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米メリック・B・ガーランド連邦司法長官は1月12日、バイデン大統領の機密文書問題の特別顧問としてメリーランド地区の元米国検事ロバート・ハーを任命したと発表

 ジョー・バイデン大統領が政府の機密文書を不適切に処理したかどうかを調査する特別顧問に任命されたロバート・K・ハー(Robert K. Hur)氏は、機密漏洩調査の経験を持つ元司法省の高官である。

 この司法長官による特別顧問に任命は、今回が初めてではない。2022年11月18日、連邦司法省の元検事であり、ハーグの国際刑事裁判所の元主席検事であるジョン・L・スミス(JOHN L. SMITH)氏を、進行中の2件の犯罪捜査を監督する特別顧問として任命した。この人事発表は後述するとおり、トランプ前大統領の2020年の大統領選挙後の権力の移譲、または2021年1月6日前後に行われた選挙人団の投票の認証を違法に妨害、機密文書やその他の大統領の記録を含む進行中の調査およびその調査の妨害の可能性等である。

Robert K. Hur 氏

 今回のブログは、基本的な点で不正確な情報記事が出回っている点を反省する意味で以下をまとめた。なお、言うまでもないが、米国メディアの情報収集力には頭が下がる。

(1) 米国司法長官メリック・ガーランドによって任命されたハー氏(50歳)とは?ならびに任命に至る経緯

(2) ジョン・L・スミス特別顧問の任命とその後の動向

(3)“special counsel”の正確な訳語とは、わが国メディアが100%「特別検察官」と誤訳している。正しい訳語解説、根拠法等を明記する。

(4) アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕につき根拠法を含め正確な解説を試みる。

 なお、今回筆者は改めてトランプ・シンパの顔ぶれを眺めてみた。詳細を逐一点検したわけではないが、なかなか各主張は個性的かつ極めて攻撃的アジテーターまたはキャリア―の捏造等であり、米国の政治論を学ぶには絶好の材料である。

1.米国司法長官メリック・ガーランドによって任命されたハー氏(50歳)とは?ならびに任命までの経緯

 1月12日に米国司法長官メリック・ガーランドによって指名されたハー氏は、トランプ政権時代に任命されたメリーランド州の米国連邦検事であり、最近ではギブソン・ダン・アンド・クラッチャー(Gibson, Dunn & Crutcher)法律事務所の訴訟パートナーを務めていた。

 ガーランド長官は、ハー氏がバイデン氏の副大統領時代の機密記録がデラウェア州の民主党員邸とワシントン州のシンクタンクに不適切に保管されていたかどうかを判断する準独立検察官たる特別顧問として行動すると述べた。

左:ラウシュ連邦検事 右:ガーランド司法長官

 ハー氏は、「個人または団体が法律に違反しているかどうか」を調べるだろうと、ガーランドは述べた。

 ハー氏は2018年にトランプ前大統領からメリーランド州の最高連邦法執行官(chief federal law enforcement officer)に任命され、2021年初めに共和党大統領の任期が終了したことでその地位を離れた。

 ハー氏は、今回、特別顧問の就任後に発表された声明で、「公正、公平、冷静な判断で、割り当てられた捜査を遂行する、恐れや好意を持たずに、迅速かつ徹底的に事実に従う」つもりであると付け加えた。

 一方、ホワイトハウスは、特別顧問の調査に協力することを約束した。

2.司法長官メリック・B・ガーランドは2022年11月18日ジョン・L・スミス(JOHN L. SMITH)氏をトランプ全大統領に関し進行中の2件の犯罪捜査を指揮・監督する「特別顧問]として任命

