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12月, 2011の投稿を表示しています

ニューヨーク州司法長官がIntel社を反トラスト法違反で起訴陪審へ(その2完)

    (3)ニューヨーク州 反トラスト法“General Business”(GBS)の内容  反トラスト法である“General Business”(GBS)の内容について逐一解説は行わないが、経済司法部反トラスト局のサイトの 同州反トラスト法の解説内容 を概観する。  ニューヨーク州の反トラスト法(340-347 of New York’ General Business law )は一般には「ドネリー法」といわれ1899年に制定された。一部重要な点で異なる部分もあるが、その後の法改正や解釈により緊密なかたちで連邦シャーマン法の内容との整合性が図られてきた。すなわち同法は、価格吊り上げ、地域や顧客配分(territorial and customer allocation)、ボイコット、談合入札(bid rigging)および抱き合せ販売(tying arrangements)を禁止する。  同法は、司法長官に法人の場合は最高100万ドル、個人の場合は最高10万ドルの民事罰を求める訴訟提起の権限を定める。またプライベート・パーティ(被害者たる訴訟当事者)はこれらの違法行為を禁止させまた三倍賠償を得るため訴訟の提起が出来る。ドネリー法違反は重罪(felony)であり、法人の場合は最高100万ドル、個人の場合は最高10万ドルと4年の拘禁刑が科される。 3.今後の国際的非競争法強化に対応した研究課題についての私見  わが国では日本企業の海外進出とともにわが国の企業のEUや米国における非競争法違反・制裁問題に危機感をもっており、最近ではあるが経済産業省は経済産業政策局長の私的研究会として、「競争法コンプライアンス体制に関する研究会」を設置し、  第1回会合を2009年8月4日に開催 し、以降月1回ベースで開催されている。  第1回会合配布の「資料4」に指摘されているとおり、同研究会は制裁金・課徴金という行政制裁の強化によるか罰金・禁固刑という刑事制裁の強化によるかという手法の違いは別として、現在、日米欧いずれの競争当局においても、カルテル等の競争法違反行為の抑止という観点から、執行強化がなされているという問題意識から検討が行われている。  なお、同研究会は、2009年8月から11月にかけてのべ4回開催し、2010年1月29に報告書 「『国際的な競争法...

ニューヨーク州司法長官がIntel社を反トラスト法違反で起訴陪審へ(その1)

  (本ブログは2009年11月13日に掲載したものに最近時のデラウェア連邦地裁の裁判情報等を追加したものである)  ニューヨーク州司法長官アンドリュー・M・クオモ(Andrew M.Cuomo)(2011年1月1日に エリック・D・シュナイダーマン(Eric D.Schneiderman )が後任長官として就任)  (筆者注1) が11月4日に世界最大のマイクロプロセッサー・メーカーである米国インテル社を反トラスト法 (筆者注2) 違反で起訴陪審に向けた手続に入ったニュースは、わが国のメディアでもすでに報じられている。 Eric D.Schneiderman  氏  一方、インテルの最大のライバル会社である AMD(Advanced Micro Devices) は、11月11日、 インテル への米国デラウェア連邦地方裁判所や日本の裁判所で起こしていた米国反トラスト法や独占禁止法違反を理由とする全訴訟は取り下げるとともに特許技術の相互利用に関するクロスライセンス契約の延長について12億5千万ドル(約1,125億円)で 和解合意(Settlement) を11日に行った旨発表した。今回の両者の和解合意が政府による訴訟や欧州委員会による調査等には影響しないとするメディアが多い。  インテルへの反トラスト法違反訴訟は、欧州委員会 (筆者注3) や 韓国公正取引委員会(Korea Fair Trade Commission:KFTC)   (筆者注4) の課徴金処分、日本の公正取引委員会  (筆者注5) による排除勧告を受けた一連の行動であることは言うまでもないが、非競争に関する連邦法執行・監督機関である連邦取引委員会(FTC)の今後の出方も注目されている。    今回のブログは、内外のメディアによるややセンセーショナルかつ限定的な情報だけでなく、反トラスト法を中心とする法律的に見た正確な情報の提供を目的としてまとめた。すなわち連邦反トラスト法だけでなくニューヨーク州の反トラスト法(Donnelly Act)の内容等にも言及するとともに同州の非競争行為に対する法執行体制についても解説する。  また、今回の事例は米国の消費者保護における連邦政府(FTC)や州司法長官の役割(いわゆる父権訴訟(parens patriae ) (...

