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米国のオハイオ州等の包括保護法の立法動向から見た法規制の在り方、法遵守や消費者保護の観点から見た容易性、理解のしやすさ等につきGDPRとの比較結果(その1)

 

 Last Updated:September 2,2021

 筆者は,これまでカリフォルニア州やバージニア州の情報保護法の立法動向をフォローしてきたが、この問題についてはわが国でも多くのレポートがあることは言うまでもない。(注1)

 他方、わが国では全州の立法の取組動向となると一転して正確、最新かつ詳細な情報は皆無である。そのような中で最近オハイオ州の法案が上程されたというニュースが手に入った。 

 今回のブログは、まず(1)7月12日に上程されたオハイオ州の法案(H.B.376)の内容をひととおり解析し、(2)各州の立法動向を調査している”International Association of Privacy Professionals(iapp)”の”US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”にもとづき法案内容を比較しながら、各州がいかに適格な立法を目指しているかを読んでみたい。

 なお、H.B.376の原文を読んでみると極めて難解である。(注2)一方、UniLaw 企業法務研究所​代表 浅井敏雄氏がカリフォルニア州”California Consumer Privacy Act of 2018:CCPA”および"California Privacy Rights Act of 2020 ::CCRA"を私訳されている。補足説明を加えながらの解説であり貴重な文献である。

 同時に法律の構成、内容、理解度、わかりやすさから見て、EUの「一般データ保護規則(GDPR) 」と比較されたい。従来のような米国のような個別・分野別立法に頼るだけでなく、モデル法としての連邦包括保護法の議論も中断したままである。

 国民や事業者の保護法遵守の徹底を図るうえでこの点は見逃せない点であると思うし、今後でてくるであろう新たな州保護法案がどこまで大幅な見直しの上に出てくるかを期待したい。最後に、筆者なりにEUのGDPRを受けた加盟国のDPAの取組と米国のGLBAや規則の運用を含めた比較を行った。 

 また、参考までに、これらに関連し、iappやNSCLのレポートを調べるうえで重要となる全米各州の立法のトラッキングサイト”LegiScan”の無料利用者登録の手順と実際の使い方の解説を試みるものである。

  言うまでもないが、今回の立法動向を正確に理解するうえで州議会の立法用語集の使い方にも言及した。この点は比較法ゼミの内容に該当するものであるが、折角の機会なので丁寧に説明することとした。

  2回に分けて掲載する。

 1.オハイオ州OPPA(H.B.376)の概要

 JD Supra, LLCレポート「Privacy Bill Essentials: Ohio Personal Privacy Act」を抜粋、仮訳する。

  オハイオ州では新しいデータ保護およびプライバシー法案(H.B. 376)が最近で上程された。オハイオ個人プライバシー法(Enact Ohio Personal Privacy Act:OPPA)は、カリフォルニア州、バージニア州、コロラド州での最近の立法に似ているが、3つ法律のうち、この法案はバージニア「消費者データ保護法(Consumer Data Protection Act )」に最もよく似ている。制定された場合、OPPAは州民のデータ保護権利をあらたに確立し、オハイオ州の消費者の個人データを収集する州内外の企業に複数の具体的義務を課すことになる。

(1)誰に適用されるのか?

  OPPAは、オハイオ州で事業を行う企業、または州内の消費者を対象とする企業に適用され、次のいずれかに適用される。

①州で2,500万ドル(約27億5,000万円)を超える年間総収入がある企業。

②暦年中に100,000人以上の消費者の個人データを管理または処理する企業。

または、

③ 総収入の50%以上を個人データの販売から得て、暦年中に25,000人以上のオハイオ州の消費者の個人データを処理または管理する企業。

 一方、OPPAは以下には適用されない。

①全米連邦等の公的機関または州の下部機関。(注3)

②グラム・リーチ・ブライリー法のタイトルVに準拠する金融機関または金融機関の関連会社。

③高等教育機関。

④企業間取引(いわゆるBtoB)。

⑤オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)(注4)の第3905.49節で定義されている保険会社または独立した保険代理店。

⑥保険関連の犯罪または詐欺を検出または防止するために設立された非営利団体。

⑦オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)の第3937.09節および第3937.05節に記載されている諮問機関または格付け機関。

(2)どのような種類の情報をカバーするか?

