スキップしてメイン コンテンツに移動

米国防総省(DOD)の緊急リリース:米国の対ウクライナ安全保障支援に関するファクトシートの内容と新たな現代戦争軍事装備の変化を見る

 






筆者は、ロシアのウクライナ侵攻に関し軍事面から「フィンランドとスウェーデンの軍事同盟NATO 加盟問題と両国のわが国の軍事面の関わり、さらにNATO事務総長来日の真の目的は?を2回((その1)(その2完)にわたりを取り上げた。

  今回のブログは、筆者の手元に届いた12月6日付けの国防総省の速報ロシアのウクライナ侵攻に関し最新情報Fact Sheetを読んだ。米国のバイデン政権発足以来、ウクライナに448億ドル(約6兆5,785億円)以上の安全保障支援を約束しており、その中には2022年2月24日にロシアによるいわれのない残忍な侵略が始まってからの442億ドル(約6兆4,905億 円)も含まれる。

 ここで、筆者が問題視するのは、その金額ではない。無人ドローン兵器の多様化とそれに伴う対ドローン兵器の開発や駆動手段の小型化、携帯性兵器の強化、戦車に代わる一般車両の改良型ミサイル発射装置等である。

 最近、これらを集約した解説サイト“Anti-drone “gun trucks,” a Patriot Battery, Stinger missiles – Ukraine’s modern air defense”を読んだことも影響して改めてDODのニュースを仮訳するとともに、これらの情報をより詳細に補足、整理した。

1.防空兵器(Air Defense)

パトリオット防空砲台と弾薬 1 基(One Patriot air defense battery and munitions)

② 12 基の国家先進地対空ミサイル・システム (NASAMS) と弾薬(12 National Advanced Surface-to-Air Missile Systems (NASAMS) and munitions)

NASAMS(National/Norwegian Advanced Surface to Air Missile System)は、ノルウェーとアメリカが開発した中高度防空ミサイル・システム。AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを地上発射化したシステムとしては初のものであり、分散・ネットワーク化されている。ミサイル本体の名称はSL-AMRAAM(Surfaced Launched AMRAAM)。

NASAMS の発射機(Wikipediaから抜粋)

開発:

 ノルウェーの企業コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社がレイセオンと開発チームを編成し、ノルウェー軍と協力して開発が開始された。最先端のネットワーク中心対空防衛システムであるNASAMSは1998年に正式に実戦配備されたが、初期型は早ければ1995年には配備可能だったとされる。

③ HAWK 防空システムと弾薬(HAWK air defense systems and munitions)

 ホーク(Homing All the Way Killer, HAWK)は、アメリカ合衆国のレイセオン社が開発した地対空ミサイル。アメリカ軍での名称はMIM-23。1950年代末に開発され、現在でもNATO各国で運用されている。アメリカ陸軍はホークの配備を推進する一方で、1964年には低空目標への対処能力向上を主眼とした近代化改修として、HAWK/HIP(HAWK Improvement Program)計画を開始した。これはミサイルを更新するとともに、地上側のレーダーや情報処理装置なども更新・強化するものであり、ミサイル本体はI-HAWK(Improved Hawk)、形式名はMIM-23Bとなった。この形式は1971年に承認され、1978年までにアメリカ陸軍・海兵隊の全ての部隊のミサイルがこちらに更新された。(Wikipediaから抜粋 )

ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館に展示されるMIM-23 HAWK:Wikipedia から抜粋

 ③防空用の AIM-7(Sparrow)、RIM-7(Sea Sparrow)、および AIM-9M (短距離空対空ミサイル)の各ミサイル

*スパロー(Sparrow)は、米国レイセオン社製の中射程空対空ミサイル。アメリカ軍における正式名はAIM-7で、誘導にはセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式を採用しており、視程外射程(BVR)が可能である。

