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9月, 2010の投稿を表示しています

米国FBIが最新ホワイトカラー犯罪動向を公表(第1回)

    Last Updated:February 21,2021   2010年9月10日付けで、米国連邦捜査局(FBI)がこの1年以内に扱ったいわゆる(1)重要ホワイトカラー犯罪の内容、(2)米国の関係法執行機関が取組んでいる内容について要約した レポート を発表した。  このレポートは「創造性の盗取その-阻止に向けた協力体制-(the theft of creativity)」と題するもので、3つの重要事件を中心にFBIや関係捜査機関の取組み状況を解説しており、いずれもデザイン、創案(inventions)、登録商標情報(proprietary business information)、文学、音楽や映画等一般的に「頭で考えた創造力(creation of the mind)」といわれる知的財産の盗取犯罪を取り上げている。  これらの犯罪は、当該資産の正規の所有権者(rightful owners)や米国の消費者ならびに国民から仕事を奪ったり税収を減じさせ、ひいては米国経済に重大な被害を引き起こさせる重大犯罪行為にあたるとFBIは論じている。  わが国でも米国における同様の犯罪行為について論じたものは少なくないが(筆者注1)、今回のFBIレポートはより具体性があり、また衛星通信やケーブル・テレビ信号盗取(television signal /cable theft)犯罪についても言及するなど、わが国の関係機関としても参考になる点が多いと考えまとめた。  また、9月10日付けのFBIのリリースが引用している過去にFBI等が取上げ事件の裁判経緯の詳細についても米国内の情報に基づき補足した。  わが国では完全地上デジタル放送の実施が2011年7月24日に実施されることに伴いデータの暗号化や復号化技術の信頼性等に関する議論は、必ずしも関係機関により十分に整理されているとは言い難いと思う。 [はじめに] FBIは多くの協力機関とリーダー的役割を演じている。FBIは現在約400の事件と取組んでいるが、その多くは世界的なつながりにおいて機能している。 1.FBIの取組み分野と起訴事例  知的財産犯罪は多くの分野を包含する。すなわち、著作権侵害、商標権侵害、模造品(counterfeit good)、衛星通信やケーブル・テレビ信号盗取(television signa...

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第7回)(その2完)

  (原油や石油分散剤による重大な健康被害)  メキシコ湾での原油流質が始まった早期の数か月にルイジアナ州では300人以上の個人(4分の3は清掃作業員)が頭痛、めまい。吐き気、嘔吐、咳、呼吸困難や胸痛等体質に起因する疾患による治療を求めた。これらの兆候は炭化水素や硫化水素による急性障害の典型であるが他の一般的疾患による中毒症状と臨床的に区別することは難しい。  連邦環境保護庁(EPA)は、VOCs、粒子状物質、硫化水素およびナフタリンがないか否かを検査するため大気汚染測定網にセットした。  連邦保健福祉省・疾病対策センター(CDC)とEPAのデータ分析結果は次のとおりであった。 「これまで報告された汚染物質の一部のレベルは一時的に目、鼻、のどの炎症や吐き気や頭痛を引き起こすかもしれないが、長期的な害を引き起こすレベルではない。」BP社のウェブサイトで載せられているデータによると沖合いの作業員の大気汚染の影響が陸地での作業員に比べ高いことを示している。 石油や分散剤の皮膚接触は脱脂、皮膚炎や二次皮膚感染を引き起こす。ある人は皮膚過敏症反応(dermal hypersensitivity eaction)、紅斑(erythema)、浮腫(edema)または灼熱感(burning sensations)や甲状腺皮膚炎(follicular rash)が見られた。いくつかの炭化水素は光毒性(phototoxic)皮膚炎を引き起こす。 (長期的に見た健康リスク)  短期的に見て各種の炭化水素が魚介類を汚染するであろう。脊椎動物の海中生物はみずからPAHsの浄化機能を持つが、無脊椎動物の場合これらの化学物質は永年体内に蓄積される。メキシコ湾は米国の牡蠣生産の約3分の2を提供しており、またエビやカニの主要漁場である。微量のカドニウム、水銀は原油から生じ、魚肉組織に蓄積され、マグロやサバという大量消費による将来の健康被害への影響を増加させる。 (歴史的に見た原油流出による健康への影響)  1989年のエクソン・バルディーズ号原油流出事故の後、合計1811人の清掃作業員から労働災害補償金請求が行われた。その大部分は急性損傷によるものであったが15%は呼吸器系疾患、2%は皮膚炎(dermatitis)であった。この原油流出事故にかかる長期的健康被害に関しては論文審査を経た(pe...

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第7回)(その1)

      8月16日付けの 本ブログ で原油流失による健康被害について米国医療専門家の問題指摘の一部を紹介した。  8月16日付けの米国医学専門雑誌“Journal of the American Medical Association:JAMA”は 「メキシコ湾の原油流質の健康への影響(Health Effects of the Gulf Oil Spill)」 と題する例証(commentary)論文を公表した。 (筆者注1)  一般的に米国のメディア情報に大部分を依存しているわが国のメディア情報を見る限り、今回取り上げた内容は米国民だけでなくわが国の一般消費者にとっても健康保持に極めて影響が大きい問題が含まれている。  たとえば、わが国で一般的に市販されている防虫剤には「パラジクロルベンゼン」や「香料」が成分であると記載されている。  あらためて、出版時期は1992年2月とやや古いが現在でも十分「合成防虫剤」の危険性を警告している本「暮らしの安全白書」 (学陽書房)を読んでみた。  そこに記載されているナフタリン、ベンゼン等を成分とする防虫剤と同様の化学物質がメキシコ湾の原油分散化剤として極めて大量(7月下旬までに180万ガロン)に使用され、特にルイジアナ州では清掃作業員の4人中3人が頭痛(headaches)、めまい(dizziness)、吐き気(nausea)、嘔吐(vomiting)、呼吸困難(respiratory distress)等を訴え、病院等で治療を受けている。  8月4日付けの 本ブログ では、石油分散剤の有毒ガス化の危険性や我々自身が安易な化学物質汚染を引き起こしている日常性の怖さを関係レポートやブログに基づき解説したが、今回のJAMAのレポートを読む限り、わが国の合成防虫剤の使用に伴う一般消費者の健康被害問題も「他山の石」として業界指導や消費者教育を厳格に行わないといけないという意味で本ブログをまとめた。  なお、この一連のブログをまとめる際にコメントしているとおり、筆者は医療・公衆衛生関係者ではない。わが国の専門家による正確な健康リスク分析と消費者への警告レポートを期待したい。 今回は、2回に分けて掲載する。 1.著者による本レポートに関する注記  著者ジーナ・ソロモン(Gina Solomon)は 自身のブログ で、本レポー...