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GAOが連邦司法省に対し「情報公開法」訴訟費用の採算性分析を踏まえた原告勝訴の解明等につき勧告(その1)

 

 本ブログでしばしば引用してきた米国連邦議会の連邦機関の”Watchdog”である「行政監査局(GAO)」が、このほど米国の「連邦情報公開法(FOIA)」 (筆者注1) に基づく訴訟事案について、その採算性の分析結果等透明性を向上するよう連邦司法省に勧告した旨の報告書「Freedom of Information Act: Litigation Costs For Justice and Agencies Could Not Be Fully Determined」を公表した。 

 筆者は、その内容に関心を持ったほかに、わが国の「情報公開法」(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年5月14日法律第42号)等の運用実態との比較を行ったらどうなるかという点に興味を持った。さらに、わが国の見直しはどうなっているのか、どのような人々によりどのような議論が行われているのか等を調べてみた。 

 今回のブログは、はじめに(1)GAO報告の概要を紹介し、あわせて(2)米国の主要連邦機関の情報公開法遵守体制を概観し、次に(3)わが国の「情報公開法」の運用実態ならびにそこから導かれる課題等を論じてみる。 

 特に、米国の連邦機関とりわけFBIやDOD等機密性の極めて高い保有管理する公文書に当たるデータ量の圧倒的なボリュームと国民のそれらへのアクセス可能とする長期的な視野に入れた検討と取り組みがあってこそ、今日の米国のアーカイブ・システムがあるように思う。わが国のアーカイブ分野の重要な検討課題といえる。 

 なお、最後に詳しく論じたいが、総務省の「情報公開法の制度運用に関する検討会」の審議内容や資料を確認しようとすると、国立国会図書館のWABP(国立国会図書館:インターネット資料収集保存事業)サイト(筆者注2) に飛ぶ。その画面に該当検討会のURLをコピー・アンド・ペーストすれば原資料に行き着くはずであった。筆者は実際やってみたが、「ただ今混み合っております。時間をおいて再度お試しください」のメッセージが帰ってきたのみである。土曜の昼である。この時間帯に込み合っているようでは平日であれば、いつになったら確認できるのか。まさにわが国の情報公開法の基本機能が欠落しているとしか言いようがない。

 さらに問題と思えるのは、なぜ行政機関の古くなった(かただか12年で古いとは思えないが)データの保存がなぜ「国立公文書館」(筆者注3)でなく「国立国会図書館」なのか、その本来の機能や法的に見ても大いに疑問が湧く。この問題は別途取りまとめたい。 

 今回は、2回に分けて掲載する。 

1.GAO Reportの概要

 GAO報告の本文全文は35頁である。イライト版(1頁)をもとに仮訳する。 

(1) GAOがこの調査を行った理由

 米国の「連邦情報公開法(以下「FOIA)という)」  (筆者注4) は、連邦機関に対し広く市民に政府情報へのアクセスを提供することを要求する。そして、毎年、各連邦機関はそのアクセス情報を公表する。それにもかかわらず、多くのFOIAに基づく要求は拒否または時宜を得た対応は行われていない。連邦機関が法令の期間以内に要請に応じないならば、FOIAは依頼人が訴訟することを認める。過去10年間、2006年(下記グラフ参照)以降起こされた訴訟の57パーセントの増加で、司法省は連邦機関に対して起こされた3,350件のFOIA訴訟を報告した。(下図参照)

 

(GAO report から引用) 

 GAOは、連邦機関が原告が十分に勝訴した訴訟に要するFOIA訴訟関連の経費を決定するよう求めた。そのためGAOは、2009年から2014年まで決定されたFOIA関連の訴訟に関する司法省のデータを見直すとともに、28の連邦機関全体でみて、原告が大幅に勝訴した112件の訴訟事件内容を確認した。また、GAOは司法省および連邦機関からコスト・データを見直し、これらのデータの有効性と信頼性を議論するために、各機関の担当官と面談した。

 

  (GAO report から引用) 

(2) GAOの司法省への勧告内容

 もし、連邦議会がFOIA訴訟費用の報告の透明性がシステムとプロセスを開発するために増加する経費を上回ると決定するならば、原告が勝った訴訟を擁護するとき、それは原価見積りを要する経費に関する情報を集め、かつ報告するために提供することを司法省に要求することを考えることができる。本レポートの草案についてGAOがコメントする際、連邦司法省は、良いFOIA管理を成し遂げることが、さらなる報告の費用と利益のバランスをとる必要性につきGAOの認識に感謝すると述べた。 

