スキップしてメイン コンテンツに移動

移動体通信事業者の顧客のトラッキング専門会社サイトで主要な米国の移動体通信事業者のすべての顧客はリアルタイムで他のユーザーの同意なしに閲覧可能となったのか?(その1)

  

  さる5月18日に筆者の手元に米国のサイバー問題で最も専門性が高くかつ取組みが具体的なBlogサイト”KrebsonSecurity”(セキュリティ専門・調査報道が中心)の主幹であるブライアン・クレブズ(Brian krebs)氏から「移動体通信事業者の顧客のトラッキング専門会社”LocationSmart”サイトで、主要な米国の移動体通信事業者のすべての顧客は、リアルタイムで他のユーザーの同意なしに閲覧化可能となったのか?」 (後続の記事参照)と題する記事が届いた。それと前後して、ZDnet 、NewYork Times等のメディアも米国の他のトラッキング専門会社が本人の同意なしに法執行機関にトラッキング情報を譲渡あるいは売却していたなどのリーク記事が公表された。 

 この問題につき、筆者の関心は次の点に集約できると考えた。

①マーケティング支援ビジネストしてトラッキング専門会社の情報保護法等関係法から見た有効性、②トラッキング専門会社のシステムの脆弱性の中身と漏えい時のシステムのリカバリー体制、③電気通信事業者のこの問題の見方と取り組み、④連邦通信委員会(FCC)や連邦取引委員会(FTC)等監督機関の従来の取り上げ方や今後の調査の動向、⑤トラッキング・ビジネス規制にかかる連邦および州法の立法動向、⑥このビジネスに関する連邦議会の関係議員の見解と対処、⑥わが国で同様の問題はないと言えるのか等である。 

 かなり広範囲の問題であり、またそれぞれが専門性も高いテーマである。今回は第1回目として、KrebsonSecurity Blogにもとづき「事実関係」と①、③、⑤を中心にまとめた。できるだけ補足しながら解説をしたいと考えたが、時間も限られることから、やや正確性を欠く点は覚悟でまとめてみた。 

1.事実関係及び関係者の取組内容の概観

 はじめに、KrebsonSecurity Blogの内容が最も関係する問題を網羅しているので主要な部分を仮訳する。なお、時間の関係で同Blogは関係サイトとのリンクは十分には張られていない。このため、筆者の責任で追加的にリンクを張った。 

(1) ”LocationSmart”のユーザーの正確な位置情報がパスワードや認証なしに誰でも見れる状態が発覚 

 携帯電話事業者のユーザーの正確な位置情報に関するリアルタイム・データを集約する米国企業である”LocationSmart”は、 パスワードや認証または認可を必要とせずに、同社のWebサイトのバグを原因とするコンポーネントを介して誰にでもこの情報を漏らしていることを”KrebsonSecurity”は検知した。”LocationSmart”は”KrebsonSecurity”からの連絡を受けて、5月17日(木)午後の早い段階でこの脆弱なサービスを遮断した。”LocationSmart”は、米国内のAT&T 、 Sprint 、 T-Mobile  、 Verizonの電話発信位置情報を数100ヤードの範囲で捕捉するサービスである。  

 5月10日(木)、 ”New York Times” は、 ”Securus Technologies” と呼ばれる別の携帯電話ロケーション追跡会社が、事実上すべての主要なモバイル・ネットワーク・プロバイダの顧客に関するロケーション・データをミズーリ―州ミシシッピー郡保安官事務所に売却または譲渡したというニュースを報じた。 

 5月15日(火)、 ZDnet.com  は、 Securusがカリフォルニア州のカールスバッドにある仲介業者”Location Smart”を通じてデータを取得しているという記事を掲載した。 

5月16日(水)午後、米国メディア「マザーボード(MOTHERBOARD)」は、もう1つの爆弾情報を公開した。ハッカーがSecurusのサーバーに侵入し、Securusが認定したユーザーのユーザー名、電子メールアドレス、電話番号、パスワードをハッキングした。 伝えられるところによると、盗難された認証情報のほとんどは、全米の法執行官がログオンに使うもので、その対象期間は2011年から2018年までである。

