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5月, 2006の投稿を表示しています

米国FCCがVoIP等に対する通信傍受支援法(CALEA)の適用強化第2次命令を発出

  Last Updated : April 17,2015   米国憲法の重要課題の1つである「通信の秘密」(憲法第修正第1:表現の自由や修正第4:プライバシーの保護が明文上の根拠)は 、「1994年通信傍受支援法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)」 等   (筆者注1) (筆者注2) により多くの関係者の議論を呼んでいるが、連邦通信委員会(FCC)は5月3日にブロードバンドサービス・プロバイダーおよびVoIPサービス・プロバイダーに対する警察等法執行機関への協力・支援に関する規則の強化を図る報告書ならびに 命令(Order) を採択、公布した。   (筆者注3)  FCCは2005年9月23日に同趣旨の規則策定についての第1回目の報告書・命令案についてパブコメに付しており、その上で修正されたものである。  この問題について、CDT等の全米規模の人権保護団体、プロバイダ団体および教育機関はCALEAはあくまで公衆電話交換網における通信傍受の規制法であり、VoIP等新たなインターネット通信に適用することに反対している。  (筆者注4)  また、これら団体や教育機関は2005年10月25日にコロンビア地区控訴裁判所に対し、FCCの規則制定権違反を理由に提訴しており、なお裁判所の判断が出ていない段階でFCCの第2次命令が出された点を問題視している。   (筆者注5)  これらの動きについて、わが国では2005年9月の段階で一部メデイアで簡単に紹介されているが、今回の動きはほとんど報じられていないようであり、今後のわが国の法制化の議論の前提としてここであらためて整理しておく。 1.新規則の適用遵守期限  2006年5月12日から90日以内。 2.適用対象事業者 ブロードバンド事業者、VoIP事業者のほかすでにCALEAの適用通信事業者も含まれる。 3. CALEA第103条 に定める特別な義務の内容 (1)通信の傍受(call intercept) (2)通信を特定する情報へのアクセス (3)傍受した通話および通信に関する特定情報の政府への引渡し (4)通話加入者への最低限の干渉とプライバシーへの配慮 4.相互接続VoIP事業者の定義・要件 (1...

EUの電子政府強化に向けた2010年までの行動計画(i2010)が採択・公表される

    去る4月25日に欧州委員会が採択した「電子政府行動計画(EU i2010 eGovernment Action Plan)」の概要によると25カ国における行政の効率化(政府機能の近代化)により税収の削減効果は毎年数千億ユーロに達すると見込まれている。  情報・通信機能の近代化・効率化がキーとなるのであるが、電子インボイス (筆者注1)(筆者注2)(筆者注3) による公共調達の100%実現により、EU全体で毎年約3,000億ユーロ(約42兆3,000億円 )の経費が浮くと予想しており、すでに加盟国25カ国は2005年マンチェスターで署名を行っている。 (筆者注4)  この署名に基づき、このほど委員会が採択した行動計画は2010年までにすべてのヨーロッパ人が加盟国と提携して明確に利益を理解できるかたちで次の5分野において取り組み目標を達成するというものである 。 1.いかなる市民も後に残さない:2010年までに性、年齢、国籍、所得ならびに障害の有無に拘らずべての市民がデジタルテレビ、パソコン、携帯電話等広範囲の技術にアクセスできる環境を実現する。 2.効率性の向上:英国の年金プログラムの変革は、公務員の窓口での対面サービスのための時間を50%開放し、その他の業務のための時間的余裕を作り上げた。すべての加盟国は2010年までに「効率性向上における高いレベルの効果」および「行政面の負荷削減」について情報通信技術を使って成し遂げる。 3.電子公共調達(electronic public procurement)の適用:加盟国は2010年までに公的分野のオンライン調達について100%又は少なくとも50%までを実現し、年間400億ユーロの予算節減を可能にする。 4.EU全体にわたる公的サービスへのアクセス可能の実現:加盟国政府はウェブサイトの利用や公的サービスの相互利用における国家電子認証による安全なシステムを確立する点について同意した。この行動計画では2010年までにその実現を見通した。 5.市民の参加権および民主的な決定プロセスの強化:行動計画は、政策決定にあたり国民の効率的政治参加を実現するため、情報通信技術を用いた実験の支援を提案する。 ************************************************************...