 OPPAは、個人または世帯の関連でオハイオ州に居住する消費者の「個人データ」を保護する。従業員、請負業者、求職者、役員、取締役、および事業主は、事業または雇用の立場で行動する場合は消費者とは見なされない。

 個人データとは、「営利目的で企業が処理する特定または特定可能な消費者に関連する情報」と定義されている。この定義は、公的に利用可能なソースから処理されたデータ、および「仮名化(pseudonymize))、匿名化(anonymize )、または集約されたデータ」を除く。

(3)それは消費者にどのような権利を生み出すか?

 OPPAは、次の権利を含むさまざまな消費者の権利を新たに作り出す。

 ① 消費者に関して収集されている個人データを把握する。

 ②消費者に収集された消費者の個人データへのアクセス権を与える。

 ③個人データの削除を要求する権利を与える。

 ④消費者の個人データの販売を拒否またはオプトアウトする権利を与える。

(4)それは事業者にどのような義務を課すか?

 OPPAは、対象となる事業者に対して、合理的にアクセス可能で、明確で、かつ目立つ方法で、以下を含むプライバシー・ポリシーを表示することを要求する。

① プライバシーおよびデータセキュリティに関する問い合わせのための事業者の連絡先を含む、事業者のIDおよび連絡先情報、および事業者が個人データを転送する可能性のある関連会社のID。

②ビジネス・プロセスにおける個人データのカテゴリー。

③個人データの各カテゴリの処理の目的。

④個人データを収集または販売する目的。

⑤個人データが収集されるソースのカテゴリー。

⑥事業者が個人データを開示する処理者のカテゴリー。

⑦事業者が個人データを販売するかどうか、事業者が個人データを販売する第三者のカテゴリー、および販売の目的。

⑧ 個人データに関する事業者のデータ保持実務慣行およびそのような保持の目的の説明。

⑨このポリシーに基づいて個人がどのように権利を行使できるか。

⑩ 事業者のデータ・セキュリティ実務慣行の一般的な説明。

⑪ プライバシー・ポリシーの発効日。

⑫ プライバシー・ポリシーに重要な変更を加えた場合、またはプライバシー・ポリシーと互換性のない目的で個人データを処理することを決定した場合に、企業が消費者に通知する方法の説明。

 事業者のデータ・プライバシー慣行を反映するプライバシ・ーポリシーを維持しないことは、不公正で欺瞞的な実務慣行と見なされるが、消費者に私的な訴因(民亊告訴)を与える権利はない。

 また可能であれば、改定実施の60日前に、企業のプライバシー・ポリシーに重大な変更があった場合は消費者に直接通知する必要がある。

(5)それはどのように実施されるか?

 OPPAは、州司法長官事務局(AG)に調査権限と独占的な法執行権限を付与する。 AGが、企業がOPPAに違反する行為または慣行に従事している、または従事していると信じる合理的な理由がある場合、AGは、郡裁判所に訴訟を提起し、確認判決、差止命令による救済、罰則(3倍額損害賠償(treiple damages)を含む)(注5)、および弁護士費用を含む民事訴訟を求めることができる。ただし、そうする前に、AGは訴訟の開始前に企業に対し、30日間の是正(修正)期間を提供する必要がある。

  同様の他州の制定法とは異なり、OPPAは米国国立標準技術研究所(NIST)のプライバシーフレームワーク(注6)に準拠する企業にセーフハーバーを提供する。

(6)法案OPPAはどこにあるか?

