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米国CFPBは暗号資産の苦情の増加を分析する新しい苦情速報(complaint bulletin)を発表

 

 筆者は11月1日付けブログで「英国の暗号資産にかかる「金融サービスおよび市場法」改正法案を巡る最新動向」を取り上げた。

 最近、筆者の手元に米国の消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau :CFPB)からリリースメールが届いた。11月10日、消費者金融保護局(CFPB)は、CFPBが受け取った暗号資産(Crypto-assets)に関連する苦情を強調する新しい「苦情速報(complaint bulletin)」を発表したというものである。

 しかし、暗号資産の規制機関としてのCFPB、FTCの機能の限界が見える。

 一方、わが国の場合はどうであろうか。法律専門家などの情報にあたったが、当然のことながら限界が見える。

 他方、日本経済新聞等は「暗号資産の交換大手取引所バハマに本社を置くFTXトレーディングは11月11日、アメリカ法人や日本法人を含む約130のグループ会社が日本の民事再生法にあたる米国連邦倒産法第11章(注1)の適用をディラウエア連邦地方裁判所に申請(petition)したと発表した。

 AP通信等によると、債権者は10万人以上おり、資産と負債はともに100億ドル、約1兆4000億円から500億ドル、約7兆円の範囲内ということである。

 今回は暗号資産業界で最大規模の経営破綻となり、「ビットコイン」などの価格も急落している」と報じている。(筆者が一部補足した)より詳しい解説は(注2)を参照。

 その一方で、相も変わらず「FTT(FTXトークン)とはどんな仮想通貨?話題の取引所トークンの買い方や将来性を徹底」等の無責任な解説サイトが横行している。(注3)

  今回のブログはFTXトレーディングの経営破綻問題の背景などを語る以前の取組みとして規制監督の在り方について米国の最新動向を解説する。

1.CFPBはCFPBが受け取った暗号資産に関連する苦情を提供する新しい「苦情速報(complaint bulletin)」を発表

 副題として「豚の屠殺(Pig butchering)」やその他の詐欺が暗号資産の苦情のリストをリードする~」の内容を仮訳する。

 11月10日、消費者金融保護局(CFPB)は、CFPBが受け取った暗号資産に関連する苦情を強調する新しい「苦情速報(complaint bulletin)」を発表した。

 最も一般的に報告された消費者からの苦情は、詐欺(fraud)、盗難、アカウント・ハッキング、詐欺行為(scam)の被害に遭ったと報告している。また消費者は、取引の実行と取引所間での資産の移動にも問題を抱えている。多くの消費者は、プラットフォームの完全な障害、本人確認の問題、セキュリティの固定(security hold)、またはプラットフォームの技術的な問題のために、アカウントの資金へのアクセスにおいて問題を抱えていた。情報提供が貧弱な顧客サービスは、暗号関連の苦情に共通するテーマといえる。

 CFPB局長のロヒット・チョプラ( Rohit Chopra)は「消費者の苦情の分析は、悪意のある人物が暗号資産を利用して一般の人々に詐欺を行っていることを示唆している。また米国人は、暗号資産に関して、取引上の問題、凍結されたアカウント、および貯蓄そのものの損失を報告している。これは詐欺である可能性があるため、暗号資産の前払いを求める人には注意する必要があり、我々は、米国人を標的とする詐欺師から決済システムを安全に保つための作業を継続する」と述べている。

 暗号資産は、主に暗号化と分散型台帳(ブロックチェーンなど)または同様の技術に依存する民間部門のデジタル資産ある。これらの資産は、一般に「仮想通貨(virtual currencies)」、「暗号通貨(cryptocurrencies)」、「暗号トークン(crypto tokens)」、「暗号コイン(crypto coins)」、または単に「暗号(crypto)」とも呼ばれる。

 詐欺師は、多くの暗号資産アドレスの背後にいる人物を特定するのが難しい場合があり、詐欺師が暗号資産の他のアカウントへの移動を不明瞭にするために使用する多くの手法があるため、暗号資産を標的にすることがよくある。これにより、詐欺師によって盗まれた暗号資産の追跡に、規制当局や法執行機関にとってより多くの時間がかかる可能性がある。