アメリカ空軍・海軍、日本の航空自衛隊など、西側諸国の空軍を中心とした軍事組織で広く使用されるが、現在ではAIM-120 AMRAAMや99式空対空誘導弾などといった、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式が可能な新型の空対空ミサイルへの更新が進んでいる。

AIM-7 スパロー(Wikipedia から抜粋)

RIM-7(Sea Sparrow)は、空対空ミサイルであるスパローを元に開発された個艦防衛用の艦対空ミサイル。順次に改良が重ねられており、最新発展型の発展型シースパロー(ESSM: Evolved Sea Sparrow Missile; RIM-162)では僚艦防空・近接防御が可能なまでになった。またシステムとしても、もっとも初期に配備された応急的なBPDMS(Basic Point Defense Missile System)、改良型のIBPDMS(Improved BPDMS)がある。

旧西側諸国でもっとも一般的な個艦防空ミサイル・システムであり、アメリカ海軍を始め、NATOなど複数の西側諸国で採用され、海上自衛隊や韓国海軍でも運用されている。

RIM-7 Sea Sparrow

AIM-9M サイドワインダー (「AIM」は「Air Intercept Missile」の略) は短距離空対空ミサイル。航空迎撃ミサイル (AIM)-9 サイドワインダーは、1950 年代にアメリカ海軍によって開発された超音速短距離空対空ミサイルです。 1956 年に就役し、派生型とアップグレード型は 50 年経った今でも多くの空軍で現役で使用されています。 海軍がカリフォルニア州チャイナレイクでミサイルを開発した後、米空軍はサイドワインダーを購入した。

サイドワインダーは米軍で最も広く使用されているミサイルで、海軍/海兵隊のF/A-18A-D、F/A-18E/F、AV-8B、AH-1、空軍のF-16で採用されている。 F-15、F-22、A-10 航空機。 さらに、サイドワインダーは 30 名以上の海外顧客によって 12 種類以上の異なる航空機に搭乗されています。(米国海軍サイトから抜粋、仮訳)

④ 2,000 発を超えるスティンガー対空ミサイル(FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。

 FIM-92 スティンガーは、FIM-43 レッドアイ 携行地対空ミサイルの後継として1967年に開発が始まったもので、開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。

 主目標は、低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の戦闘機、輸送機、巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって目標熱源追尾能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている。

FIM-92 Stinger (Wikipediaから抜粋 )

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(AN/TWQ-1 Avenger Air Defense System)は、アメリカ合衆国の近距離防空ミサイル・システム。軽車両からFIM-92 スティンガー地対空ミサイルを発射できるようにしたもので、従来の自走式対空ミサイルより軽便で機動性に優れている。アメリカ陸軍・海兵隊の近距離防空用地対空ミサイルシステムとして開発・配備された。主契約社はボーイング社。

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(Wikipedia およびUnited States Army Acquisition Support Center (USAASC)から抜粋)

VAMPIRE は対無人航空機システム (c-UAS) :この L3Harris社の スーツケース タイプの APKWS ランチャーおよびデジグネーター キットは、特殊作戦や軽部隊が通常携行する兵器の射程を超えて地上部隊や空軍目標と交戦する能力を地上部隊(SOF)に提供する。 これはモジュール式で持ち運びが可能で、現場に取り付けることができ、オペレーターが隠れたり、移動したり、連続して発砲したりしながら、広範囲の航空範囲と防御を提供する。 先進精密殺害兵器システム (APKWS) やその他のレーザー誘導兵器を発射するための荷台を備えたほとんどの車両に取り付けることができるポータブル キットである。

 ヴァンパイアの特徴として、あらゆるピックアップまたは荷台付き車両に適合するように設計されており、設置は一般的な工具を使用し、2人で約2時間で完了できる。

L3Harris’ Vehicle-Agnostic Modular Palletized ISR Rocket Equipment (VAMPIRE)(同社サイト12/7⑤から抜粋)

