スキップしてメイン コンテンツに移動

米国金融監督機関における金融機関等に対する迷惑セールス電話やFAXの規制強化の動き

  


(本ブログは2010年4月9日付けのブログ内容をもとに最近時公表されたFTCのデータブックにより補筆したものである)

 わが国でも休日の朝にけたたましいセールス電話で起こされて不愉快に感じる人が多いと思うが、連邦取引委員会(FTC)および連邦通信委員会(FCC)は2006年4月に「1991年電話利用者の保護に関する法律(Telephone Consumer Protection Act of 1991:TCPA)」および「2005年ジャンク・ファクシミリ禁止法( Junk Fax Prevention Act of 2005:JFPA)」 (筆者注1)に適用に関する規制強化に関するFCC規則の改正を行った。(筆者注2)

 その内容は、2003年6月に開始した「Do-Not-Call」の登録制度の範囲を銀行、保険会社、信用組合、貯蓄組合等まで広げるとともに、これらの金融機関からの委託に基づきマーケティング活動を行うテレマーケッター等の第三者にまで適用の範囲を広げるというものである。


これを受けて2005年11月に「消費者保護の法令遵守に係る連邦金融機関検査協議会・作業部会(Task Force)」は、TCPAに関する監督機関共通の検査手順書(Examination Procedures )および検査シート(Worksheet) 
(筆者注4)を承認した。通貨監督庁は、今後「検査ハンドブック」の改訂を行うが、それまでの間、監督官はこれら手順書等に基づき検査を行うこととなる。
 その後、連邦財務省通貨監督庁(OCC)は2007年6月14日に改訂検査手順書改訂検査シート公表した。

 「National Do Not Call Registry:NDNCR」(筆者注5)についてはFTCのサイトで詳しく説明されているが、これら2法の用語の定義・基本的な内容について概要を述べる。なお、2011年11月30日、FTCは「2011会計年度NDNCRデータブック」を発表した。本ブログではその最新情報についても概要を紹介する。


1.共通用語
(1) abandoned call:自動ダイアリングで電話での呼出し後、2秒以内に生のオペレーターにつながない電話呼出しを指す。電話口に出た人は無言電話としか理解できず迷惑セールス電話の典型とされる。消費者による“National Do Not Call Registry”の登録対象である。
(2) Automatic Telephone Dialing System and Autodialer:ランダムまたは順次電話番号を保存または制作する能力および当該電話番号に基づきダイアリングする能力を持った装置をいう。
(3)既存のビジネス取引関係(Established business relationship)::①電話がかかる18か月以前において個人・企業が電話セールス元企業から買物や取引を行っていた場合、②3か月以内に商品やサービス内容について質問や適用に関する行為が行われていた場合、③当事者間であらかじめそれらの関係を遮断していなかった場合をいう。
これらの場合、受信する個人は製品・サービスに関し、関係を持つと合理的に判断される。
(4)本人の同意なき電話による勧誘(Telephone solicitation):消費者に伝達する買物、レンタル、財産や商品投資、サービスを勧める目的の電話による手引き。Telephone solicitationは本人の同意がある場合、発信者が受信者と一定のビジネス関係がある場合ならびに免税NPOに代って電話する場合はTCPAは適用除外となる。

2.TCPAの一般的要求要件
(1)FCCの定める規則のもとにおいて、売り手やテレマ-ケッターは次の内容を遵守しなくてはならない。
 ①文書の手順書の作成、②オペレーター等担当者の研修、③接触対象から除くべき電話番号のリストの維持、④架電に先立つ3か月前以内に作成された全米do-not-call 登録の バージョンの使用義務、⑤販売レンタル、リース、購入、等にあたり、いかなる方法においても諸規則に準じない手続きは行わない。
(2)企業はテレマーケティングの対象から除くべき要求が出されている既存の取引先顧客名リストの維持を行うこと。
(3)すべてのテレマーテッターは、abandoned callを用いるか自動ダイアリングを利用する場合は、消費者に優しい方法によらねばならない。すなわち15秒以内または4回呼び出しに受け手が電話に出ない場合は遮断しなくてはならない。
(4) すべてのテレマーテッターは、「caller ID information」の送信が義務付けられる。
(5)希望されないFAXの送信は、電話のように既存の取引関係による適用除外はないので留意する。すなわち受け手の同意の記録が必要である。