(3) GAOが調査結果を踏まえ明らかにした結果

 2009年~2014年に下された決定による1,672件の「情報公開法(FOIA)訴訟」のうち、GAOは原告が大幅に勝った112件の訴訟内容を確認した。これらの112の訴訟のための訴訟関連の経費は、完全には決定することはできなかった。そのような訴訟と関連した経費とは、1)当該連邦機関にかわり司法省により算定される額、2)個別の連邦機関が計算する訴訟費用、3)原告の弁護士に与えられる和解協定に基づいて裁判所が調査する弁護士費用と諸費用を含む。 

 112件の訴訟のうち、司法省は、合計で約97,000ドル(約980万円)になる8つの訴訟の弁護にかかる経費に関する情報を提供した。司法省当局は、同省は原告が実質的には勝った個別の訴訟に関し特に経費の内容を追跡しないし、そしてその弁護士が個々の訴訟のためにそのような経費を追跡することは要求されないと述べた。

 個々の連邦機関に関し、GAOの研究では28件のうちの17件は、それらは112件の選ばれた訴訟のうちの57に関するコスト情報を適所に提供することができたシステムまたはプロセスを可能とした。この情報によると、連邦機関は2009年会計年度から2014年会計年度の間に、これらの訴訟のためにFOIA訴訟関連の経費でおよそ130万ドル(約1億3,130万円)を負担した。残りの連邦機関には、原告が勝ったFOIA訴訟関連の経費を追跡するためのメカニズムがなかった。これらの連邦機関は、司法省のガイダンスが特定の訴訟に関連した経費を徴収して、報告することを機関に要求しないので、または、もし原告が訴訟の結果として勝つならば、経費を追跡しなかったと述べた。 

 FOIAによって必要とされるように、司法省は毎年すべての訴訟(原告への弁護士費用および仲裁経費を含む)の結果を報告した。しかし、112件の選ばれた訴訟のうちの11件に関し、司法省は、それを与えられる弁護士の費用および経費の額が被告たる連邦機関によって報告される総計額と異なると報告した。司法省によると、弁護士の費用および仲裁経費の差は、各連邦機関と原告の間で控訴手続きと和解合意によるとされた。 

 実際のコスト情報を報告することを司法省および連邦機関に要求することが連邦活動に関してより良い透明度に至ることができたが、経費はそのような報告と関係する。これらの経費(潜在的利益だけでなく)を考慮することは、FOIA訴訟関連の活動の監視を強化するためにそのような要求が費用対効果が良いといえるかどうかを決定する際に、連邦議会を支援することにつながる。

 2.連邦のFOIA専門サイトの最新情報ならびに主要連邦機関の情報公開法への対応 

(1) 米国の各連邦機関のFOIAに関する統括機関

 連邦司法省(DOJ)である。FOIA専門の解説サイトを準備している。 

(2) 主要連邦機関の情報公開法への対応

 DOJ以外の連邦機関のFOIAに関するガイダンスや現下の取り組み課題の解説文を仮訳しておく。 

① 国務省のFOIA問題対応サイト 

 

 ② 連邦司法省のFOIA専門サイト

 連邦機関の総括機能を持っており、その内容は最も具体的で詳しい。

  

③ 消費者金融保護局(CFPB)の苦情受付専門サイト

 消費者金融保護局の消費者の苦情データベースは、2012年6月にクレジットカード関する苦情受付から稼動を開始した。以降、CFPBが扱う問題(例えば債権回収、学生ローンや不動産抵当)によって取り扱われる他の製品・サービスに関して消費者の苦情を受け付けるべく拡大されてきた。同データベースの発足の一年後に、データベースは回転原則にもとづさらなるデータを加えて、176,000以上の登録件数を含んだ。また、同データベースは、市民により製品タイプ別に視覚に訴えたり、ソートしたりダウンロードすることができるようになった。 

④ 農務省の食品安全検査局( Food Safety Inspection Service)

 食品安全検査局は、食中毒の危険性を減らすための対する実用的な手順を詳述しているYouTube上で、一連の公共的な内容の発表ビデオを公開した。 「あなたの手順をチェックしてください」シリーズが、4つの安全な食品の取り扱い手順を例示するーすなわち、①きれいに洗い、②分けて、③調理して、④冷やす – 食中毒問題の重要性に気づきをもたらして、個人が食中毒危険を理解することを支援するものである。 

⑤ 「2012年連邦航空局(FAA)の現代化および改正法(Federal Aviation Administration (FAA) Modernization and Reform Act of 2012)」 