⑦ c-UAS(対無人航空機)用ガントラックと弾薬(c-UAS gun trucks and ammunition)。

* c-UASガントラックは,主にM230リンクFed 30 mm兵器システム*と近接弾薬で武装する。C2のネットワークソリューションの一部として、およびM-ACEシステムC2機能を使用して動作できる。M-ACEプラットフォーム(Mobile, Acquisition, Cueing and Effector System)がUASを識別すると、正確なターゲットの位置がガントラックと共有される。一緒に使用されるC-UAS機能は、移動する無人システムを正確に識別、追跡、および倒す。(Ukraine will operate Northrop Grumman M-ACE C-UASから抜粋、補足のうえ仮訳)

c-UAS gun trucks

*M230 砲は 30 mm (30×113 mm) の単銃身電動機関砲で、発砲と発砲の間に武器に動力を供給するために (カートリッジの発射によって生成される反動や膨張ガスではなく) 外部電力を使用する。(M230チェーンガン M230 Chain Gunから抜粋)

⑧ 移動式c-UASレーザー誘導ロケットシステム。

航空機に搭載される無誘導ロケット弾に、セミ・アクティブ・レーザー誘導装置を追加した精密誘導兵器。

 例として、APKWSは、米攻撃ヘリコプター・無人攻撃機の主な武装である、ヘルファイア・ミサイルと全長はほぼ同じだが、重量は約3分の1と軽量で、高い命中精度を有し、周辺部への被害も限定できる。APKWSとは昔から戦闘機等が多連装ロケット弾ポットに搭載していた70mmロケット弾に簡易なSAL誘導装置を取り付けた安価なシステムである。

APKWS IIは、無誘導のHydra 2.75インチロケットとレーザー誘導キットの設計変換であり、精密殺傷機能を提供する。 これは、接近戦での付随的な被害を制限しながら、ターゲットを破壊する安価な方法として意図されている。 APKWS IIガイダンスセクションは、レガシー10ポンド高爆発性弾頭とMk66 Mod 4ロケットモーターの間にある。 生産は2011年に始まった。 初期運用能力(Initial Operational Capability :IOC)は、AH-1WおよびUH-1Yヘリコプターで2012年に宣言された。2014年3月、APKWS IIはMH-60SおよびMH-60Rへの統合に成功した。 2016年、APKWS IIはAV-8B、F-16、およびA-10航空機に配備された。(DOD 海軍サイト解説を抜粋、仮訳)

DOD 海軍サイトから抜粋

米バイデン政権が2023年8月に発表したウクライナ支援にVAMPIRE C-UAVシステムが含まれていたが、VAMPIREはピックアップトラックにAPKWSなど4発とEO/IRトラッカーを装備を搭載したシステムと言われていた。(解説解説から抜粋)

⑨その他の c-UAS 機器。

⑩対空砲と弾薬。

⑪西側の発射装置、ミサイル、レーダーをウクライナのシステムと統合するための機器。

⑫ ウクライナの既存の防空能力を支援し、維持するための装備。

⑬ 重要な国家インフラを保護するための設備。

⑮ 21 基の航空監視レーダー。

⑯ 39 高機動砲兵

**************************************************************

Copyright © 2006-2023 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

コメント

このブログの人気の投稿

第3巡回区連邦控訴裁判所は裁判官全員の大法廷(En Banc)での再審理を否定し、インターネット第三者マーケティングに関するペンシルベニア州の主要な盗聴事件の意見を修正

