スキップしてメイン コンテンツに移動

オーストラリアや世界の新型インフルエンザA(H1N1)感染者数の急増と世界的パンデミック化の可能性

 5月27日、同日午前中にオーストラリアの大型クルーズの乗船者等の感染拡大の記事(感染確認者数は当時50人)を書いたが、5月29日現地時間AEST午後6時現在の感染確認者数は168人と著しく急増している。

 一方、WHOがまとめた5月29日現在(グリニッジ標準時午前6時)で見ると世界53か国(5月27日時点48か国)で感染者数15,510人、死者99人である(5月27日時点では13,398人、死者95人)と比較しても、その拡大規模は引続き大きい。
 専門外の者がこれだけの数字でコメントすべきでないが、この数字の意味するところをわが国の国民はどのように解すべきなのか。また、後述するとおり、世界第三位の感染者数を出しているカナダの連邦政府関係機関の情報提供の内容を検証し、電子政府の内容比較の観点から考えてみる。


 なお、別途筆者なりに米国やEUの新ワクチンの研究・開発動向に関するレポートを作成中である。

1.オーストラリアの最新感染状況
 5月29日AEST(世界標準時(グリニッジ時)+10時間(日本は9時間) 午後6時現在)の州別確認感染者数を見ると8州のうち発生州は依然次の6州である(感染が確認されていないが疑いのある人数は今回は未公開である、集計自体出来ていないのかも知れない)。
・オーストラリア首都特別地域(ACT)3人(5月27日時点1人)
・ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW)48人(16人)
・クイーンズランド州(QLD)11人(7人)
・南オーストラリア州(SA)6人(2人)
・ビクトリア州(VIC)99人(5月30日未明に州政府の専門サイトでみると138名となっている)(23人)
・西オーストラリア州(WA)1人(1人)
 なお、学校の閉鎖状況につきビクトリア州教育庁サイトでみると、公立学校21校全行で1~2人の感染者がでており、閉鎖校は5校(6月1日再開予定)、一方私立学校7校も1~2人の感染が確認されており、2校が閉鎖している。

2.WHOの統計に見る感染拡大
 5月29日現在で国別に見て増加傾向が続いている国が多い(括弧内は5月27日現在比増加数)。感染者確認数が100人以上の国を見ると、米国が感染者8,975人(+1,048):死者15人(+4)、メキシコ4,910人(+369):死者85人(+2)、カナダ1,118人(+197):死者2人(+1):日本364人(+4) (筆者注1):死者0人、英国203人(+66):死者0人、オーストラリア147人(+108):死者0人、スペイン143人(+5):死者0人、パナマ107人(+31):死者0人

3.カナダに見る連邦政府関係機関の情報提供のあり方とH1N1感染情報提供の概観
 筆者は新型インフルエンザの感染拡大問題が発生する前から毎日、連邦政府機関である「連邦公安省(Public Safety Canada(PHAC);Sécurié publique Canada))」から送られてくる各種情報を分析していた(これが本職に近い仕事である)。
 同サイトは、サイバー犯罪(コンピュータ・ウイルス)やテロ情報、インフルエンザ情報、ハリケーン、渡航者の健康管理情報、地震情報、食物アレルギー情報、国際貿易取引情報などの連邦関係機関とリンクを張りつつリアルタイムの情報収集とその提供を行っている。5月29日に送られてきた情報(DIR09-103) を読むと分かるとおり、WHOの感染者数や死者数のリリースおよびカナダの公衆衛生庁(Public Health Agency of Canada:PHAC)の最新情報にリンクする。
 ところで、今回の新型インフルエンザの急増国であるカナダのPHACサイトを見たが、州(10)や準州(3)ごとの最新感染者数の地図、5月27日時点から29日までの各州・準州の感染者増加数のほか感染者の平均年齢(22歳以下)が説明されている。さらに特徴的な点は、グラフで日別の症状発生者数を入院者とその他に分けて表示している点である。このグラフによると感染者発症のピークは5月8日~11日にかけてであり、その後は急速に減少していることが読み取れる。
 わが国でこれに相当する専門情報サイトは国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)の「新型インフルエンザ(ブタ由来インフルエンザA/H1N1)」(筆者注2)であるが、日別の発生者数の傾向値は公表されていない。(筆者注3) しかし一方では総理大臣はテレビで「国身の皆さん、冷静に対応してください」のみである。正しくかつ迅速な情報提供が今求められているのではないか。

