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オーストラリアACCCがNNZ,Citigroup,Deutche Bank 及びこれらの銀行の上級役員をカルテル行為を理由に刑事告訴

 

 2018年6月5日付けのABC news は、わが国の公正取引委員会にあたる「オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC:Australian Competition and Consumer Commission)が過去2年間にわたるオーストラリア・ニュージーランド銀行(以下”ANZ”という)、シティグループの(Citigroup Global Markets Australia Pty Limited (非公開株式有限責任会社:以下”Citigroup” )、ドイツ銀行(Deutsche Bank)およびこれら銀行に属していた6名の上級役員に対して「2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010)」に基づきカルテル行為にもとづく刑事告訴に踏み切った旨報じた。この問題に関し、筆者は6月にはいりABC newsの記事でフォローしていたが、5日の記事が体系的に論じているので、仮訳を試みることとした。

 また、ABC newsは一般メディアであり、必ずしも法律的観点からの解説ではないので、筆者なりに補足解説したり、必要に応じ法令とのリンクを張った。

 なお、余談であるがACCCから告発された6名は世界のトップ金融機関として 各種ヘッジファンドや株式売買の世界を牛耳っている人物でありながら、そのプロファイル情報は極めて少ない。写真でさえ少ないのが実際である。 

1.ACCCのANZ、Citigroup 、Deutche Bankおよびこれら銀行の上級役員6名をカルテルに基づく刑事告発

 オーストラリアで活動していた大手銀行家らは、ACCCの決定により、元最高経営責任者(CEO)やその他の上級役員に対する告発により、25億豪ドル(約2,100億円)の株式売買契約でカルテル行為を行ったことを背景として訴えられた。

 すなわち、ACCCは、2015年に大規模機関投資家に株式を売却することによって余剰資本を調達することに関し、ANZ、Citigroup 、Deutche Bankおよびこれらに属する6人の上級役員に対して刑事カルテル告発を行ったことを確認した。

 この訴訟では、個人の被告として、①Citigroupの元オーストラリア代表(CEO)であるスティーブン・ロバーツ(Stephen Roberts)氏

Former CEO of Citi Stephen Roberts (Sydney Morning Telegraphから引用)

 ②Citigroupの現在の専務取締役(managing director)であるジョン・マクリーン(John McLean)氏

  

John Mclean氏

 ③ Citigroupの世界的な外国為替取引部門の責任者、アイティ・タクマン(Itay Tuchman)氏

Itay Tuchman氏 

④ Deutche Bankの元オーストラリア最高経営責任者(CEO)のマイケル・オルメェチア氏

 

 マイケル・オルメェチア氏(Financial Reviewより引用)

⑤ マイケル・リチャードソン(Michael Richardson)氏(すでに同銀行を辞めたが、リチャードソン氏は、現在、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのオーストラリアのグローバル資本市場の責任者である)

 

Michael Richardson氏(Financial Reviewより引用) 

⑥ ANZの銀行グループの財務責任者であるリック・モスカティ(ANZ's global head of treasury Rick Moscati)

 

リック・モスカティ氏 

 これら6名の刑事責任は、2015年8月に機関投資家に25億ドルのANZ株式を売却したことに関連している。

  この株式売却は、Citigroup、Deutche Bankおよび世界第3位のグローバル銀行である JPモルガンが、オーストラリアの金融監督機関である「金融健全性監督庁(APRA)」の要求に応じてANZのバランスシートを強化するために組織され、引受けられたものである。

 なお、JPモルガンはACCCから告訴されていない。

この3行はすべて、激しくACCCの告発を否定し、自らとその従業員を積極的に守ると述べている。 

2.2年間にわたるACCCの調査と今後の裁判予定

 ACCCとオーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、これら銀行が2015年8月6日に大規模な機関投資家に最初のオークションで売却しなかった株式約7億9,000万ドル(約827億9,000万円)の処分につき調査している。

 当時、市場は未売却株式のオーバーハング(上場後も株式の大きな持ち分を保有するオーナーや会社が、いずれ株式を売り出すであろうとの憶測が株価の上値を抑えるという現象をいう。オーナーや大株主の会社が株式を売り出せば需給バランスが崩れて、売り圧力が強まるとい問題である)について情報が知らされていなかった。

 「これは非常に技術的な分野であり、ACCCが取り組むべき事柄であると考えるならば、これらは法律や規制や相談によって明確にすべきである。引受シンジケートは、リスクを引き受け、大規模な資金調達を引き受ける能力を提供するために存在してきており、このような形で何十年もオーストラリアで成功してきている」とCiti groupは反論している。 

 他方、ACCCの委員長ロッド・シムズ(Rod Sims)は「これらの重大なカルテルの刑事責任の追及は、2年以上続けてきたACCC調査の結果であり、これらの刑事責任は連邦公訴官(連邦政府機関ACCCの訴訟行為を代行する政府機関:Commonwealth Director of Public Prosecutions)によって 訴追され、同事件は裁判所によって決定されるであろう」と述べている。

 

Rod Sims委員長 

 この事件は、7月3日にシドニーのダウニング・センター地方裁判所(level 4)に係属される。

 「2010年競争・消費者法」の下で、刑事裁判として個人に対し最高10年の拘禁刑、カルテル犯罪につき最大42万豪ドル(約3,444万円)の罰金が科せられる。また各金融機関は、1件の犯罪につき最高1,000万豪ドル(約8億2,000万円)の罰金が科される。 (カルテル事件の刑罰 :個人および法人)

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