スキップしてメイン コンテンツに移動

11年前(2009年)に世界的にパンデミックとなった新型インフルエンザA(H1N1)発生時のわが国の反省はどうなったのか?(新型コロナウイルス対応:その1)

 新型コロナウィルス感染症が世界的かつ急速に拡散が進む中で、わが国政府をはじめ関係機関の対応は極めて遅々とした内容で、さらには在宅勤務、全国一斉の休校措置による混乱、また流通面ではマスクやトイレットペーパーの店頭からの消滅現象など上げれば切りがない。

 ところで、筆者は2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取り組み内容を専門外ではあるが、できる限りフォローすべく、本ブログで取り上げた(その関係もあり、アクセス数が2月中旬以降、急増している)。

 そこで見られた注目すべき点をピックアップすると、例えば、1)米国では連邦議会調査局(CRS)は2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」を公表(筆者注1)した。


  その他、筆者ブログでは、2) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告、3)米国の新型インフルエンザの第二波への準備状況やワクチン開発の最新動向、4)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向や新たな研究・開発への取組み、5)WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向、6)EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向等を取り上げた。

 なお、特記すべきは3)である。記憶の良い方は覚えておられるであろうが、新型インフルエンザA(H1N1)の世界レベルの拡散は約半年続いたのである。その筆者ブログ連載の最終回(全16回連載)は2009年11月24日の最終回の前文で「わが国の優先者への新型インフルエンザ・ワクチン接種が11月から始まり、一部では死亡事例の報告が聞かれるが(当時の厚生労働省の発表では死者198人(死亡率0.15))、前倒しスケジュールも発表されるなど、具体的な対応は進んでいる。」(以下は略す)と述べている。

 特に、わが国の死者数は本年2月28日現在で11名(クルーズ6名、国内5名)であり、H1N1の時と比較して決して致死率が低いとは言えないきわめて危険な肺炎であることを念頭に置き、かつ長期戦を覚悟で取り組まざるを得ない点を、政府・関係機関だけでなく国民も理解すべきである。

 今回の新型コロナウィルスの世界的拡散について、米国疾病対策センター(CDC)はほぼ毎日更新しているサイト「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」(筆者注2)で取り上げるとともに、検査キットの開発やワクチン開発動向を積極的に行っている。

 今回のブログは、前段で2009年に筆者が取り上げたブログのテーマに即してリンクを張った。なお、時間の関係で各ブログのリンクは100%メンテナンスできていない。時間を見てメンテナンスを行う予定ではいる。また。後段でCDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目を仮訳する。

 なお、2009年の時と同様に、今後とも筆者の理解できる範囲で海外の関連する動き等を連載でフォローアップしたいと考える。

1.2009年6月以降の新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミック時に米国や海外関係機関の取組み内容
(1) 連邦議会調査局(CRS)の 2009年10月29日に「2009年新型インフルエンザに関する主な法的問題の概要報告(CRS報告7-5700)」(その1)同(その2完)

(2)米国の新型インフルエンザA(H1N1)の第二波への準備状況とワクチン開発の最新動向(その1)同(その2完)

(3) 海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(その1)同(その2)同(その3)同(その4)同(その5)同(その6)同(その7)同(その8)同(その9)同(その10)同(その11)同(その12-1)同(その12-2)同(その13)同(その14)海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな課題などへの疫学・臨床戦略(その15)同(その16完)


(4) WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度の警告(その1)同(その2完)

(5) WHOの第3回国際保健規則緊急委員会の動向

(6) EUのおける新型インフルエンザA(H1N1)の疫学面の研究動向

2.CDCの「Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Situation Summary」の重要項目(仮訳)
 CDC(筆者注2-2)の各研究所は、以下を含むCOVID-19対応をサポートしている。
CDC laboratories have supported the COVID-19 response, including:

 CDCは、臨床検体からの呼吸サンプル中のCOVID-19を診断できるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction (rRT-PCR) )(筆者注3)テストを開発した。 1月24日に、CDCはこのテストの試験プロトコルを公開した。 

 2月26日に、CDCと保健福祉省・食品医薬品局(FDA)は、オリジナルのCDCテストキットの3つのコンポーネントのうち2つを使用してCOVID-19を引き起こすウイルスを検出するプロトコルを開発した。 これにより、少なくとも40の公衆衛生研究所がテストを開始できるようになる。
 CDCは、シーケンス(sequencing) (筆者注4)が完成したときに、米国で報告された症例からGenBank(筆者注5)にウイルスのゲノム全体をアップロードした。
 CDCは、細胞培養(cell culture)でCOVID-19ウイルスを増殖させた。これは、追加の遺伝的特性評価を含むさらなる研究に必要であり、 細胞増殖ウイルスは国立衛生研究所(NIH)のBEIリソースリポジトリ(倉庫)( Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository (BEI Resources) に送られた。