**********************************************************************************

(筆者注1) 6月2日現在の厚生労働省の発表ではさらに25人増え385人である。

(筆者注2) “IDSC”は確かに厚生労働省からリンクできるが、首相官邸からは直接リンクできない。また厚生労働省からの同センターへのリンクはまず「インフルエンザパンデミック」→「新型インフルエンザ(ブタインフルエンザA/H1N1)」へと再度リンク作業が必要となる。IDSCは専門サイトとはいえ、情報公開の徹底が国民の不安を軽減する手段と考えるがいかがか。

(筆者注3) 筆者自身気が付いた時期は6月中旬であるが、“IDSC”サイトでは①2009年6月4日からの「発症日別報告数のグラフ」、②5月19日からの「日本の流行地図(都道府県別同確認件数)」を掲載し始めている。

〔参照URL〕
http://www.healthemergency.gov.au/internet/healthemergency/publishing.nsf/Content/0070BF69A1A93A41CA2575C00038EF5B/$File/Swine%20Update%206pm%2029%20May.pdf
http://www.who.int/csr/don/2009_05_29/en/index.html
http://www.phac-aspc.gc.ca/alert-alerte/swine-porcine/surveillance-eng.php

************************************************************************************
Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

コメント

このブログの人気の投稿

ウクライナ共同捜査チームの国家当局が米国司法省との了解覚書(MoU)に署名:このMoU は、JIT 加盟国と米国の間のそれぞれの調査と起訴における調整を正式化、促進させる

  欧州司法協力機構(Eurojust) がウクライナを支援する共同捜査チーム (Ukraine joint investigation team : JIT) に参加している 7 か国の国家当局は、ウクライナで犯された疑いのある中核的な国際犯罪について、米国司法省との間で了解覚書 (以下、MoU) に署名した。この MoU は、ウクライナでの戦争に関連するそれぞれの調査において、JIT パートナー国と米国当局との間の調整を強化する。  このMoU は 3 月 3 日(金)に、7 つの JIT パートナー国の検察当局のハイレベル代表者と米国連邦司法長官メリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)によって署名された。  筆者は 2022年9月23日のブログ 「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!(その3完)」の中で国際刑事裁判所 (ICC)の主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏 の声明内容等を紹介した。  以下で Eurojustのリリース文 を補足しながら仮訳する。 President Volodymyr Zelenskiy and ICC Prosecutor Karim A. A. Khan QC(ロイター通信から引用) 1.ウクライナでのJITメンバーと米国が覚書に署名  (ウクライナ)のICC検事総長室内の模様;MoU署名時   中央が米国ガーランド司法長官、右手がICCの主任検察官、Karim A.A. Khan QC氏  MoUの調印について、 Eurojust のラディスラフ・ハムラン(Ladislav Hamran)執行委員会・委員長 は次のように述べている。我々は野心のために団結する一方で、努力においても協調する必要がある。それこそまさに、この覚書が私たちの達成に役立つものである。JIT パートナー国と米国は、協力の恩恵を十分に享受するために、Eurojustの継続的な支援に頼ることができる。  米国司法長官のメリック B. ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「米国が 7 つの JIT メンバー国全員と覚書に署名する最初の国になることを嬉しく思う。この歴史的な了解覚書は...

