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欧州委員会がEU域内の統一緊急呼出し番号「112」の徹底を呼びかけ(欧州デジタル・アジェンダ-第1回目)

 


 2月11日、欧州委員会副委員長でデジタル化問題担当委員ネリー・クルース(Neelie Kroes) (筆者注1)がEU統一緊急電話サービス番号「112」のEU市民等に認識率がなお4人中1人という調査結果を公開し、加盟各国にその引き上げ促進を訴えた。

Neelie Kroes 氏

 この問題自体わが国でも一部EU関係者しか理解されておらず、EUへの旅行を企画するわが国の国民に警告の鳴らす意味でも、今回はその意義等について改めて説明する。
 これに関し付言すべき重要な点は、この問題は単にEUの防災行政的な取組み課題というだけでなく、本年5月25日を各国国内法化の遵守期限とする2009年12月19日に発効したEU電気通信規則にかかる指令や規則にかかる重要な問題の一部であることである。

 さらにいえば、これらの問題の背景にあるEUの長期的経済成長戦略「EU 2020」の内容やその一環としての具体的ICT政策課題である「欧州デジタル・アジェンダ」の正確な理解が、わが国の電子政府問題や経済回復戦略をさらに進める上で重要な意義を持つという点である。

 すなわち、マッチ箱の角を針でつつく解説ではなく、全体像を理解で出来るブログ・レポートを目指すものである。 
(筆者注2)
 その中で、数回に分けてEU通信規制にかかる指令や規則が定めた各課題につき、その後の加盟国の国内法化の状況を追いつつ、問題点の整理を試みるものである。
 今回は連載の第1回目として「112」問題を取り上げる。


1.EUの世論調査機関“Eurobarometer” (筆者注3)の最近時の調査結果
 最近時の“Eurobarometer”調査結果は、警察、消防および救急を呼び出す電話番号である「112」を理解している市民が26%(4人に1人)であった。
 ほとんどが認識している国はチェコ、フィンランド、ルクセンブルグ、ポーランド、スロバキアの5カ国であった。一方、ギリシャ、イタリア、英国は10%未満であった。
 EU全体として見ると認識率の向上は2008年の22%から2011年の26%と極めて低いものであったが、一部の国では認識率の2010年比で際立った改善が見られた。
オーストリア(31%から39%)、フィンランド(50%から56%)、オランダ(45%から50%)である。

 ほとんどのEU加盟国は緊急車輌に「112」を表示するなど認識向上の策をとっていると報告しているが、調査結果では27%の市民のみが昨年1年間中に「112」に関する何らかの情報を受け取っていると回答している。このような低い向上率から見て、欧州委員会は加盟国が国民に「112」に通知すべき義務を十分果たしているかにつき調査している。

2.欧州司法裁判所への提訴に基づく旅行者への徹底が課題
 欧州委員会は2002年3月に発布した「ユニバーサル・サービス指令(Universal Service Directive)」第26条 (筆者注4)に基づく加盟国における「112」の適切な対応や位置情報が緊急対応機関に伝わるよう監視、強化を行っている。また、違反の事実に基づき欧州司法裁判所に対し、「EU Treaty」第226条に基づく「侵害訴訟手続(infringement procedure)」 (筆者注5)を行っている。
 同委員会は加盟国のうち14カ国に対し提訴したが、うち11カ国は位置情報の利用を完全に対応したため取り下げたため、同裁判所は2009年5月に残ったリトアニアを除くイタリアとオランダに対する義務違反判決を下した。
 2009年6月現在の「112」位置情報をめぐる加盟27カ国の対応状況は、2009年6月25日付けEUのリリースの別表で一覧にまとめられている。

 このような背景のもとで、EU市民が他のEU加盟国を旅行する際に「112」に関する情報をSMSまたは警告メッセージを受け取るべく義務が通信事業者に義務づけられたのである。
 しかし、今回の調査結果では他国を旅行したEU市民の81%はこのような情報を受け取っていないという結果が出ている。2011年5月に実施される「ユニバーサルサービス修正指令(DIRECTIVE 2009/136/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 25 November 2009)」 (筆者注6)では「112」情報は、例えば空港、鉄道の駅や国際バスターミナル等で旅行者が利用可能とすることが義務づけられた。

