スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

12月, 2009の投稿を表示しています

米国連邦財務省がウェルズ・ファーゴとシティグループから総額450億ドルの返済受領

      12月23日、米国連邦財務省は「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」にもとづき資金投入していたウェルズ・ファーゴとシティグループから合計450億ドルを受け取り、現在、不良資産救済プログラムによる金融機関からの返済総額は1640億ドルに上る旨のリリースが同省広報局から筆者の手元に届いた。  このニュースはわが国のメディアも夕刊で取り上げるであろうが、その内容の正確性を期すため筆者なりに 仮訳 してみた。  なお、12月24日午後13時現在で財務省の最新プレスリリース・サイトを見たが23日のリリースはまだ掲載されていない。 (仮訳)  米国連邦財務省は、このほどウェルズ・ファーゴとシティグループから「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」に基づく資金投入に関し、合計450億ドル(約4兆500億円)の返済金を受領した。これにより、TARP投入資金の総額(約7千億ドル)中、1640億ドル(約14兆7600億円)の返還を得たことになる。  今回、ウェルズ・ファーゴは「公的 資本注入計画(Capital Purchase Program:CPP)」の下で250億ドル(約2兆2500億円)を返済、またシティグループは「不良債権損失補てん計画(Targeted investment Program:TIP)」 (筆者注1) の下で200億ドルを返済し、これら銀行からの返済総額が2010年の終わりまでに1750億ドルを超えると見込んでいる(これは10年間かかると見込んでいた銀行への総納税負担リスク(総額約7千億ドル)を4分の3に削減することになる)。  さらに12月23日付けで、財務省、連邦準備制度理事会、連邦預金保険公社(FDIC)およびシティグループは、米国政府が元々3000億ドル(約27兆円)のシティグループ資産の損失を分担する合意を「解除」した。この合意は、2009年1月に成立し、当時、財務省により「特定不良債権損失補てん制度(Asset Guarantee Program:AGP)」の下で締結され、その補償期間は10年間と予想されていた。 (筆者注2)  連邦政府は、同合意の下で何らの損失も負担せず、かつ米国政府はそのような保証のための考...

Googleのストリートビューをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法的課題 (その4完)

  4.わが国の国や地方自治体の取組み事例 (1)国の対応 経済産業省がGoogleに対し数回にわたる改善要求を行っている旨のメディア報道(産経新聞)もあるが、筆者自身その根拠が確認できないため無視する。 次に首相官邸サイト「犯罪対策閣僚会議」が2008年12月22日にまとめた 「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008 ―『世界一安全な国、日本」の復活を目指して』―」8頁以下 を見ておく。 第1 身近な犯罪に強い社会の構築 2 犯罪に強いまちづくりの推進 「③ 道路周辺の映像を表示するサービスに係る防犯対策等の検討:実在する道路周辺の映像をインターネット上で立体的に表示するサービスについて、防犯上の問題点等を検討し、問題点がある場合は、対策について検討する。」 これだけである。なんともコメントのしようがない。 (2)東京都「情報公開・個人情報保護審議会」の「ストリート・ビュー問題」の審議内容   委員 の顔ぶれを見れば中央官庁の審議会とあまり変わらなく、そこでの議論内容はわが国のプライバシー問題や人権問題および消費者保護等に関する専門的議論と解しえよう。(ただし、筆者もそうであるが、一部委員はこの問題が議題となって初めて同サービスについて改めて勉強したことや、わが国の関係する法律から見た違法性については具体的な議論はまったく行われていない点は問題である。法律専門家が中心の会議の割には常識論に終始しており、スイスやカナダの保護委員会による企業告訴など司法活動等に比べインパクトが極めて弱い(欧米の大企業は完全に無視するであろう)。わが国の審議会方式の限界が見える。) 2008年11月と2009年2月の2回にわたり審議している。また、第39回会合ではグーグル株式会社執行役員広報部長の舟橋義人氏とポリシーカウンセルの藤田一夫氏を招いての審議が行われている。 [第 38 回会合] :平成2008年11月25日(火)開催。第39回会合での第38回審議に関する 事務局報告 等に基づき、筆者の責任で審議内容を要約する。 ①基本的な問題 ・サービス提供の目的として、利便性や娯楽性が挙げられているが、日本のような住宅事情や生活環境では公道から撮影されたものであったとしても、プライバシー侵害を引き起こしやすい。 ・本人が知らないうちに、そのような映像がインターネットに公開さ...

Googleのストリートビューをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法的課題 (その3)

