スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

9月, 2022の投稿を表示しています

米連邦司法省はマドフ・ねずみ講(Ponzi Scheme)の被害者にマドフ被害者基金(MVF)が40億ドル以上の総額分配を行った旨発表

      筆者に届いた 米連邦司法省のリリース は、9月28日、 マドフ被害者基金(Madoff Victim Fund :MVF) が、バーナード・L・マドフ投資証券LLC(BLMIS)詐欺スキームに関連して米国政府に没収された約3億7,200万ドル(約535億6800万円)の資金の8回目の分配を開始したと発表したものである。  この被害者への分配では、世界中の 27,219人の被害者 に損害補償支払金が送られ、彼らの総回復額は88.35%に上る。BLMISの破綻で被った損失の補償として、40,000人以上の犠牲者に分配された総額は現在40億ドル(約5760億円)を超えている。  この問題を改めて考えると、被害者数や被害額の規模の大きさもさることながら、果たして(1)わが国のねずみ講やマルチ商法の規制法制の中身との比較、(2)事前の被害予防体制、さらには(3)効果的被害者救済制度の充実問題である。   特に被害者救済の実態の日米比較は極めて重要な問題でありながら、詳細に論じたレポートが極めて少ない点が気になった。  また、わが国において中立的な金融専門解説サイトが皆無に近い点も気になる。その一方で後述するとおり、BLMISは投資顧問会社または証券会社の投資顧問部門による投資一任契約に基づく投資一任運用(brokerage wrapper) (注1) を巧妙に利用した。わが国において金融庁が薦めているNISA非課税の対象となる金融商品リスクもこれからますます大きくなる一方で、投資リスク問題、被害者救済対策は依然手つかずのままである。  このため、今回のブログは、まず(1)連邦司法省のリリースの中身を補足しながら事実関係を明らかにする、(2)最優先で保護すべき被害者の補償、とりわけ被害額の財源として犯罪に関与したとされる投資家からの的確な回収をいかなる方法で確実に行うかという問題を米国の例をもって論じたいと考えた。  なお、わが国でも国をあげてNISAに基づく投資への強い働きかけが今後進むであろう。高齢者をターゲットにした特殊詐欺の次に現れるであろう投資一任契約、金融庁が音頭を取っているNISA等にかかる投資詐欺リスクについては、別途筆者ブログで取り上げる予定である。  さらに、この事件の主犯犯罪者や関係者がいずれも死亡している点も気になる。 1.

ロシア主導によるウクライナの一部地域におけるいわゆる「住民投票(referenda)」問題の実態とこれらに対するNATO等の声明

    筆者はウクライナに対するロシア侵攻に関し、これまで本ブログで詳しく取り上げてきた。最近では「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!」 (その1) 、 (その2) 、 (その3完) である。しかし、その際、特に軍事的に重要な意味を持つNATOについてはあえて言及を避けたが、去る9月22日NATOは「ウクライナの一部地域におけるいわゆる「住民投票(referenda)」に関するNATO声明」を行った。  今回のブログは、まず(1)住民投票に関するウクライナ、ロシア議会議員、同地区の議会議員等の発言内容を詳しく追った米国メディアであるCBCやBloombergの 記事を引用する、(2)G7やNATOの強い非難声明の内容、(3)ウクライナの同地域の地図で同地域の占領位置関係を米国シンクタンクである“Institute for the Study of War(ISW)”の情報等で補足する。 1.ウクライナの占領地域をロシア連邦の一部化にすることを求めるクレムリン主導の住民投票の開始に関する欧米メディア記事 (1)9月23日付けのCBC news記事 「ゼレンスキー大統領は、ウクライナ人に対し、ロシアが支配する地域での国民投票を弱体化するよう呼びかけている」  以下で仮訳する。なお、この記事に引用されるロシア連邦議会議員やウクライナの政治幹部は、それぞれの立場から意見を述べているが、決してこれらがロシアやウクライナ国民の一般的な意見でない点を理解すべきである。  また、彼らの中には筆者ブログ (注1) で引用した「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻に関し、「政治的に露見された法人、個人への制裁」対象者が含まれている点を留意されたい。 ◎ウクライナの占領地域をロシアの一部にすることを求めるクレムリン主導の住民投票が9月23日に開始され、一部の役人は銃を持った警察を伴ってアパートに投票用紙を運んだ。  ウクライナ政府(キーフ)と西側諸国は、結果がモスクワによって事前に決定された不正な選挙であると非難した。先進七カ国(G7)は9月23日、住民投票を「強く非難する」と述べた。  ルハンシク、ヘルソン、一部ロシア占領下のザポリージャ、ドネツク地域での住民投票は、モスクワによる地域併合への前奏曲と

ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!

    筆者は先般ブログで「ロシア連邦の政治体制、法制度等からみた非民主化の実態:新たな連邦体制崩壊の危機はあるのか!」を3回連載( その1 , その2 , その3完 )で取り上げた。この執筆時に最も気になったのは、果たしてロシアの暴走を止める手段は他にないのかという点である。  具体的にいうと、(1)EUの2014年3月以来のロシアに対する制裁措置を概観、(2) 政治的に露見された法人、個人や法人・機関への重き経済・金融・人事等制裁はどのようなものか、その有効性や検索方法、(3) 加盟国にロシア連邦の軍事侵攻のリスクをかかえるEU全体 の具体的対応策、(4) NATO(北大西洋条約機構)の取組み、(5)INETRPOL(国際刑事警察機構)の取組み、(6) Eurojust(European Union Agency for Criminal Justice Cooperation:欧州司法機構) の取組み、(7) Europol(欧州刑事警察機構) 等の取組み、最後に(8)ICC(国際刑事裁判所) の取組み等を概観する。   1.EUの2014年3月以来のロシアに対する制裁措置を概観 【要旨】 2014年3月以来、EUはロシアに対し、以下のことに対応して、各種制裁措置を課してきた。 ① 2014年のクリミアの違法な併合 (注1) ②ドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域を2022年に独立した団体として承認する決定 ③ 2022年のウクライナに対する、いわれのない不当な軍事侵略  この措置は、次の目的で設計されている。 ① 戦争資金を調達するクレムリンの能力を弱体化させる。 ② 侵略に責任を持つロシアの政治エリートに明確な経済的、政治的コストを課す。 またEUは、ウクライナ侵略への関与に対応して、ベラルーシ共和国( ここ , ここ )に対する制裁措置を採択した。 2.政治的に露見された法人、個人への制裁 (1) わが国のロシア制裁  外務省・財務省・経済産業省連名で「ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について」を2022.2.26~2022.6.7 の間、計12回措置を 発令 している。  その制裁の内容は、(1)資産凍結等の措置:外務省告示(2022年7月5日公布)により資産凍結等の措置の対象者とし