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米国のCIA(中央情報局)、DNI(国家情報局)の強化に関する新たな展開

 


Last Updated: March 20,2021

 2005年10月13日に米国国家情報長官(Director of National Intelligence:DNI)ジョン・D・ネグロポンテ(John Dimitri Negroponte) (注1)ならびにCIA長官ポーター・J・ゴス(Porter Johnston Goss)は、2001年9月11日以来の海外での人的諜報活動(human intelligence )の大幅な強化を狙いとして「国家秘密局(National Clandestine Service:NCS)」の設置を公表した。(DNIとCIAの共同リリース)

 NCSは作戦本部(Directorate of Operation)と呼ぶ諜報活動を実行するもので、直接でなくても国防総省やFBIと連携して世界中のスパイ活動や内密裡の行動を行うものである。

 ブッシュ(Goorge Walker Bush)大統領はCIAにおいて50%の作戦要員とアナリストの増員を命じている。これは国防総省やFBIの人的情報収集強化のために1990年代後半に国防総省やFBIが行った増員数と同様なレベルであるとしている。

5月13日の会見で、ゴス長官は「国家人的情報統括責任者(National Humint Manager:これは電子的な迎撃的情報源というより人による速記的な情報収集)」というもう1つの肩書きを得ている。その結果、NCSの局長はゴス長官に報告するが、仕事の結果はDNIのスタッフによって監督されることになる。なお、DNIの幹部の1人は、NCSの事務局はDNIではなく、CIA内に置かれると述べている。

 政府の9月11日テロ対応や2003年のイラクの侵攻の失敗を批判する米国議会の「国家情報委員会(intelligence committee)」の共和党議員の大多数は、NCS事務局はDNI内に置くべきであるとしている。

 NCSはCIAの機関の一部として位置づけられるが、DNIの副局長メアリー・マーガレット・グラハムが海外でのNCSの人的情報収集を監督することになる。この点についてDNIの幹部は、DNIの役割は政策決定にあり、要員の決定や命令に関しての一連の指揮を行うものではないと述べている。

 つまり、DNIは、情報収集要員を集め彼らの能力を分析し優先課題に焦点を当てて命令する「任務マネージャー」を任命するのみである。また、DNIの策定する計画は、特定の問題に取り組むための最善の方法を遂行するため、あらゆる情報収集要員ならびにアナリストを集めることである。政府の各機関(CIA、国防総省、FBI、州の情報機関等)はこのような優先化に貢献するといえる。このような調整は最終的にはCIA長官とNCS局長が行う。

〔参照URL〕
・DNIのNCSの設置に関するリリース
http://www.dni.gov/files/documents/Newsroom/Press%20Releases/2005%20Press%20Releases/20051013_release_content.htm

・CIAとDNIの代表者による共同リリースと声明
https://www.cia.gov/news-information/press-releases-statements/press-release-archive-2005/pr10132005.html

・ワシントンポスト紙の記事
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/10/13/AR2005101300919.html?referrer=email
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(注1)2021.3現在の長官は7代目であるが初めての女性の長官アブリル・ヘインズ(Avril Hainses)氏である。

Avril Hainses氏(彼女のこれまでのキャリアから見て外見よりもずっと厳しい人物のようである)

同氏は、2021年1月20日 米上院はバイデン新政権の情報機関を統括する国家情報長官(DNI)として元中央情報局(CIA)副長官のアブリル・ヘインズ氏の指名を承認した。1月20日のロイター通信は以下のとおり解説している。「米上院は20日、バイデン新政権の情報機関を統括する国家情報長官(DNI)として元中央情報局(CIA)副長官のアブリル・ヘインズ氏の指名を承認した。同日発足したバイデン政権

で最初に承認された閣僚となった。採決結果は賛成84票、反対10票で、反対票はすべて共和党が投じた。上院情報委員会の委員長代行を退く共和党のルビオ議員と新委員長に就く民主党のワーナー議員はそれぞれ声明を出し、ヘインズ氏の指名承認を歓迎した。」

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(今回のブログは2005年10月15日登録分の改訂版である)
                            
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