  C.「行政オンブズマン」事務局  カナダでは連邦法に基づく単一機関ではなく、7つの地方州単位で州政府や公的機関の監視や地域住民からの苦情を受付け、調査や和解交渉を行う議会を支援する独立「行政オンブズマン」事務局が州など地区ごとの法律に基づき設置されている。例えば、 ブリティッシュコロンビア州オンブズマン(Ombudsperson) (2021年3月現在のOmbuspersonは ) ジェイ・チョルク(Jay Chalke)氏( 筆者18-2) で、 “Ombudsperson Act[RSBC 1996]” がその権限や活動の根拠法である。プライバシー委員はこれらの「行政オンブズマン」事務局との共同的調査活動も行う。 Jay Chalke 氏 (2) ギリシャの例 :  2009年5月11日、 ギリシャ個人情報保護委員会(Hellenic Data Protection Authority:HDPA: Αρχή προστασίας δεδομένων προσωπικού χαρακτήρα (筆者注18-3) (委員 Konstantinos Menoudakos )氏はGoogleおよびギリシャでの同サービスの関連会社である“kaupou.gr”に関し、 許可条件文書 を発した。 Konstantinos Menoudakos  氏  同委員会はギリシャ憲法上独立性が保証された機関  (筆者注19) で、 「1997年個人情報の取扱いに係る個人の保護に関する法律(Law 2472/1997)」 および2002年のEU指令(個人情報の処理と電子通信部門におけるプライバシーの保護に関する欧州議会及び理事会(2002年7月12日)の指令(2002/58/EC)」に基づき2006年に改正された 「1997年法律2472の改正および電気通信分野における個人情報保護とプライバシーに関する法律(3471/2006)」 に基づく保護機関である。  許可文書の内容について概要を記すが、EUの大国以上に具体的でかつ厳しい内容を含むものである。  「HDPAは、通知内容を検討し、「保護指令第29条専門調査委員会」の見方を考慮に入れた後に、特定のサービスが個人的なデータを保有や収集がギリシャの領土に合致した手段によって行われるように、処理の合法的を判断...

Googleのストリートビューをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法的課題 (その2)

       Last Updated : April 22,2024 II.情況証拠(Sachverhalt ) 1.2009年3月19日、被,告であるGoogleは共同してスイス国内の道路において特殊装置車 (筆者注12) による撮影を開始した。これらの撮影の目的は、ユーザーがGoogle マップ((http://maps.google.ch/maps?hl=de&tab=wl))により道路位置の確認およびインターネット上で360度の視界をもってバーチャルな道路歩行を体験できるようにすることである。 2.Googleのストリートビュー・サービスは数州(Ländern)で導入または導入が予定されており、またEUの「EU保護指令第29条専門調査委員会(die Artikel 29 Datenschutzgruppe der Europäischen Union)」  (筆者注13) は2009年6月、その調査の取組みを開始している。  また、Googleは十分な情報に基づく公開の承認および特定される個人情報につき適当な期間は削除が求められるべきである。  Googleは、スイス国内において写真掲載の承認前に十分な情報が提供されるべきとする保護委員会の意見に反対した。すでに新サービスに関し意見が分かれている時点で写真を公開しようとしたため、2009年9月14日本委員は第1回目の削除要求書面を用意した。 3.2009年8月17および18日の夜、グーグルはスイスでのストリートビュー・サービスのウェブページを立ち上げた。グーグルのデータによると公開した写真は2千万枚以上であった。保護委員に対し不特定性が不十分な写真や私道、私有財産の写真に関する多くの苦情が寄せられた。 4. これら問題の解決を目指した保護委員とグーグルの数回の議論の結果、2009 年9月4日付けの手紙で2009年9月2日の交渉の場でグーグルはぼかしの次期使用ソフトにおいて非特定性を図るという提案を行った。しかしながら、この提案の実現には組織化と計画が必要であるというものであった。  さらにグーグルは今後スイス国内では新たな写真は撮影しないとした。 5.2009年9月11日に保護委員はグーグルに対する勧告を発したが、グーグルは10月14日付けで...

Googleのストリートビューをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法的課題 (その1)

    Last Updated : April 22,2024   スイス連邦情報保護および情報自由化委員(以下「情報保護委員」という)(Der Eidgenössische Datenschutz- und Öffentlichkeitsbeauftragte:EDÖB/ PFPDT)   (筆者注1)  ハンスペーター・テュール(Hanspeter Thür)氏は、Googleおよびスイス・グーグルに対し2009年9月11日に行った画像等の非特定性(ぼかし)を確認したうえでの中止勧告に同社が適切に応じなかったこと等を理由に、連邦情報保護法(DSG) (筆者注1-2) 等に基づき11月13日、連邦行政裁判所(Bundesverwaltungsgericht)  (筆者注2) に提訴した。 Hanspeter Thür氏  その後、スイス連邦行政裁判所は2011年3月30日に保護委員の主張の大部分を認めた判決を下した。しかし、Google はこれに上訴し、最上位たる連邦裁判所(Bundesgericht)は2012年5月31日にほんの一部のみGoogleの主張を認めた。これについては、本ブログ(その3)で詳しく解説する。  実はこのような各国のプライバーシー監視・監督機関による監視強化やGoogleとの条件交渉は、Googleのサービス提供国数の増加(米国や欧州ほかアジア等100都市以上)とともに欧州やカナダの保護委員等で見られるように拡がっている。  (筆者注3)  これらの監視・監督機関の要求内容を整理すると、①撮影に当り該当市町村への事前通知義務、②映像のぼかし技術の徹底、③ぼかし修正前の原画像データの一定期間内の完全廃棄、④情報主体者の公開拒否手続の簡素化等である。  なお、Googleは、本提訴に関し11月13日付けのブログ“ European Public Policy” で反論を載せている。本ブログと併せ参照されたい。  また、スイス(UBS)と米国の間には金融取引における個人情報保護をめぐる秘密保持義務と課税回避措置をめぐる民事裁判(“John Doe” summons)の和解や政府間合意問題 (筆者注4)  (筆者注5) やセーフ・ハーバー協定問題があるが、今回のGoogleの告訴とは関係...