(1)2022.11.18 米連邦司法省広報室 「特別顧問(special counsel)の任命」リリース文を仮訳する。

 司法長官メリック・B・ガーランドは2022年11月18日、司法省の元検事であり、ハーグの国際刑事裁判所の元主席検事であるジョン・L・スミス氏(注1)を進行中の2件の犯罪捜査を監督する特別顧問として任命したことを発表した。任務の1つ目は、コロンビア特別区の裁判所への提出書類に記載されているように、2020年の大統領選挙後の権力の移譲、または2021年1月6日前後に行われた選挙人団の投票の認証を違法に妨害した個人または団体の有無に関する調査である。 2つ目は、機密文書やその他の大統領の記録を含む進行中の調査、およびその調査の妨害の可能性であり、フロリダ州南部地区の係争中の問題で提出された裁判所の提出書類で参照および説明されている。

 ガーランド司法長官は「トランプ前大統領が次の選挙で大統領候補であると発表したことや、現職の大統領も候補者になる意向を表明したことなど、最近の進展に基づいて、私は、特別な人物をと特別顧問として指名することは公共の利益にかなうと結論付けた。このような任命は、特にデリケートな問題における独立性と説明責任の両方に対する国務省のコミットメントを強調するものである。また、このことで検察官や捜査官は迅速に仕事を続け、事実と法律のみに基づいて決定を下すことができる。」と述べた。

 また司法長官は、「特別顧問は司法省の職員の日常的な監督を受けることはないが、彼はDOJの規則、手順、および方針を遵守しなければならない。私は、特別顧問がこの仕事を迅速かつ完全に遂行するためのリソースを確実に受け取るようにする。これまでの仕事とスミス氏の検察官としての経験を考えると、この任命がこれらの捜査の完了を遅らせることはないと確信している。これらの捜査を追求している男性、女性は、最高水準のプロフェッショナリズムに従って行動しており、この部門の通常のプロセスがすべての調査を誠実に処理できると強く信じている、しかし、彼らのみで得意になるのは危険であり、現時点で特別顧問を任命することは正しいことだと思う。ここに提示された異常な状況はそれを要求する。したがって、スミス氏の任命は、公平かつ緊急にこれらの問題を完了するための正しい選択である。」と述べた。

(2) ジャック・スミス特別顧問の活動内容

 NBC news記事を仮訳する。

 ジャック・スミス特別顧問は、ドナルド・トランプ前大統領、彼の選挙運動、および2020年の選挙を覆すための彼の努力を支援した一連の補佐官と同盟者に関係するすべての通信について、主要な大統領激戦州の地方当局責任者を大陪審召喚した。

 ミシガン州ウェイン郡、ウィスコンシン州ミルウォーキー郡とデーン郡、アリゾナ州マリコパ郡であるの選挙当局のトップに召喚状が発行された。これらの郡には、デトロイト、ミルウォーキー、マディソン、フェニックス、ピッツバーグがある。

 召喚状の存在は、2022年12月6日にワシントンポスト紙によって最初に報告された。

 同召喚状は、偽の選挙人が関与する計画をスミスが調査していることを示している。

 ミルウォーキー郡書記のジョージ・クリステンソンのスポークスパーソンは、スミスの事務所が召喚状を送ったと認めた。 NBC ニュースが入手し、11 月 22 日に発行された召喚状のコピーは、トランプ元大統領、彼のキャンペーン、および 19 人の側近と同盟者のリストとの、または関与する通信のすべての記録を要求しました。召喚状は、2020 年 6 月 1 日から 2021 年 1 月 20 日までの連絡を求めていた。

 これらの補佐官や支持者には、ジャスティン・クラーク(Justin R. Clark)氏(48歳)

シドニー・パウエル(Sidney Katherine Powell (68歳)氏 (注2)

ルディ・ジュリアーニ(Rudolph William Louis Giuliani:79歳 )氏 (注3)

ビクトリア・トーシング(Victoria Toensing:82歳)氏

ジョン・チャールス・イーストマン(John Charles Eastman ( 63歳)

クレタ・ミッチェル(Cleta B. Deatherage Mitchell ) (注4)