 近年、価格の変動と暗号資産の採用が増加しているため、これらの金融商品についてCFPBが受け取った苦情も同様に増加している。2018年10月から2022年9月まで、CFPBは暗号資産に関連する計8,300件以上の苦情を受け取り、その大部分は過去2年間に寄せられたものである。2018年10月以降に処理された暗号資産の苦情の約40%について、消費者は詐欺(frauds)とインチキ詐欺(scams)を主な問題として挙げている。暗号資産に関するさまざまな取引上の問題が苦情の約25%を占め、約束されたときに資産が利用できないという問題が苦情の約16%を占めた。

 この速報では、暗号資産の苦情を分析する際のいくつかの一般的なリスク・テーマを特定した。悪意のある攻撃者によるハッキングは暗号資産を傷つけ、盗まれた資金を取り戻す手段のない消費者による重大な経済的損失につながる。

 このセキュリティ情報で特定されているその他のリスクは次のとおりである。

ロマンス詐欺(Romance scams)と「豚の屠殺屋(pig butchering)」:暗号資産は、詐欺師が被害者の感情を利用して金銭を引き出すロマンス詐欺の標的になることがよくある。一部の詐欺師は、被害者に暗号資産アカウントを設定させるために被害者の確たる信頼(confidence )、絶対的信頼(trust)、ロマンチックな愛情を得るために時間を費やす「豚の屠殺屋」技術を採用しているが、詐欺師は最終的にすべての暗号資産を盗むだけである。さらに、多くの暗号資産プラットフォームにはそもそもカスタマー・サービス・オプション(契約上の選択権)がないため、詐欺攻撃者がカスタマー・サービス担当者になりすまして顧客のアカウントにアクセスして暗号資産を盗む機会もある。

被害者にとって賠償金の入手の困難性:消費者がだまされたり、アカウントがハッキングされたりした場合、助けを求める場所がないと言われることがよくある。さらに、暗号資産プラットフォームやサービス・プロバイダーは、サービスを使用するために強制的な仲裁を要求し、集団訴訟を制限する傾向がある。さらにサービスを使用するための重要な条件は、利用規約に埋もれている可能性があり、利用者がプラットフォームで見つけるのは極めて困難である。

③ 詐欺的取引:苦情は、一部の暗号資産プラットフォームが、顧客から苦情を受け取った後、多くの場合、その顧客による数回のエスカレーションの後にのみ、顧客に代わって行動する人の権限を確認するための措置を講じているように見えることを示している。詐欺師が同じウォレットに対して何百もの小さな取引を行うなど、いくつかの苦情パターンは、詐欺師がマネーロンダリングや詐欺を防ぐために制御を認識し、意図的に回避している可能性があることを示唆している。

 顧客の識別情報の漏洩や故意にリンクされるリスク:ブロックチェーン・テクノロジーの一部のユーザーは、暗号資産のすべてのトランザクションを記録する元帳の公開性に気づいていない。悪意のある犯罪者は、これらのトランザクションと暗号アドレスを消費者のIDまたは他のトランザクションにリンクできる可能性がある。

⑤ 資産価値の不安定性(volatility)の高まり:特にここ数ヶ月、暗号資産は政府が支援する従来の通貨よりも価値の変動が大幅に大きくなっている。一部の暗号資産はゼロになったり、取引所によって資産が凍結されたりしている。

 CFPBは、消費者に次のことをアドバイスしている。

①一般的な詐欺に注意してください:ロマンス詐欺や「豚の屠殺屋」詐欺に加えて、悪意のある攻撃者が使用する他のトリックには、暗号資産と引き換えに被害者に商品やサービスが提供されるという約束を提供する「商人なりすまし詐欺(merchant scams)」が含まれる。CFPB と連邦取引委員会(FTC)の両方に、一般的な詐欺を見つけるために利用できるオンライン・リソースがある。なお、米国では暗号資産を保証する政府機関や金融規制当局はない

② 疑わしいFDIC保険金請求権の表示は報告する:消費者は、暗号資産の政府の承認または預金保険保護を不正に示唆する可能性のあるWebサイトやアプリにも注意する必要がある。FDIC(連邦預金保険公社)の名前やロゴを誤用したり、暗号資産の預金保険の適用範囲について消費者に虚偽の表明をしたりする企業は、CFPBの2022年5月のトピックに関する回覧通達に記載されているように、消費者金融保護法の欺瞞の禁止に違反する可能性がある。