 OPPAは、オハイオ州知事のリチャード・マケル・デワィン(Richard Michael „Mike“ DeWine)の支援を受けて2021年7月12日に上程されたが、発効日は含まれていない。

Richard Michael DeWine知事

2.各州の立法動向を検索・調査している”iapp”の”US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”の内容の比較

  個別ローファームのレポートは成立済の個別立法の解説を行っているが、各州の立法動向を調査・比較している”International Association of Privacy Professionals(iapp)””US State Privacy Legislation Tracker Bills introduced 2021”および”National Conference of State Legislatures(NSCL)”を具体的に比較してみた。

(1)iapp

”US Sate Privacy legistlation Tracker”(2021.5.26現在)が全州の上程された全法案をトラッキングしている。なお下記の各州の状況についてのグルーピング結果(特に②、③)は定義の説明がないがゆえに正確に見るとやや疑問がある。

①知事の署名により成立したのが4州

ネバダ(2019.10.1 施行)(注7)

カリフォルニア(2本:CCPA;CPRA)、バージニア(SB 1392)、コロラド(SB 190:2021.7.7に州知事が署名済)

 ②委員会等で審議中が5州(active bills)

コネチカット(SB 893 2021.6 .9 委員会で審議終了)、イリノイ(HB3910:House Rules Committeeで継続審議)(注7-2)、マサチューセッツ(Bill S.46 :Massachusetts Information Privacy Act: Referred to Joint Committee on Advanced Information Technology, the Internet and Cybersecurity)、ニューヨーク(3法案):

Assembly Bill(議会法案) 680(New York Privacy Act):Assembly Consumer Affairs and Protection Committee

A6042(Digital Fairness Act)

 SB 567 Senate Consumer Affairs and Protection Committee

 テキサスHouse Bill 3741 (Prior Session Legislation)委員会審議で中断

 ③上程されたが委員会等で継続審議や時間切れの州(failed bill)

アラバマ、アラスカ、アリゾナ、フロリダ(HB969:2法案)、ケンタッキー、メリーランド、ミネソタ(HB 1492;HF 36の2法案)、ミシシッピー(SB 2612)、ノースダコタ(HB 1330)、オクラホマ(HB 1602)、ユタ(SB 200 :無期休会)、ワシントン(HB 1433;SB5062の2法案)、ウェストバージニア(BS3159 :無期休会)

 計21州

 (2)iappのカルフォルニア(CCPA,CPRA)、バージニア、コロラドの3州の計4つの保護法の内容比較

 2021.7 作成 著者はCathy Cosgrove &  Sarah Rippy「Comparison of Comprehensive:Data Privacy Laws in Virginia,California and Colorado」である。全18頁にわたる比較資料(あくまで公式資料にあたることと注記されている)

Cathy Cosgrove 氏

Sarah Rippy 氏

 主な比較項目について概要を説明のうえ、特徴点をあげる。なお、3州+ネバダ州法、GDPR,Uniform Law Commission 統一法委員会のUPDPA(Uniform Personal Data Protection Act (UPDPA)につき消費者の権利を詳細に比較したレポートもある。

(ⅰ)適用となる事業者の規模(scope)

 取扱う年間個人顧客数や年間総売上高(CCRA)を定め、一定規模以下の事業者は適応除外とする。

(ⅱ)適用の例外機関

 バージニア州やコロラド州は以下の点でほぼ同じ 内容である。

:State government entities, nonprofits,institutions of higher education,

financial institutions or data subject to Title V of Gramm-Leach-Bliley Act,covered entities or business associates subject to the Health Insurance Portability and Accountability Act and the Health Information Technology for Economic Clinical Health Act(注8)

 (ⅲ)消費者の権利

以下の項目はほぼ共通しているが、CPRAは見直された方だけにより厳格内容を有している。

・Right to Know whether a controller is processing the consumer’s personal data.

・Right to Access personal data processed by a controller.

・Right to Correct.

・Right to Delete.

・Right to Data Portability.

・Right to Opt Out of targeted advertising, the sale of personal data or profiling

CPRAの項目

・Right to Know what PersonalInformation is Being Collected and

・Right to Access personal information.Section 1798.110.

・Right to Know what Personal Information is Sold or Shared and to Whom. Section 1798.115.

・Right to Correct. Section 1798.106.

・Right to Delete. Section 1798.105, subject to certain exceptions.

・Right to Data Portability.Section 1798.130(a)(3)(B)(iii).

・Right to Opt Out of Sale or Sharing.Section 1798.120. Definition of sharing includes “cross-context behavioral advertising,” a separately

defined term.