ジェナ・エリス(Jenna Lynn Ellis :39歳)氏

 など、2020年の選挙での敗北を覆すためのトランプの努力に密接に取り組んだ選挙運動弁護士や他の弁護士が含まれていた。トランプの2020年のキャンペーン・マネージャーであるビル・ステピエン(Bill Stepien)氏もそのリストに載っていた。

3.ガーランド司法長官や米国メデイアによるこれまでの経緯に関する補足説明

 ガーランド長官や米メデイアのCBS等は、バイデン大統領の機密文書が調査の中心になるようになった経緯について、これまで知られていた以下のことを説明、報じた。

 調査に詳しい2人の情報筋がCBSニュースに対し、約10の文書は、センターにあるバイデン大統領の副大統領事務所からのものである、と情報筋は述べた。CBS ニュースは、FBIも米国の弁護士の調査に関与していることを知った。

 中間選挙直前の2022年11月2日、バイデン氏の個人弁護士が資料を特定したと、大統領特別顧問のリチャード・ザウバー(Richard Sauber)氏は確認した。

Richard Sauber 氏

 ザウバー氏はCBSニュースへの声明で、バイデン氏の個人弁護士が「ワシントンDCのペンシルベニア大学の「ペン・バイデン外交およびグローバル関与センター(Penn Biden Center for Diplomacy and Global Engagement):以下、「ペンバイデンセンター」という」は、米国の第46代大統領であるジョーバイデンにちなんで名付けられたシンクタンクである。

 ペン・バイデン・センターのオフィススペースを空ける準備をするために、施錠されたクローゼットに保管されていたファイルをまとめていたときに発見されたと述べた。同文書は、他の機密書類と一緒に箱に入ったフォルダに含まれていた、と情報筋は語った。情報源は、文書の内容も分類レベルも明らかにしていない。この件に詳しい情報筋は、CBSニュースに、文書に中核となる秘密文書は含まれていないと語った。

 また、ザウバー氏は、資料が発見された同日たる11月2日にホワイトハウスの弁護士事務所が国立公文書館に通知し、国立公文書館は翌朝資料を入手したと述べた。

 さらにザウバー氏は、「これらの文書の発見は大統領の弁護士によってなされた。同文書は、国立公文書館による以前の要求または調査の対象ではなかった。その発見以来、大統領の個人弁護士は、オバマ・バイデン政権の記録が適切に保管されていることを確認するプロセスにおいて、国立公文書館の所有権および司法省と協力してきた」と述べた。

 一方、ガーランド長官は、イリノイ州北部地区連邦検事ジョン・ラウシュ(John R. Lausch,Jr.)氏に、極秘扱いの資料がどのようにしてペン・バイデン・センターにたどり着いたかを調査するよう命じた。この調査は予備的なステップと見なされ、司法長官は特別顧問を任命する可能性を含め、さらなる調査が必要かどうかを判断する材料であった。

 ラウシュ氏は、ドナルド・トランプ前大統領から米国連邦検事に指名されており、現在もトランプ時代の米国の連邦検事を務めている2人のうちの1人である。もう一人は、大統領の息子であるハンター・バイデンの捜査を主導しているデラウェア州の連邦検事デビッド・ワイス(David C. Weiss)である。

David C. Weiss氏

 Lausch 氏は最近、司法長官に説明を行い、最終的に司法長官に最終報告書を提出する予定であった。

 2022年11月4日の夜、国立公文書館の監察官は連邦司法省に連絡し、ホワイトハウスがバイデンが副大統領を辞任した後、バイデンの個人事務所であるペン・バイデン・センターで機密扱いマークの付いた文書が特定されたことを国立公文書館(National Archives and Records Administration, NARA)に通知したと述べた。

 ガーランド長官によると、11月9日、FBI捜査官は機密情報が誤って取り扱われたかどうかを理解するための評価を開始した。その後、ガーランド氏は、トランプ氏が任命者であるラウシュ氏に、特別顧問を任命するかどうかについて初期調査を行うよう依頼したと述べ、ガーランド氏は1月12日に任命を行った。

4.Special Counselの正確な訳語とは?

