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英国のポリマー紙幣新5ポンド札(Fiver)が発行開始

  筆者の手元に、英国の中央銀行であるBank of England(BOE)から、4億4,000万枚の新5ポンド札(22億ポンド:約3,080億円相当)を印刷し、 9月13日から新紙幣は英国の全域で多くのATMや銀行カウンターから入手可能になった旨のメールとプレスリリースが届いた

 

新5ポンド紙幣の写真(上が表面、下が裏面) 

 英国の紙幣を、この9月からの5ポンドに始まり、2017年に10ポンド、2020年に20ポンドといった順次現行の紙製の紙幣をポリマー紙幣に切り替える話は、本年6月にメデイア等で一斉に報じられていたので筆者も承知していた。ここで改めてBOEからの通知メールが届いたことから、この情報につき最新かつ正確性を確保すべくまとめてみた。 (注1) (注2)

 また、筆者がとくに興味を持ったのは、わが国でも「スマートフォン決済」「通帳・印鑑が金融取引で不用となる」等の動きと紙幣の作成費用も含め、わが国の将来の紙幣や通貨をどのように考えるべきかという問題である。この問題は、極めてわが国の決済制度、金融システムや財政上の重要な問題と考える。

 さらに英国の場合、盲目、視覚障害者等の人々にとっての新旧紙幣の切り替え時などにおける確実な通貨となるよう工夫した跡が伺えられる。 

 わが国の関係者の更なる研究・検討等を期待したい。 

 なお、新5ポンド紙幣に関する動画を含めた解説サイト(www.thenewfiver.co.uk)が用意されている。関心がある読者は直接アクセスされたい。 

1.新5ポンド紙幣は従来の紙幣とどのような点が異なるのか? 

 新5ポンド紙幣は、ポリマー(細い、柔軟なプラスチック材料) (注3)から作られる。ポリマーはほこりや湿気に耐性があり、紙より長くおよそ2.5倍、耐久性が向上する。それは我々にとってセキュリティ機能の新世代を導入するのを許し、かつ偽造するのをさらにより難しくした。

 彼らが小売業者と企業によってBOEに預けられ、、従来の5ポンド紙紙幣は順次回収される。あなたは5ポンド紙幣を2017年5月5日まで通常通り使用し続けることができるが、その後、旧5ポンド紙幣は法定通貨(legal tender)でなくなる。しかし、この後もあなたは旧5ポンド紙幣をイングランド銀行窓口で新紙幣に交換することができる。 

 2016年9月13日時点の英国の通貨として通用性のある紙幣の裏面の特性一覧

 

 (注)上記5種類の紙幣の表はすべてエリザベス2世である。

  BOEは、2017年夏にジェーン・オースティン(Jane Austen 、1775年12月16日 - 1817年7月18日)は、イギリスの小説家)を主演させているポリマー10ポンド紙幣を導入する予定である。 (注4)さらに、2020年には、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner、1775年4月23日 - 1851年12月19日)は、イギリスのロマン主義の画家)をデザインにいれた20ポンド紙幣の発行が続く。 (注5)

 *ジェーン・オースティン(Jane Austen)の基本デザイン

  

*ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの基本デザイン

  

 新しいポリマー紙幣は、盲目や視力障害をもった人々が新旧紙幣の間の違いを見分けるのを手伝うために、まだ現在の紙と段差をつけたサイジング、太字の数字と類似した色彩パレットを持っている。ポリマー10ポンド紙幣と20ポンド紙幣は、触覚型の特徴も一連の向上させたドットによって作る。新5ポンド紙幣にはこの特徴がないので、視覚障害のある人々でも5ポンド紙幣と違いを見分けることができる。 

2.「よりきれいで、より安全で、より強い」紙幣

 新5ポンド紙幣の導入についてBOE総裁マーク・カーニー(Mark Carney)は、以下のようにコメントした。「新5ポンド紙幣は歴史上の最も偉大な政治家の1人であるウィンストン・チャーチル)を偲ぶものである。そして、チャーチルは『その過去を忘れる国には、将来がない』と述べた。紙幣は英国の集合化された記憶の宝庫であり、そして、新5ポンド紙幣がレジとポケットに流れ出て、彼がもう一度我々の日常生活の一部になったとき、我々はチャーチルの偉大な貢献を思い出すであろう。

  

