スキップしてメイン コンテンツに移動

「中国のサイバーセキュリティ法施行にあわせた4ガイドライン草案の内容並びに関係法制整備等の概観」

  

 筆者は、さる8月1日付けのブログ「中国のサイバーセキュリティ法の施行と重大な情報インフラ等の保護に関する規制草案等の公表と今後の課題(その1)」同(その2)同(その3)同(その4完))で詳しく論じたが、法律の内容もさることながら各ガイドラインの内容も含め体系的理解には、なお課題が大きいという印象を持たれた読者が多かろう。

 これは米国の中国系弁護士でも同様の見方が多く、たとえば、Grace Chen氏「中国サイバーセキュリティー法(中华人民共和国网络安全法)は、今後の実施のためにいくつかの問題を残している。法律はすでに施行されているが、かなりの数の問題が未解決のままであり、法律を遵守しようとする企業や個人は置き去りにされている」 と指摘している。

 この点に関し、筆者は補完する意味で今回も含め数回に分けて以下のようなテーマに関するブログを掲載することとした。なお、今回以外の各標題はあくまで仮題であり、また必要に応じ統合または分割して掲載する。 

①「中国のサイバーセキュリティ法施行に関連する4つの任意ガイドライン草案の内容」

②「中国のサイバーセキュリティ法を正確な理解のために(What We Don't Know About China's New Cybersecurity Law)」前述のGrace Chen氏の問題指摘レポート

③ 「中国のサイバー空間統治の制度・規制面からの進展」(法律、規則/法令/ガイダンス、国家戦略/計画、標準化等)の体系的理解 (注)

④ 「越境による個人情報の移送にかかるセキュリティ・アセスメント・ガイドライン(China Releases Proposed Guidelines for Cross-Border Data Transfer Security Assessment)」の図解を含む内容とさらなる課題 

 

中国のサイバーセキュリティー法に関連する4つの草案(任意ガイドライン草案)を発表、意見公募の概要

 2017.9.5 Hunton& Williams「China Releases Four Draft Guidelines in Relation to Cybersecurity Law 」仮訳する。なお、部分的に不正確な点があるので筆者なりに修正し、同時に各ガイドライン草案の中国語名などを補足追記した。 

2017年8月30日、中国の「国家情報セキュリティ標準化技術委員会(National Information Security Standardization Technical Committee:全国信息安全标准化技术委员会 )」は、中国の「サイバーセキュリティー法(中华人民共和国网络安全法)」に関連する4つの任意の遵守ガイドライン草案を発表「关于征求《信息技术 安全技术 匿名实体鉴别 第4部分:基于弱秘密的机制》等6项国家标准意见的通知」、2017年10月13日を期限とする一般意見公募を行った。 

① 国境を越えた越境個人情報の移転にかかるセキュリティ・アセスメント・ガイドライン(proposed Guidelines for Cross-Border Data Transfer Security Assessment:数据出境安全评估指南):この第二次ガイドライン草案は、2017年5月に公表された第1次草案と比較して、「国内事業(domestic operations)」、「越境によるデータ移転(cross-border data transfer)」、「管轄権のある監督当局」といった新しい定義を明記した。これらのガイドライン草案によれば、中国に登録されていないネットワーク事業者は、中国の領土内で事業を行う場合、またはその領域内で製品またはサービスを提供する場合、依然として中国の「国内事業」を行っているとみなされる。 ネットワーク事業者によって収集されたデータが中国国外に保持されていなくても、海外の企業、機関または個人がリモートでデータにアクセスできる場合は、データの越境移転が可能とされる。これらのガイドライン草案は、管轄当局による自己評価と評価のための別個の評価手順を提供する。 セキュリティ評価では、「合法性(legality)」、譲渡の「妥当性」および「必要性」、ならびに移転に伴うセキュリティリスクに関し、提案された国境を越える移転の目的に焦点を当てている。  

② ネットワーク製品およびサービスの一般的なセキュリティ要件(网络产品和服务安全通用要求):この文書草案では、「一般的なセキュリティ要件」と、中国の国内で販売または提供されるネットワーク製品およびサービスに適用されるセキュリティ強化要件の両方を提供する。これらのガイドライン草案によると、「ネットワーク製品」には、コンピュータ、情報端末、基本ソフトウェア、システムソフトウェアなどが含まれる。また「ネットワークサービス」には、クラウドコンピューティングサービス、データ処理およびストレージサービス、ネットワーク通信サービスなどが含まれる。この草案の下での一般的なセキュリティ要件には、マルウェア防止、セキュリティ脆弱性管理、セキュリティ運用管理、ユーザー情報の保護が含まれる。さらに強化されるセキュリティ要件には、「アイデンティティ認証」、「アクセス制御」、「セキュリティ監査」、「通信保護」、「特定のセキュリティ保護要件」が含まれる。 

 ③ 重要情報インフラストラクチャのセキュリティ検査と評価ガイダンス(关键信息基础设施安全保障评价指标体系):重要な情報インフラストラクチャのセキュリティ検査と評価の手順と内容を提供する。これらのガイドライン草案によると、検査と評価は、「コンプライアンス検査」、「技術検査」、「分析と評価」の3つの方法に分かれる。 セキュリティ検査と評価の重要なステップには、コンプライアンス検査の準備、実装、技術検査と分析と評価、リスク管理およびレポート作成が含まれる。  

 ④ 重要情報インフラストラクチャーのセキュリティを保証するための指標システム (关键信息基础设施安全检查评估指南):このドキュメントは、重要な情報インフラストラクチャのセキュリティを評価する際の焦点として使用される指標を確立し、定義する。これらのドラフトガイドライン草案の下で議論される指標には、「運用能力指標」、「セキュリティ指標」、「セキュリティ監視指標」、「緊急時対応指標」などが含まれる。 

*****************************************************

(注) 中国の安全牛 发 布《网 络 安全法 实 施指南》民間ネットワークセキュリティ法施行ガイドが、サイバーセキュリティ法の立法の背景、経緯、内容、保護対象、保護方法等を詳しく解説している。筆者の中国語の能力を超えるので翻訳は略す。

 ********************************************

Copyright © 2006-2017 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

 

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...