  ”KrebsonSecurity”は、前述のマザーボードの記事が出る数時間前にカーネギー・メロン大学「人間とコンピュータの相互作用研究所(Human-Computer Interaction Institute)」に在籍する博士論文提出資格者である研究者ロバート・シャオ(Robert Xiao)氏 (筆者注1)は”Securus”と”LocationSmart”の報道を知って、”LocationSmart”が潜在的な可能性についてWebサイトで公開しているデモ・ツールを覗いた顧客が行いうるモバイルロケーション・テクノロジーをテストしたと述べた。 

”LocationSmart”のデモ・ツール(デモ・サイト:https://www.locationsmart.com/try/は、すでに閉鎖されている)は、氏名、電子メールアドレス、電話番号をサイトのフォーム(My Mobile)を選択、POST要求を入力するだけで、誰でも自分の携帯電話のおおよその位置を見ることができる無料のサービスである。 ”LocationSmart” は、ユーザから提供された電話番号をテキスト化し、そのデバイスの最も近い基地局のタワーにネットワーク接続許可を要求するのである。 

2018.5.27 https://www.locationsmart.com/platform/location

World's Largest Location-as-a-Service Company

https://www.locationsmart.com/

 その同意が得られると、”LocationSmart”は加入者に彼らのおおよその経度と緯度をテキスト化し、Google Street Viewマップ上に座標をプロットする。このことは、潜在的にあなたのモバイル・デバイスに関する多くの技術データを収集して保存する。たとえば、情報には「デバイスの緯度/経度、精度、見出し、速度、標高、基地局(cell tower)、Wi-Fiアクセスポイント、またはIPアドレス情報が含まれるが、これらに限定されない。 

 しかし、 カーネギー大学のシャオ氏によると、この同じサービスは、匿名の照会や不正照会を防ぐための基本的なチェックを実行することができなかった。つまり、Webサイトの仕組みに関する知識が少ない人でも、”LocationSmart”のデモサイトを悪用して、パスワードやその他のアクセスの資格情報を入力する必要がなく 、携帯電話の番号検索を行う方法を見つけ出す可能性がある。 

 シャオ氏は「私はほとんど偶然にこのような事件に遭遇したが、手順はそれほど難しいことではなかった、これは最小限の労力で誰でも発見できる。そして、その要点は、ほとんどの人の携帯電話を彼らの同意なしに追跡することができるということである」と述べた。  

 また、加入者の携帯端末に最も近い携帯電話の無線基地局に接続確認するために”LocationSmart”のサービスに確実に問い合わせることができたことを示した。シャオ氏は、友人がアクセスしている数分間に何度も友人の携帯電話番号を確認しえた。 友人のモバイルネットワークに数分かけて何度も接続確認ることで、彼は座標をGoogleマップに差し込み、友人の携帯電話指向性の動きを追跡することができた。  

  シャオ氏は「これは本当に怖いものだ。また、ボランティアがカナダのあるTelus Mobilityのモバイル顧客に対して脆弱なサービスをテストし、追跡に成功した」と述べた。  

 ”LocationSmart”のデモ・サイトが本日オフライン(遮断される)になる前に、KrebsonSecurityは5人の異なる信頼できる情報源に接続確認を行い、5人すべてがシャオ氏が自分の携帯電話の所在を特定することに同意した。シャオ氏は、「公共のLocationSmartサービスに、私の5つのソースすべてに属する携帯電話のほぼ正確な位置を問い合わせることを数秒で決定づけることができた。」と語った。  

(2) LocationSmartのデモページへのシャオ氏と協力者の検証の結果 

 これらのデモテストの情報源の1人は、シャオ氏のデモサイトへの質問によって返ってきた経度と緯度は、 現在の自分の現在位置から100ヤード以内に位置したと語った。別の筋によると、シャオ氏が見つけた場所は、正しい現在地から1.5マイル離れていたという。 残りの3人の関係者は、携帯電話で返される場所は、当時約1/5〜1/3マイルの距離にあったと述べた。  