・Right to Limit Use and Disclosure of Sensitive Personal Information.

Section 1798.121.

(ⅳ)事業者controller の責務 

・Data Minimization.

・Purpose Limitation.

・Reasonable Data Security

・Sensitive Data

・Privacy Notice Required. 

・No Discrimination

・Required disclosure of sale

コロラド州はDuty of Purpose Specification、Duty to avoid secondary use.

バージニア州やコロラド州はRequired disclosure of saleを入れている。

(ⅴ)処理者の任務/サービス・プロバイダー/第三者および契約上の要求(ROLE OF PROCESSOR/SERVICE PROVIDER/THIRD PARTY AND CONTRACTUAL REQUIREMENTS)

・Role of Processors

・Service Provider and Third Party. definition

 なお、コロラド州はProcessor Obligationsにつき、規定が細かい。

*******************************************************************************************:

(注1)3州の包括保護立法内容についてはiappの個別の解説もある。

(注2)各州法の規定内容の理解のむずかしさの最大の理由は、①立法の背景、②基本的考え、③総論規定、④各論が項目が整理されていないことであろう。このような点がローファームやiapp等の解説が利用される理由であろう。

(1)ネバダ州 Nevada Privacy of Information Collected on the Internet from Consumers Act (NPICICA),ただし、内容がいわゆる包括法ではないためか(?)各解説ではあえて同州は除かれていることが多い。しかし、筆者が専門解説の内容を読む限り実質的な差はないと思う。

(2-1)カリフォルニア州CCPA

CIVIL CODE - CIV

DIVISION 3. OBLIGATIONS [1427 - 3273.16]  ( Heading of Division 3 amended by Stats. 1988, Ch. 160, Sec. 14. )

PART 4. OBLIGATIONS ARISING FROM PARTICULAR TRANSACTIONS [1738 - 3273.16]  ( Part 4 enacted 1872. )

TITLE 1.81.5. California Consumer Privacy Act of 2018 [1798.100 - 1798.199.100]  

(2-2)カリフォルニア州CPRA

・ CPRA は、カリフォルニア州民法典(Civil Code)中の独立の編(Title)"Title 1.81.5 - CALIFORNIA PRIVACY RIGHTS ACT OF 2020"である。従って、CPRA の条文中における"this title"とは CPRA 自体を指す。そこで、訳注ではこれを「CPRA」と訳出した。

(3)バージニア州Consumer Data Protection Act(CDPA).

 州内の個人データを管理および処理するための法的フレームワークを確立した。この法案は、州内で事業を行い、(i)少なくとも100,000人の消費者の個人データを管理または処理するか、(ii)総収入の50%以上を個人データの販売から得て、少なくとも25,000人の消費者の個人データを管理または処理するすべての者に適用される。この法案は、データ管理者と処理者の責任とプライバシー保護基準の概要を示す。この法案は、州または地方自治体等公的機関には適用されず、連邦法に準拠する特定の種類のデータおよび情報の例外が含まれる。この法案は、個人データへのアクセス、修正、削除、コピーの取得、およびターゲットを絞った広告の目的での個人データの処理をオプトアウトする権利を消費者に付与する。この法案は、司法長官が法律違反を法執行する独占的な権限を持っていることを規定しており、消費者プライバシー基金はこの取り組みを支援するために設立された。この法案の施行日は2023年1月1日である。

(4)コロラド州:Colorado Privacy Act (CPA) 

 2021年7月8日、コロラド州は、コロラド州ジャレッドポリス知事が法案に署名した後、コロラドプライバシー法を正式に制定した(施行は2023年7月1日)。 法律を可決することで、コロラド州は、2018年のカリフォルニア州と今年初めのバージニア州に続いて、包括的なプライバシー法を制定する3番目の米国州になった。 

(注3)全米連邦等の公的機関または州の下部機関が一律適用除外としている理由がいまいち理解できない。EUのGDPRでは実際2019年8月29日、ベルギーのNational Revenue Agency(国家歳入庁)が検査過程での個人情報の漏えい事件で、GDPR第32条に基づき技術面、組織面で十分な情報キュリテイ対策取らず個人情報を扱ったことを理由に情報保護委員会(Комисия за защита на личните данни)から260万ユーロ(約3億3800万円)の制裁金を命じられた例がある。

