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EUの個人情報監視機関・第29条専門家会議とフランスCNILがGoogleの新プライバシー・ポリシーに対し再警告

 



 本年3月22日の本ブログで「フランスCNILがGoogleの新プライバシー・ポリシー等に対するEU保護指令等から見た懸念や疑問点69項目を提示」と題するレポートを行った。その内容は同ブログで確認されたいが、その後の同委員会(EU指令第29条専門家会議:Article 29 Data Protection Working Party)、以下「29条専門家会議」という)と結合したEU加盟国の情報監視機関(European Data Protection Authorities:EDPAs) 
(筆者注1)やCNILは調査結果を踏まえ、当時のGoogleの回答内容の不完全性や非制御性等、具体的な問題点をまとめた意見書をそれぞれ10月16日付けで公表した。

 本ブログは29条専門家会議の意見書やCNILのリリース文を中心にそれらの内容を仮訳して紹介するとともに、今後の課題等につき再度取り上げた。なお、本ブログでも過去に取り上げてきたドイツ連邦データ保護・自由監察官(BfDI)もこの問題を取り上げレポートしている。
 (筆者注2) これに関し29条委員会の意見書にも引用されているとおり「意見付属書(Appendix)」の内容は重要である。本ブログでは概要のみあげておいたが、読者はぜひ全訳して理解してほしい。

1.29条専門家会議の意見書の内容
 全文を仮訳した。なお、項目立ておよび関連する原データへのリンクは筆者の責任で行った。

(1) 2012年3月1日、Googleはサービスの大部分に適用するプライバシー・ポリシーと利用条件を変更した。この新しいポリシーは、多くの製品固有のプライバシーに関するポリシーを統合して、各サービス横断的なデータの組合わせを一般化する。
 我々は、Googleが新プライバシー・ポリシーにつき様々な情報ツール(Eメール、ポップアップ等)を駆使してユーザーに知らせる大々的な宣伝に着手したことを認める。しかしながら、今回の抜本的なプライバシー・ポリシーの改正に関し、EU加盟国のデータ保護監視委員との十分な議論なしで決めたことは、Googleの改定作業に関して多くの疑問を引き起こしたことを認めざるを得ない。

(2)29条専門家会議と統合したEDPAs は、EUの個人情報保護法、とりわけ「Data Protection Directive95/46/EC」および「e-Privacy Directive2002/58/EC」へのGoogleの新プライバシー・ポリシーの遵守状況を評価するために徹底的な調査に着手した。29条委員会はその分析作業をリードするようにフランスのData Protection Authority(CNIL)に依頼した。また、Googleは29条専門家会議の調査で2012年3月19日と5月22日にCNILによって送られた2つの質問アンケートに答えることによって、協力して作業した。さらに、「アジア太平洋プライバシー監督局連合(Asia Pacific Privacy Authorities)」カナダ連邦プライバシー・コミッショナー等の世界中の他のデータ保護やプライバシー監督当局へ照会を行った。

(3)Googleは、プライバシー関連の習慣の多くが他の米国インターネット会社と異なってはいないと説明した。 我々は、必要であるなら他の会社のこのセクターの運用慣行につき公的にするよう調査した。
 我々は、オンラインの世界のリーダーであるGoogleがプライバシーで先を見越して従事する上でGoogleがあなたの会社がサービスを提供するところの国々の所管官庁との密接な関係が重要であると期待する。 Googleによって実行された幅広い種類の加工作業は、Googleのユーザーが支払うプライバシーにかかる費用でGoogleの開発をしないのを保証する強くかつ永続的な付託を必要とする。したがって、我々はGoogleがいくつかの問題をはっきりさせるために受け入れたのをうれしく思う一方で、Googleが2つのアンケートの答えを分析した後に、なお灰色の領域はまだ残っている。
 
 特に今回のGoogleの回答は、貴社が目的制限、個人情報の品質、個人情報の最小化、比例性および使用に反対する権利という重要な個人情報保護原則を是認する点を示していない。事実、プライバシー・ポリシーは収集の範囲に関する制限・限界規定の欠如と個人的なデータの潜在的用途を示している。我々は公的にこれらの原則を確約するようにGoogleにあえて挑む。

(3)さらに、 我々の調査は新しいプライバシー・ポリシーに関するいくつかの法律問題と個人情報データの組合せの問題点を明らかにした。

 まず第一に、本調査ではGoogleが受け身のユーザーを含む特に処理されるデータの目的とカテゴリーに関し、不十分な情報をユーザーに提供している点を示した。 その結果、Googleのユーザーは、データのどのカテゴリーが自分が利用するサービスで処理されるか、またこれらのデータがどの目的のために処理されるかを決定できない。インターネット会社は複雑過ぎるか、極度に法律指向または過度に長いプライバシー通知を開発するべきでない。しかしながら、簡単さの検索により、インターネット会社がそれらの義務を避けるように導くべきではない。 我々は、すべての大きくてグローバルな会社が自分達のユーザーの情報の運用作業を詳しく述べて、かつ明確に区別化すべきことを求める。

