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米国連邦取引委員会(FTC)が両親や家族のためのなりすまし詐欺等から子供の個人情報保護ガイダンスを公表

 


 わが国では2003年(平成15年)5月30日に成立、2005年4月1日に全面施行された「 個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)」の教育現場で起きた最大の課題は現場での「過剰反応問題」であろう。
 全面施行にあたり、各省庁はそれぞれ現場での混乱を避けて法律の的確な運用を行うべくガイドラインを作成したことは読者も記憶にあろう。しかし、それでも現場では混乱が起きた。特に両親や家族にとって学校や教育機関が保有する子供の個人情報の内容やその具体的な取扱いがどのようになっているのか、知りたくても十二分に知りえない部分があったことが混乱を広げたように思える。
(筆者注1)

 その背景には毎度のことであるが、(1)ガイダンスの内容が一般人には理解しやすいレベルのなっていないこと、(2)さらに現場の教育担当者も問題の本質を理解できないため教育実務が混乱を極めたことであろう。

 今回のブログは、9月1日に米国の消費者保護機関である「連邦取引委員会(Federal Trade Commission)」が策定、公表した「消費者向け警告リリース」の意義を解説することである。特に、子供と「なりすまし詐欺」被害という一見結びつかない問題の本質ならびに被害に遭わないための施策を具体例として紹介することにある。


1.学校におけるあなたのお子さんの個人情報を保護する意義
(1)学校生活に戻ってみよう。新しいノートの購入、お弁当のパック、通学方法の確認、必要書類―登録簿記入、詳細な健康状態や予防接種の記入(筆者注2)、親の許可同意書(permission slips) (筆者注3)の記入等、年に1回の儀式として緊急連絡先等を記入する。これら学校が指定する様式は個人情報でかつ機微情報の記入を必要とする。
 詐欺師等は、あなたの子供の名前やこれら機微情報を悪用する。例えば、子供の社会保障番号は連邦政府による給付や支援措置(government benefits) (筆者注4)、銀行の口座開設、クレジットカードの口座開設、ローンや公益事業の申し込みならびに住居の賃貸等に利用するのである。
 FTCは子供がなりすまし詐欺の被害者に遭わないよう数年間もしくは子供が就職、奨学金や自動車ローンを利用するまでの間、検知されないリスク対策の重要性を警告する。

2.なりすまし詐欺のリスクを最小化するための具体的方法
 あなたの子供や家族の個人情報を守るために法律がある。例えば、連邦教育省(U.S.Department of Education)が執行する連邦「家族の教育権およびプライバシー保護法(Family Educational Rights Privacy Act:FERPA)」(筆者注5)
がある。また、就学児童の両親に対し他の家族を含む第三者の情報共有に関する問い合わせのオプトアウト権の権利を規定する。

FTCは学校に入学した児童の両親に次の施策を助言する。
(1)誰があなたの子供の個人情報に接近する手段をもっているか調べること、そして子供の記録が安全な場所に保管されていることを確認する。

(2)子供に送られてきた郵便物や電子メールで子供の個人情報を求める内容がないか注意を向ける。「個人識別情報」、「ディレクトリ情報」や「オプトアウト」等の用語を探すこと。あなたが子供の個人情報を明らかにする前に、かならずどのように使用され、誰と共有されるか調べること。

(3)“FERPA”に基づき学校が通知する親の権利について次の内容を読んで理解すること。
①子供の教育成績記録(education records)を点検、精査する。
②その記録中の情報の公開につき同意する。
③記録につき誤りの修正を行う。

