スキップしてメイン コンテンツに移動

中国のサイバーセキュリティ法の施行と重大な情報インフラ等の保護に関する規制草案等の公表と今後の課題(その3)

 

Ⅳ.サーバーセキュリティ法の規則案(CCII Regulation)の内容と問題点

(1) Norton Rose Fulbright LLP のCII Regulationの解説China Seeks Comment on Draft Regulation on Critical Information Infrastructure」が”7月10日付けCII Regulation”の内容を体系的に解説しているので、以下、仮訳する。 

① CIIの規制当局 (Regulatory Authorities of CII)

 CIIの下では、CACは重要情報インフラストラクチャ(CII)のセキュリティ保護の計画と調整を担当する。公安部(Public Security Authority)国家安全部(National Security Authority) (筆者注3)、国家保密局( State Secrets Authority )(筆者注4)、国務院の 国家密码管理局(.State Cryptography Administration, i.e. the Office of the Central Leading Group for Cryptography Work (中央密码工作领导小组办公室) Wikipedia) (筆者注5)は、CIIの規制当局となる。 郡レベル以上の地方自治体の関連部門は、CIIに関連してセキュリティ保護業務を実施する責任を負う。  

② CIIの範囲 

 CII規制に含まれるCIIの範囲は、サイバーセキュリティ法上のCIIの範囲に比べて広い。 以下の部門は、CII規則案で具体的に言及されている。 

  1. 政府機関、エネルギー、金融、交通、水質保全、医療、教育、社会保障、環境保護および公益事業。
  2. 通信ネットワーク、ラジオおよびテレビネットワーク、インターネットおよびその他の情報ネットワーク、クラウドコンピューティング、大容量データおよびその他の大規模な公共情報ネットワークサービス。 
  3.  国防科学技術、大規模機器、化学薬品、食品および薬物。
  4.  ラジオ局、テレビ局、通信社(news agencies)。 

 上記の多くのセクターは、ヘルスケア、教育、環境保護、クラウドコンピューティング、ビッグデータなどのサイバーセキュリティー法では言及されていなかった。CII規則の下でのCIIの広範な範囲は、中国の一部の事業が次のような適用可能性を高める可能性がある。(1)CII事業者とみなされるもの、(2)中国法に基づくCII事業者の厳しい法的要件に従う。  

 重要な点は、CAC、通信当局および公安当局は、CIIの識別のためのガイドラインを共同で作成し公表する点である。産業監督当局は、これらのガイドラインに基づいて各部門のCIIを特定し、その結果を関係当局に報告する。各業界の専門家はこれらのプロセスの途上で相談を受ける。  

③ II事業者が購入する製品やサービスの追加要件  

  CII規則は、中国の国家安全保障に脅威を与えるとみなされるCII事業者が購入した製品やサービスのサイバーセキュリティレビューの観点から、サイバーセキュリティ法の要件に繰り返し言及している。 これらの製品・サービスは、5.で述べる 2017年6月1日付け(カタログ)のCACおよび他の当局によって発行された主要なネットワーク機器および専用ネットワークセキュリティ製品のカタログ(最初のバッチ)に掲載される。 サイバーセキュリティレビューは、2017年5月2日にCACが発行したネットワーク製品およびサービス(トライアル実施)のセキュリティ評価に関する措置に基づいて実施されるべきである。 

  CII規則では、CII事業者は、オンラインアプリケーションに先立ってCII事業者が使用するアウトソーシングされたシステム、ソフトウェア、および寄贈された/贈与されたネットワーク製品に関するセキュリティ検査とテストを行う必要がある。これにより、カタログの範囲が拡大され、カタログに掲載されていないネットワークシステムや製品がサイバーセキュリティレビューの対象となる可能性がある。CII事業者は、ネットワーク製品/サービスの使用に関して実質的なリスクが特定されている場合には、是正措置を講じ、管轄当局に報告することが求められる。  

  CII規則は、またCIIの運用と保守が中国の領土内で行われることを要求している。 事業上の理由で遠隔保守が必要な場合、遠隔保守に着手する前にCII事業者はこれを産業監督官庁及び公安機関に報告しなければならない。CII規制が現在の形態で発行されている場合、このローカリゼーション要件は、中国内で実施されなければならないため、外国企業(クラウドサービスプロバイダーなど)がCIIの運営にサービスを提供することを禁止する可能性がある。しかし、現在言及されているように、この条項は完全には明確ではなく、その意味合いはまだ残っている。 