(3)電話の架け手の位置情報の重要性とその徹底
 前記新指令は架け手の位置情報は電話のコール受けると緊急サービス機関は直ちに無料で利用することができるシステムの構築を求めている。また、当該システムについてより正確な位置情報が提供でき、かつ信頼性の高いシステムに改良するよう定めている。

 「112」システムが効率的に機能するよう同委員会は14カ国に対する欧州司法裁判所への提訴を行ったが、本年2月11日時点でうち13カ国はフォローのために是正措置により裁判は閉鎖されている。
 また、「112」の有用性に関する法的措置はポーランドとブルガリアに対して起こされたが、その後取り下げられており、現在係争中はイタリアのみである。

(4)「112」の採用にかかる最新情報
 EU統一緊急電話サービス番号「112」は全加盟国で固定電話および携帯電話から無料でかけることができる。また、デンマーク、フィンランド、マルタ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スェーデンは国内の緊急電話番号も「112」とすることを決定している。
 さらにEU外のクロアチアやモンテネグロやトルコも「112」を国内で採用しており、ウクライナもその採用を計画している。

3.「112」に関する欧州委員会の詳しい解説情報
(1)専門サイトで詳しい内容を理解されたい。
(2)Q&A公式サイト:EUの“Digital Agenda”の解説サイト中「112」関連でQ&A形式で説明されている。
(3)啓蒙ビデオ
(4)自分の国の対応状況確認のための専用サイト

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(筆者注1) EUの“Digital Agenda for Europe”について簡単に補足しておく。2010年5月19日にリリース2/13(33)されたものである。
 リリースのタイトルは「デジタル時代における経済的・社会的利益の増大のためのアジェンダ(Digital Agenda: Commission outlines action plan to boost Europe's prosperity and well-being)」である。
 「活気に満ちたデジタルの単一市場(Vibrant Digital Single Market)」、「相互運用性と標準化(Interoperability and Standards)」、「インターネットの信頼性とセキュリティ(Trust and Security)」、「超高速インターネット・アクセス化(Fast and Ultra fast internet access)」、「研究と開発(Research and Innovation)」、「デジタルリテラシーの向上(Enhancing Digital Literacy, skills and inclusion )」、「EU社会における情報通信技術適用による利益(ICT-enabled benefits for EU society)」という7項目に分けてまとめられている。
 2010年8月26日、「デジタル・アジェンダ」は正式に公布(COM(2010) 245)された。

(筆者注2) EUの今後10年間を見据えた中長期経済成長戦略「欧州2020」や同時期のICT政策課題「デジタル:アジェンダ」について、わが国では駐日欧州連合代表部の解説が情報源の中心となることは言うまでもない。これに比してわが国の電子政府さらに言えば中長期経済戦略はどのように理解すればよいのであろうか。GDPの前期比マイナスなど一部経済指標のみで日本の未来が占えるわけはない。

(筆者注3) Eurobarometer(ユーロバロメーター)は、1973年から欧州委員会が行っている世論調査分析(Public opinion analysis)の結果をまとめた資料で、調査範囲は、EU拡大、社会情勢、健康、文化、情報技術、環境、防衛、欧州の市民権に関するものなど多岐にわたる。(駐日欧州連合代表部「EU資料利用ガイド」から抜粋)

(筆者注4)2002年3月7日公布されたEUの「ユニバーサル・サービス指令第26条」(Directive 2002/22/EC)の原文を以下引用しておく。
〔Article 26〕
Single European emergency call number
1. Member States shall ensure that, in addition to any other national emergency call numbers specified by the national regulatory authorities, all end-users of publicly available telephone services, including users of public pay telephones, are able to call the emergency services free of charge, by using the single European emergency call number "112".
2. Member States shall ensure that calls to the single European emergency call number "112" are appropriately answered and handled in a manner best suited to the national organisation of emergency systems and within the technological possibilities of the networks.
3. Member States shall ensure that undertakings which operate public telephone networks make caller location information available to authorities handling emergencies, to the extent technically feasible, for all calls to the single European emergency call number "112".
4. Member States shall ensure that citizens are adequately informed about the existence and use of the single European emergency call number "112".