 ブルガリア情報保護委員会のリリースを以下で仮訳して引用する。なお、漏えいした機微情報の範囲、被害者数が極めて多い点などが制裁金額の多さに影響していることは明らかである。

「国家歳入庁(NRA)が1か月以内に実施した検査の過程で、NRAはその活動を実施するにあたり、個人データ管理者として適切な技術的および組織的措置を実施していないことが判明した。

 ブルガリア市民の名前、PIN、住所、電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先情報、個人の年次納税申告書のデータ、個人の支払所得に関するお問い合わせ、保険申告のデータ、健康保険料のデータ(ただし、医学的状態や市民の治療に関する情報は除く)、行政違反の発行された行為に関するデータ、ブルガリア郵便ADを介した税金と保険債務の支払いに関するデータ、および海外で支払われたVATの要求と払い戻しに関するデータ。

 インターネット上で違法にアクセスおよび流布された情報には、4,104,786人の生存する個人、ブルガリア人および外国人、および1,959,598人の死亡者を含む合計6,074,140人の個人データが含まれていることが確認されている。(以下、略す)」

(注4)オハイオ州改正法令集(Ohio Revised Code)には、恒久的かつ一般的な性質を有するオハイオ州議会の現在のすべての法令が含まれており、条項、編、章、および節に統合されている。 しかし、議会総会の制定案の唯一の公式出版物は「オハイオ州の法律」である。オハイオ州改正法令集は単なる参照である。

オハイオ州改正法令集は公式に印刷されていないが、いくつかの非公式であるが認定された(オハイオ州務長官による)商業出版物がある。

 (注5)一定の法令で認められているもので、3倍額損害賠償は、懲罰的損害賠償の対象となる被告に対する訴訟で陪審員が行った原告の実際の損害賠償額を決定の3倍額とする裁判官の決定である。懲罰的損害賠償は、被告の行為が悪意があった場合、または原告の権利を無謀に無視した場合に与えられる。懲罰的損害賠償は、特定の損失または傷害に対して原告を補償するのではなく、将来的に被告によるこのような不正行為を抑止するように設計されている。このような損害は、損害賠償を処罰しないことを補償するという規則の例外である。被告による不正行為があった場合、懲罰的損害賠償がしばしば与えられる。

 (注6)NRI 藤井 秀之「【 解説】】NIST プライバシーフレームワークの概要と位置づけ」が詳しく解説している。

 残念なことにNIST(National Institute of Standards and Technology)を「米国国立標準研究所」と訳されているは貴重なレポートだけに残念である。

(注7)ネバダ州のプライバシー法(Nevada Privacy of Information Collected on the Internet from Consumers Act (NPICICA) )

 ネバダ州のプライバシー法は2019年5月29日に州知事により署名され、有名なCCPAの3か月前の2019年10月1日に施行された。法律の内容は非常に似ているが、「販売」の定義方法に大きな違いがある。ネバダ州の法律はより狭く、すべてのサービスプロバイダーを対象としているわけではなく、金融機関に対してより寛大である。CCPA法とネバダ州法はどちらも「企業は消費者のオプトアウト要求の正当性を検証するプロセスを考え出し、60日以内に要求に応答することを要求する」という点で類似しているが、カリフォルニア州と同様に、ネバダ州の法執行は司法長官の

(注8) 各国の適用例外規定に関し、GDPRは第9条で極めて限定した定めをおいている。

第9条 特別な種類の個人データの取扱い 

Art. 9 GDPR Processing of special categories of personal data

  1. Processing of personal data revealing racial or ethnic origin, political opinions, religious 

   or philosophical beliefs, or trade union membership, and the processing of genetic data,  

   biometric data for the purpose of uniquely identifying a natural person, data concerning

   health or data concerning a natural person’s sex life or sexual orientation shall be

   prohibited.

