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EUの個人情報保護監視機関(EDPS)が欧州委員会の諮問に応えプライバシー規則案の改善に向けた意見書を提出

 


 米国法律事務所Covington & Burling LLの9月21日付けのブログは、EU加盟国の個人情報保護のWatchdogである「欧州個人情報保護監察局(European Data Protection Supervisor:EDPS)(主席監察官ピーター・ハスティンクス:Peter Hustinx)」 (注1)が欧州委員会の諮問に応え、「違法内容通知とその対応行動手続(notice-and-action:“N&A”Procedure)」につきインターネット仲介者(hosting provider))が負う法的責任にかかる手順規則の改正内容は、プライバシー権に基づきより明確にし、使い勝手が良いものとすべきとの意見書を提出した (European Data Protection Supervisor Calls For Clearer and More European Data Protection Supervisor Calls For Clearer and More Privacy-Friendly Rules On Internet Intermediary Liability)」と報じた。

 本ブログは同事務所のレポート内容を中心に、原資料と比較しながら、EUが取り組むべきこれからの課題を整理するものである。


1.Covington & Burling LLPレポートの概要 

 次のような内容である。
○EDPSは、このほどインターネット仲介者(hosting provider) (注2)が主催するコンテンツにつき違法であると通知を受けたとき、当該内容の削除を求めるという法的運営体制に関する「違法内容通知とその対応行動手続(notice-and-action:“N&A”Procedure」の改正にかかる規則改正についての公式の意見諮問につき、正式回答を行ったものである。そこでは以下述べるとおり、EDPSは「違法な内容」、「hosting」の定義ならびに違法な内容につき率先的に行動を起こすべきhosting providerの範囲の明確化の重要性を指摘した。

 EDPSの見解として、「権利者(right-holders)」 (注3)に加え、他の利害関係者(stakeholders)が追加されよう。彼らの多くはアクセスできる申立手続きや通知の濫用に対する制裁措置を含む透明性があり、かつユーザーに優しいことが求める。また権利者は、今日一部オンライン・プラットフォーム(オンラインで機能する特定のソフトウェアやハードウェアを動作させるために必要な、基盤となるハードウェアやOS、ミドルウェアなどのこと)が行っているとおり、権利者につき直接侵害コンテンツを排除可能とする仲介者にAPIs (注4)を提供する点で評価できる。

 EDPSが諮問内容に関し、取り上げ、評価するポイントは次の点である。
①N&A手続きの目的に関し、EU加盟国で横断的な「違法な内容」に関する定義を調和させること。
 EDPSは、機微情報の処理時に追加的安全措置が必要な点を強調する。また、一定の場合、違法な内容はhosting providerに対するより規制監督機関に対し行うことが適切な場合がある点を勧奨する。

②現下のでデジタル化環境を考慮すると“hosting”の定義を明確化すべきである。EDPSは、オンラインソーシャル・ネットワークこれらのサイトに個人情報をアップロードする実態から見て「data controllers」とみなすべき点を強調する。

③調和の取れた手続きの策定および違法な内容のホスト主体に対する通知内容の様式化をすべきである。
 EDPSは、調和の取れた様式と手続きがEUの個人情報保護法を十二分に配慮する必要性を追加する。たとえば、通知の送り主およびおよび関係するその他の個人(被害届出人(complainant)、嫌疑者、証人等)について必要最小限の個人情報のみを要求する「意図的プライバシーの 被害申立様式」を作成すべきと考える。

④hosting providerが率先して取るべき手続き内容を明確化する。
 EDPSはEUの「電子商取引指令(E-Commerce Directive:Directive 2000/31/EC) (注5)の第15条の範囲に関する疑問点つき言及する。すなわち、同条は「加盟国は、12条、13条および14条が適用されるサービスの提供者に対し、転送または保存情報を監視する一般的義務、および違法行為を示す事実または状況を積極的に探す一般的義務を課してはならない(この部分は消費者庁の資料から引用した)」と定める。同条については、スカーレット・エクステンデイド社 v.サバム裁判(Scarlet Extended v. SABAM(C-70/10))において欧州連合司法裁判所(CJEU)は2011年12月23日判決において、より鋭い安堵感が投げつけた。すなわち、裁判所は同裁判において部分的に基本的人権としてプライバシーを保護する一方で、著作権侵害を保護する目的のISPによる広い積極的なフィルタリングを禁止する旨判示した。EDPSはこの問題につき過去数回コメントを述べてきた。