米国金融監督機関における金融機関等に対する迷惑セールス電話やFAXの規制強化の動き

    (本ブログは2010年4月9日付けのブログ内容をもとに最近時公表されたFTCのデータブックにより補筆したものである)   わが国でも休日の朝にけたたましいセールス電話で起こされて不愉快に感じる人が多いと思うが、 連邦取引委員会(FTC) および 連邦通信委員会(FCC) は2006年4月に 「1991年電話利用者の保護に関する法律(Telephone Consumer Protection Act of 1991:TCPA)」 および 「2005年ジャンク・ファクシミリ禁止法( Junk Fax Prevention Act of 2005:JFPA)」  (筆者注1) に適用に関する規制強化に関するFCC規則の改正を行った。 (筆者注2)   その内容は、2003年6月に開始した「Do-Not-Call」の登録制度の範囲を銀行、保険会社、信用組合、貯蓄組合等まで広げるとともに、これらの金融機関からの委託に基づきマーケティング活動を行うテレマーケッター等の第三者にまで適用の範囲を広げるというものである。 これを受けて2005年11月に「消費者保護の法令遵守に係る連邦金融機関検査協議会・作業部会(Task Force)」は、TCPAに関する監督機関共通の検査手順書(Examination Procedures )および検査シート(Worksheet)  (筆者注4) を承認した。通貨監督庁は、今後「検査ハンドブック」の改訂を行うが、それまでの間、監督官はこれら手順書等に基づき検査を行うこととなる。  その後、連邦財務省通貨監督庁(OCC)は2007年6月14日に 改訂検査手順書 、 改訂検査シート を 公表 した。  「National Do Not Call Registry:NDNCR」(筆者注5)についてはFTCのサイトで詳しく説明されているが、これら2法の用語の定義・基本的な内容について概要を述べる。なお、2011年11月30日、FTCは「2011会計年度NDNCRデータブック」を 発表 した。本ブログではその最新情報についても概要を紹介する。 1.共通用語 (1) abandoned call:自動ダイアリングで電話での呼出し後、2秒以内に生のオペレーターにつながない電話呼出しを指す。電話口に出た人は無言電話としか理解でき...

