スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

2月, 2015の投稿を表示しています

ドイツ政府は個人情報保護権の侵害に基づく消費者団体訴訟の権利保護強化にかかる一部改正法案を承認

    Last Updated: April 30,2024  2月4日、ドイツ連邦内閣( 法務・消費者保護省( Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz:BMJV) )は、個人情報保護法の消費者保護規定に関する民事法の一部改正に関する法案を承認した。法案の核心は、個人情報保護法の消費者団体訴訟権の強化・執行に関する規定である。  (筆者注1)    筆者はこのニュースを米国ローファーム・サイト ”Norton Rose Fulbright” やドイツのメデイア ”Badische Zeitung” 等で知ったのである。この問題は一般の読者からはその意味が理解しがたい専門的なテーマかも知れないが、ドイツ等の消費者保護に関する制度研究   (筆者注2 ) を踏まえ消費者団体訴訟制度を平成19年6月7日に施行したものの、果たしての効果という点で、なお疑問が残る。  すなわち、平成26年3月の消費者庁「消費者団体訴訟制度:差止請求事例集」を見ると、この6年余に提起された差止請求訴訟は30件、そのうち、17件については訴訟が終了し、原告勝訴5件、和解9件、原告敗訴3件となっている。また、訴訟外で改善された事案も多く、訴訟・訴訟外あわせて、111件(113事業者)の事案で改善が図られている(件数は、いずれも平成25年7月5日現在)と説明されている 。  (筆者注3)   しかし、同制度自体、国民に広く定着した制度といえるか、また、特にドイツが今回、世界的な企業であるGoogle等によるプライバシー侵害問題を個人的な被害救済のためには、この団体差止訴訟機能の強化を図った目的につき改めて検証すべきとかと考え、本ブログをまとめた。  本ブログでは、先進国の制度の見直しがいかなる観点から行われているかを考える意味で、ドイツ連邦法務・消費者保護省のリリース文等の 仮訳 を行うとともに、補足解説を行う。 1.2018年以前のドイツの法的枠組みで認められていた集団訴訟手続  以下の4つの法分野においてのみ、厳格な要件のもと、効果を限定した形でのみ認められていた。しかしながら、ドイツは、EU 委員会が加盟国に対し、2013 年、一定の条件のもと集団訴訟に類する制度を創設すべきであるとす...

米国における最大手前払式携帯電話プロバイダーの誤解を招く広告と連邦取引委員会との民事告訴和解

    米国ではその利便性等からプリペイド方式の携帯電話の利用が一般的である。  (注1)  1月28日、連邦取引委員会(FTC)は加入者数が約2,500万人という米国市場の最大手携帯電話会社である ”TracFone Wireless”(以下”TracFone”という)   (注2) に対し、2009年以降、顧客に月額約45ドルで「通話、テキストやデータ量等につき無制限利用権」をうたう様々なブランド名( Straight Talk Wireless  ; Net10 Wireless  ; Simple Mobile  ; Telcel America  )を用いた広告を行う一方で、契約者は一定期間経過後は通信スピードの大幅な減速等を実施するとともに、場合によってはサービス提供の停止をうかがわせる一方的音声メッセージを送りつける等の違法な事実の調査結果に基づき、告訴を行った旨リリースした。  FTCのカリフォルニア北部地区連邦地裁あて 告訴状(complaint to TracFone)  (注3) は、これらの誇大広告文言やサービス約款(policy)違反について、最終的に”TracFone”は利用権の各種制約に関する開示説明を行わず、モバイル携帯データ・サービスにつき無制限の利用権をうたう欺瞞的な広告を行ったことをもって FTC法(Federal Trade Commission Act)第5条(Unfair or Deceptive Acts or Practices) 違反を理由としてあげている。  (注4)  今回、同委員会が賛成5-0で裁決した和解内容は、(1)TracFoneに同データサービスにつき明確かつ明らかなかたちで通信スピードや品質に制約を説明するよう求めた。さらに(2)サービス面で影響を受けた顧客の損害を補填すべく4千万ドル(約42億8千万円)の基金を設置するというもので、同時にFTCは被害者の 損害額還元プログラムに関する専門サイト を設置した旨告知した。  また、FTCとの和解においてTracFoneは、(3)FTC命令の施行の1年後に、彼らは和解内容を遵守する報告書を提出すること、(4)同報告はTracFoneの製品(サービス)を詳述すること、(5...

カナダのラジオ・テレビ・通信委員会は電話名簿業者と迷惑電話規制規則に基づき約2,444万円の罰金刑の和解

  Last Updated:June 14 ,2020   1月20日付けのカナダのラジオ・テレビ・通信委員会(Canadian Radio-Television and Telecommunications Commission:CRTC)は、カナダの電話情報業者(telelisting co.)(telephone directory services)である”Hamel System d’Information2000 Inc.”   (注1) に対し、カナダの 「受信者が希望しない迷惑電話(一方的電話勧誘拒否登録)制度の規制に関する連邦規則(Unsolicited Telecommunications Rules)(以下「規則」という)」 に違反したことを理由に和解の一部となる26万カナダドル(約2,444万円)の罰金刑の支払いに同意した旨を 通知 した。さらに、CRTCは不動産仲介業者やブローカーに対し、法令遵守の警告通達を行っている。 (注1-2)  ここで取り上げた”Telelisting business”すなわち”Online Lead Generation ”についてわが国では定まった訳語さえないが、米国等海外ではかなり以前から (注2) ビジネスとして定着している。簡単にいうと「見込み客獲得のためのマーケテイング手法」をいい、アフィリエイト広告との違いは、自社サイト以外から見込み客情報を取得することが出来るという点である。  Internet業界で大きな影響力をもつTechCrunchの創業者 Michael Arringtonが2009年10月末に、Facebook、Zyngaおよび一部の広告会社等のソーシャルゲームに関係する会社を、 悪質な詐欺広告(Lead-Generation Scam) で消費者に多大な被害を与えているとして告発するなど 問題 が起きている。  カナダにおいてもニュービジネスであることは間違いない。一方、筆者が従来から問題視している迷惑電話の規制に関するわが国における具体的な検討はまったく進んでいない。  同規則の適用の前提となる米国  (注3) 、 カナダ、オーストラリアなど主要国の迷惑電話規制制度である“Don’t Call Registry”については、2010年10月24日付け筆者...