(筆者注5) EUにおける司法的統制である欧州司法裁判所(ECJ)に対する「侵害手続(infringement procedure)」について補足説明しておく。
「欧州委員会または他の加盟国は義務不履行をおこしている構成国を一定の手続を経て、欧州司法裁判所に提訴することができる。欧州裁判所が構成国の義務不履行を認める判決をしたときは、当該構成国は判決履行義務が課される。当該構成国がなお判決履行義務の履行を怠るとき派、欧州委員会が二度目の義務不履行訴訟を欧州司法裁判所に提起し、欧州司法裁判所は義務不履行を認めるときは、制裁金を当該構成国に課すことができる。」2004年9月衆議院憲法調査会事務局「欧州憲法条約―解説及び翻訳」(衆憲資第56号)(39頁以下参照)

(筆者注6) 欧州の通信規制改革に関する新指令の概要についてのわが国の解説例を以下引用する。なお、この解説自体は2009年12月時点でまとめられているので承知されたい。
 「欧州連合(EU)は、2009年12月18日、新たな通信規制(新指令等)をEU官報で公布し、翌19日より発効した。
 新たな通信規制は、主に、通信市場における競争と消費者の権利の強化、域内の高速ブロードバンド接続の普及促進、単一通信市場の完成に向けた新たな独立機関の創設などに焦点が当てられ、具体的に以下の12項目が改革点として挙げられている。
1. ナンバーポータビリティ(固定/移動)手続き期間の短縮。
2.より適切な消費者への情報提供。
3.消費者のインターネットアクセスの権利保護(新インターネットの自由条項)。
4.オープンかつニュートラルなインターネットの保証(ネット中立性)。
5.個人情報の侵害とスパムからの消費者の保護。
6.緊急サービス番号「112」へのアクセス改善。
7.各国規制機関の独立性の強化。
8.「欧州電子通信規制機関(BEREC)」の創設 。
9.競争上の是正措置に関する欧州委員会の発言権の強化。
10.競争上の問題解決手段としての機能分離。
11.ブロードバンド・アクセスの普及促進。
12. NGA(次世代アクセス網)における競争と投資の促進。
 通信規制の改革については、2007年11月に、欧州委員会が現行指令の改正を提案し、2009年5月に概ね承認されたが、インターネットアクセスの制限と利用者の権利保護が争点として残り、議論が継続されていた。2009年11月に、利用者の権利を強化する「新インターネットの自由条項」(司法の関与なく一方的にインターネットアクセスを停止することはない等)を盛り込むことで最終合意に至った。
 今後、EU加盟27カ国は、2011年6月を期限として、新指令を国内法化することになっている。また、欧州電子通信規制機関(BEREC)の設立は、2010年春に予定されている。]
(KDDIの「テレ虎」記事から抜粋)。
 なお、BEREC(Body of European Regulations for Electronic Communications)の訳語はその機能や法的位置づけから見て「欧州電子通信規制者団体」というほうがベターであるといえよう。
 なお、国立国会図書館(外国の立法)が“BEREC”の法的位置付けについてEUでの検討経緯をまとめているので以下引用する。
「この組織は、EU全体の電子通信市場において、公正な競争及び法規の整合性を確保するものであるが、規則の提案(COM(2007)699)当初、欧州委員会は、各加盟国の国内監督機関を監督する機関として、市場評価やEUの周波数管理を行うに当たって決定権を有する組織を想定していた。しかし、これには、欧州議会の要請により、最終的には、権限を持たない諮問機関として位置づけられることとなり、名称も提案当初の欧州電子通信市場監督機関から欧州電子通信規制者団体と名称も実態も変更された。(国立国会図書館「外国の立法246号(2010年12月)」植月献二「EUの情報通信規制改革―急速な通信環境変化への対応―」から抜粋)
 なお、余談であるが、“BEREC”のHP の下に“Subscribe to news”といった案内メッセージがある。登録内容に関する簡単な説明である。是非チャレンジされたい。1日程度でウェルカム・メッセ-ジが届く。

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