米国カリフォルニア州司法長官等が地元不動産会社のトップ経営者3人を不動産差押回避詐欺容疑で逮捕

   2011年12月1日、 米国カリフォルニア州司法長官カマラ・D・ハリス(Kamala.D.Harris)は、同州ストックトンの不動産会社のトップ経営者3人を不動産差押回避詐欺容疑で逮捕した旨 公表 した。 Kamala.D.Harris氏(2011年当時)  同長官はメディアに対し本文で述べるとおりのコメントを行っているが、米国の不動産抵当ローンをめぐる詐欺事件は跡を絶たない。今回の事件も米国全体で見れば氷山の一角といえるが、連邦レベル  (注1) でなく州による捜査活動の成果例として取上げる。  いうまでもなく“Bankruptcy Foreclosure Scam”、“Mortgage Rescue’ Scams”、“Mortgage Assistance Relief Scams”等名称は異なるものの、差押え回避を是が非でも避けんとする住宅ローン債務者の弱みを狙った悪質な犯罪であることは明らかであり、また、連邦政府による各種救済策  (注2) を逆手に取った詐欺犯罪でもある。  内容の正確性および最新性を確保するため、筆者なりに連邦政府や連邦住宅融資機関である連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ:FNMA)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック:FMCC)のサイト等の情報をまず概観した。その上で今回取り上げた詐欺問題を解説する。  また、ブログ後半では 連邦司法省(DOJ)、連邦取引委員会(FTC)等連邦取締機関や消費者保護機関、さらには他州の司法長官府のサイト警告の内容を概観する。  なお、2011年10月にオオバマ大統領が政府の最優先課題として指揮して実現した借り換え緩和措置をめぐる最新情報等も併記する。同時に連邦議会の取組みとしては、本年秋以降、各州の司法長官によるサービサー業務に携わる銀行やモーゲージ部門を子会社等に対する告訴が相次いでおり、その具体的支援も強化している。 (注3) 1.連邦政府や関係機関の取組み (1) “Making Home Affordable gov.”  連邦財務省(DOT)と連邦住宅・都市開発省(HUD)が共同運営するプログラム・サイト “Making Home Affordable gov.” を見ておく。このサイトを読むと、政府の力の入れた方が今までと違うという印象を受けたが、そのポイントを...

米国連邦司法会議が法廷での写真撮影や民事裁判ビデオ録画の一般公開パイロット計画を承認

      わが国では2009年5月21日から「裁判員制度」が開始され、裁判や捜査等に関する国民やメディアの関心も高まりつつあるが、一方で去る9月10日、大阪地裁で元厚生省局長村木厚子氏に対する無罪判決が下された事件の内容を見るにつけ、わが国でも捜査や裁判の公正・公開性の重要度はますます増加するといえよう。  このような中で、筆者の手元に9月14日付けで米国連邦司法会議(Judicial Conference of the United States)が連邦地方裁判所法廷のカメラ撮影や一定の民事裁判手続きのデジタル・ビデオ録画の一般公開につき限定的ではあるが、今後最長3年間のパイロット計画  (筆者注1) の実施につき承認した旨のニュースが届いた。  連邦司法会議については 本ブログ でも何回か紹介してきたが、タイムリーな話題として簡単に紹介する。また、これに関し、アイオワ州司法部から届いた最新情報として同最高裁判所主席裁判官である マーク・キャディ( Mark S.Cady ) が12月6日に連邦議会上院司法委員会「行政監視および法廷に関する小委員会(Subcommittee on Administrative Oversight and the Courts)」で証言するというリリースが手元に届いたので、関連情報として追加する。 Mark S.Cady  氏  なお、2010年9月現在の 司法会議の構成メンバー を参照されたい。 1.パイロット期間  最長3年間とする。 2.計画の評価対象 (1)連邦地方裁判所の法廷のカメラ撮影の効果、裁判手続のビデオ録画およびそれら記録の一般的公開の評価とする。その開発の詳細およびパイロット計画の実施については「同会議:裁判運営および事件管理委員会(Conference’s Committee Administration and Case Management)」により今後決定される。 (2)必要に応じ、本パイロットに参加する裁判所はパイロット試験計画に参加する裁判官に例外を提供するためローカル・ルール(適切な公的通知やコメントの機会の提供)を改正することとなる。 (3)本パイロット計画への参加は公判裁判官(trial judge)の裁量に基づく。   (4)パイロットの下で参加する裁判所は裁判手...