(4)学生のディレクトリー情報のポリシーに関し学校に以下の内容を照会する。
①学生のディレクトリー情報は、子供の氏名、住所、生年月日、電話番号、電子メールアドレスおよび写真であること。
②“FERPA”は学校はデレクトリーポリシーについて両親や保護者に通知し、第三者へのディレクトリー情報の伝達のオプトアウト権を提供すべき点を定める。あなたは書面で申し入れを行いかつコピーをとっておくことが最善である。
③学生の調査に関する学校のポリシーの写しを要求すべきである。
④生徒および両親の学校の受託契約者への情報開示時の事前調査内容修正権(Protection of Pupil Rights Amendment:PPRA)(筆者注6)
⑤学校で実施されるが、学校が支援しないプログラムに子供が参加する場合はその実施団体のプライバシーポリシーを読んで、子供の個人情報がどのように使用されまた誰に共有されるかについて必ず理解すること。
⑥あなたの子供の学校が情報漏えいを犯したと信じるときは行動を起こしなさい。その際、交渉内容は書面で記録すべきです。さらに必要に応じ苦情部(Family Policy Complaint Office)や学校の委員会に手紙を出すべきである。
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(筆者注1) 文部科学省が策定したガイドラインの内容を検索する方法を説明しておく。極めて当然の方法でリンクできると思っていた。これがとんでもない誤解であることは読者自身が経験して欲しい。まずは混迷を極めるであろう。
 筆者なりに整理したので参考までに手順をあげておく。①文部科学省のサイトマップ→②申請・手続き→③情報公開・個人情報保護の「個人情報」→④個人情報保護制度の概要―個人情報保護法関連―→⑤平成16年(2004年)11月11日 文部科学省告示第161号「学校における生徒等に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」
 ちなみに、消費者庁サイトでは各省庁のガイドラインの一覧を作成している。そこでガイドライン名「学校における生徒等に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を指定してリンクさせてみた。リンク先として前記①の画面が出るのみである。また、平成19年度文部科学省白書第2部第14章第6節 個人情報の保護:1.文部科学省における個人情報保護の取組の中でガイドラインへのリンク個所をクリックしてみた。やはり前記①の画面が出てくる。なぜ、直接リンクできるURL:http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2010/05/10/1251542_2.pdf―にアクセスできるように作業出来ないのか。

(筆者注2) シリコンバレーやサンフランシスコでクリニックを開いているM.D.の小林秀一氏のHP が州立学校の入学時の保健手続について詳しく解説しているので一部抜粋した。「公衆衛生」に対する米国保健機関の姿勢が鮮明に出ている。なお、一部州の機関(カリフォルニア州保健局:DHCS)の公式資料へのリンクは筆者の責任で補筆した。
「カリフォルニア州の学校(kindergartenからhigh school まで)に入学(転入を含む)するためには、その学年に応じて、法律で定められた一定の保健手続きを経る必要があります。これは各々の生徒の健康を守るとともに、各種感染症の学校での蔓延を防ぐという目的があります。必要な手続きは、(1)健康診断、(2)結核予防、(3)予防接種、に分けられます。

(1)健康診断について
・ Grade1への入学時に、“学校入学のための健康診断書(Health Examination For School Entry: Form PM171A)を学校に提出する必要があります。このフォームは、入学を希望する学校、各学校区(school district)のオフィスの他、州保健局サイトからも入手できます。
・ この診断書を用意するために、Kindergarten入学の6ヶ月前(2月1日以降)から、Grade1の開始後3ヶ月以内(12月1日まで)に、医師の健康診断を受けなくてはなりません。期日を過ぎても診断書の提出がない場合には、退校処分になることもあります。
(2)結核予防(tuberculin test)について
・ カリフォルニアの学校に入学する生徒は、ツベルクリン反応(以下ツ反)を必ず受けなくてはなりません。
・ この検査は、Kindergartenへの入学あるいは転入前の18ヶ月以内、海外を含めたCounty外からGrade1-Grade12に転入する場合には、その前6ヶ月以内に行われなければなりません
(3)予防接種(immunization)について
・ カリフォルニア州の学校に入学(転入を含む)する場合には、その学年に応じて、規定の予防接種を終了していることが必要です。」

(筆者注3) “permission slip”とは、親など親権者が学校の活動時に承認したことを示す書類のこと。遠足の際などに、親が子供達の参加を認めるときに用いられる。