3.金融検査に検査おけるTCPAに関する検査目的
 金融機関が適正なポリシー、手続き、その他の内部統制が確立されていることのチェックを行う。

4.検査手順(筆者注4)
(1)初期手続き
()検査対象金融機関が直接または外部の第三者を利用したテレマーケティングを行っていない場合はTCPAに関する検査は終了する。
()対象金融機関において、TCPAに準拠した内部統制が適切に行われているか否かについて検査する。具体的には次の項目等が対象となる。
①TCPAについて金融機関においての責任者を含む組織図の作成。
②TCPAの遵守にかかる計画、評価、実践についての手続きのフローチャートの作成。
③受信拒否登録者の電話番号の5年間のメンテナンスの有無等。
④NDNCRに関する行内規則等についての研修内容。
⑤受信拒否者名の登録手順。
⑥NDNCRのデータべースへのアクセス手順。
⑦行内のチェックリスト、作業表、その他関連文書の内容。
(2)検証手続きおよび(3)総括については省略する。

5.FTCの「2011会計年度NDNCRデータブック」(筆者注5)の概要
本データブックが毎年度公表された始めて3年目を迎える。
(1)主なデータ項目
①同制度が開始された2003年度以降有効なDNC(Do Not Call)登録件数およびスパム・テレフォンに関する消費者からの苦情件数
②月次苦情件数と苦情タイプ別に集計した数値
③全50州およびコロンビア特別区の登録、苦情の数値
④会計年度別のマーケテイング業者等の登録データへのアクセス件数
⑤州別およびエリアコード別の登録件数と苦情件数をまとめた別表

(2)2011会計年度ブックの特徴とFTCの基本姿勢
2011年9月30日現在の有効登録件数は2億971万2924件で1年前比で約4%増加した。また、同日までの苦情件数は1年前の163万3,819件から227万2,662件と39.1%増加した。このように毎月の苦情件数の増加に加え、とりわけ予め録音した音声による自動架電(いわゆる“robocalls”)に関するものやテレマーケッターに電話自体を止めさせるべきとする強い要望件数等が含まれる。
この“robocalls”は2009年9月1日以降違法とされており、これらの見掛け倒し(deceptive)、誤解を招く(misleading)、その他の違法な“robocalls”行為を繰り返す事業者に対して、FTCは自身の「テレマーケティング販売規則(Telemarketing Sales Rule:16 CFR Part 310)」に基づき断固たる行動をとる。

 *****************************************************************************************

(筆者注1)“TCPA”も限定的ではあるが、すでに取引関係(EBR)があるなど例外を除いて 企業や住民に対し迷惑FAXの送信を禁止していた。その後、2003年にFCCは既取引先であっても事前に受手が書面による同意がないかぎり禁止する旨に規則を強化した。さらに2005年12月にFCCは「2005 年迷惑ファクシミリ禁止法(Junk Fax Prevention Act of 2005)」に則した規則改正を行い、その実施時期は2006年1月とした。(米国ダイレクトマーケテイング協会の解説から一部引用)

(筆者注2)FTCやFCCの資料でみるとおり、米国のテレマーケテイングのほとんどは自動式コールでわが国のような人海戦術でない。それがゆえに、スパム的な大量の呼び出しが昼夜を問わず行われ、社会問題化したことから、その規制策として「National Do Not Call Registry 」制度が出来た点を念頭に入れておく必要がある。

(筆者注3) FTCは、テレマーケティング販売規則(Telemarketing Sales Rule)、関連規制法(Telemarketing and Consumer Fraud and Abuse Prevention Act)および取扱事業者に対する遵守ガイダンス(FTC消費者保護局作成)を用意している。なお、連邦規制機関であるFTCによる告訴に基づく罰金額は1違反行為につき最高16,000ドル(約121万6,000円)である。

(筆者注4) 検査手順および検査シートのURLは次の通り。
http://www.occ.treas.gov/ftp/bulletin/2006-15a.pdf
http://www.occ.treas.gov/ftp/bulletin/2006-15b.pdf

(筆者注5) NDNCRの登録手続き等については次のURL(Q&A)に詳しい。
http://www.ftc.gov/bcp/conline/pubs/alerts/dncalrt.htm

〔OCCのBulletin2006-15のURL〕
http://www.occ.treas.gov/ftp/bulletin/2006-15.doc

*******************************************************************************

Copyright (c)2006-2011 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

コメント

このブログの人気の投稿

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

     米国の 商品先物取引委員会(CFTC) は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住の ラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri) と彼が所有するオハイオ州に本拠を置く NBD Eidetic Capital, LLC および SR Private Equity, LLC に対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に 民事法執行訴訟 を起こしたと 発表 した。   同訴状 は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。  さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している 救済被告 (注1) として起訴している。  今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。 1. 起訴の内容  CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および 「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」 および 「CFTC規則(CFTC regulations)」 のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。 2.本事件の背景  訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声...