米国の電子政府強化のための連邦印刷局主導の連邦裁判所判決情報検索パイロット・システムが稼動

  (本ブログは執筆途上である)  筆者の手元に「2002年電子政府法(E-Government Act of 2002)」 (筆者注1) を受けて、その準備を進めていた標記パイロット計画の一部稼動に関する連邦裁判官会議”U.S.Courts”サイトの 最新情報(2011年10月31日)  (筆者注2) が入ってきた。その狙いとするころは司法情報のより一般的な解放と透明性確保と考えられる。  筆者自身、米国の連邦、州等という多岐・多様にわたる司法情報を正確にフォローするとなると大変な手間と時間を要するが、米国の司法関係者やアカデミーやNPO関係者はさらに切実な問題であろう。 (筆者注3)  その一例として今回のブログは本年10月に連邦印刷局(Government Printing Office:GPO)がサービスを開始した“FDsys”の「検索手順」等に関して解説する。その前に本年4月時点の連邦司法会議の リリース ではGPOの“FDsys”サービス計画はよりアグレッシブな内容であった。  春以降実施される予定の裁判所は2連邦控訴裁判所(第2、第8巡回区控訴裁判所)、7連邦地方裁判所(ミネソタ、ロードアイランド、メリーランド、アイダホ、カンサス、ニューヨーク北部地区およびアラバマ北部地区)、および3破産裁判所(メイン、フロリダ南部地区およびニューヨーク南部地区)であった(連邦司法会議(Judicial Conference)は2011年3月に最大30の連邦裁判所の追加を承認した)。  なお、言うまでもないがGPOの“FDsys”サービスについてはわが国の国立国会図書館(NDL) が2011年4月に 「連邦デジタルシステム(FDsys)の概要」 というテーマで取上げている。しかし、その説明内容はまさに「制度全体の概要」(また、当然ながら“UNITED STATES COURTS OPINIONS - BETA”の解説はない)だけであり、わが国の司法関係者や研究者、学生等が“FDsys”を実際に利用し、判決情報を活用するには説明不足である点は否めない。(筆者注4)  さらに疑問に思ったのは本文で言及したとおり、控訴裁判所の判決サイトには下級審判決とのリンク機能があると考えるであろう。しかし、この期待は裏切られた。わが国でも同様であるが、米国の判決情報は...

英国議会上院「科学・技術特別委員会」が英国の長期的な核開発R&D能力につき警告的報告書を発表(その2完)

  5.11月22日上院特別委員会「科学・技術委員会」の リリース文  概略次のような内容である。原文に忠実に 仮訳 しておく。 ・政府は英国のR&D能力につき過度に楽観的過ぎ(too complacent)、かつ政府のアプローチの基本的変更が行われないと失われてしまう程度の専門的技術といえる。ただし、今回公表した報告書 「第3次報告書(Science and Technology Committee - Third Report)」 の見解は本委員会の結論の1つである。 ・本委員会の主要な勧奨内容は次のとおりである。 ①2025年以降を展望した原子力エネルギーに関する長期的戦略の策定、すなわちR&Dのロードマップを介したR&Dの支援、原子力に関する英国の現時点での強さについて商業ベースでの営利的な開発の支援の重要性。  この点は、英国が原子力エネルギーの選択肢の公開性を維持する上で重要なことである。 ②R&Dロードマップの開発、適用および調査における脆弱的な分野の保護や能力面でのギャップを埋めるため、R&D活動の共同化の改善を補助すべく、産業界、アカデミック分野、政府のパートナーにより構成する「原子力R&D委員会(Nuclear R&D Board)」を設置する。 クレブス委員長(Committee Chairman Lord Krebs)のコメントは以下のとおり。 ・原子力エネルギーのR&Dに関する専門家の多くが定年年齢に近づいている。英国の専門技術は過去の投資による研究により構築してきた。 最近の20年間の新規投資の欠如は、英国がこの専門技術を失うという危険性を意味する。その結果、我々自身が2050年までに安全かつ安全性を持ったエネルギー供給が保証できないといった危険性におかれることになる。 ・政府は、将来原子力が電力供給において重要な役割を果たすと述べてきた。政府が、この取組が重要であるとするなら、R&Dとともに原子力産業分野、政府およぶ規制機関が依存できる若い専門家の存在が欠かせない。今、行動を起こさなければ、政府の原子力政策は真実性を欠くものというのが我々の意見である。 6. 報告書の要旨 (1)序論  本委員会の取上げた問題点の背景は、将来において安全、手頃かつ低炭素の電力...