 第二に、本調査はサービス横断的な個人情報の組合わせに関する我々の懸念を確認した。 新しいプライバシー・ポリシーで、Googleはいかなる目的のためのいかなるサービスからもありとあらゆる個人情報の結合が可能となる。データの組合わせは、他の個人データに場合と同様、適切な法的な根拠を必要として、これらのデータが集められた目的と両立しなければならない。別紙の意見付属書でさらに詳しく説明するとおり、データの組合わせに関連する目的のいくつかに関し、Googleはユーザーの明白な同意を集めず、また個人の基本的権利と自由の保護に関し、そのような大容量データベースを集めるためにGoogleの合法的な利益や、どんな契約もデータのこの大きい組合わせを正当化しない。Googleは、それ自体がインターネットユーザーに関する膨大な量の個人データを集める権限を与えるが、Googleはこの収集行為がそれらが処理する目的に比例していたことを示していない。

 さらに、Googleはデータの組合わせに関する一定の限界を設定し、かつユーザーがそれを制御できる明確で包括的なツールを提供していない。そのような大規模に個人データを結合すると、ユーザーのプライバシー問題に高い危険を生み出す。 したがって、これらの目的のためのサービス横断的なデータを結合するとき、Googleは、このよう実務慣行を変更すべきである。
 その他の目的に関し、ユーザがサービス(例えば、Calendarでの接触へのアクセス)、安全性または学際研究の観点から横断的にデータの組み合わせを要求したときに改良されたとしても合法的または同意に基づくことが必要である。

 最後にGoogleはそれが処理する個人データに保有にかかる期間を具体的に提供していない。

 データ保護監視委員として、我々はGoogleが情報内容を改良するステップを踏み、データの組合せをはっきりさせて、より一般に、データ保護法や保護原則の遵守を確実にするために必要な措置を取ると期待する。そのために、我々は実務的な勧奨事項を以下に記載する。また、貴社において別紙の意見付属書により詳細な調査結果と詳細な勧奨の概要を見出すであろう。

(4)情報に関して、Googleは各サービスでそれがどう個人的なデータを処理するかを明らかにして、詳しく述べ、各サービスとデータの各カテゴリーのための目的を明確に区別化すべきである。 実際には、Googleは以下の点を実現出来るはずである。

・プライバシー通知の構造を次の3つのレベルに分けてアーキテクチャーを定義する。
第一レベル:製品におけるプライバシー通知と隙間用(interstitial)プライバシー通知
第二レベル:アップデートした現行のプライバシー・ポリシー
第三レベル:製品特有の情報

・容易にポリシーの内容にナビゲートできるユーザーに許す対話的なプレゼンテーション・ツールを開発する。
・ユーザーに重要な影響を与えるデータ(位置情報、クレジットカード情報、ユニークなデバイス識別子、電話番号、生体認証情報等)について追加的かつ正確な情報内容を提供する。
・モバイル端末ユーザーに対する情報を採用させる。
・受け身のユーザーに適切に知りうるよう情報提供を確実化する。

 これらの勧奨の実現は、データ主体のための包括的、非侵奪的かつ明確な情報を提供を確実にするであろう。

(5)データの組合せに関して、Googleは目的を明確化させる行動とデータの組合せの手段を取るべきである。 その見解から見て、Googleはより明確にデータがサービス横断的にどう結合されるかを詳しく述べ、彼らの個人的なデータにつきより多くの支配力をユーザーに与えるために新しいツールを開発すべきである。 以下のコントロール(詳細は意見付属書で参照)を実装することによって、これができるであろう。:

・認証されまたは非認証のユーザーのためにオプトアウトメカニズムを簡素化しする。また、1つの場所で彼らを利用可能にする。
・適切なツールとのデータの組合せの目的を差別化する。
・ある目的のためのデータの組合せのために明白な同意を集めること。
・認証されたユーザーにつき、彼らがどのサービスにログインするかを制御する可能手段を提供する。
・受け身のユーザーへのデータの組合せを制限する。
・EUの「e-Privacy指令」5(3)条を実装する。 (筆者注3)
ドイツ向けに設計した「Google Analytics」合法化手順を他のすべての国に拡大する。

(5)我々は、オンラインの世界におけるGoogleの重要な役割を認める。私たちの勧奨内容は、 貴社の革新能力を制限して、製品を改良点を求めるのではなく、むしろユーザーの信頼とコントロール権を強化して、データ保護法や諸原則への遵守を確実にすることを求めるものである。

 最終的に、我々はプライバシーのために重要な意義を持つサービスを開発するときは貴社がデータ保護当局に取り組むよう奨励する。我々は、Googleが当方のの推薦を実行するために、プライバシー・ポリシーや商慣行の見直しにつき、本勧奨内容に基づく実装をいかなる方法で、またそのための作業の時間割を示す回答をCNIL宛に送って欲しい。

