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ドイツやフランス政府は聖金曜日の暴徒等の混乱を回避すべくイスラム世界にある外交施設や学校等を閉鎖

 


 9月20日付けのドイツのメディア「シュピーゲル」や19日付けのフランスのメディア「France24」はほぼ同時に両国内の風刺雑誌から発せられた記事がイスラム諸国の暴徒やテロ行為に繋がる懸念等から大使館等の閉鎖を外務省等が指示した旨を報じた。

 他方、9月21日、米国のカリフォルニア州ロスアンゼルス郡高等裁判所(ルイス・ラビン判事)は、女優シンディ・リー・ガルシア(Cindy Lee Garcia)がビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeから反イスラム・ビデオを一時排除する命令を求めた訴えを棄却した。
(注1)
 また、「イスラム教徒の無実(The Innocence of Muslims)」問題につき国連特別報告者(U.N.Special Rapporteur)
 (注2)であるマイナ・キアイ(Maina Kiai)は同動画がリリースされた後に爆発した一連の最近時の暴力行為を強く非難した。すなわち抗議や集会は国際的な人権法により保護されたもので平和的でなければならず、中東諸国にデモの責任者をこれら暴力行為に対する起訴を行うよう迫った。

 さらに、9月14日、国連人権高等弁務官(UN High Commissioner for Human Rights)ナヴィ・ピレイ(Navi Pillay)は、次のような関係国の宗教や政治リーダーに向けコメントを行った。
「動画フィルムは悪意に満ち、故意に挑発的なものであり、人々が平和的に強く抗議するのは彼らの権利である。しかしながら、私はベンガジの米国大使や外交官の殺害行為やフィルムに対する破壊的な反応を徹底的に非難するとともに政治や宗教のリーダーが平穏を回復すべき努力を強く求める。」

 一方、米国の自由人権NPO団体であるEFF(Electronic Frontier Foundation)は、この問題の人権保護面からいくかの懸念材料を指摘している。

 このようなイスラム圏(エジプト、イエメン、チュニジア、モロッコ、スーダン、イラン、イラク、イスラエル、パレシチナ等)で多くの宗派的暴力的抗議運動を引き起こした“Nakoula Basseley Nakoula”(裁判所では本人は自身“Mark Basseley”と呼んでいる)は9月15日に逮捕され、9月27日に2010年に下された銀行詐欺有罪判決における執行猶予違反等を理由に執行猶予なしの拘留が治安判事(US Central District Chief Magistrate Judge) スザンヌ・シガール(Suzanne Segal)により決定した(被告の1万ドルの保釈金に関して弁護士は被告の生命の安全性確保のため反対した)。
(注3)

 今回のブログはドイツやフランスの大使館閉鎖等問題に発展した「イスラム教徒の無実」に源を発する宗教紛争につき、米国の言論の自由規制裁判の歴史的経緯や人権擁護団体等から指摘される懸念問題を中心に論じる。


1.ドイツやフランスの大使館閉鎖に関するメディア記事
(1)ドイツのシュピーゲル(2012年9月20日付け)
 ドイツ外務省は金曜日(イスラム教の聖なる日)にイスラム世界の国々での外交任務を終えることを発表した。また抗議の更なる増加に備えドイツの外交施設につき一層の安全策を取ることを検討している。
 これらの背景には、論議を呼んだ反イスラム映像「イスラム教徒の無実」に対すル継続的反動に加え、フランスの反イスラム教の週刊風刺雑誌「Charlie Hebdo」が19日にムハマド漫画の公開による混乱で火に油が注がれた。9月14火にはスーダンの首都ハルツームのドイツ大使館は荒れ狂う暴徒により攻撃され放火されたため非常事態措置として閉鎖されている。
 また、9月20日、ドイツの風刺雑誌「Titanic」は9月下旬にムハンマド特集号を発刊すると予告したため、更なる不安定を招くこととなった。

(2)フランスのフランス24(2012年9月20日付け)記事
 「Charlie Hebdo」が裸のムハンマドの漫画を発表した後、フランス外務省はイスラム世界全体に設置する20の大使館を閉鎖すると9月19日に発表した。その漫画は裏ページに印刷されたものであるが、イスラム世界の人々にショックを与えるに十二分であった。フランスのローラン・ファビウス(Laurent Fabius)外相は「このような挑発は意味がない。フランス政府は漫画の出版を決して奨励しないし最終的な勝者たりうる理由を求める」と述べている。

2.米国ロスアンゼルス郡高等裁判所は、女優がビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeに関する反イスラム・ビデオを一時排除命令を求めた請求を棄却