豪政府は社会福祉関連のICアクセス・カードの導入のためアドバイザーの入札告示

     5月11日にオーストラリア連邦政府「社会保障・福祉サービス担当省(The Minister for Human Services(DHS) :の担当大臣ジョー・ホッキー(Joe Hockey))は、10憶オーストラリア・ドル(約830億円)の予算を背景とするスマート・カード・プロジェクト(ICアクセス・カード(Access Card))の中核となる個人・法人の専門アドバイザーを募るため、2つの入札告示(tender notice)を始めた(入札の詳細は5月15日に「Aus Tender」のウェブサイトに掲示されている)。 (筆者注1) Joe Hokey氏  同プロジェクトの主たる目的は、これから迎える社会的な不安、すなわち高齢化、病気等への対応を持ち、遠隔地管理機能を備えたコミュニティ社会作りである。この点は、欧米先進国における高齢化への取組みの先例として、わが国としても見逃しえない重要なテーマであろう。 1.アクセス・カード・プロジェクトの概要  (1)現在同国で行われている17の健康保険・社会政策サービス、退役軍人カード(veteran card)および国家保険サービス(Medicare) (筆者注2) にかかるカードサービスをこのシステムに切替え、統合するものである。 (2)このカードの切替え、登録は2008年から2年間にかけて国民を対象に開始され、2010年前半から登録済者のみ具体的なサービスを受けることが出来ることになる。 (3)本カードシステムに伴い経済効果について大手コンサルティング会社であるKPMGは4年以上にわたり10憶9千万豪ドル(約904憶7千万円)の費用がかかる一方で、 10年以上にわたり30憶豪ドルの経費削減が図れるとの予想を行っている。 (4)本プロジェクト推進のため同省内に「アクセス・カード局(Office of Access Card)」がすでに設置されている。 2.アクセス・カードの仕様概要とプライバシー問題    DHSの資料では次の点が説明されている。 (筆者注3)    (1)表面にはカードの名義人氏名、写真、裏面は保持者の署名の登録番号が表示される。  (2) ICチップには、本人の住所、生年月日、子供や扶養家族等は記録される。また本人の選択に基づき、緊急時の連絡先、アレルギーの有無や...

英国における携帯電話利用約款の内容の適正化に関する監督機関の具体的取組み例

    今国会に「消費者契約法の一部を改正する法律案」が提出されている。同法律は平成12年5月に成立、翌年4月1日付で施行されているのであるが、その主たるたる内容は、事業者による不当行為(不当な勧誘行為、不当な契約条項の使用)があった場合に消費者は契約の取消や条項の無効を主張できるとするものであった。しかし、新規参入事業者も含め、悪質住宅リフォーム詐欺や違法なネットオークション等の詐欺商法問題が後を絶たないのが現状である。この理由にはわが国が取ってきた許認可型行政の取組みの限界の問題もあろうし、苦情への迅速な対応機関の対応の整備不足、さらには処罰内容の軽さなどが指摘されている。  このようなことから、今般上程された一部改正法案は、①同種の被害が多数発生する警告が生じていること、②事後的救済のみによるのでは、被害の急速な拡大に有効性に欠くというものである。そこで一定の消費者団体に、事業者の不当な行為に対する差止請求権を認める制度(消費者団体訴訟制度)の導入を目的とするものである。去る 5月5日付の本ブログ でも紹介したとおり、今後わが国でも集団訴訟の提訴だけでなく、米国のように集団訴権の濫用抑止・法制整備等の問題も出てこよう。  今回紹介する「約款」適正化についても、消費者保護制度の重要な検討事項として例えば「国民生活審議会」において過去3次(第8次、9次、11次)にわたり個別業種ごとの個別約款の内容につき、適正化の提言を行ってきている。特に第8次の「消費者政策部会報告」における約款適正化の一般基本要件として挙げられている内容についてはグローバルな内容と思われる。 (筆者注1)   しかし、実態的にこれらの改善は行われているのであろうか。今回は、携帯電話会社の契約約款を例に取り、WatchdogであるOfcom(通信・メディア庁)(英国の 「2003年電気通信法(Communications Act 2003)」 に基づき5つの機関が統合され、2003年12月に稼動した電気通信・放送分野における単一の独立規制・監督機関)  (筆者注2) が、Hutchison 3G UKおよびやUK Onlineの2社に対して「1999年消費者契約における不公正条件に関する規則(The Unfair Terms in Consumer Contracts Regul...

EUにおけるICTの取組みと国民が電子政府サービスに求めるものは何か!

    Last Updated: Febuery 21,2022  わが国の電子政府の取組みが極めて一元的かつ体系的とは言いがたいが、着実に進んでいることは間違いない (筆者注1) 。この分野での先進国が並ぶEUのIT社会への取組みを概観するとともに、その重要な目標の1つである「高品質の公共サービス」について加盟国の国民の本音はどこにあるのか、この問題につき中心となる「eUSER」プロジェクトの調査結果がこのほど公表された。  EUのIT社会へ取り組み自体かなり複雑な経緯をたどるとともに経済・社会システムの変革問題等と複雑に絡む問題も多く、これらの問題を整理しながら、各種問題点についてのポイントを紹介する。このことは、わが国が今後取り組むべき「電子政府」や「電子自治体サービス」への課題をまとめる上でも参考となろう。 1.EUのICT(情報通信技術)政策の過去と今後  EUは1999年12月の欧州委員会報告「eEurope-すべてのUE加盟国の国民のための情報社会」に基づくeEurope戦略(リスボン戦略)が欧州理事会で2000年3月に承認されたことに始まっている。これを受けて2000年5月に「 eEurope 2002 Action Plan 」が策定され、2001年3月に欧州委員会はその評価を含めた報告書「eEurope 2002-効果と優先課題」を発表している。さらに2002年5月には後継の3年計画である「 eEurope 2005 Action Plan  」を策定し、同理事会の承認を受けている。   その後、2005年2月には経済成長の低迷、労働生産性の・失業率の改善等が見られないことから、eEurope戦略の原型となったリスボン戦略そのものの見直し、すなわち成長と雇用問題を重点分野とする戦略に見直し、2005年3月の理事会で 「i2010(2010年に向けた欧州情報社会)( i2010 – A European Information Society for growth and employment)」 を承認した。 (注1-2)  この見直しの過程で知識や技術革新の持続とともに①ブロードバンド最ビスの提供を中心とする単一欧州情報空間の創設、②EU以外の主たる競争国との格差の縮小のため、研究・開発の効率性向上、③国民すべてが共有でき、...