3.CDC の新型コロナウィルスの検査キットの使用開始に関する米国のメデイア情報
 CNNによると、CDCは新型コロナウイルスに関し、感染を診断する検査キットを開発し、国内外の検査機関2月6日に配布を始めたと発表した。検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出ると報じた。
 しかし、2月13日CNNは新型肺炎の検査キットに不具合、作り直しへといった情報を報じている。

4.新型コロナウィルスの治療薬の開発動向
 わが国では、エボラウイルス治療薬アビガン錠を開発した富士フィルム富山化学の例が取り上げられている。

 一方、米国ではどうであろうか。
米国衛生研究所(NIH)に属する米国アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、新型コロナウイルス感染の治療薬としての効果と安全性を調べるため、抗ウイルス薬の「レムデシビル(Remdesvir)」のランダム化二重盲検比較試験を、ネブラスカ大学医療センターで開始した。 

 現時点では新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の治療薬として、米食品医薬品局(FDA)承認を受けた薬はなく、COVID-19の治療に関する臨床試験はこれが初めて。 
 レムデシビルは、米バイオ医薬品大手のギリアド・サイエンシズにより開発された治験薬。これまでエボラ出血熱の治療で試験的に使用されたほか、動物実験ではコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)で有望な試験結果を示している。Yahoo Japan news~抜粋
 より詳細は、NIHリリース「NIH clinical trial of remdesivir to treat COVID-19 begins Study enrolling hospitalized adults with COVID-19 in Nebraska.」等を参照されたい。
*********************************************************************
(筆者注1)  米国連邦議会調査局(CRS)が新型インフルエンザにかかる主要法律問題の概括報告の具体的な内容は2010年2月1日の筆者ブログで確認されたいが、わが国の政府、関係機関、研究機関等は以下掲げる項目につき11年前の大混乱の実態を踏まえ整理されているはずと考えるのは筆者のみであろうか。
[目次]
1.序論
2.非常時の措置 
(1).非常時担当政府機関 
・公衆衛生担当局 
・国家非常時事態宣言 
・スタッフォー法に基づく宣言
・社会保障法1135条の国民の受診権放棄または制限措置
・緊急使用認可(Emergency Use Authorizations(承認していない対策のための)
(2)国際保健規則(International Health Regulations:IHR)
・IHRの概観
・「国際的懸念発生時における公衆衛生緊急事態」宣言 
(3)患者の隔離と孤立措置担当の当局
・連邦機関
・連邦と州の調整機関
・連邦規則案
(4)国境入国問題 
・感染した在留外国人の非容認措置
・国民や在留外国人の隔離措置 
・国境の封鎖 
(5)航空と旅行制限
・ 航空会社の緊急時対策ポリシー 
・公衆衛生上の「国境または航空禁止者リスト(“Do Not Board” List)」
・連邦領空局(Federal Airspace Authority)
(7)学校閉鎖
3.ワクチン接種(Vaccinations)
(1)接種実施の背景
(2)ワクチンの配分
・概観
・2009年に先立つ選別的連邦の活動
・インフルエンザA(H1N1)緊急事態後の連邦の活動
・法的問題
(3)強制的ワクチン接種
・歴史と先例
・医療機関受持者と強制的ワクチン接種
・公衆衛生緊急事態時のワクチン接種命令
・モデル州非常事態における保健管理法(The Model State Emergency Health Powers Act)
・連邦政府の役割
4.公民権(Civil Rights)
(1)はじめに
(2)適正手続(Due Process)および保護の平等(Equal Protection)に関する憲法上の権利
(3)連邦無差別保証法(Federal Nondiscrimination Laws)
 ・「1973年リハビリテーション法(Rehabilitation Act)」504条(筆者注8)
 ・「1990年米国障害者法(Americans with Disabilities Act of 1990 :ADA)」
 ・「1986年航空バリアフリー法(Air Carrier Access Act )」
5.民事損害賠償責任問題
(1)「2005年災害危機管理および緊急事態準備法(Public Readiness and 
Emergency Preparedness Act :PREP Act)
(2)一般ボランティアおよび医療専門家ボランティアの民事責任問題
・「1997年ボランティア保護法(VVolunteer Protection Act of 1997)」
・緊急事態時における責任制限
・州等における災害相互応援協定(Emergency Mutual Aid Agreements)
6.雇用問題
(1)はじめに
(2)公共政策に違反する不当解雇(Wrongful Discharge)
(3) 「1993年介護休暇法(Family and Medical Leave Act of 1993:FMLA)」
(4)従業員保護法に関する州および連邦法

