9月21日付けの本ブログ で、米国連邦捜査局(FBI)がこの1年以内に扱ったいわゆる(1)重要ホワイトカラー犯罪の内容、(2)米国の関係法執行機関が取組んでいる内容について要約した レポート 内容を詳細に報告した。 このレポートは知的財産犯罪を中心とするものであったが、FBIは今年の8月から9月にかけて行った3件の企業機密や知的財産権盗取起訴事件をまとめたリリースを9月24日に 公表 した。 今回のブログはその内容ならびに関係する裁判の内容をフォローすべく、確認できた範囲で起訴状の内容を含め事実関係を中心に解説する。 なお、今回取上げた事件はいずれも米国籍や永住権がある中国人である。FBIのリリースでは、うち1件の被告は中華人民共和国(People’s Republic of China:PRC)が派遣した産業スパイであると明言している。筆者は断言できるほどの情報は特に持たないが、これらの実態を踏まえると今回の起訴は氷山の一角であり、さらに考えればわが国の企業や研究機関等の知的財産権のファイアー・ウォールは十分なのか極めて不安になってくる。 ちなみに沖縄・尖閣諸島周辺の日本の領海内で、海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で公務執行妨害容疑で逮捕された漁船の船長である「其雄(セン・キユウ)」 (筆者注1 ) 41歳の勾留が10日間延長されていた中で、急遽の釈放等わが国政府や司法当局の奇異な行動なども気がかりである。 一方、同船長は国家統制下にある中国政府公式サイト(中华人民共和国中央人民政府)でも 英雄扱い である。 今回のFBIのリリースが意図的とは思えないが、中国系人材で米国の最新技術開発や企業経営、経済がもっている面は見逃せない。しかし、このような国ぐるみの経済犯罪となると問題は別である。わが国の政府や関係機関はこのような米国の実態を理解して、今回の措置を行ったのか極めて遺憾としか言いようがない。また、海外情報に疎い日本といわれても仕方がないと言える 。 (筆者注2) Ⅰ. 米国の企業機密や知的財産権盗取起訴事件 1.インディアナポリスに本社をもつ米国大手農薬会社 「ダウ・アグロサイエンス(Dow AgroScience L.L.C.)(以下、ダウ社という)」 から企業機密を中国政府と協力して盗取したとして...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。