Mark Carney総裁

「ポリマー製の新5ポンド紙幣は、よりきれいで、より安全でかつ強い。ほこりや湿気に耐性があり、より長く使用できる。ポリマーの使用により財布に繰り返し折られることによりよく耐えることができ、内ポケットにぐしゃぐしゃにいれられても耐えられ、洗濯機で回転されても紙幣として生き残ることもできる。さらに新しいセキュリティ機能は偽造するのがより困難とする。我々はポリマー紙幣が現在の紙の紙幣に比べ、2.5倍長持ちさせることができ、その結果の将来の生産コストを減らすと考える。」 

3.新5ポンド紙幣に「圧倒的にポジティブな」国民や小売業界等の反応 

 新紙幣は、2016年6月2日にブレナム宮殿で広く公開された。それ以来、BOEの職員は、市民や小売業者と取り組むため5ポンド紙幣を示しつつ、英国を旅した。イングランドBOEの営業局長(Chief Cashier)であるビクトリア・クレランド(Victoria Cleland)は、以下のように述べた。「地域のロードショーは新しい紙幣を市民と小売業者と共有する素晴らしい方法であった。反応は圧倒的にポジティブであり、そして私は新紙幣を使い始めたいという彼らの熱意に襲われた。」

  

 さらに、クレランド局長は以下のように付け加えた。「BOEはこの重要で刺激的なプロジェクトを通して現金業とともに働き、また、我々は新6ポンド紙幣の導入を成功裡に薦めた彼らの努力に感謝する。BOEは新紙幣の移行を通して彼らと働き続き、来年夏に新10ポンド紙幣をかざるジェーン・オースティンの導入を楽しみにしている。」  

4.その他の関心事項 

 最後の英国らしい話題を紹介する。BOEサイトによると数字が少ないシリアルナンバーのイングランド銀行の発行紙幣を対象とするチャリティ・オークションが、10月3日(月曜日)に開催される。

 そこで集まった資金は英国の難病患者支援基金である「Myotubular Trust (注6)、 「Lily Foundation (注7)  「Bliss (注8)に寄付される。英国らしい慈善事業の展開がうらやましい。関心のある読者はチャレンジされてはいかがか。 

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(注1) BOE等によると50ポンド紙幣はほとんど流通性がないためポリマー化の予定はないとされている。 

(注2) 新5ポンド紙幣が発行される前の4種類の紙幣のデザインの解説は「イギリスの紙幣ー旅行のとも」が詳しい。

(注3) ポリマー紙幣(polymer banknotes)は材料として合成樹脂を使用した紙幣である。プラスティック紙幣とも呼ばれる。オーストラリア準備銀行 (RBA) とオーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO) の共同開発によって作られ、1988年に通貨としてオーストラリアで発行されたのが最初である。また同国の技術供与もしくは受託生産によって現在世界20か国(サモア、シンガポール、パプア・ニューギニア、クウェート、インドネシア、ニュージーランド、ルーマニア、中華民国、中華人民共和国、ベトナム、メキシコ、香港、ナイジェリア、イスラエル、など)以上で同様な紙幣が製造・発行され流通している。(Wikipediaから一部引用) 

(注4) 新10ポンド紙幣(Jane Austen Banknote )の解説サイト 

(注5) 新20ポンド紙幣(The next £20 note )の解説サイト 

(注6) 「ミオチュブラーミオパチー基金(Myotubular Trust)」:

「ミオチュブラーミオパチー」は、生直後あるいは乳児期より、顔面を含む全身の筋緊張低下を主症状とする遺伝性筋疾患。骨格筋の病理組織学的特徴から、ネマリンミオパチー、セントラルコア病、マルチミニコア病、ミオチュブラーミオパチー、中心核ミオパチー、先天性筋線維タイプ不均等症、先天性全タイプ1線維ミオパチー、還元小体ミオパチーなどに分類される。(小児慢性特定疾病情報センターの解説から一部引用)

 (注7) 英国ミトコンドリア病患者支援基金:

ミトコンドリア病はオルガネラ病の一つで、ミトコンドリア機能が障害され、臨床症状が出現する病態を総称している。ミトコンドリアはエネルギー産生に加えて、活性酸素産生、アポトーシス、カルシウムイオンの貯蔵、感染防御などにも関わっているため、ミトコンドリア病ではこれらの生物学的機能が変化している可能性がある。しかし、現在のところミトコンドリア病における機能異常の主体はエネルギー産生低下と考えられており、そのエネルギー代謝障害による病態が基本である。「難病情報センター」の解説から抜粋 

(注8) 早産児、病気を持って生まれた生まれた赤ん坊の支援団体 

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