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米国連邦預金保険公社(FDIC)が預金保険に関する暗号資産関連の虚偽または誤解を招く表現を行ったとして5社に対し停止[中止]通告書を発布

 

 Last update:August 25,2022

 8月19日、米国の金融監督機関である連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation FDIC)は、暗号資産取扱5社とその役員、取締役および従業員に対し、FDIC預金保険に関する虚偽で誤解を招くような陳述を停止/中止し、これらの虚偽または誤解を招くような陳述に対処するため即時の是正措置を取るよう要求する書簡を発布した旨リリース(FDIC: PR-60-2022)した。

 本ブログは、(1)わが国では類似の制度がない「停止/中止通告書」の法的意義について概要を解説し、次に(2)FDICの通告書の内容を紹介する。特にわが国では、この問題につき預金保険機構や国民生活センターの預金者向け解説は皆無といってよい。(注1)その背景は、わが国の詐欺師グループは預金保険を利用する知恵がまだないというのが本音であろう。(注2)

 なお、本件に関し、2022.8.23 Ballard Spahr LLP弁護士:Brian A. Turetsky(ブライアン・トゥレツキー)氏が 「FDICは暗号資産関連商品取り扱い業者5社の預金保険に関する虚偽または誤解を招く表現を主張する手紙等を中止し、停止通告を発布」をまとめており、併せて読まれたい。

Brian A. Turetsky氏

1.停止/中止通告書の法的意義

 Cornell Law School の解説を仮訳する。

 米国における「停止/ 中止通知書(cease and desist letter)」とは、疑わしい不正行為について説明し、申し立てられた不正行為を停止するよう要求する、不正行為者とされる人物・法人等に送られる通告書である。停止通知書は、問題の行為が継続する場合、法的措置が取られる可能性があり、実際に法的措置が取られることを通知する。“cease”が違反行為の即時停止を、“desist”が将来にわたって違反行為を再開しないことを意味している。

 このような手紙は通常、弁護士によって書かれ、著作権(copyrights)、商標権(trademarks)、特許権(patents)などの知的財産権の侵害の申し立てまたは実際の侵害を阻止するために送付されることがよくある。停止通知書は、契約違反と同様に、嫌がらせ(harassment)、口頭の名誉毀・誹謗中傷(slander)、  文書の名誉毀損(libel)に対して不正行為者に警告するためにも使用できる。停止/ 中止通知書は拘束力のない書簡であり、法的効力はないが、主に不正行為者に送付されるため、不正行為の疑いがある場合に、当該行為を停止させられないが、その不正行為者に対する訴訟において証拠として使用することができる。

2.FDICのファクトシート(概要説明):FDIC預金保険と暗号資産会社について米国民が知っておくべきこと(最終更新日:2022年7月28日)

 過去数ヶ月にわたり、一部の暗号資産会社は引き出しを一時停止したり、運用を停止したりしている。場合によっては、これらの企業は自社製品がFDIC預金保険の適用対象であることを顧客に意図的に表明しており、これらの企業の顧客が誤って自分のお金や投資が安全であると信じるように導く可能性がある。FDICは、暗号資産交換所 (crypto custodians)(注3)、暗号資産取引所(exchanges)、ブローカー(brokers)、ウォレット・プロバイダー(wallet providers) (注4)、ネオバンク(neobanks) (注5)などの暗号会社の一部の顧客が、FDIC預金保険の対象となるかどうか、そしてもしそうならどのようにカバーされるかについて混乱する可能性があることを懸念している。このファクトシートは、預金保険の補償範囲と、預金保険が顧客がこれらの暗号会社に提供する資金に適用されるかどうかについて、いくつかの一般的な誤解に対処することを目的としている。FDICは、最近の市場活動やメディア報道に照らして、FDIC預金保険の適用範囲を一般の人々が理解するのを助けるために、以下の情報を提供している。

(1)FDIC預金保険の適用範囲

(A)連邦法では、FDICは、被保険銀行および貯蓄協会(総称して「被保険者銀行」という)に保有されている預金にのみ保険をかけ、被保険者銀行の破綻の万が一の場合にのみ保証する。FDICは、暗号資産会社などのノンバンク・エンティティによって発行された資産に保険をかけない。

(B)FDICが1934年に預金の保険をかけ始めて以来、被保険銀行の破綻の結果としてFDIC被保険者資金の1ペニーでも失った預金者はいない。

(C)預金保険は、当座預金口座、普通預金口座、被保険銀行に保有されている預金証書などの商品に適用される。(https://www.fdic.gov/resources/deposit-insurance/financial-products-insured/index.html)

(D)FDICは、被保険銀行が破綻した後にのみ預金保険を支払う。この補償は、破綻時に被保険銀行に保管されている預金に対してのみ利用可能である。

(2)預金保険に加入していない商品とリスク内容

FDIC預金保険は、株式(stocks)、債券(bonds)、マネーマーケット・ミューチュアルファンド(money market mutual funds)(注6)、その他の種類の証券、商品(commodities)、暗号資産(crypto assets)などの金融商品には適用されない。