カナダ政府の国民をテロから守るための具体的対策を盛り込んだ「2015年反テロ法(案)」の内容とその意義(その2完)

  3.カナダの王立騎馬警察やその他法執行機関による国家安全保障法執行チームが現行刑法に基づくテロ犯罪容疑で逮捕、起訴した旨のリリースの内容 (カナダの国家レベルのテロ対策プロジェクトの具体的成果例) (1)カナダでは前述の議会での立法作業に優先したかたちで、警察組織横断的な安全保障特別捜査チーム「SERVANT Project」が2012年12月に立ち上がり、2013年1月にはアルバータ州・エドモンドにk division「統合国家安全法執行チーム(INSET)」 (注14) を第5番目のものを立ち上げている。  今回のテログループの逮捕は、これらチームの連携活動の成果であるとカナダのメディアは報じている。 ○ 2月3日付けのCBCの記事「ISISとの緊密な財政、過激な思想面等関係に基づきオタワ住民の男性3人がRCMPにより逮捕、起訴」の要旨を仮訳する。   容疑者アウソ・ペジャダエリー(Awso Peshdary:25歳) カナダ刑法第83.18条(テログループの活動への参加)および第83.19条(テロ活動の支援) (注15) が起訴事由である。 ジョン・マクガイヤー(John (Yahya) Maguire:24歳) 起訴事由は刑法第83.19条。である。 カダール・カリーブ(Khadar Khalib:23歳) カリーブの起訴事由は刑法第83.181条および第83.18条である。  これら3人に対し共通して 刑法第465(1)(c)(共謀罪) が適用される。 その起訴容疑は、テロ活動を支援するにつき共謀し、故意にテロ集団の活動に参加および参加にあたり第三者にカウンセリングを行ったことも上げられている。  ペジャダエリーはオタワ市内で拘束され、マクガイヤーとカリーブは不在のまま起訴された。 ○ RCMPは2人(マクガイヤーとカリーブ)の逮捕令状を得て、同時に国際刑事機構の”Red Notice”(国際刑事警察機構が加盟国の申請により発行する通知。その国で逮捕状が出ている被疑者などについて人物を特定し、発見したら手配元の国に引き渡す方向で協力するよう各国に要請するもの)の発行を要請した。 ○“Project SERVANT”等が捜査で容疑者の違法な活動情報   2月3日付けのCBC記事 が主犯格のペジャダエリーの共犯者への勧誘行為、さらにはテロ関係の捜査...

カナダ政府の国民をテロから守るための具体的対策を盛り込んだ「2015年反テロ法(案)」の内容とその意義(その1)

    Last Updated:May 15.2021  1月30日、カナダの ハーパー首相(Prime Minister Stephen Harper) は拡大するテロの脅威と国民や社会の安全を守るため警察等法執行機関や国防省等国家のセキュリティ機関の権限強化を内容とする新たな立法措置の概要を発表し (注1) 、 これに引き続き連邦議会では同法案の具体的審議 (注2) が始まった。 Stephen Harper 首相  わが国では、日本人2人の人質がイラクとシリアで活動しているスンニ派イスラーム教原理主義組織であるISIS(ISIL)の残虐な行為に対し激しい憤りを覚えるとともに、世界中で活躍するNGO・NPOやビジネスマンやその家族等に危害が及ばないよう迅速な対応を取る必要が改めて指摘されよう。また、同時にわが国内で仮に2014年10月にカナダで起きた戦没者記念碑、カナダ連邦議会でのISISシンパシーのテロ事件問題の扱いの対応が問題となろう。  従来からISIS等イスラム教原理主義グループに対する武力攻撃等を行っている米国やテロの被害にあったフランス等EU主要国等が極めて厳しい警戒態勢を敷くとともに、例えば、オーストラリアは反テロ立法を成立、または英国では最終法案審議を行うなど国内テロ阻止に向けた立法措置を行っていることはいうまでもない。 (注3)(注4) このような状況下で、同首相はカナダ国内におけるテロ支援、擁護者を決して許さないとすることを2014年10月の連邦議会等へのテロ攻撃の直後に明言した。  このカナダのテロ対策立法の概要につき、わが国のメデイアでも言及しているものがあるが (注5) 、その指摘は立法論および人権擁護問題として参考になる内容ではない。  しかし、一方でイスラム国を名乗るテロ集団を厳しく糾弾すると言うのみのわが国政府の姿勢も「無責任」である。また、外務省の海外安全情報サイトのテロ情報の不徹底さも極めて問題視すべきと考える。  わが国の現実は、各種民間NGO,JICAボランティア (注6) や、現地派遣ビジネスマンやその家族、旅行者、自衛隊員等多くの日本人が仮に標的なるとしたら、さらには国内においてsympathyを感じたり、心情的に支援する者がいたとすれば、どのような結果が起きると考えるべきか。  筆者が海外の主要国の取組みに...