スキップしてメイン コンテンツに移動

オーストラリアにおける消費者金融教育と年金問題(その1:金融クイズ)

  

Last Updated:March 7,2021

 預金金利の低迷と株価等の高騰を背景として「貯蓄から投資へ」と言う言葉が一般的になってきた。しかし、問題は2007年問題と言うより大量の退職金をターゲットとする銀行、証券、生損保等各金融機関の売込みが今後急速に拡大し、それに伴う金融トラブルがますます広がることが懸念される。
さらに、少子化時代を迎え公的年金制度の限界も取りざたされている。本ブログはこれら社会問題を真正面から取り上げるのではなく、金融商品のリスクや年金問題について消費者教育における海外との比較を行うことが目的である。

 わが国で金融教育サイトといえば、まず思い出すのが「金融広報中央委員会」のサイトであろう。一方、本ブログでも、過去紹介してきたオーストラリア証券投資委員会(Australian Securities & Investments Commission)の消費者向け専用サイト「fido」(筆者注1)で最近掲載された金融クイズがある。この両者のサイトの内容の比較を通じて、これからの消費者金融教育(あまり直訳過ぎるこの言葉は好ましくないが、とりあえず使用する)についての課題を数回にわたり提起する。
 なお、当然のことながらわが国と豪州では消費者金融の商品スキームや税制なども異なるし、また年金制度もわが国の公的年金を基本(筆者注2)とするものより確定拠出型個人年金を主たるスキームとする等、単純な比較は無意味である。
 しかし、それらの差異を含めても消費者金融教育の社会的重要性は変わらないと考える。

 今回は、fidoサイトから「金融クイズ」6つの質問を紹介する。回答方法は簡単なので、多少英語(豪州英語の知識も必要)に自身のある人は直接サイトのアクセスされたい。(筆者注3)正解と解説が直ちに戻ってくる。その他の人は、次回の本ブログで正解と筆者の補足説明を見ていただきたい。

 2021.3.7 追記

 オーストラリア政府のWebサイトMoneysmartは、政府の国家金融リテラシー戦略2008-2010の一環として2011年3月15日に正式に開始した。” Moneysmart”は、以前ASICによって維持されていた他の2つの消費者向けWebサイト、(1)FIDO(www.fido.gov.au)と(2)Understanding Money(www.understandingmoney.gov.au)に取って代わった。 FIDOは2000年にASICによって立ち上げられ、「オンラインで配信される財務情報("Financial Information Delivered Online")」の略語であった。 2008年7月、オーストラリア政府は、Understanding Money Webサイトの管理と保守を含む金融リテラシー財団(Financial Literacy Foundation )の機能をASICに移管した。

 この”Moneysmart”は、Webサイト、出版物、教育プログラムで構成されてる。 それは人々が経済的決定をするのを助けるための情報とツールを提供するもので、そのキャッチフレーズは「信頼できる簡単なガイダンス」である。

 現”Moneysmart”のconsumer and finacial literacy quizサイトも似た内容である。

質問1:あなたは年利7.5%の住宅ローンの広告を読みました。その数字の次に「比較利率(comparison rate)」として7.85%と書かれていました。この「比較利率」はどのようなことを意味しますか。
①現在提供されている類似の住宅ローンの平均金利のこと。
②広告されている住宅ローンについて金利プラス各種手数料を加えた金利のこと。

質問2:アレックスはちょうど自宅の改築工事を終えました。改築後の家は従来付保していた家の2倍の価値があります。改築後の家に住宅保険付保のため彼はどのくらいの費用がかかるでしょうか。
①一般的に、保険料は2倍となる。その理由はアレックスは2倍の保障を得るのであるから。
②一般的に、厳しめに見て保険料は2倍以下である。

質問3:キムは決済用残高の金額に拘らず6カ月間特別定低利の金利を適用するという理由から新しいクレジットカード手に入れました。キムは3,000豪ドル(約258,000円)を決済口座に移しました。その後、キムはこのカードで600豪ドル(約5,200円)使い、カードの月次計算書が着き次第600ドルを支払ったとすると、特別低利は残高で残っている3,000ドルになお適用されるのでしょうか。
①はい
②いいえ

質問4:サムは年利16.5%のクレジットカードで3,000豪ドルのキャッシングをしました。サムは毎月の支払額につき月次計算書に表示された「最低返済額(minimum payment due)」で返済します。サムが全額を返済し終えるのに何年かかるでしょうか。
①約31年
②約4年

質問5:23歳のナッツは今仕事を始め、年間45,000豪ドル(約3,870,000円)の収入があります。もしナッツが退職後の収入確保のために老齢退職年金(super;superannuationのこと)として1,000豪ドル上乗せして積んだ場合、65歳(受給開始年齢)までに上乗せしない人と比較して総受給額はどのくらい差がつくでしょうか。
①約83,000豪ドル(約7,138,000円)
②約145,000豪ドル(約1,247,000円)

