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EUが2008年に新たに小口支払・決済手段の開始計画を提案

 


 Last Updated:March 20.2021

 フランス全国銀行連盟(Fédération bancaire française:FBF)(注1) は、2008 年はじめから全EU 経済域内(注1)において、個人や企業が共通通貨「ユーロ」で「振込(virement)」、「自動引落し(prelevement) 」またはIC カード利用が行えるようになるEU の計画を公表した。

 この計画には、EU の小口決済市場の抜本的な改革が必要となる。すなわち、銀行は新たなEU 全体をカバーする支払い手段の提示と全EU システムの構築に向けた国内の小口決済のインフラの進展を用意しなければならないことになる。

 顧客は拡大した市場に基づき、さらに重要な支払い決済額が扱えるというメリットを享受できる。すなわち、①消費者はEU のどこにおいても自国におけると同様に小口送金・支払いサービスが受けられる。②企業は、より広範囲に銀行にアクセスができ、また支払いに関する統一的な標準化が行われることにより、より容易に小口資金管理が可能となる。

 今回のブログはFBFの計画のリリース内容等に基づき解説する。
〔フランスの銀行の役割とは〕

 フランスの銀行にとって、「EU 小口決済システム(I’Europe des paiements) 」(注2)とは、現在の支払い部門の高いセキュリティレベルや顧客に提供しているサービスや品質レベルを維持しつつ実用化、効率化することである。この流れにそって、フランスの銀行は、「EU 小口決済評議会(l’EPC)」(注3)の仕事の遂行者となっている。すなわち、2008年9 月21 日に「汎EU 共通カード(les carete paneuropeennes) 」の一般原則ならびにオンラインデビットサービスの受注条件詳細計画が採択されて、最初の重要な段階を超えた。

〔2008年スタートする新小口決済手段とは〕

 L’EPC が採択した提案書によると、汎欧州決済システムの提案は欧州中央銀行との厳密な協議により次のような独自の商業取引を容易にすることになる。
①汎EU 振込サービス:2008 年1 月1 日にサービスを開始するもので、特に企業がもつ振込手続きの単純化という要求に応えるものである。この取組みは、運用期間ならびに口座情報の識別の標準化を対象とする。

②汎EU オンラインデビットサービス:特に個人と企業間のクロスボーダーの自動引落しサービスの開発が認められた。2005 年12 月に提案されたサービスモデルが稼動開始する予定である。

③汎EU カード:2003 年に32%の計画内容が描かれていたもので、カードは今日の欧州において最も利用されている決済手段である。国際的なIC チップカード仕様(la carte a puce )であるEMV とともに初心者や小売業者が利用しやすいように改善されたものである。
 新たに置かれたインフラストラクチャーは、貿易取引の遂行を確たるものにするために不可欠のものである。決済総額を自動的管理する必要性を考慮してフランスの銀行はEU 各国の銀行に提案する取引プラットフォームを開発した。

〔EU裁判制度環境の必要性〕

 欧州委員会は、本年10 月に銀行と顧客の間に適用する基本原則を定めた「決済制度に係る新たな裁判制度(le nouveau carde juridique pour les paiements:NLF)」を提案しなければならない。この規則は効率性、セキュリティその他を保証するもので、利用者の機密性も保証するものである。この観点から、最近のブリュッセル計画において高く評価されたフランスの銀行は、顧客にとってセキュリティの高い公正レベルや健全な競争規則の維持に固執できない。

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(注1)フランス全国銀行連盟(FBF)は、2000円にフランスに設立されたすべての銀行を代表する専門組織である。フランスまたは外国のあらゆる規模の340の加盟銀行会社が加盟(115の子会社または外国銀行の支店を含む)。FBFはすべての主要な問題、特に規制問題に関する専門家の声を反映する。その使命は、フランス、ヨーロッパ、および国際的な銀行業務と金融活動を促進し、公的機関および経済金融分野の当局に対する専門職の立場と提案を定義することである。これは、メディア、政治および機関のサークル、消費者、専門家協会、教師、さらにはシンクタンクに対する銀行の専門家を代表する。パリに設立され、FBFはブリュッセルにも事務所を構えており、また、103の地域および部門委員会のネットワークを通じてフランス全土に存在する。

(注2)EU 決済システム(L’Europe des paiements) の加盟国また統一支払い地域
(内外格差のない小口支払いが行える地域でSingle Euro Payments Area:SEPA(https://ec.europa.eu/info/business-economy-euro/banking-and-finance/consumer-finance-and-payments/payment-services/single-euro-payments-area-sepa_en)といわれている。2003 年7 月に稼動を始めた。)とはEU 加盟25カ国とノルウェイ、アイスランド、スイスを含む。全EU をカバーする支払いシステムは「カードSEPA 」、「振込SEPA 」、「オンラインデビットSEPA 」と呼ばれる。
 なお、EU では、大口決済システムとして、TARGET(Eurosystem が運営する即時総額決済システム(注4)、EURO1(欧州銀行協会が設立したEBA Clearing Company が運営。欧州中央銀行における決済口座で決済される。EU 加盟15 カ国とEU 以外の5 カ国が参加 )、その他フランスのPNS、スペインのSPI、フィンランドのPOPS などがある。

(注3)欧州連合理事会(the Council of the European Union )やEU 議会は域内の送金手数料の引き下げを求めて銀行界に働きかけしていたが、検討が進まず、このため「規則2560」を可決した。これを受けてEU の銀行界は2003 年6月に「European Payments Council:EPC」(https://www.europeanpaymentscouncil.eu/)を設立した。

(注4) ターゲットサービス TARGET Servicesは、Eurosystemによって開発および運用されている多数のサービスであり、ヨーロッパ全体での現金、証券、および担保の自由な流れを保証する。 これらの金融市場インフラストラクチャサービスには、TARGET2(支払いの決済用(https://www.ecb.europa.eu/paym/target/target2/html/index.en.html))、T2S(証券の決済用)(https://www.ecb.europa.eu/paym/target/t2s/html/index.en.html)、TIPS(即時支払いのサービス)(https://www.ecb.europa.eu/paym/target/tips/html/index.en.html)、およびECMS(担保管理のサービス)(https://www.ecb.europa.eu/paym/target/ecms/html/index.en.html)が含まれる。 それらのすべては中央銀行の資金で解決する。 ユーロシステムはまた、効率性と革新を促進し、最終的にヨーロッパの金融市場でより大きな統合を達成することを目的とした多くのイニシアチブに取り組んでいる。 Eurosystemは、その戦略に沿って、金融市場のインフラストラクチャを強化する方法を調査しており、市場のニーズに応え続け、サイバーセキュリティの課題に先んじて、最新の技術開発にも対応している。(欧州中央銀行のEurosystemサイト(https://www.ecb.europa.eu/paym/target/html/index.en.html)の仮訳)


(注5) 欧州の金融統合やEU 決済システムの動向については、(財)国際通貨研究所の森純一氏の論文「欧州の金融統合の進展」を一部引用した。


〔参照URL〕仏全国銀行連盟(FBF)のリリース文
http://www.fbf.fr/web/Internet2010/Content.nsf/DocumentsByIDWeb/87JD9R?OpenDocument
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(今回のブログは2005年10月18日登録分の改訂版である)
                            
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