 CII規則は、CACと国務院の関連部門が、CIIに対して以下のサービスを提供する事業者に特定の要件を共同で発行することを想定している。 

① サイバーセキュリティ検査、テストおよび評価

② システム脆弱性、コンピュータウィルス、サイバー攻撃を含むサイバーセキュリティ脅威情報のリリース

③ クラウドコンピューティングサービスと情報技術アウトソーシングサービス。なお、これらの要件がどのようなものになるのか、いつ公開されるのかは不明である。

④ CIIのサイバーセキュリティ保護担当者  

 CII規則の下では、CIIオペレータの責任者がCIIのセキュリティ保護の第一の責任を引き受ける。CII事業者は、CIIのサイバーセキュリティ保護の責任者を任命することができ、その職務には次のものが含まれる。 

① サイバーセキュリティ・ルールとシステム、運用手順の策定を組織し、同じ手順の実施を監督する。 

② 主要職種の職員の技能評価を調査する。 

③ サイバーセキュリティ教育及び訓練プログラムの策定及び実施を組織する。 

④ サイバーセキュリティ検査と緊急訓練を組織し、サイバーセキュリティ・インシデントを処理する。

⑤ 重要なサイバーセキュリティの問題と事件・出来事を関係当局に報告する。  

 CII規則は、またCIIのサイバーセキュリティの主要職の技術職員にライセンス要件を導入する。CACと中国の人事・社会保険局は、これらの免許要件に関する特定の規則をさらに発行する。  

 CIIのモニタリング、緊急事態対応および検査の枠組み  

 CII規制は、セキュリティ保護CIIのための以下の3つの主要システムの枠組みを概説している。

① モニタリング、早期警告、情報共有 

② 緊急時対応と処分

③ 試験、試験、評価 

  CACは、産業規制当局または他の監督当局と協力して、CIIの保護のためにこれらの3つのシステムを確立し、実施する。 

  CII規則は、工業監督当局がCII事業者に対して以下の点を評価するための恣意的な査察を行う際の措置との関連で、より詳細な情報を提供している。(1)CIIに関連するセキュリティリスク。(2)CII事業者による法令遵守(サイバーセキュリティー法第39条に規定)に関す次の点を明記する。

① CII事業者の関係者に説明を要求する。

② サイバーセキュリティの保護に関する文書と記録を見直し、入手し、コピーする。

③ サイバーセキュリティ管理システムの策定と実施、CIIのサイバーセキュリティ技術措置の計画、構築、運用を検証する。

④ 検査ツールを利用するか、サイバーセキュリティサービス・プロバイダーに技術検査を実施する権限を与える。

⑤ CIIの運営者と合意した他の必要な措置を実施する。 

⑥ 国家の秘密と暗号化法規を遵守 する。 

  CII規則は、CIIの国家秘密情報の保管と処理が中国の国家秘密法を遵守しなければならず、CIIの暗号の使用と管理は中国の暗号法律( Cryptography Lawが公表された2017年4月13日に国家商用暗号管理局の官報によって公表された)。 さらに、軍事CIIの保護のための規制は、中国中央軍事委員会によって別途発行される。 

*潜在的な示唆すべき点 

  CII規制は、CII関連の規定に関する更なる詳細を提供することによりサイバーセキュリティ法を実施するためのもう1つの重要なステップである。  

 しかし、CII規制の下では、CIIの範囲は広範な分野に及んでおり、CII規制は具体的には次のようなものを指す。(1)中国当局によって策定され発行されるCII識別ガイドライン。  (2)産業規制当局またはその他の監督当局によって実施されるCII識別プロセス。 そのような詳細を後でこのように残すと、CIIを構成するものを決定する際にあいまいさや不確実性が生じる可能性があります。 また、CIIの識別プロセスが完了するまで、サイバーセキュリティー法のCII規制およびCII関連の規定が実際に実施されることは考えにくい。  

  CII規則はまた、CII事業者が購入した製品/サービスに一定の追加要件を課している。これは、CII事業者のサービスプロバイダに大きな影響を与える可能性がある。 したがって、中国の企業は、現在の製品、サービス、中国の顧客を見直し、CII規則の下でこれらの追加的な義務/要件を受けるリスクを評価することが推奨される。 

(2) 前述したCovington&Burling LLPの特別弁護士(special counsel) Yan Luo 氏が、新サイバーセキュリティ法で提案された変更点を説明するとともに、海外の企業が新しい中国のデータ移転要件に準拠するために取るべきデータ移転に関する法令遵守戦略について2017年2月14日 付けEURObizで以下のとおり解説を加えているので、以下、一部抜粋のうえ仮訳する。((1)から(2)の内容は割愛する) 

(3)中国国民の個人情報の国境を越えた移転

 CACは、外国人、組織または個人が中国市民の個人情報を「喜んで守る」能力を持っているかどうかをどのように評価するかについての詳細はまだ述べていない。CACが、近い将来、特定の国が適切な水準の保護を提供し、自動的にそのような国へのデータの移転を許可できることをCACが認識することも示していない。 

