スキップしてメイン コンテンツに移動

わが国の改正個人情報保護法の政令、施行規則等は「顔認証」に関しベスト・プラクティスを保証する内容といえるか?」(その2)

 

(2)ドイツ・ハンブルグ州の情報保護・情報自由化委員ヨハネス・カスパー( Prof. Dr. Johannes Caspar ) (筆者注4)等を中心としたFace Bookの顔認証による個人情報の収集等への告発

  

 ドイツ・ハンブルグ州の情報保護機関(HmbBfDI)のフェイスブック顔認識ソフトウェアならびに「仮名・ペンネーム化(pseudonyms)問題」に関する具体的取り組み内容を時間を追って整理する。 

①2011.8.15 The Guardian記事「 Facebook facial recognition software violates privacy laws, says Germany

Social network must stop programme and delete data already collected on users – or face fines up to €300,000, says official」

 ドイツの情報保護機関は「フェイスブック顔認識ソフトウェア(筆者注5) にもとづくタグ付けはドイツのプライバシー保護法を犯している、社会的ネットワークのプログラムを止めなければならならず、ユーザーにつきすでに集められる個人データはを削除しなければならない。また、放置すれば最高30万ユーロ(約3,360万円)の罰金が科せられる可能性がある」と警告した。 

②2012.8.15 ドイツ・フランクフルター紙記事「Facebookの中で顔認識のための追加のプロセスを再び」

 ハンブルクのデータ保護監督官ヨハネス・カスパーは、再度フェイスブックの顔認識ソフトウェアに対する保護法から見た警告手続を開始した。 

③2015.7.25 Bloomberg 記事 「Facebook Ordered by Hamburg Regulator to Allow Pseudonyms」

 (仮訳)フェイスブックは、ハンブルグ州の情報保護監査機関(HmbBfDI)によって仮名・偽名使用を認めるべき旨命ぜられた。 (筆者注6)(筆者注7)

 フェイスブックは、ドイツの情報保護機関からユーザーがソーシャル・ネットワーク上で仮名やペンネーム等(pseudonyms)のアカウントを持つことを認めるようドイツのプライバシー番犬によって命令された。 

ヨハネス・カスパー(ハンブルグ州の情報保護監査機関)は、Bloombergあて電子メールで送った声明で、「フェイスブックはそのようなアカウント口座名をユーザーの本名に一方的に変えられないし、また仮名やペンネームのアカウントをブロックしえない。同社(ヨーロッパの本部はアイルランドにある)は、同国の法律の適用対象となるだけであるとする主張にも根拠がない」と述べている。さらに「「我々の問題提起に組する人は誰でも、我々のゲームをしなければならないし、ユーザー名の変更は露骨にプライバシー権利を専制的に冒涜するものである」とも述べた。 

 カスパーおよびその他のドイツの情報保護監査機関は、ヨーロッパのデータ保護規則の施行について、長い間フェイスブックを敵として戦ってきた。米国企業であるフェイスブックは、ドイツの監督機関ではなくEU本部があるアイルランドの監査委員にフェイスブックのEUのプライバシー法の遵守に関する管轄権があると主張した。 

 一方、フェイスブックは、それがそれが問題に関する論争に勝ったあとにもかかわらず、本名のみに限定する同社の「ユーザー名使用(real name )ポリシー」問題が再度問題とされたことに失望したと述べている。 

 同社は電子メールを送られた声明において「フェイスブックにおける本名の使用は、人々が彼らが誰と情報を共有し、誰とつながっているかをわかることを確実とすることによって、最終的に人々のプライバシーと安全を保護する」と述べている。 

 なお、2015年11月3日のNaked Security by SOPHOS「10月30日にフェイスブックは、米国内の人権擁護団体からの強い要請を受け、リアル・ネーム・ポリシーを最終的に改正」がドイツ以外の国々の例として参考になる。ここでは詳しく内容紹介しないが、(筆者注6)で述べる日本語版のリアル・ネーム・ポリシーを正確に読みかつ理解することが重要といえよう。 

 

 ************************************************** 

(筆者注4) 2009.12.7 芦田勝ブログ「Googleのストリートビューをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法 的課題 (その5)」においてヨハネス・カスパー氏(Johannes Caspar) やドイツの取り組みにつき解説している。また、2013年5月、ハンブルグ州保護委員はGoogleに対し、ストリートビュー撮影車が無断でWiFiの情報を不正に取得したとして145000ユーロの罰金刑を科している。この事件につき、2013.6.27 芦田勝ブログ「仏CNIL等がGoogleに対し今後3ヵ月以内にフランスの1978年情報保護法等およ び制裁予告を通知」 (筆者注3)も参照されたい。 なお、この事件の経緯をさらにみると、Googleは、「ストリートビューカーが街中の無線LANをスキャンして記録、2010年末までに表示開始か」について、SSID(SSIDとは、無線LAN(Wi-Fi)におけるアクセスポイントの識別名。混信を避けるために付けられる名前で、最大32文字までの英数字を任意に設定できる。)やMACアドレス(ネットワーク機器やネットワークアダプタに付いている固有の識別番号。LANで接続されている機器やLANの増設アダプタには製造段階で必ず付けるようになっている)だけでなく、暗号化されていない無線LANによる通信内容もそのまま記録していたことが判明した。