 カリフォルニア州ロスアンゼルス郡高等裁判所(ルイス・ラビン判事:Luis Lanvin)は女優シンディ・リー・ガルシア(Cindy Lee Garcia)のビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeに関する対し反イスラム・ビデオを一時排除命令を求めた請求を棄却した。
 ガルシアが起こした訴訟は、オンラインにフィルムを保管すると、彼女の肖像権が侵害され、自身のプライバシー権利が侵入されて、フィルム化後の対話内容が偽の光の中に彼女を割り当てたるべく変更された主張した。「我々は、より多くの問題を引き起こし続けるので、そのフィルムを取り去る必要であると思う。」と、彼女は述べた。

3.米国の自由人権NPO団体であるEFF(Electronic Frontier Foundation)の人権保護面からいくつかの懸念材料
(1)事実関係の整理
 ピッツバーグ大学ロースクールが編集する“Paper Chase Newsburst”9月20日号は次のようにまとめている。
「エジプト系米国人が作成し、後にエジプトのテレビで放映され一連の暴動を引き起こしたた『イスラム教徒の無実』に対する先週の反応は極めて広範囲に広がった。いくつかの政府はすべてYoutube(予告編の閲覧は引き続き可能である)を禁止した。Youtubeはエジプトやリビアでのビデオへのアクセスを禁止すべく自らの意思で決定した。その他の国はビデオへのアクセスをブロックするためYoutubeに対し法的要請を行い同社はこれに応じた。

 ビデオはイスラム教徒を怒らせるという唯一の目的で持って製作されたようであるという事実は、米国においてそれが「言論の自由試験(First Amendment Free Speech Test)」(注4)にパスしていたかという疑問を呼び起こす一方で、他の者はビデオは保護された言論であると述べた。

 また、9月18日付けのロスアンゼルス・タイムズは、次のようにこの問題を正面から取り上げている。連邦最高裁所のオリバー・ウェンデル・ホームズ(Oliver Wendell Homes)判事 を裁判長とした裁判史上最も有名な裁判1919年「シェンク対合衆国事件(Schenck v.United States)」で合衆国の言論の自由が無制限でないことを全員一致で明らかにした。すなわち、その言論の性格と状況にかかる場合、当該言論は法的に保護されないとし、以降、1925年の「Gitlow v.New York」裁判で厳しく解せられている。

 しかし、現行のさらに厳しい基準の下でも「イスラム教徒の無実(ビデオの予告編)」と間接的に見た米国大使クリストファー・スチーブンスJr.の死亡とは、間違いなく合衆国憲法やその価値は法制化されていると見れる。
 初期のメディアの調査によると、最もひどいカット場面ははじめにショットされて後にユーザー名“Sam Bacile”により本年7月にYoutubeに投稿された。
 AP通信は、Bacileに関し、携帯番号からエジプト人のコプト教徒を由来とするカリフォルニア州在の“Nakoula Basseley Nakoula”にたどりついた。Nakoulaはフィルムの流通(logistics)の調整時に自身の身分を証明したが、”Bacile”ではないと否定した。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、同ビデオが多くの関心を寄せるのに失敗したとき、反イスラム教であるコプト人のキリスト教信者は9月6日に米国、エジプトやその他の国のレポーターにリンクを張ったという。

 そのメッセージは、反イスラム教の牧師テリー・ジョーンズ(Terry Jones)で9.11事件をあおるとともに予告編へのリンクを含んでいた。

 米国における制限が課される言論の自由または暴力を引き起こした場合に関する基準は、1969年の「Brandenburg 対オハイオ州」判決で広げられた。このより狭いガイドラインでは、言論は意図(intent)および差し迫っている暴力や法違反にかかる言論に限定された。(以下、略す)

(2)EFFの懸念指摘事項
 EFFが指摘した内容は次のとおりである。

①ホワイトハウスが報告しているように、Youtubeに対し、同社がサービス利用規約に遵守していることを保証するようビデオ内容を見直すよう依頼したという事実である。EFFのエヴァ・カルペリン(Eva Calperin)はホワイトハウスの要請はそれだけに過ぎないことはないと思われるが、少なくともホワイトハウスが見直すよう呼びかけ、求めたことは萎縮効果はあったといえる、と述べている。

 事実から明らかとなった第2の懸念材料は、Youtubeはエジプトやリビア内での検閲決定に関し地域の市民自由グループと協議しなかった点である。後に行われたインド、インドネシア、マレーシア、サウジアラビアや公開されるまでその他の国では各国の地方の裁判所で動画閉鎖の決定が行われのに対し、エジプトやリビアではおそらく地方の専門家を参加させることなく米国内の会社のみで決定したと思われる。2011年の反乱の間、エジプト人やリビア人が彼らの命を欠けて自由を勝ち取ったことに比べ、西側企業が決定者としてオンラインで見ることが出来ないことは極めて残念な点である。