 CACは、中国以外の他の国のデータ保護体制を認識していないため、CII事業者の約束や契約上の義務に依拠したデータ転送メカニズムを考案して、中国以外での個人情報の保護を十分に確保する可能性がある。現在のところ具体的な内容が不明であるにもかかわらず、このメカニズムの少なくともいくつかの要素は、「欧州連合(EU)のモデル契約条項」 (筆者注6)および「Binding企業規則 (BCR)」 (筆者注7)またはアジア太平洋経済協力(APEC)の「Cross Borderプライバシールール (CBPR)システム」 (筆者注8)等との比較することとなろう。 

 また、CACは、企業が中国国外の中国人の個人情報を堅固に保護する必要がある場合、どのような契約や会社の社内規則や手続きが政府認証機関の要件を満たすことができるかについての詳細を提供していない。 1つの潜在的な認証基準(ベンチマーク)は、CACによって提案された新しい国家規格である情報セキュリティ技術 - 個人情報セキュリティ規格仕様 ( 以下「基準(Standard)」という )である 。この基準は、情報の収集、保管、使用、移転(中国内での)および個人情報の開示を規制する包括的なデータ保護の枠組みを確立し、 経済協力開発機構(OECD)のプライバシーに関する原則 。 法的拘束力はないが、そのような国家基準は、中国の規制当局が個人情報保護のベストプラクティスと考えるかもしれないものについて、企業に有用な洞察を提供することができる。 企業が中国以外の個人情報の取り扱いが規格に明記されている要件を満たしていることを確実にするならば、データが処理される場所であれば、中国人の個人情報の保護が適切であると主張することは容易である。

 *************************************************************

 (筆者注3) 国務院を構成する行政機関の1つ。 

(筆者注4) 中华人民共和国保守国家秘密法の本文

同法は、1988年9月5日第7回全国人民代表大会常任委員会第3回会合で採択され、1988年9月5日に中華人民共和国首相令第6号によって公布、1989.年5月1日施行)、改正法(中华人民共和国保守国家秘密法(2010修订))が2010年4月29日公布、2010年10月1日施行。 

(筆者注5) 中国の認証・認定業務の統一的な指導と監督管理を行う国家機関で、マネジメントシステム認証機関、製品認証機関等の認定を行う主管機構。 

(筆者注6) EUのモデル契約条項に関する詳しい解説としては、①欧州委員会・司法・情報保護担当の解説「Model Contracts for the transfer of personal data to third countries」、②2010年3月7日筆者ブログ「欧州委員会が非EU/EEA国のデータ処理者への個人情報移送に関する改正標準契約条項を決定(その1)同(その2完)」、③マイクロソフトの「EU標準契約条項」の日本語解説等があげられる。 

(筆者注7) 「Binding企業規則 (BCR)に関する詳しい解説としては、2015年11月8日の筆者ブログ「欧州委員会はEU司法裁判所のシュレムス事件判決(セーフ・ハーバー協定の無効)を受けたガイダンス等を発布」を参照されたい。 

(筆者注8) About the APEC CBPR system 参照。なお、わが国は2014年4月28日「日本国政府は、米国、メキシコに次いで、APEC越境プライバシールールシステムへの参加が認められた」旨リリースした。また、これを受けて2016年12月20日にわが国初のAPEC越境プライバシールールシステム(CBPRシステム)認証取得事業者が誕生した旨報じた。経済産業省「APEC-越境プライバシールール(CBPR)システム」図解参照。

************************************************************

 Copyright © 2006-2017 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

米ノースカロライナ州アッシュビルの被告男性(70歳)、2,200万ドルのポンジ・スキーム(いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル以上の賠償金判決

被告 Hal H. Brown Jr. 7 月 10 日付けで米連邦司法省・ノースカロライナ西部地区連邦検事局の リリース   が筆者の手元に届いた。 その内容は「 ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性 (Hal H. Brown Jr., 70 歳 ) は、 2,200 万ドル ( 約 23 億 5,400 万円 ) のポンジ・スキーム (Ponzi scheme : いわゆる「ねずみ講」 ) 等を画策、実施した罪で 17.5 年の拘禁刑 や 1,700 万ドル ( 約 18 億 1,900 万円 ) 以上の賠償金 の判決 を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む 60 人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。 筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、 1) この裁判は本年 1 月 21 日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、 2)Ponzi scheme や取引マネー・ローンダリング (Transactional Money Laundering) の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。 特に不正資金の洗浄運び屋犯罪 (Money Mules) の種類 ( 注 1) の相違点につき詳細などを検証した。 さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。 これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。 他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。 ( 注 2) 取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は 9 年前の 2011.8.16 に...