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英国弁護士等に対する顧客からの苦情に対するリーガル・オンブズマン制度改正の背景と今後の 課題

  

 2023.12.24 Last Updated

 10月7日、英国法務政務次官ジョナサン・ジュノグリィ(Jonathan Djanogly )は弁護士に対する顧客からの苦情を専門に受付ける国家機関たるオンブズマン制度を10月6日にスタートした旨発表(筆者注1)した。

Jonathan Djanogly 氏


 この問題につき筆者はBBCやガーディアンといったメディアや大手ローファームのニュースで知っていたが、今一その意義や目的が良く理解できなかった。

 そこで筆者なりに英国の従来の複雑な諸制度を改革すべく、司法改革の一環となる今回の制度改正の法的背景( 「2007年リーガル:サービス法(Legal Services Act 2007)」)や意義につき、改めて英国法務省や従来からある「リーガル・オンブズマン」サイト、弁護士会関係等の情報をもとに整理してみた。

 わが国では、企業や市民が依頼先の弁護士の納得できない法手続き実務や弁護活動について不満や苦情があれば「弁護士法」
(筆者注2)に基づき一般的に懲戒権を持つ当該弁護士の所属弁護士会(筆者注3)への相談から入る。英国に比して制度的に複雑ではないが、実際多くの苦情・トラブル等があることも事実である。

 わが国も今後ますます民事・刑事裁判やADRなど紛争解決の新たな制度の見直しを考える上で、筆者はその代理人である弁護士が適法・適正に法律の番人として機能すべく基盤整備問題として考えた。その意味で英国の例を参考とすべく今回の調査結果を公表するものである。

 特に「弁護士自治」か「国家独立機関」による監視・規制かという問題は、英国でも喫緊の問題となっている。「検察制度」改革問題と同様、わが国の司法制度上極めて基本的かつ重要な問題と思う。

 なお、時間の関係で調査不足な点が多いと思うが、筆者の問題意識だけは理解していただきたい。

 

1.わが国における「英国の弁護士の懲戒権規定の概要」資料
 日本弁護士連合会がまとめている資料「世界弁護士会便覧欧州」が、英国(UK:グレートブリテンおよび北アイルランドからなる連合王国)各構成国における弁護士会等の懲戒規程等につきまとめている。

 同資料はイングランド、ウェールズ、スコットランドなど個々に事務弁護士(Solicitors )からなる弁護士会(The Law Society)や法廷弁護士(barrister)からなる弁護士会(General Council)等の懲戒制度について解説しており、それなりにまとまっている。(筆者注4)

 しかし、それだけでは今回のオンブズマン制度の改正の本当の背景は理解できない。

2.英国の新オンブズマン制度導入の背景
(1)「2007年リーガル・サービス法(c.29)」の主要な立法目的
 同法は2007年10月30日に国王の裁可(loyal assent)により成立した。法案提出にあたり法務省の行った調査や英国国立公文書館(National Archives)が運営している時間軸で法令の内容や逐条的な改正状況を検索閲覧できる“legislation.gov.uk” (筆者注5)等でその内容を確認した。

 同法の立法目的の1番目は「法律サービス監視委員会(Legal Services Board)」の創設である(同委員会は2010年1月1日に運用を開始した)(第2編)。
2番目がリーガル・オンブズマン制度の整理統合である。(第6編:Legal Complaints)
3番目が弁護士と非弁護士とで'ワンストップショップ'タイプ会社を法的で他のサービスを探している顧客に提供するパートナーシップを組織させるAlternative Business Structures(ABS)制度の導入であり、ABSは2011年末までに稼動する予定である。(第5編)

 同法が新たに導入した「非弁護士法律専門会社実務制度(ABS)」についても事務弁護士会(Law Society)等から多くの問題指摘が出されている。この問題自身、わが国で解説を見たことがない。今回のブログで取り上げるにはあまりに複雑な背景があるようなので機会を改めるが、1つはっきりしているのは英国の雇用対策である点やかえって複雑な制度を作ったのではないかと言うことである。