 Youtubeの取った行動は、我々が新たな公的領域と呼ぶインターネットは公的ではない点に関する留意点である。バークマンセンターのインターネットと市民のためのメディア法プロジェクト (Berkman Center for Internet & Society’s Citizen Media Law Project)のアンドリュー・F.セラーズ(Andrew F.Sellars)は、9月17日のブログで、我々は言論の自由が、次のとおり個人的な当事者が判断するいくつかの重要な結果があることを認めざるを得ない。

①リーダー的な米国のインターネット会社は言論の自由のために合衆国憲法修正第1のバーをより低く設定している事実。
②我々は民間団体を裁定者の地位に正式な救済方法なしに置くことは、その行う決定は不公正であると信じる。
③これらの会社が警告なしに言論の自由を変更すべき何ものもないし、彼らに一貫性を要求する何ものもない。
 言い換えると、今回のケースが特別であったかも知れないが、Youtubeが将来類似した決定を行うことを防ぐ手立てはない。

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(注1) ラビン判事が原告の主張を否定理由は、ガルシアが告訴状のコピーに伝えられるフィルムの製作を組織化した男性とされる、Nakoula Basseley Nakoula に対する訴訟のコピーを提出できなかったという一部事実のためである。
また、裁判官は、同法廷のファイリングに基づき成功の見込みがあるとするガルシアの申請を支持することを否定した。それは、ガルシアが再提訴することを排除しないが、彼女の現在の出されている申請を放棄したことを意味する。同判事の行動は、児童虐待に賛成する恋愛遊戯者としてムハンマドについて表現する「イスラム教徒の無実(Innocence of Muslims)」に関する14分間の予告編(trailer)がオンラインのままで残ることを意味する。また、同判事は彼らが内容を制御する責任から第三者を隔離する連邦法を引用した。
なお、Google(ユーチューブを所有)はリビア、エジプト、サウジアラビア、インドおよびインドネシアで予告編のリリースを妨げたが、合衆国ではオンラインのままで残っている。また、ユーチューブはフィルムをオンライン上で排除すべきというガルシアの要求を拒否した。(以下、略す)

 なお、9月21日の朝日新聞の記事によると「イスラム教の預言者ムハマドを侮辱する動画に出演した女優が19日にロスアンゼルスの地裁に対し、製作者とされる男性の行為は詐欺や名誉毀損に当たるとして、動画の削除と懲罰的損害賠償を求めて提訴した。動画を掲載したグーグル傘下のユーチューブにも削除を命じるよう求めた」とある。再度、筆者は本裁判の告訴内容につきメディアの内容を調べたが、この記事の正確性には問題がある。
 CNNの記事で見る限り、本訴訟では原告はプライバシー侵害、詐欺、過失および精神的苦痛を意図的な与えたことによるNakoula に対する補償的損害賠償および懲罰的損害賠償を求めている。

(注2) “Special Rapporteur” とは国連事務総長の代理として独立した権限で人権問題につき専門かつ独立した形で「特別手続(Special Procedures )」メカニズムの範囲の中で国連人権理事会(特定国の命令かテーマが強制された場合のいずれか)から特定の命令を受けて国連を代表して働く個人を言う。通常、世界の各領域からの1人の計5人のメンバーで構成されたワーキンググループを含む。(Wikipedeiaから一部引用)

 なお、国連の人権理事会(HRC: Human Rights Council)は、2006年、それまで存在していた人権委員会(UN Commission on Human Rights、 CHR)に代わって設立された。人権理事会は日本を含む国連加盟国の人権状況を監視し、改善を促す役割を担う常設の国連機関である。人権理事会設立後に導入された手続に普遍的定期的審査(UPR)があり、すべての国連加盟国の人権状況を定期的に審査している。さらに、人権理事会のメカニズムとして、特別手続(Special procedures)が存在する。(日弁連サイト解説に筆者の責任で国連機関にリンクを張った。

(注3) “Nakoula Basseley Nakoula”の逮捕、保釈なしの拘留決定の経緯等に関してはCNNBBC 等多くのメディアが詳しく取り上げ、また多くのコメントが寄せられている。

(注4) 米国の「言論の自由試験(First Amendment Free Speech Test)」に関しては、次のサイトで詳しく歴史的な裁判経緯を含め説明されている。ここではその詳細は略す。
http://www.answers.com/topic/first-amendment-speech-tests-1


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