2.EDPSの欧州委員会の諮問に対する意見書 
原文は、全3ページで2012年9月13日付で個別質問に対する回答方式を取っている。詳しい内容紹介は省略する。

3.欧州委員会の関係機や広く一般向けの諮問・アンケート文
 次の8章からなるが、単一ページ(PDF版で20ページ)での閲覧も可である。回答期限2012年9月11日であった。いずれにしても、やや内容の専門性に関しては不満足な諮問方式であると感じた。
①Introduction:経緯と問題点(用語の定義Glossaryを含む)
②I. Background information:回答者の概要情報に関する記入欄
③II Notice and Action procedures in Europe:N&Aに関する個別選択回答欄
④III. Notifying illegal content to hosting service providers
⑤IV. Action against illegal content by hosting service providers
⑥VI. The role of the EU in notice-and-action procedures
⑦VII. Additional comments

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(注1) EDPSのEUの機関としての従来の活動内容については、筆者ブログ等を参照されたい。なお、ここで、EDPSの基本的役割について概観しておく。
①監督(supervision):EDPSは、EU加盟国の政権において個人情報の処理内容をモニタリングするとともにデータ保護諸規則の遵守状況を保証する。監視任務は特定の危険を招くであろう運用処理のチェックから苦情申立や調査の実施等に及ぶ。

②欧州委員会、欧州議会等からの諮問に対する回答:個人情報保護に影響を与える新たな法律やさまざまな問題に関し欧州委員会、欧州議会や欧州連合理事会に助言を行う。

③加盟国の保護機関との協調:EDPSはEU内で一貫した個人情報保護を促進するため加盟国
の保護機関と協力する。加盟国の保護当局と中央のプラットフォームの場は「EU指令第29条専門調査委員会:Article 29 Working Party」である。

(注2) 「ホスティング・プロバイダー」とは、インターネットに接続可能なサーバーを有料で貸し出すプロバイダ業者(レンタルサーバー会社)をいう。ユーザーのメールやウェブサービスを預かり運用していくホスティング・サービスで、 ホスティングにはサーバーを複数のユーザーで共有する「共有ホスティング」と1人のユーザーで1つのサーバーを占有して利用する「専用ホスティング」がある。2010年12月25日筆者ブログ「米国ハーバード大学バークマン・センターがDDoS攻撃から独立系メディアや人権擁護団体保護の具体策を提言(その1) 」(筆者注3)参照。

(注3) 「権利者(right-holders)」の意義につき補足する。簡単にいうと、「権利者とは保護された著作権、商標または特許に対する占有権、およびプロデューサー、パフォーマーおよびブロードキャスターに関する排他的権利を有する法人または自然人を言う。権利者は、法的、そして、国際的な法的かつ特許などにかかる規定を通じ、保護された仕事の一部またはすべてにつき免許を持ちうる」となる。

(注4) API:アプリケーション・プログラミング・インターフェース:アプリケーション(ユーザのプログラム)がOSの公開機能を使うためのインターフェース。通常は関数形式。アプリケーションが関数に引数を指定してOSに渡すと、OSが指定された機能を実行する。使いやすさ、ミスオペ防止などが目的。
 また次のような説明もある。
 API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース、Application Programming Interface)とは、アプリケーションから利用できる、オペレーティングシステムやプログラミング言語で用意されたライブラリなどの機能の入り口となるものである。主に、ファイル制御、ウインドウ制御、画像処理、文字制御などのための関数として提供されることが多い。
 つまり、簡単にいえば、アプリケーションをプログラムするにあたって、プログラムの手間を省くため、もっと簡潔にプログラムできるように設定されたインターフェースの事である。(Wikipediaから一部引用)

(注5) 「EUの電子商取引指令」第15条に関する論文としては、生貝直人(情報・システム研究機構)「プロバイダ責任制限法制と自主規制の重層性―欧米の制度枠組と現代的課題を中心に―」、井奈波朋子(弁護士)「プロバーダの責任に関するフランスの裁判例」(2008年コピライト567号27頁)等があげられる。

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