A.キャノングローバル戦略研究所の主幹である宮家邦彦氏が的確に以下のとおり説明している。

(1)訳語「特別顧問」の意義

そもそもこの官職、英語名だけでも3種類ある。

(1)special prosecutor

(2)independent counsel

(3)special counsel

(1)は文字通り「特別検察官」。1875年にグラント大統領が某スキャンダル捜査のため任命したのが最初だ。この官職名は1983年まで使われたが、1978年に議会が法制化するまでは司法省内部規則などに基づき任命されていた。

(2)は「検察官」なる用語をあえて避けた「独立顧問」だ。ウォーターゲート事件を踏まえ、78年にそれまでの特別検察官の地位を法律で定める「政府内倫理法」が時限立法で制定され、83~99年にはこう呼ばれていた。

(3)は現行の官職で司法省の「特別顧問」。99年の政府内倫理法失効後、連邦規則28章600条に基づき司法長官が米政府外から弁護士を任命して設置できる常勤職だ。

(4)これとは別に1924年、上下両院特別決議に基づき、クーリッジ大統領が「特別顧問」を任命した例がある。

B.前記(3)説の法的根拠

 宮家氏の指摘のとおりロバート・K・ハー氏はガーランド司法長官から特別顧問として任命されたのである。

 さらに正確さを高めるため米国の「特別顧問」の法的根拠を、以下あげる。

Code of Federal Regulations(連邦行政規則集)

 第28編 第6章 パート600 1/13

パート600-特別顧問の一般的な権限

権限: 5 U.S.C. 301;28 U.S.C. 509, 510, 515-519.

§600.1特別弁護士を任命する理由

  司法長官、または司法長官が解任された場合、司法長官代行は、人または事件の犯罪捜査が正当化されると判断した場合に特別弁護士を任命し、(ある)米国検事局または司法省の訴訟部門によるその人物または問題の調査または起訴は、司法省またはその他の異常な状況に利益相反をもたらすであろう。そして

(b)このような状況下では、問題の責任を負うために外部の特別弁護士たる特別顧問を任命することが公共の利益になる。

§600.2司法長官が利用できる行動案

特別顧問の選任を検討すべき事項が司法長官の注意を喚起された場合、司法長官は以下を行うことができる。

(a)特別顧問を任命する。

(b)司法長官が適切と考える事実調査または法的調査からなる初期調査を実施し、決定をより適切に通知するよう指示する。

(c)問題の状況下では、部門の通常のプロセスから調査を削除することによって公共の利益は提供されず、部門の適切なコンポーネントが問題を処理する必要があると結論付ける。司法長官がこの結論に達した場合、彼または彼女は、特定の役人の解任などの利益相反を軽減するために適切な措置を講じるよう指示することができる。

§600.3特別顧問の資格

(ある)特別顧問として指名された個人は、誠実さと公平な意思決定に定評があり、捜査が適切、迅速、徹底的に実施されること、および捜査および起訴の決定が刑法および司法省の方針に関する情報に基づいた理解によって裏付けられることの両方を確保するための適切な経験を持つ弁護士でなければならない。特別顧問は、合衆国政府外から選出されるものとする。特別顧問は、特別顧問としての責任が職業生活において最優先されること、及び、調査の複雑さ及び段階によっては、調査に全時間を割く必要があることに同意する。

(b)司法長官は、適切な任命方法を確保し、特別顧問が倫理および利益相反の問題の適切な身元調査および詳細なレビューを受けることを確実にするために、行政担当司法次官補と協議するものとする。特別顧問は、合衆国法典第5編第7511条(b)(2)(C)1/13(22)に定義される「機密従業員」として任命されるものとする。

