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「ドイツ連邦議会のスパイェアによる通信傍受合法化法の可決と連邦憲法裁判所の動き」(その3完)

 

2.連邦議会は、刑事訴訟法上で予告なしに容疑者間の電子通信内容のスパイウェアによる傍受やデバイスのメモリーの捜査を可能とする法案を可決

(1) 連邦議会の公式文書”Bundestag gibt Strafermittlern neue Instrumente in die Hand”を以下、仮訳する。なお、この議会サイトでは動画での質疑応答が閲覧可である。自信がある読者はチャレンジされたい。 (注6) 

○ 連邦議会が可決した犯罪捜査の新しいツールは、容疑者間の暗号化した電子通信内容を傍受するとともに予告通知なしに容疑者のコンピュータのメモリー内の情報を捜査できるとするものである。2017年6月22日、法案委員会は議会の「左翼派(Linke)」と「同盟90緑の党(Bündnis 90/Die Grünen)」の反対にもかかわらず、これらの法案を採択した。連立与党は、スパイ・ソフトウェア使用法案の承認を決定するために、2つの法案可決につき連邦政府の助言を使用した。 

 この2つの法案とは、 「捜査実務面の効率化と刑事訴訟手続の効率化の実現に関する法案(18/11277)、 「刑法、少年裁判所法、刑事訴訟法およびその他の関連法律の改正に関する法案(18/11272)である。 法律委員会(議会総会の決議案が採択した決議に続き18/ 12785 )は、前者で第二のような法案の条項を挿入し、いわゆる「合法的傍聴による通信監視(Quellen-TKÜ)」と「オンライン捜査 (Online-Durchsuchung)」の法的根拠としてこの法則を拡張した。 

○暗号化の克服

 アカウントへのスパイウェアのための使用許可と犯罪者が増え暗号化されたメッセンジャーサービスを介して通信していることを確認するために手段が取られるべきである。 データが暗号化する前にソースでTKU対象メッセージは、すでに送信者のコンピュータにとりこまれている。オンライン捜査(Online -Durchsuchung)は、犯罪の手がかりのために容疑者のコンピュータをリモートで見過ごさずに調査することができた。 

○ 野党は、立法過程を批判

 両野党とも、法律で「Quellen-TKÜ」と「オンライン捜査」を挿入することに関する議論で連立与党の大規模な行動を厳しく批判した。改正案が6月20日の法務委員会で審議、急がれたされたのち、ハンズ・クリスチャン・ストローブル(Hans-Christian Ströbele (MdB Bündnis90/Die Grünen: 同盟90/緑の党)は6月22日の採決に同意した。このようなラッシュ審議は許されない、このような「基本的権利への運用上の介入」問題は、詳細に検討する必要があると述べている。 

  ヨルン・ブンダーリッヒ(Jörn Wunderlich (Die Linke)(左翼党)は、これらの対策に比べて第一読会の主題となったものは「経口避妊薬(Pille-Palle)」であると記している。このような 選択した方法や措置は、また連邦参議院で可決されよう。 

○ 最も侵襲的監視法の一つであるという批判

  引き続き、ヴンダーリッヒはこの法案は近年で最も侵襲的な監視法の一つであり、テロ対策への例外措置としても「標準的な警察の行動手順」で十分であると述べた。

 また、前記Hans-Christian Ströbele は、連邦憲法裁判所所の判決と互換性がなく、個人データのプライバシーへの実質的な干渉であり、刑法とクロスする法案はQuellen-TKÜ と Online-Durchsuchungの対象として、70件の犯罪を設定していると主張した。 

○与党連合は、合憲性を強調

 連立政党のスピーカーであるベッティーナ・ベア・ロッサ(Bettina Bähr-Losse (SPD)は、この法案は、「連邦憲法裁判所の認める要件を満たす」と述べた 裁判官による措置の承認のための要件は、「厳密に私的施設管理の監視に適用される措置に基づいている点であり、傍受は唯一「特に重大な犯罪」のために使用されるべきであると述べた。 

 SPDのヨハネス・フェヒナー(Dr. Johannes Fechner)は、法案により実際に課される措置はなんら「新しいもの」ではないと述べた。もし、携帯電話が犯罪現場で発見されたとき、捜査担当者はもちろんその内容を読むであろう。これは、 オンライン捜査である。Quellen-TKÜは通信の新しい手段に適応したもので、従来認められた通信の監視以外の何ものでもない。 

○ ギャングに対する行動情報の捜査が目的

 エリーザベース・ヴィンクルマイヤー・ベッカー(Eliabeth Winkelmeier-Becker)(CDU / CSU)は、法案に賛成の立場から効果的な刑事訴訟法の執行のための新たな資金が必要不可欠と呼んだ。 それは「捜査当局の可能性は犯罪者とギャングが今日どのように動作するかに合わせていないだけでナンセンス」である。つまり、従来の通信傍受のみでは、ギャングはただただ、頻繁にピザを注文した人で終わろう。 

 また、ヴィンクルマイヤー・ベッカーはこれらの新たな措置の使用は厳しい条件の対象となると強調した。適用されるのは犯罪者や関係者という容疑者が重大な犯罪にかかるであることを疑うに足りる理由がある場合であり、したがって、Quellen-TKÜ や Online-Durchsuchungは標準的な捜査手段ではない。 

 以下は、スパイウェアとは関係ない法改正部分なので訳は略す。

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(注6) 筆者のPCや回線環境のせいか不明であるが、動画(Video)は途切れる。したがって、下図のとおり”Video herunterladen”でAudioを選択するとスムーズにヒアリングできる。

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