 LocationSmartの創設者兼CEOである マリオ・プロリッティ(Mario Proietti )氏は、電話でコメントを求められたが、「同社は調査中だと語り、また、私たちはデータをあきらめていない。正当で許可された目的で利用できるようにする。これは、合意に基づいてのみ行われる、正当で認可されたロケーションデータの使用に基づいている。我々は、プライバシーを真剣に受け止め、すべての事実を見直して調査する」と述べた。 

 ”LocationSmart”のホームページには、米国の主要なワイヤレス・プロバイダー4社である Google 、 Neustar (筆者注2)、 ThreatMetrix (筆者注3) 、 US Cellular (筆者注4)などの企業の企業ロゴが含まれている。 同社は、同社の技術が企業の遠隔の従業員や企業資産を把握するのに役立ち、モバイル広告主やマーケティング担当者が消費者に「地理に関連した宣伝」を提供するのを助けると語っている。  

 また、”LocationSmart”のホームページには多くのパートナーが掲載されている。 

  LocationSmartがデモサービスを提供された期間や同サービスがどれほど長い間許容されていたかは明確でない。 Archive.org からのこのリンクは 、少なくとも2017年1月にさかのぼりうることを示唆している。The Internet Archiveのこのリンクは、2011年中頃からサービスが別の会社名 - loc-aid.comの下に存在していた可能性があると示唆している。サービスは同じコードを使用していた。  Domaintools.com によると、 Loc-aid.comは、locationsmart.comと同じサーバーでホストされている4つの他のサイトの1つである。  

 ”LocationSmart”のプライバシーポリシーによると、同社にはセキュリティ対策が講じられているとのことである。「当社が収集した情報の紛失や誤用からサイトを守るため、当社のサーバーはファイアウォールによって保護されており、セキュリティをさらに強化するために物理的に安全なデータ設備に配置されている。 外部の攻撃から100%安全なコンピュータはありませんが、個人情報を保護するために取った手順は、情報の種類に適したセキュリティ問題の可能性を大幅に低下させると考えている」 

 しかし、これらの保証はいつでも彼らの物理的な場所を明らかにすることを心配している携帯電話を持っている誰にでも中空になるかもしれない。 モバイル・ロケーションデータをルックアップするために悪用される可能性のあるLocationSmartのWebサイトのコンポーネントは、Webサイト訪問者による特定のクエリに応答してデータを表示するように設計された、安全でないアプリケーションプログラミングインターフェイスまたはAPIである。 

 ”LocationSmart”のデモ・ページでは、ユーザーが携帯電話をサービスに配置することに「同意」する必要があったが、実際”LocationSmart”は明らかにAPI自体との直接的なやりとりを防止または認証を行わなかった。 

  API認証の弱点は珍しいことではないが、短期間で多くの人に機密データを公開する可能性がある。2018年4月2日、KrebsOnSecurity は、 Fast-casualベーカリーチェーンPaneraBread.comのWebサイトで食品をオンラインで注文するためにPaneraBreadのアカウントにサインアップした者が、数千万の顧客のために名前、電子メールアドレス、物理アドレス、誕生日、クレジットカードの最後の4桁を公開したAPI の話を取り上げた。 

  ロン・ワイデン(Ron Wyden (民主党、オレゴン州選出)上院議員(財政委員会のランキング・メンバー)は、 Securusのリスク暴露記事を受けて、全米トップ4つの無線通信会社と米国連邦通信委員会に送った5月9日付けの手紙で、すべての当事者に対し、非公開の顧客データの無制限の開示と潜在的な濫用問題につき先を見越した手順をとるよう強く求めた。  

 ワイデン議員は、「Securusは、AT&Tの顧客のリアルタイムの位置情報を主要な無線通信事業者との商業的関係を持つ第三者ロケーション・アグリゲータを通じて購入し、政府の顧客と定期的に情報を共有することを私のオフィスに通知してきた。この実務では、無線通信事業者の法的義務が、政府がアメリカの電話記録の監視を行い、何百万人ものアメリカ人を政府の潜在的な虐待と未確認の監視にさらす唯一の道筋になるといえる」 