§600.4特別顧問の管轄権

(ある) 元の管轄:特別顧問の管轄権は、司法長官が定める。特別顧問には、調査されるべき事項の具体的な事実陳述が提供される。特別検察官の管轄権には、偽証、司法妨害、証拠隠滅、証人への脅迫など、特別検察官の捜査の過程で犯された連邦犯罪(偽証、司法妨害、証拠破壊、証人脅迫など)を捜査し、かつ、これを妨害する意図で犯された連邦犯罪を捜査し訴追すること、調査および/または起訴されている問題から生じる上訴を実施すること権限も含まれる。

(b) 調査の過程で、特別顧問が、割り当てられた問題を完全に調査して解決するため、またはコースで明らかになった新しい問題を調査するために、元の管轄で指定されたものを超える追加の管轄が必要であると結論付けた場合 彼または彼女の調査の結果、彼または彼女は司法長官と相談し、司法長官は追加事項を特別検察官の管轄内に含めるか、別の場所に割り当てるかを決定する。

(c) 民事および行政管轄:特別顧問は、捜査の過程で、行政上の救済措置、民事制裁又は刑事司法制度外のその他の政府の措置が適切であると判断した場合には、必要な措置をとるための適切な構成要素について司法長官と協議するものとする。特別顧問は、司法長官によって特に管轄権を付与されない限り、民事上または行政上の権限を持たないものとする。

 

§600.5特別顧問の補助スタッフ

 特別顧問は、特別顧問を補佐するために適切な部門の従業員の配置を要求することができる。部局は、特別顧問を集め、詳細が入手可能な適切な人員の名前と履歴書を提供するものとする。また、特別顧問は、特定の従業員の詳細を請求することができ、指定された従業員が勤務する事務所は、その要請に対応するために合理的な努力をしなければならない。特別顧問は、特別顧問に配属されている間、その職務を分担し、その業務を監督する。必要に応じて、特別顧問は、省外から追加の人員を雇用または配置するよう要求することができる。部局のすべての職員は、特別顧問と可能な限り最大限に協力しなければならない。

 

§600.6特別顧問の権能(Powers)と法的権限(Authority)

 特別顧問は、次の段落の制限に従うことを条件として、その管轄権の範囲内で、合衆国検事のすべての捜査および訴追機能を行使する完全な権限および独立した権限を行使するものとする。本編に規定されている場合を除き、特別顧問は、司法長官または司法省内の他の者に、その義務および責任の遂行について通知または協議するかどうか、およびどの程度まで通知するかを決定するものとする。

§600.7行動範囲と説明責任

(ある)特別顧問は、司法省の規則、規制、手続き、慣行および方針を遵守するものとする。彼または彼女は、倫理およびセキュリティの規制と手順を含む、部門の確立された慣行、方針、および手順に関するガイダンスについて、部門内の適切なオフィスと相談するものとする。特別顧問は、特定の決定の異常な状況により、指定された部門コンポーネントによる必要なレビューおよび承認手順の遵守が不適切になると結論付けた場合、司法長官に直接相談することができる。

(b)特別顧問は、省の職員の日常的な監督を受けないものとする。ただし、司法長官は、特別検察官に捜査または起訴のステップについての説明を提供するよう要求することができ、検討後、その行動は確立された部門の慣行の下で非常に不適切または不当であり、追求されるべきではないと結論付けることができ。その審査を行うにあたり、司法長官は特別顧問の見解を大いに重視する。司法長官が特別顧問による提案された措置を追求するべきではないと結論付けた場合、司法長官は§600.9(a)(3)に指定されているように連邦議会に通知するものとする。

(c)特別顧問および職員は、司法省の他の職員と同じ基準および範囲で、不正行為および倫理的義務違反について懲戒処分を受けるものとする。そのような問題に関する問い合わせは、司法長官の承認を得て、部門の適切な事務所を通じて処理されるものとする。