(筆者注4) “government benefits”に関し、わが国で正確に解説したものを見ない。同ウェブサイトは、米国の市民税納付システム、連邦政府の規則制定、電子研修・教育、給付制度に関する情報提供などを対象とする「電子政府」の取組みの一環として複雑な連邦政府給付・支援措置へのアクセスをいかに迅速にかつ正確に行うかという観点から、2002年(GovBenefits.gov)にホワイトハウスが中心となって政府と市民、政府と企業および政府のウェブサイト間をつなぐ様々な品揃えと管理のシステムを創設したのである。当初のパートナーである連邦機関は10であり。具体的なプログラム数は55であったが、現在は17連邦機関、1,000以上のプログラムをフォローしている。
同サイトをカテゴリー別に見ると次のような項目に分類されている。
①キャリアー開発支援、②保育や育児支援、③弁護支援や各種カウンセリング、④障害者支援、⑤災害時支援、⑥教育や訓練、⑦エネルギー支援、⑧環境持続・保持、⑨食物や栄養支援、⑩交付金や奨学金、特別研究員支援、⑪健康管理、⑫住宅支援、⑬生活支援、⑭ローン返済、⑮メディカイドやメディケア、⑯社会保障、⑰納税支援、他

(筆者注5) 連邦教育省は、2011年4月7日に児童や学生のプライバシー保護強化の一環として、(1)“FERPA” の解釈の明確化、(2)政府投資の効果の判断および(3)州政府間の学校が保有する学生個人データの共有化等を図るため、以下の新たな安全保護強化策を公表した。
(1)連邦教育省に初めてチーフ・プライバシー・オフィサー(キャサリン・スタイル:Kathleen Styles)を任命。
(2)全米教育統計センター(National Center for Education Statistics:NCES)内に“Privacy Technical Assistance Center (PTAC)” を設置。同センターの役割は、幼児教育から大学院教育における(P-20 Education Community)プライバシー、機密性およびデータ・セキュリティに関する1箇所で用が足せる情報源として機能する。センターはプライバシー保護に関するFAQ、情報源ライブラリー、個人情報の統治計画策定に関するチェックリストを含むツールキットを開発する。
(3)プライバシー保護における最善の実践のための技術面の3つのガイダンスを策定
① Basic Concepts and Definitions for Privacy and Confidentiality in Student Education Records 

Data Stewardship: Managing Personally Identifiable Information in Electronic Student Education Records 
Statistical Methods for Protecting Personally Identifiable Information in Aggregate Reporting 
(4) “FERPA”の解釈の明確化を図るため規則案(NPRM)を提示

(筆者注6) わが国で“PPRA”に関する解説は皆無である。連邦教育省に専用の解説サイトがあるので概要部を仮訳しておく。この問題はわが国ではほとんど問題になっていないように思うが、実は委託先管理面でのプライバシー保護や第三者提供に関し重要な課題が含まれている。
(1)“PPRA”の根拠法:20 U.S.C. §1232h  および 34 CFR Part 98(PART 98—STUDENT RIGHTS IN RESEARCH, EXPERIMENTAL PROGRAMS, AND TESTING)

(2)“PPRA”は学校から資金を提供される受託プログラムにおいて適用される。次の2つの方法において両親および学生の権利を保護することを目的とする。
①学校および受託業者において子供が参加する教育省が資金支援する調査、分析および評価に関し両親による査定が可能なように指示すべきことを保証する。
②次の事項に関し生徒の個人情報を開示する教育省が資金支援する調査、分析、評価を行う場合、学校および契約者は事前に両親の事前の文書による同意を得るべき点を保証する。
・政治的参加状況
・学生や家族に関する困難な精神的および心理学的な問題
・性行動や態度
・不法、反社会的および自らを有罪に導いたり品位をおとしめる行動
・家族関係につき緊密な関係を有する他の個人の批判的な評価
・弁護士、医師や大臣に対する法的特権を有する者との関係
・収入(ただし財政的支援を受けるため適格性判断を決する場合を除く)

両親や学生はこれらの権利が侵害されたと信じうる場合は教育省「家族のポリシー遵守部(Family Policy Complaint Office)」に対し書面をもって訴えることができる。

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