③発行者が支払い遅延または口座の利用条件違反に基づき複数のペナルティ手数料を課すことを禁ずる。

④発行者に金利改定の理由につき消費者に通知することを義務付ける。

⑤発行者に2009年1月1日以降金利引上げ変更の理由の再検証を行うよう求め、仮に適正である場合でも金利の引下げについても検討するよう求める。
*******************************************************************************************

(筆者注5) FRBの規則策定や改正の経緯は専用サイトで確認できる。

(筆者注6) 米国金融機関が扱う“open-end credit consumer credit”とは、「銀行、貯蓄貸付組合やその他の他の貸し手によって消費者に提供された融資限度額内で回転させる消費者信用を言う。 融資限度額は一定の限度額内で設定されると、消費者は限度額内でクレジットカード、小切手またはキャシングを使用することができる。 購買やキャシングするときはいつも、与信額は消費者に代り拡大される。 消費者は毎月全体の債務残高を全部支払って利息に負担を避けることができるし、または、未払い残高に生じた利息のみの支払を行うこともできる」ものである。

(筆者注7)  “two-cycle billing method”とは、「通常1か月ごとに決済するカード決済が2か月や3か月にわたる返済になるもので、最終的な定期月額金利(Periodic Interest Charge)が高くなるためこれを禁止する。興味のある方は“Single –cycle billing”と“Two-Cycle billing”との比較ウェブサイトで実際比較計算してみよう。なお、“Periodic Interest Charge”とは何を言うのか。通常金利の表示は「年利(APR)」であるがクレジットカードの金利は頻繁に変動することもあり、1か月あたりに換算した金利表示のことを言う。すなわち、APRが8%であるならば“Periodic Interest rate” は0.08/12=0.666%となる。」(本ブログ参照)

[参照URL]
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20100303a1.pdf(レギュレーションZ:改正第三段階の原本)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20100303a.htm(レギュレーションZ:改正第二段階の原本)
http://edocket.access.gpo.gov/2009/pdf/E9-17195.pdf(レギュレーションZ:改正第一段階の改正案の原本)
http://www.govtrack.us/congress/billtext.xpd?bill=h111-627(Credit Card Actの原本)

***********************************************************************************************

Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.





コメント

このブログの人気の投稿

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家...