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米連邦議会上院委員会が本人の事前同意なしの通話記録の入手行為禁止法案を採択

 Last Updated(青字部): March 12,2021

 米国の第109回連邦議会はpretexting行為の禁止をめぐる法案が上院・下院で合わせて5本上程されるという状況にあり、3月上旬の下院委員会での採択に続き、上院委員会で法案が審議、可決された。

 3月31日に連邦議会上院の「商業・科学・運輸委員会(The Commerce , Science and Transportation Committee)」は、本人の文書よる事前の同意なしの「pretexting」行為(通話記録の入手、使用および販売行為)を禁止する法案「Consumer Telephone Records Protection Act of 2006(S.2178)」を採択した。(筆者注1)
 この「pretexting」行為は、米国では金融制度改革法である「1999年グラム・リーチ・ブライリー法」(筆者注2)において金融機関の取引個人情報保護についてのみ定められていたものを、固定電話や携帯電話等における通話記録にまで拡大したもので、ジョージ・アレン上院議員(バージニア州選出:民主党)やテッド・スチーブンス上院商務委員会委員長が中心となって立法化に取り組んでいたものである。

 主な内容は次のとおりである。
(1)第109回議会に上程された法案(S. 2389: Protecting Consumer Phone Records Act)の修正法案で、①固定電話(wireline)、②携帯、③Voipサービス提供者等の音声通信事業者に対し、本人の書面による同意・許可なしに第三者が通話記録を入手した場合、顧客に通知義務を課すものである。これに関し、同法案はグラム・リーチ・ブライリー法の場合と同様、連邦通信委員会(FCC)に通話記録に関する新規則の制定を命じる。

(2)データ・ブローカーに対し、FCCが従前行っていた事前調査通知の省略を認め、FCCが罰金を科す手続きを効率化する。

(3)罰則の内容は、違法に通信記録を入手又は販売する行為等に対し民事訴訟を認め、1記録当り11,000ドル(約127万6千円)、最大1,100万ドル(約12億7,600万円)の罰金を定める。

(4)FCC自体に、継続的違反者に対し、各違反行為につき3万ドル(約348万円)、最大300万ドル(約3億4,800万円)の罰金を科すことを認める。

【補追】Updated: March 12,2021

1.第109会期の全法案

”Congress . gov”サイトで確認できる。

https://www.everycrsreport.com/reports/RL33287.html

https://www.congress.gov/advanced-search/legislation?congresses[0]=109&committeeActivity[0]=3&satellite={%22House+Committees%22:{%22operator%22:%22OR%22,%22committees%22:{%22hsif00%22:%22House+Energy+and+Commerce%22},%22committeeHistories%22:[]}}&submitted=Submitted&searchResultViewType=expanded&q={%22party%22:%22all%22}&pageSize=100&page=4

2.連邦議会調査局の無料一括閲覧サイトEvery CRS report サイトDigital Libraryが有用

(1)北テキサス大学図書館・政府文書管理部が実施しているサイトである。その設置目的の概要仮訳する。このサイトでは運営維持のために”donate”を求めている。この点は、筆者が考えている本ブログの最終目標に近いものがある。

連邦議会調査局(CRS)のレポートは、議会が使用しているのと同じ情報源から、偏見を心配することなく、誰もが主要な政治問題について迅速に理解するための最良の方法である。 CRSは連邦議会のシンクタンクであり、そのレポートは、重要な政策問題の正確でタイムリーな分析のために、学者、企業、裁判官、政策提唱者、学生、図書館員、ジャーナリストおよび政策立案者によって信頼されている。しかし、各 レポートは分類されておらず、特定の国会議員への個別のアドバイスは含まれていない。 (詳細:CRSレポートとは何か? 今日まで、CRSレポートは、一般的に、つながりのある人だけが利用できが、 現在、共和党と民主党の議員および図書館パートナーと協力して、これらのレポートをすべての人がオンラインで1か所で無料で利用できるようになった。

(2)連邦議会調査局(CRS)の検索サイト

(3)この両者の利用者の使い勝手の比較

例えば、2006年法案「Prevention of Fraudulent Access to Phone Records Act bill H.R.4662」と入力した場合、Every CRS reportでは同法案に関するCRSレポートおよび関連法案に関する詳細サイトhttps://www.everycrsreport.com/reports/RL33287.htmlにリンクされる。リンクも正確であり、かつメンテナンスされている。

他方、CRSの検索サイトで同じ作業をしても答えは、該当なしである。

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(筆者注1)下院では同様の趣旨の2法案が別々の委員会で採択されている。
①3月8日に「エネルギー・商務対策委員会(ジョン・バートン委員長)」が採択した「Prevention of Fraudulent Access to Phone Records Act法案(H.R.4662)」で、連邦取引委員会(FTC)の訴追権限を強化するとともに、1犯罪行為当り30万ドルの罰金刑(複数犯罪を犯した場合は最大3百万ドル)を科すというものである。対象事業者は上院法案との同様に電話業者、携帯電話業者からVoip業者までとなっている。
http://news.com.com/2100-1037_3-6047462.html
法案:https://www.congress.gov/bill/109th-congress/house-bill/4662
②3月2日に「司法委員会」が採択した「Law Enforcement and Phone Privacy Act of 2006(H.R.4709) 」で、わずか6分間の議論で採択されたものである。同法案の罰則は上院法案に比べ厳しく、違法な入手行為について最大20年の禁錮刑、その他の犯罪行為は最大5年の禁錮刑である。
http://news.zdnet.com/2100-1035_22-6045178.html
法案:https://www.congress.gov/bill/109th-congress/house-bill/4709

(筆者注2 )グラム・リーチ・ブライリー法(Gramm-Leach-Bliley Act(GLB、GLBA)、1999年金融サービス近代化法(Financial Services Modernization Act of 1999))は、1999年11月12日に制定されたアメリカ合衆国の連邦法である。商業銀行業務や投資銀行業務、保険業務の兼業を禁止するために1933年に制定されたグラス・スティーガル法の一部を無効にするための法律で、第106連邦議会にて成立した。(Wikipedia から抜粋)

  同法第Ⅴ編は、金融機関における個人情報保護に関する規定を定めるもので、その525条で、連邦預金保険公社(FDIC)その他金融監督機関に対し、同法の傘下金融機関における個人情報保護の適正な遵守を実現するため諸規則やガイダンスの制定ならびに連邦議会への報告などを命じている。これを受けて2001年8月にFDICから告示されたのが「なりすまし詐欺及びpretext callingに関するガイダンス」である。
 同ガイダンスでは、連邦ベースでなりすまし犯罪に対する刑事罰を定め旨明し、すなわち、521、523条において、①金融機関の顧客の取引情報を違法な手段または詐欺的な説明により金融機関の役付者、従業員、顧客の代理人から得た行為は犯罪とする、②要求者が詐欺的な方法により得られた情報であることを知ったうえで第三者から得た場合も犯罪とする旨、定めている。なお、Phishing詐欺の電話版である金融機関の従業員等と偽って顧客の取引情報を得る行為(pretext calling)についても厳格に禁止している。
http://www.fdic.gov/news/news/financial/2001/fil0139a.html

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