 情報保護委員が「ドイツで知られている最大のデータ保護規則違反の一つ」と判断し、145,000ユーロの罰金を科した。ドイツ検察は Googleの「犯罪的な違反」を見つけることができなかったとして、2012年の秋に世界的な検索巨人に対する刑事訴訟手続を取り下げた。

しかし、データ保護委員は罰金を課すことを願い事件を取り上げた。 Googleは通りの景色チームがコレクションを知らないで、違法なデータ獲得量を決して見なかったと主張した。

しかし、ハンブルグに拠点を置く保護監査機関責任者ヨハネス・カスパーは、ブルームバーグの取材に対し「Googleの個人情報の内蔵制御メカニズムは、著しく故障していたに違いない」と述べた。(2013.4.22 VERGE記事「Google fined just $189,000 for 'one of the biggest' data protection violations in German history 」 

 なお、北海道大学法学部・准教授 佐藤結美「個人情報の刑法的保護の可能性と限界について」 は、93頁以下でドイツの保護法制における「過料」と「刑事罰」につき詳しく解説している。この解説はわが国の内閣等政府関係の資料に比べく詳しさのレベルが異なるもので極めて参考になる貴重な解説論文である。 

(筆者注5)Face Bookヘルプセンターの顔認証ソフトによる「写真のタグ付け」の解説文を引用する。 

 「Facebookからタグが提案されるしくみはどうなっていますか。 あなたの写真を第三者がアップロードすると、その写真に写っているあなたへのタグ付けが提案され ることがあります。Facebookでは、あなたの友達の写真と、あなたのプロフィール写真およびあなたがタグ付けされた写真から集めた情報を⽐較できます。この機能がオンになっている場合、あなたの写真がアップロードされたときにあなたの名前を提案するかどうかを選択できます。

これは、あなた のタイムラインとタグ付けの設定で調整します。 現在Facebookでは、目や⿐、⽿の間隔などの顔の特徴に基づいて独⾃の数(「テンプレート」)を算出 するアルゴリズムを使⽤した顔認識ソフトウェアを使⽤しています。このテンプレートは、Facebookのプロファイル写真とFacebookでタグ付けされた写真に基づいています。Facebookは、これらの

テ ンプレートを使⽤して、あなたの友達のタグを提案し、写真へのタグ付けを⽀援します。

写真からタ グを削除した場合、その写真はタグが削除された⼈のテンプレートの作成には使⽤されません。ま た、Facebookではテンプレートを使って利⽤者の画像を再現することはできません。 

(筆者注6) フェイスブックの「アカウント名に関するリアル・ネーム・ポリシー(real-name policy)」 の内容を見ておく。

「Facebookは、利用者同士が実名を使って交流するコミュニティです。Facebookでは、すべての利用者の方に、日常的に使っている名前をフルネームでご登録いただいています。これは、コミュニティの安全を維持するのに役立っています。

名前に次のものは使用できません。

◾記号、数字、不要な大文字、繰返し文字、句読点

◾複数の文字種

◾あらゆる種類の肩書き(職業上、宗教上など)

◾名前に代わる語句やフレーズ

◾あらゆる種類の不快または露骨な語句

・・・・・・

日常的に使っている名前がアカウントに表示されていない場合は、名前を変更してくださ

い。変更できない場合は、こちらをご覧ください。」 

(筆者注7) 仮名化データ(Pseudonymous data)については、筆者ブログも参照されたい。

 ****************************************

Copyright © 2006-2016 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

米ノースカロライナ州アッシュビルの被告男性(70歳)、2,200万ドルのポンジ・スキーム(いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル以上の賠償金判決

被告 Hal H. Brown Jr. 7 月 10 日付けで米連邦司法省・ノースカロライナ西部地区連邦検事局の リリース   が筆者の手元に届いた。 その内容は「 ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性 (Hal H. Brown Jr., 70 歳 ) は、 2,200 万ドル ( 約 23 億 5,400 万円 ) のポンジ・スキーム (Ponzi scheme : いわゆる「ねずみ講」 ) 等を画策、実施した罪で 17.5 年の拘禁刑 や 1,700 万ドル ( 約 18 億 1,900 万円 ) 以上の賠償金 の判決 を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む 60 人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。 筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、 1) この裁判は本年 1 月 21 日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、 2)Ponzi scheme や取引マネー・ローンダリング (Transactional Money Laundering) の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。 特に不正資金の洗浄運び屋犯罪 (Money Mules) の種類 ( 注 1) の相違点につき詳細などを検証した。 さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。 これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。 他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。 ( 注 2) 取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は 9 年前の 2011.8.16 に...