 英国内でも情報が限られている模様であるが、筆者が独自に調べた結果では、次の2つの解説が本音かつ専門的であり、少なくとも英国法務省の解説より正確である。
「非弁護士法律専門会社実務(Legal Disciplinary Practices:LDPs)」(2009年3月26日)英国事務弁護士会(Law Society)が作成したもので、新制度の内容、非弁護士を管理する新会社のための経営面も含めた実務的な取組み内容等について逐一解説しており、分かりやすい。

②「なぜ非弁護士法律専門会社実務(LDPs)の運用開始が遅れたのか」英国事務弁護士会の機関紙“Law Society Gazette”(2009年4月9日)のレポートである。体系的な内容ではないが関係者の意見は網羅している。

(2)従来あった「リーガル・オンブズマン」制度の問題点
 法務省の資料説明は概要次のとおりである。英国の一般市民や外国人にとっては比較的不親切な内容と思える。なお、初めに英国メディアの解説例を見ておく。「ガーディアン(10月5日)」「BBC(10月5日)」が取上げている。誠意のない依頼主の期待に的確に応じていない弁護士への最高3万ポンド(約381万円)の補償義務といった点等が中心となっている。

①法律専門家の強制納付金を資金源とする独立運用制度で顧客やローファームにとって苦情対応を円滑化する。
②弁護士の過誤が明らかとなったときは謝罪要求から最高3万ポンドの損害賠償金といった罰則が科される。
③新しいオンブズマン制度は従来の“Legal Complaints Service”と“Bar Standards Board”を含む8つの異なる機関(従来のLegal Ombudsmanサイトの解説に8団体名が明記されている)を中心とする、法的な市場セクターに関する苦情を扱う現在の紛らわしい複雑なシステムに取って代わる点は高く期待される。
④ABSは2011年末までに稼動する予定である。

(3)新リーガル・オンブズマンとはいかなる具体的な専門家を指すのか
 事務弁護士、法廷弁護士、法律専門家(Legal executives)、土地等不動産に関する権利移転専門法律家(Licensed Conveyancers:LC) (筆者注6)等からなる。スタート時の理事会理事一覧や具体的なチームの顔ぶれの一覧がある。

3.新リーガル・オンブズマンの基本的な制度概要
 新オンブズマン・サイトでは基本的知識として次のとおり説明している。なお、同サイトでは説明リーフレット、ビジョンの内容、理事会や委員会組織、制度にかかる公文書等につき逐一解説しているので参照されたい。また、同サイトでは「消費者向け情報コーナー」を設け、具体的な苦情様式やアクセス等について説明している。

(1)対象エリア:イングランドとウェールズ
(2)利用者は一般市民、零細企業、慈善団体、クラブや受託者等で「無料」である。
(3)政府から独立した機関で、公平性を最重要視する。
(4)我々は、原則非公式に業務を進め、必要に応じ正式な調査を行う。一度本オンブズマンの決定が受け入れられたとき、弁護士に対し我々が何が必要かにつき述べた内容についてはその実行を保証する。
(5)我々は基本的な権限があっても苦情申立のすべてについて調査する義務はない。あなたが受ける「法律上の助言」や裁判所の判断に同意しないことで不満があったとしてもその点をカバーするものではない。
(6)我々は法令が失効していたとしても弁護士や警察のために規則化を行うものではない。これは異なる規制監督機関が行う問題である。
(7)我々は次の内容を含む司法サービスにつき苦情を調査できる。
①家や財産の購入や売却
②離婚等の家族法
③遺言(wills)
④身体傷害(personal injury)
⑤知的財産
⑥刑事法
⑦民事訴訟
⑧移民問題
⑨雇用問題
⑩その他

4.新オンブズマン制度への移行にかかる経過措置
 従来のオンブズマン・サイトは新オンブズマンへのアクセス内容を説明するとともに移行措置について解説している。いずれにしても混乱はありそうである。

