Last Updated:March 12, 2021 英国のロンドン大学の情報システム学部教授のイアン・エンジェル教授(Professor Ian Engell) (筆者注1) は、英国が現在取り組んでいる電子政府のあり方について次のような批判を行っている。なお、同教授の専門分野は、組織化された国家によるIT政策、すなわち①戦略的情報システム、②コンピュータとリスク(発生の機会と危険度の両面から見た)問題、とりわけすべての「 社会技術システム(socio-technical systems:STS) 」 (筆者注2) および急激な国際的なインフラの拡散に伴う組織のセキュリティへの脅威等である。 Professor Ian Engell 一方、大手通信事業者であるNortelヨーロッパは政府システムと民間システム互換性(アクセスの効率性が優先する)を重視すべき点を強調している。ここで議論されているのは、本年3月30日に成立した「国民IDカード法案」の問題( 筆者注3) と共通性があることである。協調されている点は、技術万能でないIT社会のあり方であり、またIT社会における民と官のシステムの相互運用性の是非の問題であり、自ずからわが国の電子政府について取り組む上で配慮すべき意見として紹介する。 1.同教授の意見 英国の電子政府は機能面で見れば5つ星であるかもしれないが、わが国の国民の20%にとっては機能面では盲人と同じである。公務員の教育によってコンピュータ処理のレベルが自動的に向上し、特に公的サービスをオンライン化することで対面サービス職員を削減できるとする考えは、明らかにおろかな考えである。 経済性を重視したこの舵取りは、行政窓口で国民と接する立場にある公務員の労働権を奪うことになる。今、政府が押し進めているのは技術的に窓口事務が円滑に行えない担当職員を解雇して人件費削減を行おうとしているが、それは民主的ではなく、まったく反対の政策である。 2.英国の電気通信事業者であるNortelヨーロッパ(Nortel European)の代表者であるピーター・ケリー(Peter Kelly)の反論 政府のe-Governmentを通じ、新パスポート(Epassport)やNHS Direct online(24時間年中無休で医療に関する質問、医療百科事
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。