質問6:典型的な55歳の女性が95歳以上で生存している確率は。
①3人に1人
②10人1人

*****************************************************************************************************
(筆者注1) 2006年1月11日付ブログ「オーストラリア証券投資委員会(FIDOサイト)が新年早々金融詐欺をめぐる「絵に描いた餅賞」を公表」参照。

(筆者注2)海外の主要国においても公的年金を補完する個人・企業年金において確定給付型から確定拠出型のへのシフトが起っていることは周知の通りである。わが国におけるこれらの問題を論じた公的審議会や論文が多い一方で、金融広報中央委員会のサイトでは個人確定拠出年金や企業年金の解説等は行われているが(ただし、執筆者がすべて外注とはいかがか)、年金計算書シュミレーションの対象は公的年金のみである、次回以降詳しく紹介する豪州の場合は計算シュミレーションだけでも大分類で「年金計算」と「その他」に区分、さらに「その他」では①老齢退職年金、②合同運用ファンド、③複利、④リスクとリターン、⑤収入に応じた予算計画、⑥クレジット・カードの返済計算、⑦クレジット・カード等複数のローンを受けている場合の計算、⑧年金生活でどこまで耐えられるかの計算、⑨持ち家担保融資(リバース・モアゲージ:最近わが国でも話題となりつつある)がどこまでもつかの計算である。欧米流の自己責任を基本としながら、社会として協力する姿勢が見られる。

(筆者注3)直接fido サイトからチャレンジされる方は次のURLを開き、次に「Money quiz」を開くこと。

https://static.moneysmart.gov.au/teaching/resources/smart-consumers-4-a-smart-future/Science_Yr10/applets/CFL_quiz/story_html5.html

〔参照URL〕

https://moneysmart.gov.au/

オーストラリア政府の退職老齢年金専用サイト(あくまで年金基金が中心になっているが)

***********************************************************************************:

Copyright © 2006-2021 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.


コメント

このブログの人気の投稿

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家...

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

     米国の 商品先物取引委員会(CFTC) は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住の ラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri) と彼が所有するオハイオ州に本拠を置く NBD Eidetic Capital, LLC および SR Private Equity, LLC に対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に 民事法執行訴訟 を起こしたと 発表 した。   同訴状 は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。  さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している 救済被告 (注1) として起訴している。  今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。 1. 起訴の内容  CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および 「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」 および 「CFTC規則(CFTC regulations)」 のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。 2.本事件の背景  訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声...

英国の Identity Cards Bill(国民ID カード法案)が可決成立、玉虫色の決着

  2005年5月に英国議会に上程され、英国やEU加盟国内の人権保護団体やロンドン大学等において議論を呼んでいた標記法案 (筆者注1) が上院(貴族院)、下院(庶民院) で3月29日に承認され、国王の裁可(Royal Assent)により成立した。  2010年1月以前は国民IDカードの購入は義務化されないものの、英国のパスポートの申込者は自動的に指紋や虹彩など生体認証情報 (筆者注2) を含む国民ID登録が義務化されるという玉虫色の内容で、かつ法律としての明確性を欠く面やロンドン大学等が指摘した開発・運用コストが不明確等という点もあり、今後も多くの論評が寄せられると思われるが、速報的に紹介する。 (筆者注3) 1.IDカード購入の「オプト・アウト権」  上院・下院での修正意見に基づき盛り込まれたものである。上院では5回の修正が行われ、その1つの妥協点がこのオプショナルなカード購入義務である。すなわち、法案第11編にあるとおりIDカードとパスポートの情報の連携を通じた「国民報管理方式」はすでに定められているのであるが、修正案では17歳以上の国民において2010年1月(英国の総選挙で労働党政権の存続確定時)まではパスポートの申込み時のIDカードの同時購入は任意となった。 2.2010年1月以降のカード購入の義務化  約93ポンド (筆者注4) でIDカードの購入が義務化される。また、2008年からは、オプト・アウト権の行使の有無にかかわりなく、パスポートのIC Chip (筆者注5) に格納され生体認証情報は政府の登録情報データベース (筆者注6) にも登録されることになる。 ******************************************************: (筆者注1) 最終法案の内容は、次のURLを参照。 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld200506/ldbills/071/2006071.pdf (筆者注2) 生体認証の指紋や虹彩については、法案のスケジュール(scheduleとは,英連邦の国の法律ではごく一般的なもので、法律の一部をなす。法本文の規定を受け,それをさらに細かく規定したものである。付属規定と訳されている例がある。わが国の法案で言う「別表」的なもの)...