ドイツの「資本投資家保護モデル手続法(KapitalanlegerMusterverfahrensgesetz:KapMuG)」の施行とクラス・アクション問題

    Last Updated : Febuary 21,2022  ドイツでは2005年11月1日に標記法律 「KapitalanlegerMusterverfahrensgesetz(KapMuG)」 (筆者注1) が施行された。同法律は、多数の投資家による裁判上の請求を類型化・集約化して裁判の促進を図る「新たな訴訟手続き」である。例えば、米国の「class action 」や英国の「group action」に相当するものであるが、従来ドイツにはクラス・アクションに相当する証券取引法等法律や制度はなかった。この制度の導入の背景は、多数の投資家が投資銀行等1社の被告を訴追する手続上の困難さを解決することにある。最近では、2005年にフランクフルトの連邦地方裁判所(Regional Court)に対し約1万5千人の投資家がドイツ・テレコムAGに対する証券訴訟を起したことがあげられる。 (筆者注2)  さらに、ドイツの民事訴訟手続は個々人がそれぞれ請求を行うことが原則となっており、その結果、請求者は実質的に高い訴訟コストを負担するリスク、すなわち複雑化し、費用のかかる専門家(弁護士等)の意見を要するというリスクを負担することになる点である。このため請求訴訟の阻害要因となっていたのである。  KapMuGが取り組んだ解決策は、「モデル手続」という概念を導入したものである。すなわち、10以上の類似の個人の損害賠償請求訴訟において関係する事実や法律に関する訴因を1つに集約化し、連邦上級裁判所(Bundesgerichthof(Higher Regional Court))の判決内容は、すべての原告に対し拘束力を持つとするものである。同法は、①資本市場に関する虚偽、欺きや不完全な情報に基づく投資家からの損害賠償の補償請求、および②企業買収法( Wertpapiererwerbs und Übernahmegesetz (WpÜG) ) (筆者注3) に基づき規制される申出から生じる特定の契約の履行にかかる請求を取り込むものである。損失を被った投資家だけでなく、裁判所や被告企業にとってメリットがあり、資本市場分野における紛争解決に簡易かつ迅速な道を開いたものである。  つまり、すべての証券の発行者、その他の投資に関する公開買付け申出人、投資銀行、取締役会や諮問委員会...

オーストラリアのスパム阻止のためのISP倫理実施綱領が2006年7月16日から本格実施

    Last Updated:Febuary 21,2022  スパム問題についてはわが国の法規制の現状は 4月23日の本ブログ でも紹介した。この問題の解決には総務省の「迷惑メールへの在り方に関する研究会」報告の内容どおり、国際協調と業界の自主的規制は欠かせない点であろう(プライバシー問題や言論の自由の問題と平行しての話ではあるが)。 実際、自主規制に関して先行したかたちで取り組んでいる米国では、2002年2月に業界団体である「Direct Marketing Association:DMA」は自主規制ガイドラインを発表し、また法規制を支持する方針を明らかにしている。(DMAは2006年2月1日から電子メールマーケティングのセキュリティ対策としてメッセージ識別・認証システムを実施している) (筆者注1)  一方、オーストラリアの電気通信監督機関である 「オーストラリア連邦通信メディア庁(ACMA)」 は、同国のスパム法「  Spam Act 2003 」や「1997年電気通信法(Telecommunication Act 1997)」 (筆者注2) の実施責任を負うものであるが、2006年3月末に同国内で営業する689社のISPに対し、ヤフーやMSNホットメールと同様に、本年7月16日以降法律遵守状況のチェックを受ける義務を織り込んだ業界(Internet Industry Association)が策定した「実践綱領(Code of Practice)」を正式にACMAに登録した。 (筆者注3) 1.スパム対策自主綱領策定の背景  同国では、2003年アンチ・スパム法の制定により同国内を発信地とするスパムの件数の割合が過去1年間で2%から1%に減少し、今回の綱領によってさらに減少することが期待されている。しかしながら、これで十分とはいえないとの問題指摘もあり、ACMAは自主綱領の策定にあたり、これら事業者に対し、①技術的な具体的対応策、②消費者教育や理解度向上策、③国際的な協調(国際電気通信連合:ITUはISPの自主規制強化ならびにスパム阻止のための刑罰強化を求めている)を求めている。   2.ACMAの取組姿勢  WatchdogとしてのACMAは、本自主綱領違反行為に対しては1千万豪ドル(約8億4千万円)の罰金を科すよう連邦裁判所に要請...