 ”Securus”は、LocationSmartから携帯電話の位置情報を入手したと報じられているが、ニューヨークタイムズに対し、顧客が令状や宣誓供述書などの法的文書をアップロードし、その活動が承認されたことを証明するよう要求している。 しかし、ワイデン議員は自身の手紙で、「Securusの上級幹部は、実際に裁判所命令であるかどうかを判断するためにアップロードされた文書の合法性を決して確認せず、そうする義務があるという提案を却下していた」と述べている。  

  ”Securus”はBrian Krebsからのコメントの要求に応答しなかった。  

(3) 電子通信事業者の反応 

  AT&T、Sprint、T-Mobile、Verizonがこの問題につきどう対処しようとしているかは不明である。 顧客の位置情報を漏らしているサードパーティ企業(位置情報追跡企業)は、各モバイルプロバイダーのプライバシー・ポリシーに違反するだけでなく、リアルタイムでこのデータを公開すると、米国内のすべてのモバイル・ユーザーにプライバシーとセキュリティのリスクが深刻な影響を及ぼす。 

 ”LocationSmart”がWebサイトのコーポレート・ロゴによってそれぞれリストしているにもかかわらず、大手通信事業者の中には”LocationSmart”との正式なビジネス関係を確認または拒否するものはない。 

 AT&Tのスポークスマン、 ジム・グリア(Jim Greer)氏は、「AT&Tは『顧客の同意』または『法執行機関の要請』がなければ、ロケーション情報の共有を許可しない。第三者たるベンダーが当社のポリシーを遵守していないことを知った場合は適切な措置を講じる」と述べた。  

 T-MobileはBrian Krebsに対し、無線通信業界の国際協会であるCTIAが定めた「GPS位置情報等を利用した位置情報サービスに関するベスト・プラクティス・ガイドライン(Best Practices and Guidelines for Location-Based Services )」に準拠した自社のプライバシー・ポリシーに言及した。  

 また、”T-Mobile” の広報担当者は、「ワイデン上院議員の手紙を受け取った後、”Securus”と”LocationSmart”への顧客のロケーションデータの取引を直ちに停止する。また、顧客のデータのプライバシーとセキュリティを非常に真摯に受け止めている。SecurusとLocationSmartで確認された問題を解決し、そのような問題が解決され、お客様の情報が保護されるようにした。また、 我々はこの問題につき調査し続けている」と述べた。  

 ”Verizon”はKrebsに対し自社のプライバシー・ポリシーに言及した。  

”Sprint”の責任者は、以下の声明を発表した。 

 「お客様のプライバシーとセキュリティを守ることが最優先事項であり、私たちはプライバシー・ポリシーでその点を明確にしている。 念のため明らかいうと、当社は、消費者の機密情報を第三者に共有または売却することはない。 私たちは、個人的に識別可能な地理的位置情報を顧客の「同意を得て」、または「法執行機関からの有効な裁判所命令」などの合法的な要求に応じて共有する。  

 「私たちは、ワイデン上院議員から手紙で提出された質問に対し、適切なチャネルを通じて直接答えた。ただし、SprintとSecurusの関係にはデータ共有は含まれていないことに注意することが重要であり、刑務所携帯電話の不正使用を矯正施設で阻止する努力を支援する目的に限定されている。」 

************************************************************************** 

(筆者注1)  ロバート・シャオ(Robert Xiao):カーネギーメロン大学「人間とコンピュータの相互作用研究所(Human-Computer Interaction Institute)」 に在籍する博士論文提出資格者で、2018年11月のブリテッシュコロンビア大学の助教に就任予定。

 なお、HCIについて補足しておく。「ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI: Human-Computer Interaction)は,人とコンピュータとのインタラクション(相互作用)に関する学際的な研究領域です.人とコンピュータとのインタラクションのみならず,人とロボットを代表とするような機械とのインタラクション,人と人とのインタラクション(あるいはコミュニケーション)も研究の対象となります.ユビキタス社会,知識協創社会の実現へ向けて,ヒューマンコンピュータインタラクションに関する研究は今後ますます重要になると考えられています. 