(d)特別顧問は、司法長官の個人的な行動によってのみ懲戒処分または解任することができる。司法長官は、不正行為、職務怠慢、無能力、利益相反、または部門の方針違反を含むその他の正当な理由により、特別顧問を解任することができる。司法長官は、特別弁護士に対し、解任の具体的な理由を書面で通知するものとする。

§600.8特別弁護士による通知と報告。

(a) 予算

(1)特別顧問は、司法省からすべての適切な資源を提供されるものとする。特別検察官は、任命後60日以内に、司法長官の審査と承認のために司法管理部門の支援を受けて、今会計年度の予算案を作成するものとする。この提案に基づき、司法長官は特別検察官の運営のための予算を定める。予算には、必要な資格の説明とともに、人員の配置の要求を含めるものとする。

(2)その後、特別顧問は、各会計年度の開始の90日前に、司法長官に調査の状況を報告し、翌年度の予算要求を提供するものとする。司法長官は、調査を継続すべきかどうかを決定し、継続する場合は、次年度の予算を確定するものとする。

(b) 重要なイベントの通知:特別検察官は、緊急報告に関する省のガイドラインに従って、調査の過程での出来事を司法長官に通知するものとする。

(c) 機密報告書ドキュメントの提出:特別検察官の業務の終了時に、特別検察官は、特別検察官が下した起訴または不起訴の決定を説明する機密報告書を司法長官に提供するものとする。

§600.9司法長官による通知と報告。

(ある)司法長官は、各議会の司法委員会の委員長および少数派議員に、各行動の説明とともに通知する。

(1)特別顧問を任命したとき。

(2)特別顧問を解任したとき。

(3)特別顧問による調査の終了時に、適用法と一致する範囲で、司法長官が特別顧問による提案された措置が確立された部門の慣行の下で非常に不適切または不当であり、追求されるべきではないと結論付けた事例の説明と説明(もしあれば)。

(b)このセクションのパラグラフ(a)(1)の通知要件は、正当な調査またはプライバシーの懸念が機密性を必要とすると判断した場合、司法長官によって請求される場合がある。機密保持が不要になった時点で、通知が提供される。

(c)司法長官は、これらの報告書の公開が、適用される法的制限に準拠する範囲で、公共の利益になると判断することができる。特別顧問および職員を含む司法省職員による特別検察官が取り扱う事項に関するその他のすべての情報開示は、犯罪捜査に関するパブリックコメントに関する一般的に適用される司法省のガイドラインおよび関連法に準拠するものとする。

5.アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕の概略

1 アメリカの大統領図書館制度〔Presidential Libraries〕から一部抜粋した。なお。リンクは筆者が行った。

(1)日本にはないが、アメリカの国立公文書記録管理局( National Archives and Records Administration:NARA) にある機能の1つに大統領図書館部門がある。

 1978 年に Presidential Library Act が制定されるまでは、大統領記録は大統領個人に帰属していた。この法律以後、大統領在職中の記録は連邦政府の財産となり、NARA の大統領図書館部の管理下にある。機密関係の審査〔security review〕を受けた後に公開され、資料目録〔finding aid〕が作成され一般市民の利用に供される。

(2) 根拠の法律

1978年の大統領記録法(合衆国法律集USC 44 Chapter22)を基本とする。

その§2203 において、大統領による大統領記録処分に関する規定、大統領任期終了後の合衆国アーキビストによる大統領記録の管理、監督、保護、公開に対する責任を定める。

(3) その機能

  名称は図書館〔library〕であるが、博物館の機能も多分に持っている。各図書館では常設展示のほかに年に1、2回の特別展を開催しており、文書資料だけでなく、展示にふさわしいモノ資料も数多く所蔵。大統領の子供時代から在職時代まで、執務関係記録だけではなく家族や全人的な紹介を目的としている。