 なお、苦情申立に対象となる異なる法律専門家につき具体的に列挙しており参考になると思われるのでここであげておく。
①事務弁護士(Solicitors)
②法廷弁護士(Barristers)
③不動産等権利移転専門法律家(Licensed Conveyancers:LC)
④公証人(notaries)
⑤商標弁理士(Trade mark attorneys)
⑥法律費用見積専門士(Law costs draftsmen) (筆者注7)

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 なお、わが国の国立国会図書館のカレントアウェアネス・ポータル(7月30日号)は、英国議会の時間軸での法令の内容変更内容につきその過程を追いながら検索できるサイトの紹介を行っている。
「2010年7月29日、英国国立公文書館(NA)が、これまでに英国内で制定された法令を検索、閲覧できるウェブサイト“legislation.gov.uk”を公開しました。時間軸で表示することで、法の変遷過程を分かりやすくしたとのことです。ウェブサイトでは、1988年から現在までは全法令を、1988年以前については第一次立法分のみ利用可能のようです。また“legislation.gov.uk”の公開に伴い、これまで“Office of Public Sector Information”と“Statute Law Database”で提供していた内容は、今後“legislation.gov.uk”に引き継がれるとのことです。」
極めてさらりと説明されているが実は筆者が従来から考えている議会制民主主義の最も基本的な問題(日本国憲法で定める国民の知る権利(21条)、参政権(15条))に英国が取組んだ結果であることを忘れてはならない。このような英国の公的情報とりわけ議会の立法審議内容や制定後の改正につき抜本的な情報公開体制を構築した見本はおそらく米国であろう。
 またフランスについても議会上院(Senat)の立法過程のトラッキング・サイトは理解しやすい構成である。

 一方、わが国の議会サイトでの法案審議トラッキング情報はいかがであろうか。現在のサイトを見てみる。衆議院サイト「第176回国会 議案の一覧」がある。議案種別に議案審議経過情報が見れるが、委員会やどこでどのような議論が行われているかに関する情報はほとんどない。もう20年以上画面構成は見直されていないのではないか。

 

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(筆者注1)2023.12.24筆者は英国法務省のオンブズマン制度のリリース文にリンクできなかった。その理由を補足する。

UK  Web Archive に移っていた。UK Web Archiveは英国図書館(British Library)が運営している、英国内のウェブサイト等を収集保存するウェブアーカイブである。わが国でも国立国会図書館が国立国会図書館国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)サイト」が試行しているが、はたして十分機能できているのか。

 

(筆者注2) 参考までにわが国の「弁護士法」第8章第1節に基づく弁護士会による「懲戒事由・処分」の規定内容につき記しておく。
(1)第56条  弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2  懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。
3  弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。
(懲戒の種類)
第57条  弁護士に対する懲戒は、次の4種とする。 
一  戒告 
二  2年以内の業務の停止
三  退会命令
四  除名 
2  弁護士法人に対する懲戒は、次の4種とする。
一  戒告 
二  2年以内の弁護士法人の業務の停止又はその法律事務所の業務の停止
三  退会命令(当該弁護士会の地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対するものに限る。)
四  除名(当該弁護士会の地域内に主たる法律事務所を有する弁護士法人に対するものに限る。)

(2)依頼者側にたった苦情のためのアドバイスの解説例(東京商工リサーチ「横山雅文のリーガルリスクマネジメント」(2003年1月1日掲載文より引用)