2. 29条専門家会議の意見書付属書(Appendix:Google Privacy Policy:Main Finding and Recommendations))の概要
 全9頁である。目次のみあげる。
Outline
Ⅰ.Main findings
1) Legal Framework
2) Information
3) Combination of data across services
4)Retention period
Ⅱ.Recommendations
1) Information
ⅰ.Particular case of mobile users
ⅱ.Particular case of passive users
2) Combination of data
ⅰ.For purposes that have a legal basis for the combination of data(case #1,#3,#5,#8)
ⅱ.For purpose that not have a legal basis for the combination of data(case #2,#4,#6.#7)
ⅲ.Practical case of Google Apps(Free Edition)users
3) Retention period
Ⅲ.Others
1) Name Policy
2) Facial Recognition
3) International transfer and safe harbor

3.CNIL報告「グーグルの新プライバシー・ポリシー:各サービス横断的な組み合わせの不完全や非制御性の問題」
 10月16日、CNILは自身のサイトで29条専門家会議のGoogleへの意見書を取り上げ、詳しく問題点を解説している(Règles de confidentialité de Google: une information incomplète et une combinaison de données incontrôlée)。

 CNIL報告は、29条専門家会議の意見書の内容と大部分は重複しており、本ブログでは具体的に補足すべき点のみ追加することとした。

(1)新プライバシー・ポリシーの下では、ユーザーはこのサービスにおいてどのカテゴリーの個人情報が処理されているかどうか、また正確な処理目的を決めがたい。例えば、プライバシー・ポリシーの文言上、無毒な「検索クエリー(search query)」情報とクレジットカードや電話番号の処理条件は差異がない。すなわち、ポリシー上これらの目的ですべて平等にこれらの情報が使用できる。そのうえ、広告や第三者の受身のユーザー(passive users)のようなGoogleサービスの相互利用者にはこのような情報がまったくない。

(2)新プライバシー・ポリシーではGoogleサービスの横断的利用が一般化された。実際に、Googleを介するオンライン活動(各種サービスやアンドロイドの利用、Googleのサービスを利用する第三者相談等)に関する限り、情報の集約や結合が可能となる。DPAsはこの組合せユーザーが求める提供サービス、商品開発、セキュリティ、広告、Google アカウントや学際的調査において組み合わされる点に着目する。また、Googleに対する調査によると組み合わせのデータ範囲や保持期間が非常に広範囲であることが示された。
 たとえば、「Google +」を含む単なるサイトでの相談サービスに関する情報は18ヶ月間保有され、Googleの各種サービスで関連付けられる。 「DubleClick」(筆者注4)に関しては2年間保持されまた更新が可能である。

(3)EU加盟国の情報保護法は個人情報のデータ処理にあたり厳格な枠組みを求める。Goggleは、組み合わせる場合の法的根拠を必要とし、また情報の収集はもともとの目的に適合していなければならない。しかしながら、広告を含むこれらの目的に関し、Googleの実務は同意、Googleの合法的利益、契約の履行に依存していない。

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(筆者注1) “European Data Protection Authorities”は全EU加盟国の情報保護監督機関からなる協議・決定機関である。最近の決定例では2012年6月12日「European Data Protection Authorities adopt opinion on cookie consent Exemption:Opinion Article 29 Working Party analyses revised cookie-rule」を全体会で決議したことが報じられている。

(筆者注2) ドイツBfDIの本意見書に関するブログ「EU情報保護監督機関の見解:グーグルのプライバシー・ポリシーは不完全な内容である( Europäische Datenschutzbehörden: Googles Datenschutzerklärung mangelhaft)」のみが、10月16日の29条専門家会議の意見書の付属書(Appendix)をリンクさせているので参照した。

(筆者注3) 「ePrivacy Directive2002/58/EC」の該当内容を、以下抜粋する。
Article 5 Confidentiality of the communications
3. Member States shall ensure that the use of electronic communications networks to store information or to gain access to information stored in the terminal equipment of a subscriber or user is only allowed on condition that the subscriber or user concerned is provided with clear and comprehensive information in accordance with Directive 95/46/EC, inter alia about the purposes of the processing, and is offered the right to refuse such processing by the data controller. This shall not prevent any technical storage or access for the sole purpose of carrying out or facilitating the transmission of a communication over an electronic communications network, or as strictly necessary in order to provide an information society service explicitly requested by the subscriber or user.

(筆者注4) Google+とは2011年6月に発表されたGoogleの新しいWEBサービスである。Google+はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の1つで、インターネット上で現実のような社会的繋がりを作るサービスである。他のSNSと比べて、特に情報の"共有"が簡単にできる。TwitterやFacebookとの違いなどを解説している。

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