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(注1) スミス氏はコソボ戦争中に犯された 戦争犯罪の調査等を行っていた。

(注2) Sidney Katherine Powell氏は、ノースカロライナ大学のロースクールを修了後、連邦検察官としてテキサス州やバージニア州に赴任。1993年にダラスで弁護士事務所を開業し、エンロンの会計不正で法的責任を問われたアーサー・アンダーセンやメリルリンチの元重役の代理人を務めた。これを切っ掛けとして共和党関係の知己を得た。ロバート・モラー特別顧問による2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉に関する捜査でマイケル・フリンの偽証容疑が捜査された際には、フリンはディープステートの犠牲者として徹底抗戦の構えを見せた。結果としてフリンは司法取引で有罪を認めたものの、このことでQアノン信奉者を始めとした陰謀論者を含むトランプ支持者との関係を深めた。(Wikipedia から抜粋)

(注3) 1994 年から 2001 年までニューヨーク市の第 107 代市長を務めたアメリカの政治家および弁護士です。彼は以前、1981 年から 1983 年まで米国司法長官、1983 年から 1989 年までニューヨーク州南部地区の米国司法長官を務めていた。・・・ 2020 年の大統領選挙に続いて、彼は選挙結果を覆す試みで提起された多くの訴訟でトランプを代表し、不正投票機、投票所の詐欺、および国際的な共産主義の陰謀。ジュリアーニは、2021年1月6日のアメリカ合衆国議会議事堂攻撃の前の集会で演説し、不正投票の虚偽の主張を行い、「戦闘による裁判」を求めた。その結果、彼の弁護士免許は 2021 年 6 月にニューヨーク州で停止された。(Wikipediaから抜粋、仮訳)

(注4) リンド アンド ハリー ブラッドリー財団の事務局長である。その略歴を見る限りトランプ・シンパとは思えない。

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 バイデン政権の今後を占ううえで欠かせない閣僚人事に関し、新たな動きがみられた。  すなわち、 AP通信 は(https://www.wtnh.com/news/health/becerra-confirmed-to-head-up-bidens-ambitious-health-agenda/)は次のとおり報じた。  「連邦議会上院 は3月18日木曜日、カリフォルニア州司法長官のハビア・バセラ(Xavier Becerra)氏(1958生まれ)をジョー・バイデン大統領がおす保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services (HHS) )(https://www.hhs.gov/about/index.html)長官として承認し、政府のコロナウイルス対応と、薬剤費の削減、保険適用範囲の拡大、医療における人種格差の解消という野心的な推進において重要な位置を占めることとなった。」 Xavier Becerra 氏  バイデン大統領はカマラ副大統領(元カリフォルニア州司法長官)に引き続き、バセラ長官を連邦政府の代表機関である保健福祉省の長官に指名する本当の理由はどこにあるのか。  確かに、閣僚人事をきめるうえで、多民族国家米国の統一化、結束を強く訴える大統領の考えは、理解できる。しかし、大統領の本音はそれだけではあるまい。長期民主党政権の維持野ための人事の若返り、世界的に見た知名度、行政手腕などの要素を踏まえれの判断かもしれない。  ところで、筆者は歴代のカリフィルニア州の司法長官とはメールのやり取りしており、両氏の今回の就任は”Congratulation”と言いたいだけでなく、わが国の対米戦略を考えるうえで両氏との率直な意見交換も行いたいという気持ちがある。  他方、筆者が強く興味があるのは、今回の人事の例にみられるとおり、民主、共和党が党員数が僅差な議会運営の難しさである。  その意味で、今回の議会上院公聴会でのバセラ氏の陳述内容、また反対議員の発言内容等につき直接確認したと考えていた。  これらの情報を探るうえで重要な公式動画情報源は上院の場合は”Floor Webcast”、下院では”House Live”である。 (注1)  また、米国ではこれらの情報は”youtube ”でも確認できるが

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)に具体的