「第12回 弁護士に対する苦情−紛議調停と懲戒申立て」2003.1.1寄稿
 依頼した弁護士が案件の処理をしない、処理の仕方に問題がある、予期せぬ高額の報酬を請求された、などというような弁護士に対する苦情はどこに申し立てればよいでしょうか。
 まず、弁護士会には「市民窓口」という電話での弁護士に対する苦情受け付けがあります。市民窓口では、相談内容によって「紛議調停」や「懲戒申立て」の説明・案内をします。
 「紛議調停」とは、弁護士と依頼者との間で事件処理や報酬等で紛争が生じた場合に、弁護士や依頼者からの申し立てによって、弁護士2名からなる調停委員会が実情に即した円満な解決をはかるあっせん調停の手続です。9割方は依頼者からの申立てで、報酬に関する紛争が多いようです。
 「懲戒申立て」とは、弁護士に弁護士会の信用を害する行為や品位を失うべき非行があったとして、弁護士会にその弁護士に対する懲戒を求める手続で、依頼者でなくても申し立てることができます。
 弁護士に対する懲戒は、懲戒委員会が決定しますが、懲戒委員会は、弁護士だけでなく、裁判官、検察官、学識経験者からなる懲戒委員によって構成されています。
 懲戒処分は、軽い順に、戒告、業務停止、退会命令、除名となっています。
 不幸にして依頼した弁護士との間で紛争が生じた場合、とりあえず、弁護士会の市民窓口に電話することをお勧めします。

(筆者注3)「東京弁護士会」の弁護士の苦情専門サイトURL
https://www.toben.or.jp/know/toben/kujyou.html
「東京第二弁護士会」の苦情専門サイトURL
https://niben.jp/service/soudan/shimin/

(筆者注4) 「イギリスで法律の専門家(legal executive)の資格を取得するには、法律専門家協会(ILEX)の認定を受けたコースを受講する必要があります。高等教育レベルで法学を学びたい場合、入学申し込みの前にLNAT (National Admissions Test for Law)と呼ばれる試験を受ける必要があります。法学のHNDコースに加え、法律関連のFoundation Degreeも9コースあります。
イギリスでは、弁護士の資格を取得するための決められたルートがあります。まず、法知識の基礎と称される7つの専門分野のモジュールを勉強し、それぞれの試験に合格しなければなりません。これらのモジュールは、学士号(LLBまたはBA)の取得につながります。その後、法律実習コース(LPC)や法廷弁護士志願者のためのコース(BVC)に進み、弁護士や法廷弁護士(barrister)の資格を取得することができます。」
また、大学院での勉強や実務研修は、事務弁護士(solicitor)、法廷弁護士(barrister/advocate)の資格につながります。」
(ブリティッシュ・カウンセル「英国で勉強できる法律分野のコース」の解説から抜粋引用)。

(筆者注5)英国UKの議会での法案審議のプロセスに即した図解入りの一覧性を持った専門サイトを議会が提供している。


(筆者注6)英国の“Licensed Conveyancers”ついてはわが国では解説は皆無であるし的確な訳語は難しい。その資格管理団体である“Council for Licensed Conveyancers”サイトでは制度の概要について説明している。なお、根拠法は「1985年司法行政法(Administration of Justice Act 1985)(c.61)」である。

(筆者注7)“Law costs draftsmen” もわが国で存在しない法律専門家である。英国大手の“Law costs draftsmen”会社である「R COSTINGS LTD社」のサイトで確認してみた。まず訴訟ありきの国柄かも知れないが、法律実務の分散化は司法システムの効率化とは相反するものであり、英国のさらなる課題を垣間見た気がする。なお、法律費用見積専門士には協会(Association of Law Costs Draftsmen)があり、その主催する試験の合格や会員登録が必要である。

〔提供サービスの内容〕
①身体障害、医療過誤、重傷、婚姻や刑事民事裁判費用等の見積り
②弁護士費用(counsel fee)、診断書、条件付手数料や成功報酬手数料等を含む費用見積り
③訴訟などにおいて交渉が行きずまったとき、裁判所による詳細調査聴聞(Detailed Assessment hearnig)が求められるときの出席
④裁判費用等に関する各種助言

[参照URL]
・英国新リーガル・オンブズマンの専用サイト
https://www.legalombudsman.org.uk/who-we-are/
英国「2007年リーガル:サービス法(Legal Services Act 2007)」
http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2007/29/contents
「法律サービス監視委員会」のサイト
http://www.legalservicesboard.org.uk/


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