 ヒューマンコンピュータインタラクションの研究では,より良いインタラクションを実現するコンピュータシステムのデザイン,実装,評価をおこなうために,コンピュータシステムを利用する人間(ユーザ)への理解を深く追求することが必要となります.我々の研究グループでは,計算機科学をベースとして,認知科学,心理学,文化人類学,社会学,言語学,学習理論,デザイン理論,色彩理論などの分野で確立された知見を応用し,現在下記の研究テーマに取り組んでいます」( 国立大学法人・奈良先端科学技術大学院大学サイトから引用) 

(筆者注2) ”Neustar、Inc.”.は、インターネット、テレコミュニケーション、エンターテイメント、マーケティング業界向けのリアルタイムの情報と分析を提供する米国のテクノロジー企業であり、グローバルコミュニケーションやインターネット業界に情報センターとディレクトリサービスも提供している。(Wikipedeiaを仮訳

(筆者注3) Threatmatrixを一言でいう高度の技術をもって各種ビジネスや個人活動を支援するデジタル・アイデンティティ・カンパニーである。日本語解説サイト(https://www.threatmetrix.com/ja/cyber-security-solutions/payment-processing/)を参照されたい。 

(筆者注4) US Cellular Corporationは、米国内で5番目に大きな無線通信ネットワークを所有し、運営する地域通信事業者であり、2017年第1四半期時点で米国23州426市場で500万の顧客にサービスを提供している。 同社はイリノイ州シカゴに本社を構えている。(Wikipedia から一部引用、仮訳)。

***************************************************************************

Copyright © 2006-2018 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

英国のデータ保護法案:提案された改正案の概要(その2完)

   [Part Ⅱ]  英国データ保護法案:主要条項の検討 この記事 では、パートⅠにもとづき、法案の特定の重要な条項をさらに深く掘り下げる。 (1) 匿名化と「個人データ」:範囲の確認  この法案は、情報が「識別可能な生存する個人」に関連しているため、主に2つのケースで「個人データ」を構成することを提案している。 (A)生存する個人が処理時に合理的な手段によって管理者または処理者によって識別可能である場合。 (B)管理者または処理者が、(a)処理の結果として他の人が情報を取得する、または取得する可能性が高いことを知っている、または知るべきである場合。 (b)生きている個人は、処理時に合理的な手段によってその人によって識別可能であるか、またはその可能性が高い。  特に、この法案は、処理時にデータが個人データであるかどうかの合理性と評価を非常に重視しており、特にデータを匿名化しようとする際に、組織・事業体にとって有用であることが証明される可能性がある。EU GDPRは、注目度の高いケースを通じて開発された識別可能性と匿名化のための高い「しきい値」を設定している(詳細については、2016年CJEUのBreyerの決定に関するこのレイサム・アンド・ワトキンス法律事務所の ブログ記事“Anonymous or Not: Court of Justice Issues Ruling on IP Addresses” (筆者注7) を参照されたい)。法案の提案は、英国政府が専門家諮問結果「データ:新しい方向」(諮問書)で取った立場、すなわち政府が「匿名化のために信じられないほど高い基準を設定することを避けるつもりである」という立場と一致している。(専門家への諮問の詳細については、このレイサム・アンド・ワトキンス法律事務所の ブログ記事“UK Data Protection Reform: Examining the Road Ahead” を参照されたい。 【筆者補足説明】 1.わが国では本格的に論じられていない問題として匿名化、仮名化などとプライバシー強化にかかる技術面からの検証である。2021.11.17  BRISTOWS法律事務所「データの匿名化:ICOの改訂ガイダンスに関する考慮事項」 が簡潔にまとめているので、主要部を抜粋、仮訳する。 ...