米国連邦取引委員会(FTC)が健康製品に関する新しい拡大コンプライアンスガイダンスを発行

   2022年12月20日、米国連邦取引委員会(以下、FTCという)は、以前の 1998年のガイダンスである栄養補助食品:業界向け広告ガイド(全32頁) を改定および置き換える 健康製品等コンプライアンスガイダンス の発行を 発表 した。 Libbie Canter氏 Laura Kim氏  筆者の手元に Covington & Burling LLPの解説記事 が届いた。筆者はLibbie Canter氏、Laura Kim氏他である。日頃、わが国の各種メディア、SNS、 チラシ等健康製品に関する広告があふれている一方で、わが国の広告規制は一体どうなっているかと疑うことが多い。  FTCの対応は、時宜を得たものであり、取り急ぎ補足を加え、 解説記事 を仮訳して紹介するものである。 1.改定健康製品コンプライアンスガイダンスの意義  FTCは、ガイドの基本的な内容はほとんど変更されていないと述べているが、このガイダンスは、以前のガイダンスの範囲につき栄養補助食品を超えて拡大し、食品、市販薬、デバイス、健康アプリ、診断テストなど、すべての健康関連製品に関する主張を広く含めている。今回改定されたガイダンスでは、1998年以降にFTCが提起した多数の法執行措置から引き出された「主要なコンプライアンス・ポイント」を強調し、① 広告側の主張の解釈、②立証 、 その他の広告問題 などのトピックに関連する関連する例について具体的に説明している。 (1) 広告側の主張の特定と広告の意味の解釈  改定されたガイダンスでは、まず、広告主の明示的主張と黙示的主張の違いを含め、主張の識別方法と解釈方法について説明する。改定ガイダンスでは、広告の言い回しとコンテキストが、製品が病気の治療に有益であることを暗示する可能性があることを強調しており、広告に病気への明示的な言及が含まれていない場合でも、広告主は有能で信頼できる科学的証拠で暗黙の主張を立証できる必要がある。  さらに、改定されたガイダンスでは、広告主が適格な情報を開示することが予想される場合の例が示されている(商品が人口のごく一部をターゲットにしている場合や、潜在的に深刻なリスクが含まれている場合など)。  欺瞞やだましを避けるために適格な情報が必要な場合、改定されたガイダンスには、その適格...

英国のデータ保護法案:提案された改正案の概要(その2完)

   [Part Ⅱ]  英国データ保護法案:主要条項の検討 この記事 では、パートⅠにもとづき、法案の特定の重要な条項をさらに深く掘り下げる。 (1) 匿名化と「個人データ」:範囲の確認  この法案は、情報が「識別可能な生存する個人」に関連しているため、主に2つのケースで「個人データ」を構成することを提案している。 (A)生存する個人が処理時に合理的な手段によって管理者または処理者によって識別可能である場合。 (B)管理者または処理者が、(a)処理の結果として他の人が情報を取得する、または取得する可能性が高いことを知っている、または知るべきである場合。 (b)生きている個人は、処理時に合理的な手段によってその人によって識別可能であるか、またはその可能性が高い。  特に、この法案は、処理時にデータが個人データであるかどうかの合理性と評価を非常に重視しており、特にデータを匿名化しようとする際に、組織・事業体にとって有用であることが証明される可能性がある。EU GDPRは、注目度の高いケースを通じて開発された識別可能性と匿名化のための高い「しきい値」を設定している(詳細については、2016年CJEUのBreyerの決定に関するこのレイサム・アンド・ワトキンス法律事務所の ブログ記事“Anonymous or Not: Court of Justice Issues Ruling on IP Addresses” (筆者注7) を参照されたい)。法案の提案は、英国政府が専門家諮問結果「データ:新しい方向」(諮問書)で取った立場、すなわち政府が「匿名化のために信じられないほど高い基準を設定することを避けるつもりである」という立場と一致している。(専門家への諮問の詳細については、このレイサム・アンド・ワトキンス法律事務所の ブログ記事“UK Data Protection Reform: Examining the Road Ahead” を参照されたい。 【筆者補足説明】 1.わが国では本格的に論じられていない問題として匿名化、仮名化などとプライバシー強化にかかる技術面からの検証である。2021.11.17  BRISTOWS法律事務所「データの匿名化:ICOの改訂ガイダンスに関する考慮事項」 が簡潔にまとめているので、主要部を抜粋、仮訳する。 ...