 FDIC預金保険は、他の法律で対処されている盗難や詐欺による損失から保護するものではない。

 要するに、FDIC保険は、暗号資産交換所 (crypto custodians)、暗号資産取引所(exchanges)、ブローカー(brokers)、ウォレット・プロバイダー(wallet providers)、ネオバンク(neobanks)を含むノンバンクエンティティのデフォルト、破産、または破産から消費者を保護するものではない。

(3)関連資料

(A)FDICのウェブサイトでは、消費者が預金保険の適用範囲を理解するのに役立つ詳細情報を提供している。

(B) FDICの「BankFind」ツールを使用して、エンティティが被保険者銀行であるかどうかを判断できる。

(C) FDICは、預金保険に関する虚偽表示の疑いに関する苦情を提出するためのポータルを維持している。

(D) 預金保険の適用範囲を管理するFDICの規制は、12 C.F.R. Part 330に記載されている。

(E) 預金保険および暗号会社との取引に関するFDIC被保険機関へのFDICの忠告は、暗号資産会社を含むノンバンク・金融エンティティによるFDIC預金保険に関する虚偽表示に関するリスク管理およびガバナンスの考慮事項に対処しており、https://www.fdic.gov/news/financial-institution-letters/2022/fil22035.html で見出すことができる。

3.FDICの暗号資産取扱業者5社に対する停止[中止]通告書の内容

 FDICによって収集された証拠に基づいて、これらの企業のそれぞれは、ウェブサイトやソーシャルメディアアカウントを含め、(1)特定の暗号資産関連商品がFDICの被保険商品である、または(2)証券口座に保有されている株式がFDIC被保険商品であると述べるか、または示唆する虚偽の表明した。あるケースでは、いわゆる暗号資産を提供する企業は、FDICとの提携または承認を示唆するドメイン名も登録した。これらの表現は明らかに虚偽であり、誤解を招くものである。

 連邦預金保険法(Federal Deposit Insurance Act :以下「FDI Act」)は、無保険の商品がFDIC被保険者であることを表明または暗示すること、または預金保険の範囲と方法を故意に虚偽表示することを禁じている。さらにFDI法は、企業が会社名、広告、またはその他の文書に「FDIC」を使用して、自社製品がFDIC被保険者であると示唆することを禁じている。さらにFDICは、FDI法により、この禁止をいかなる者に対しても執行する権限を与えられている。

 一般的にFDIC預金保険は、FDIC被保険銀行の破綻万が一の際に顧客を保護する。当該機関がFDIC被保険者であるかどうかを判断するには、当該機関の代表者に尋ねるか、当該機関のFDICサインを探すか、FDICのBankFindツールを使用する。FDIC預金保険に関する一般的な情報については、以下のFAQs(よくある質問)を読まれたい。また、FDIC保険および暗号会社の詳細については、次のファクトシートを読まれたい。

FDICの Cryptonews.comへの手紙を参照。

FDICの Cryptosec.infoへの手紙を参照。

FDICが SmartAsset.comに宛てた手紙を参照。

FDICのFTX米国(FTX US)への手紙を参照。

FDICの FDICCrypto.com への手紙を参照。

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(注1)金 融 庁&消 費 者 庁&警 察 庁平 成 2 9 年 9 月 2 9 日 公 表(令和3年4月7日最終更新)「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」を参照されたい。

(注2)  本ブログを読むにあたり基本知識として「暗号資産のしくみと相談対応に必要なポイント」等を参照されたい。

(注3) 暗号資産交換所 (crypto custodians))参照。

(注4) カスペルスキー社「仮想通貨ウォレットの選び方」参照。

(注5) 「チャレンジャー バンク」と呼ばれることもあるネオバンクは、モバイルバンキングやオンライン バンキングを効率化するためのアプリ、ソフトウェア、その他のテクノロジーを提供するフィンテック企業である。これらのフィンテックは、通常、当座預金口座や普通預金口座などの特定の金融商品を専門としている。また、彼らの多くは金融商品に保険を掛けるためにそのような機関と提携しているにもかかわらず、メガバンクのカウンターパートよりも機敏で透明性が高い傾向がある。米国では、これらのフィンテックはより一般的にネオバンクと呼ばれている。(Forbes Advisor “What Is A Neobank?”から抜粋、仮訳)

(注6) MMF(MMMF) Money Market Mutual Fund: 米国で1971年に創設されたオープンエンド型の投資信託。高利回りの短期証券(CD、CP、TB、BAなど)で運用するもの。換金が自由なほか、小切手の振り出しも可能なことから、銀行預金の強力な対抗商品として急成長した。(金融用語辞典から抜粋)

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