③ CFPBへの苦情の提出:消費者金融商品またはサービスに問題がある消費者は、オンラインで、または(855)411-CFPB(2372)に電話して、CFPBに苦情を提出でき/る。CFPBは、2014年以来、仮想通貨のリスクに関する苦情を処理し、消費者に警告してきた。

 苦情を公開する「消費者苦情データベース(Consumer Complaint Database)」に公開するには、CFPBは回答のために該当会社に送信する必要がある(注4)その結果、多くの仮想通貨の苦情がデータベースに公開されていない。苦情は、処理のために他の規制当局に照会されることがよくある。CFPBはFTCセンチネル(FTC Sentinel)と苦情を共有し、CFPBの安全な政府ポータルを介して政府機関が利用できるようにする。これらの苦情は、CFPBスタッフがレビューと分析のために利用することもできる。

 今日発出したCFPB苦情速報を読んでいただきたい。

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(注1) 連邦裁判所サイト(U.S. Courts)の連邦倒産法(Federal Bankruptcy Code)Chapter 11:再建型の企業倒産処理手続(reorganization)の解説参照。

(注2) 2022.11.11野村総合研究所「再び激震が走る暗号資産(仮想通貨)市場:大手取引所FTXの破綻懸念」から一部抜粋。

2022年春にはステーブルコイン「USテラ」の暴落が、暗号資産(仮想通貨)市場に激震をもたらしたが、足元では再び強い逆風が生じている。暗号資産取引所大手FTXトレーディングの破綻懸念とともに、暗号資産市場の信頼性が再び揺らいでいるのである。底流にあるのは、リスクの高い事業内容とその透明性の低さ、さらにガバナンスの欠如だ。

FTXは、暗号資産の顔とされるサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman- Fried)CEO(最高経営責任者)によって2019年に創業された。

Sam Bankman- Fried氏(筆者が独自に入手写真)

そこに数十のシリコンバレーやウォール街の大物投資家らが、20億ドル近くもの投資を行ってきた。ベンチャーキャピタル(VC)投資会社セコイア・キャピタル、セコイア、オンタリオ州教職員年金基金(OTPP)、ソフトバンクグループ、韓国サムスン電子のVC部門、アクティビストのダニエル・ローブ氏率いるヘッジファンドのサード・ポイント、タイガー・グローバル、米プロフットボールリーグ(NFL)のスター選手、トム・ブレイディ氏らが含まれている。

FTXに資金調達面で大きな追い風が吹き始めたのは2021年の夏頃からだという。同社は7か月間のうちに、70以上の投資家から一気に19億ドルの資金を確保したという(データ提供会社ピッチブック)。

今回のFTXの破綻懸念の問題は、暗号資産に対する規制強化の議論を再び加速させるきっかけとなる可能性が高い。FTXのビジネスモデル、財務の不透明性、ガバナンスの欠如が今回の問題の底流にあることは明らかである。投資家保護のための法整備の必要性も指摘されている。こうした問題が規制強化の中心となっていくのではないか。新たな規制強化を通じて、暗号資産市場が信頼性を取り戻すことができるかどうかは、不明である。

(注3)「FTT(FTXトークン)とはどんな仮想通貨?話題の取引所トークンの買い方や将来性を徹底」

2021年に爆発的な伸びを見せていて、将来性も期待できる仮想通貨だよ。

(注4) データベースについてCFPBサイトから一部抜粋し、仮訳する。

*何をいつ公開するか?

①企業に送られた苦情の98%はタイムリーな回答を得ている。ただし、回答のために企業に送信された苦情のみが公開される資格があり、該当会社が応答した後、商業関係に対応を確認した後、または15日後のいずれか早い方の後にのみ公開される。通常、データベースは毎日更新される。

②資産が100億ドル未満の預託機関に関する苦情など、他の規制当局に付託された苦情は公開していない。

消費者がそれを公に共有することを選択した場合、およびCFPBが個人情報を削除するための措置を講じた後、CFPBは彼らの苦情から消費者の語った内容の説明を公開する。

なお、このデータベースは、市場での消費者の経験の統計サンプルではなく、これらの苦情は必ずしも金融商品または会社に対するすべての消費者の経験を代表するものではない。また、苦情は、情報品質法の目的のための「情報」ではない。

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