(2012年2月14日にオバマ大統領により署名された)は、米連邦法典の第18編を改正した。それにより、航空機にレーザーポインターを向けることを連邦犯罪(federal crime) (筆者注5)とした。FAAはそのような事件のために専用のプログラム・ページを作成し、法執行行動に関連した出来事ならびにリリースに関して最新ニュースを提供した。また同ページは、市民がレーザー事件を報告する能力を持つべき点とともに、レーザーによるリスクと影響に係る情報を持っている。 

⑥ U.S.NRC 原子力規制委員会

 原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission:NRC)は、新しい文書により機関の公式記録システム委員会全体にわたる文書へのアクセスと管理システム(ADAMS)を更新し続けている。同システムは、一般人がアクセスできる2つの記録文書システム(Publicly Available Records System (PARS) Library Public Legacy Library )を提供する。

  毎年何百もの新しい文書を加えて、PARS図書館は、1999年の末からNRCによって公表された730,000以上のフルテキストの文書を現在含む。 Public Legacy Libraryは、1980年代にさかのぼっている文書のために、200万以上の書誌的引用を含む。 ADAMSインターフェースは、これらの図書館のフルテキスト検索と文書ダウンロードを実行するために、市民に検索エンジンを提供する。 

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(筆者注1) わが国でもFOIAに関する解説記事は多い。その中で国立国会図書館のカレントアウェアネスは2012年10月20日付けで「米国国立公文書館等、FOIAに基づく情報公開要求の提出からアクセスまでの手続きを行える”FOIAonline”を公開」を紹介している。

 「2012年10月1日、米国国立公文書館(NARA)と米国環境保護庁、米国商務省とともに開発した、連邦情報公開法(FOIA)に基づく情報開示請求オンラインシステム“FOIAonkine”を公開しました。開示要求の提出やその後の処理状況の確認、他の開示要求の検索や開示情報へのアクセス等が可能とのことです。」

 ちなみに、DOJサイトの情報公開請求対象の連邦機関や件数の推移グラフを引用する。

  

(筆者注2) 検討会に関する資料はすべて国立国会図書館サイトに移管されており、WARPに飛ぶしかない。このようなアーカイブ資料が米国の連邦公文書館等別保管されるケースは欧米でもあることにはあるが、今回の場合わずか12年前の資料である。 

(筆者注3) 「国立公文書館は昭和46年(1971)7月に国立公文書館が設置された。昭和62年(1987)制定された公文書館法と、平成11年(1999)に制定された国立公文書館法の規定により、国立公文書館は、その設置根拠と責務などについて法律上の責任を果たすことになりました。すなわち、国の各機関が所蔵している公文書などの保存と利用(閲覧・展示など)に関する責務を果たす施設として位置付けられ、国民の共通の財産である公文書を後世に継続して伝えるという重要な役割を担うこととなりました。平成13年(2001)4月に国の行政改革の一環として独立行政法人国立公文書館となりました。」

(国立公文書館の「業務概要」から一部抜粋)

 また、 「国立公文書館法(平成11年6月23日法律第79号))」は次にとおり定める。

・・・

(業務の範囲) 

第11条   国立公文書館は、第四条の目的を達成するため、次の業務を行う。 

一   特定歴史公文書等を保存し、及び一般の利用に供すること。 

二   行政機関(公文書等の管理に関する法律第二条第一項 に規定する行政機関をいう。以下同じ。)からの委託を受けて、行政文書(同法第五条第五項 の規定により移管の措置をとるべきことが定められているものに限る。)の保存を行うこと。 

(以下、略す)

 これを読んでも第二号が情報公開法の制定とリンクされていることはいうまでもないし、東京大学大学院 教授 宇賀 克也「日本における公文書管理法の制定と今後の課題」(2012年2月)が国立公文書館法の改正経緯等詳しく解説している。これを読んでも、その情報公開法との関連性が一番のポイントであることはいうまでもない。 

(筆者注4) 米国の「連邦情報公開法(以下「FOIA)という)」の解説は、わが国においても数は比較的に多い。実際の利用方法に即した解説は、国立公文書館の資料 74頁以下「3. アメリカにおける資料の公開と利用」等が参考となる。ただし、わが国の解説資料は国立国会図書館のカレントアウェアネス以外は、最新情報は期待できない。 

(筆者注5) 「連邦犯罪」とは、アメリカ合衆国の連邦憲法上,刑事裁判権が連邦に留保されている犯罪のことをいい,具体的には,州際通商に従事する航空機の損壊,州際誘拐,窃盗自動車州際移送,連邦公務員汚職,連邦銀行強盗,麻薬犯罪および通貨,郵政,関税,破産などに関する犯罪がこれにあたる。 (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典から抜粋) 

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