  1. Paragraph 1 shall not apply if one of the following applies:

   (a) the data subject has given explicit consent to the processing of those personal data for

     one or more specified purposes, except where Union or Member State law provide that 

     the prohibition referred to in paragraph 1 may not be lifted by the data subject;

   (b) processing is necessary for the purposes of carrying out the obligations and exercising 

      specific rights of the controller or of the data subject in the field of employment and 

      social security and social protection law in so far as it is authorised by Union or Member 

      State law or a collective agreement pursuant to Member State law providing for 

      appropriate safeguards for the fundamental rights and the interests of the data subject;

   (c) processing is necessary to protect the vital interests of the data subject or of another 

      natural person where the data subject is physically or legally incapable of giving 

      consent;

   (d) processing is carried out in the course of its legitimate activities with appropriate 

      safeguards by a foundation, association or any other not-for-profit body with a political, 

      philosophical, religious or trade union aim and on condition that the processing relates 

      solely to the members or to former members of the body or to persons who have 

      regular contact with it in connection with its purposes and that the personal data are 

      not disclosed outside that body without the consent of the data subjects;

   (e) processing relates to personal data which are manifestly made public by the data 

      subject;

   (f) processing is necessary for the establishment, exercise or defence of legal claims or 

     whenever courts are acting in their judicial capacity;

   (g) processing is necessary for reasons of substantial public interest, on the basis of Union 

      or Member State law which shall be proportionate to the aim pursued, respect the 

      essence of the right to data protection and provide for suitable and specific measures to 

      safeguard the fundamental rights and the interests of the data subject;

   (h) processing is necessary for the purposes of preventive or occupational medicine, for the 

      assessment of the working capacity of the employee, medical diagnosis, the provision of 

      health or social care or treatment or the management of health or social care systems 

      and services on the basis of Union or Member State law or pursuant to contract with a 

      health professional and subject to the conditions and safeguards referred to in 

      paragraph 3;

   (i) processing is necessary for reasons of public interest in the area of public health, such as 

     protecting against serious cross-border threats to health or ensuring high standards of 

       quality and safety of health care and of medicinal products or medical devices, on the 

       basis of Union or Member State law which provides for suitable and specific measures 

       to safeguard the rights and freedoms of the data subject, in particular professional 

       secrecy;

(j) processing is necessary for archiving purposes in the public interest, scientific or 

  historical research purposes or statistical purposes in accordance with Article 89(1) 

  based on Union or Member State law which shall be proportionate to the aim pursued, 

  respect the essence of the right to data protection and provide for suitable and specific 

  measures to safeguard the fundamental rights and the interests of the data subject.

  1. Personal data referred to in paragraph 1 may be processed for the purposes referred to in point (h) of paragraph 2 when those data are processed by or under the responsibility of a professional subject to the obligation of professional secrecy under Union or Member State law or rules established by national competent bodies or by another person also subject to an obligation of secrecy under Union or Member State law or rules established by national competent bodies.
  2. Member States may maintain or introduce further conditions, including limitations, with 

  regard to the processing of genetic data, biometric data or data concerning health.

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  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

米ノースカロライナ州アッシュビルの被告男性(70歳)、2,200万ドルのポンジ・スキーム(いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル以上の賠償金判決

被告 Hal H. Brown Jr. 7 月 10 日付けで米連邦司法省・ノースカロライナ西部地区連邦検事局の リリース   が筆者の手元に届いた。 その内容は「 ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性 (Hal H. Brown Jr., 70 歳 ) は、 2,200 万ドル ( 約 23 億 5,400 万円 ) のポンジ・スキーム (Ponzi scheme : いわゆる「ねずみ講」 ) 等を画策、実施した罪で 17.5 年の拘禁刑 や 1,700 万ドル ( 約 18 億 1,900 万円 ) 以上の賠償金 の判決 を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む 60 人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。 筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、 1) この裁判は本年 1 月 21 日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、 2)Ponzi scheme や取引マネー・ローンダリング (Transactional Money Laundering) の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。 特に不正資金の洗浄運び屋犯罪 (Money Mules) の種類 ( 注 1) の相違点につき詳細などを検証した。 さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。 これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。 他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。 ( 注 2) 取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は 9 年前の 2011.8.16 に...