(筆者注2) COVID-19の世界的感染情報はジョンホプキンス大学のリアルタイムコロナのブレイク状況リアルタイム地図も参考になる。
Johns Hopkins Center for Systems Science and Engineering
Mapping 2019-nCoV
By Lauren Gardner, January 23, 2020

(筆者注2-2) CDCには1,700人を超える科学者、医師等がおり、アトランタからスポケーン、フォートコリンズ、シンシナティ、ピッツバーグ、モーガンタウン、アンカレッジ、サンファンに至るまで、米国中の200以上の最先端の研究所で働いている。 CDCの研究所は、その機能と専門知識が多様ですが、重要な役割を果たしアメリカの国民の生活と健康を24時間365日保護するという1つのミッションによって統一されている。(CDC laboratoriesのHP仮訳)

職種:医師(感染症専門医)、歯科医師、インフェクションコントロールドクター、薬剤師(感染制御専門薬剤師)、獣医師、看護師(感染症対策看護師)、臨床検査技師(感染制御認定臨床微生物検査技師)、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士(感染管理歯科衛生士(感染制御歯科衛生士))、滅菌技士(第一種・第二種)、歯科技工士、農学者、生化学者、遺伝子学者、病理学者、法医学者、疫学者、気象学者、統計学者、理学者、微生物学者、細菌学者、事務職、プログラマ、官僚、軍人など多種多様。本部7,000人、支部8,500人(Wikipedia~抜粋 )

CDCの2020年予算額は65億9,400万ドル(約7,253億4,000万円)

(筆者注3) 細胞内において、遺伝情報であるDNAからタンパク質が合成される過程では、まずRNAと呼ばれるDNA配列のコピーが作製され(転写)、このRNAを基にタンパク質が合成される。DNAを大量に複製するにはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が汎用されるが(詳細はPCRを参照)、PCRではRNAを直接複製することができない。そこで、一度RNAからDNAへと変換する逆転写と呼ばれる反応を行い、得られたDNAを鋳型としてPCRを行うことで、RNAをDNAとして大量に複製する。このRNAからDNAへの逆転写反応、それに続くPCRという一連の過程を、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ぶ。本手法により、細胞内でどのような機能を持つRNAがどのくらい発現しているのかを調べたり、rRNAを標的として高感度で細菌を検出したりすることができるようになった。

(筆者注4) シークエンシング◆DNAを構成しているヌクレオチドの塩基配列の決定(gene sequencing)、またはタンパク質のポリペプチド鎖内のアミノ酸配列の決定(protein sequencing)を行う手続き。(英辞郎から抜粋)

(筆者注5) GenBank(ジェンバンク)は、米国立生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供している、塩基配列データを蓄積・提供している世界的な公共の塩基配列データベースである。(Wikipediaから一部抜粋 )

***************************************************************
Copyright © 2006-2020 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

米ノースカロライナ州アッシュビルの被告男性(70歳)、2,200万ドルのポンジ・スキーム(いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル以上の賠償金判決

被告 Hal H. Brown Jr. 7 月 10 日付けで米連邦司法省・ノースカロライナ西部地区連邦検事局の リリース   が筆者の手元に届いた。 その内容は「 ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性 (Hal H. Brown Jr., 70 歳 ) は、 2,200 万ドル ( 約 23 億 5,400 万円 ) のポンジ・スキーム (Ponzi scheme : いわゆる「ねずみ講」 ) 等を画策、実施した罪で 17.5 年の拘禁刑 や 1,700 万ドル ( 約 18 億 1,900 万円 ) 以上の賠償金 の判決 を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む 60 人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。 筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、 1) この裁判は本年 1 月 21 日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、 2)Ponzi scheme や取引マネー・ローンダリング (Transactional Money Laundering) の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。 特に不正資金の洗浄運び屋犯罪 (Money Mules) の種類 ( 注 1) の相違点につき詳細などを検証した。 さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。 これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。 他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。 ( 注 2) 取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は 9 年前の 2011.8.16 に...