  筆者の手元に2022.10.26付けのSquire Patton Boggs (US) LLP blog 「第3巡回区はEn Bancの再審理を否定し、インターネット第三者マーケティングに関するペンシルベニア州の主要な盗聴事件の意見を修正」 が届いた。 共同筆者はパートナー Kristin Bryan氏、事務所の弁護士James M.Brennan氏である。また、本裁判の第一審は2021年6月17日、ペンシルベニア州西部地区連邦地裁であり、当時ピッツバーグ大学ロースクールの法学部学生(現在はWestin Researchの Fellowである)Anokhy Desai氏が解説している。   以下、2つのレポートを内容を補足しながら、仮訳する。   Kristin Bryan氏  James M.Brennan  10月18日、米国第3巡回区連邦控訴裁判所は、 ペンシルベニア州の 「 盗聴および電子監視管理法 (Wiretapping and Electronic Surveillance Control Act:WESCA」)18 Pa. C.S. § 5701 et seq.」 の適用に関する訴訟で、 再審理を否定 した。そして、被告(オンライン小売業者とインターネットマーケティング会社Harriet Carter Gifts, Inc.)によって「提起された問題を明確にする」ために 修正意見 を発表した。  この命令は、原告(Popa)である消費者に有利な第3巡回区の2022年8月の判決を残しており、さらなる事実認定に応じて、被告は小売業者自身のウェブサイトとの消費者の相互作用を「傍受」したとしてWESCAの下で責任を負う可能性があると主張した。  Popa v. Harriet Carter Gifts, Inc., No. 21-2203, 2022 U.S. App. LEXIS 28799 (3d Cir. Oct. 18, 2022)事件で 原告Popa は被告たる小売業者ハリエット・カーター(Harriet Carter Gifts, Inc.)のウェブサイトを訪問し、交流した。ハリエット・カーターのウェブサイトには、被告の第三者マーケティング担当者 NaviStone(オハイオ州 シンシナティのソフトウェア企業) にHTTP

「COVID-19サイバー・セキュリティ・アドバイス:FTCとFBIはサイバーセキュリティ詐欺の傾向と予防策に関するガイダンスを提供(新型コロナウイルス対応-その5)」

   さる 4 月 1 日付けで筆者の手元に LexBlog のレポート   「 FTC と FBI はサイバーセキュリティ詐欺の傾向と予防策に関するガイダンスを提供」 が届いた。  COVID-19 の発生とパンデミック化に対応して、いくつかの米国の連邦政府機関は、発生に関連する詐欺や詐欺行為の増加について警告を発表したというものである。 例えば、 FBI は最近の速報で、 COVID-19 対策のためのフィッシングメール、偽造の治療または偽機器の増加、および発生に関する情報を提供することを目的とした米国保健福祉省 (DHHS) の下部機関である疾病対策予防センター( CDC )からの偽のメールの増加について 警告 を発した。     また、連邦取引委員会 (FTC) ( 筆者注 ) は、 COVID-19 に関連する詐欺と戦うために取っている手順の 一般的な概要を発表 しただけでなく、ビジネスを標的とすることを観察した 7 種類の COVID-19 詐欺の具体的なリスト をも提供した。   今回のブログは、これらの詐欺の詳細と、 FBI と FTC からの最も一般的なリスクのいくつかから保護し、それに対処する方法に関するガイダンス内容を 仮訳 するものである。   1.       FTC のサイバーセキュリティ詐欺と脅威の最近の傾向 FTC が事業者を標的とした 7 つの COVID-19 詐欺のリストには、以下の詐欺が含まれている。   (1) 「 公衆衛生」詐欺 ( “ Public health ” scams) : この場合、攻撃者は CDC 、世界保健機関(「 WHO 」)、または社会保障番号や納税者番号などの情報を求める他の公衆衛生組織からメッセージを送信するか、受信者に特定のサイトにリンクすべくクリックするか添付文書をダウンロードするように要求する。  なお、この手の詐欺に関し Barracuda Networks, Inc. 「コロナウィルス( COVID-19 )詐欺 : 企業は新しいフィッシング攻撃を受けている(メールセキュリティ)」 が CDC や WHO を騙る詐欺の手口と予防対策について詳しく解説している。   (2) 政府小切手詐欺 (Government check scams) : この場合

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は、ロシアのウクライナ侵攻に起